
最近はあまり見かけなくなったが、80〜90年代頃までは日本でも最新のヒット曲をスタジオ・ミュージシャンがカバー録音し「洋楽ヒットチャート最前線」みたいなタイトルがつけられて毎月のようにCDがリリースされたり、コンビニのBGMなどで流されたりしていた覚えがある。この手のレコードは当然アメリカにも数多くあって、中古盤屋でドーナツ盤を漁っていると時折見かけるのが、60年代にナッシュヴィルにあった「HIT」というレーベルから無数に出されていたシングル。
同レーベルの研究サイトによると60年代の約10年間に同社からリリースされたカバー・レコード(スーパーマーケットなどで1枚39セントで売られていたという)は350種近くもあったそうで、ジャンルもティーンポップからR&B、インスト、ノヴェルティまで非常に幅広い。録音の出来はまちまちだが中にはオリジナル録音の持つ魅力を上手く再現したものもあり、覆面シンガーとしてセッションに参加した者の中にはサム&デイヴのサム・ムーアなど、その後大成したアーティストもいるという。
今回紹介するナウ・ジェネレーションはこの「HIT」の系列レーベルである「Spar」から何枚ものカバー・アルバムをリリースしているスタジオ・グループで、レコーディングのために呼び集められたミュージシャンの中にはバズ・ケイソン、ボビー・ラッセル、バーゲン・ホワイトら元「ロニーとデイトナス」組や、ジミー・バフェットのような人までがいたという。このメンバーで1960年代後半に録音されたアルバムとなれば、どうしてもバーゲン・ホワイトが1970年にリリースした奇跡のソフト・ロックアルバム「For Women Only」のような内容を期待してしまうのだが、実際のところそこまで出来のいいものはなく、他愛のないポップスが大半を占めている。但し、CD後半には如何にもソフト・ロック的な魅力溢れるものも何曲かあり、このCD1枚だけで彼らを判断してしまうのは時期尚早のようだ。今後関連音源の発掘が更に進むことを願いたいところ。「HIT」レーベルに関してはネットで調べたところヨーロッパで5種のコンピレーションがアンダーグラウンドに出されており、早速取り寄せてみたが(収録曲は下記を参照)こちらも収録されているのは60年代前半の録音が中心でソフト・ロック〜サイケデリック・サウンドが楽しめそうなシングルはまだあまりCD化されていない。ナッシュヴィルのポップ・シーンは知れば知るほどその奥深さがわかって非常に面白いので、今後の展開に期待したい。

