
最近ドイツのレーベルから大量にリリースされた廉価のジャズ・コレクションから2種を紹介。まず「Hammond Bond」はドイツのハモンド奏者、インフライド・ホフマンが1966年にジェームズ・ボンドをテーマに制作したアルバム「From Twen with Love」に彼の「ソウル・ジャズ」録音何曲かを追加したCD。同趣のアルバムとしてはその前年1965年にアメリカで制作されたジェームズ・ボンド・セクステットの「James Bond Jazz」があるが、当時は「007」シリーズの映画はまだ4作目の「サンダーボール大作戦」が公開されたような時期。アーティストは当時未映画化だったイアン・フレミングのノベルを題材にイメージを膨らませ、オリジナルの「ボンドのテーマ」を作成せねばならない。
アルバム収録曲は「Thunderball」「Goldfinger」といったジョン・バリー作の有名なテーマに加え「Dr. No」や「Only Live Twice」「Let Live and Die(??)」など時代を先取りしたタイトルが並んでいる。ホフマンのオルガンは終始クールでグルーヴ感が欠如している印象もあるが、BGMとしてはなかなかいい感じ。追加された別セッションの録音では、どうやら彼の代表曲らしい「Midnight Bossa Nova」が聴きもの。いかにも「ドイツ人のボサノヴァ」といった趣の演奏で、ラテン・リズムとミニマリズムのせめぎ合う様子(本当か?)は他に例を見ないスリルを感じる。
もう1枚「Up Up and Away」はサブタイトルにあるとおりドイツのバンドリーダー、クルト・エデルハーゲンが1970年に残したジミー・ウェブ作品集。エデルハーゲンはドイツ敗戦後いち早く自己のビッグバンドを立ち上げた「ドイツのスタン・ケントン」の異名をとるミュージシャンで、プロデューサーとしてはあのカテリーナ・ヴァレンテの才能を見出した人でもあるのだとか。かつてエデルハーゲンと活動を共にし、1970年当時はアメリカで成功を収めていたクラウス・オーガーマンの提案で制作が実現したジミー・ウェブ作品集には、当時非常にホットな存在だったウェブの最新ヒット、フィフス・ディメンションの「Up, Up and Away」、グレン・キャンベルの「By The Time I Get to Phoenix」「Galveston」「Where's The Playground Susie」「Honey Come Back」「Witchita Lineman」、リチャード・ハリスの「Didn't We」「MacArthur Park」「If You Must Leave My Life」などが収録されている。
当時ジミー・ウェブの作品は数えきれないほどのイージーリスニング・アーティストに取り上げられており、その大半は大して面白みのないものに終わっているが、この作品に関してはやはりオーガーマンの伝手で起用が実現したクインシー・ジョーンズのダイナミックなアレンジにより、凡庸な内容となることを免れている。モンド/ラウンジ系ファン、ジミー・ウェブマニアいずれにもアピールする1枚。

