
最近ワーナー・ジャパンのサイト「Warner Music Life」の「輸入盤横丁」というコーナーでRhinoレーベルから発売されている輸入盤の紹介文を書かせてもらっていて。クレジットがないのでわかり辛いのだが、1960年代のポップスものは大体僕が書いているといっていいと思う。アーティストでいえばモンキーズとか、ビー・ジーズとか。それら辺を主に担当している。

で、モンキーズの紹介文を書いている時に「このアルバムを日本独自の形で出してもらえないかな・・」と思っていたのが、メンバーのマイク・ネスミスがまだグループに在籍していた1968年に発表したインスト・アルバム「The Wichita Train Whistle Sings」。非常にマニアックな内容なので長いことCD化が実現しておらず、数年前にネスミス自身のレーベルからリリースされた時も、板起こしでのCD化だったようだ。このアルバムのマスター・テープが最近になってようやく見つかり、イギリスで彼の他のバック・カタログとともにリマスターで再発された。ネスミスの作品ばかり10曲をオーケストラで演奏したもので、アレンジと指揮はウェスト・コースト・ジャズの重鎮ショーティ・ロジャース。ロサンゼルスのエース級のスタジオ・ミュージシャンたちが集められ、非常に贅沢に制作されたアルバム(録音時期はモンキーズの「Pisces, Aquarius, Capricorn & Jones Ltd.」が制作された直後)。モンキーズの音楽性とは全然肌合いが違うので、このサウンドを楽しめるかどうかで評価は分かれると思うが(そもそもこれはネスミスの節税対策のために企画されたセッションなのだそうだ)、長年入手困難だったアルバムが手軽に入手出来るようになったことをまずは感謝しよう。
「Wichita 〜」とカップリングで収録されているのは、ネスミスが脚本と音楽を手がけた2000年の映画「Timerider」のサウンドトラック。こちらは完全に今どきのサウンドになっており(ハードなギター・サウンドは、当時彼がよく聴いていたスコーピオンズの影響なのだとか)、彼のカントリー・ロック路線を期待するとかなり意外な印象を受けるかも知れない。こちらも“マイク・ネスミス・レアリティーズ”として熱心なマニアのみ入手して聴けばいいのだと思う。
もう1枚はネスミスが1970年代後半にリリースした2枚のアルバムのカップリング。まず77年リリースの「From 〜」はイギリスでTOP30ヒットを記録した「Rio」をフィーチャー。それまでロサンゼルスでレコード制作を行っていた彼が初めてナッシュヴィルで録音した作品で、非常にリッラクスしたカントリー・ロックサウンドを楽しむことが出来る。なお「Rio」のシングルがイギリスでリリースされる際に彼は初めてプロモーション・ビデオを制作したそうで、それが映像の世界に興味を持つきっかけになったのだとか。

「Infinite 〜」の方は再びロサンゼルスに戻って制作された79年の作品で、カントリー・ロック色は後退し、当時の“ウェストコースト・サウンド”に仕上がっている。彼は1981年に長編ミュージック・ビデオ「Mike Nesmith's "Elephant Parts"」を制作しその年に創設されたグラミー賞のミュージック・ビデオ部門を受賞、映像分野へ邁進していくこととなるのでそれ以前の「音楽の世界の人」としては最後の作品。数年前イギリスでリリースされた70年代初頭の作品群と併せ、これでグループ脱退後の彼の音楽変遷が容易にたどれるようになった。モンキーズ・マニアには有り難い限りだ。