
先日偶然見つけた、フランスの「Saga」というレーベルから出されたユニークなコンピレーション。戦前戦後のブルース録音から、黒人の人々の話題に上った(ニュースのネタになった)様々な人物を題材にした曲ばかりを集めたもので、その対象は犯罪者から事件の犠牲になった人物、経済的な成功者、スポーツ選手まで様々。
取り上げられている題材の中で、特に有名なのは1950年代にロイド・プライスがリバイバルさせ全米ナンバー1ヒットとなった「Stagger Lee」で、彼は1895年に起こった殺人事件の「主役」の方。このCDにはミシシッピー・ジョン・ハートの1928年の録音と1950年にニューオリンズのアーチボルドが録音したバージョンが収められており、どちらもロイド・プライス版のヒントになっていることがわかる。
いつの世も殺人事件は人々の好奇の目にさらされるが、一方で時の権力に不当に命を奪われた黒人たちも歌の題材となっており、こちらでは「プロテスト・ソング」の原型的雰囲気を感じる。聴いていて楽しいのはやはり時代のヒーローを讃えた曲で、黒人初のボクシング世界ヘビー級チャンピオン、ジャック・ジョンソンや「褐色の爆撃機」ジョー・ルイスらを誇らしげに歌い上げる曲は非常に面白い。黒人初のメジャーリーガー、ジャッキー・ロビンソンにはバディ・ジョンソン楽団の「Did You See Jackie Robinson Hit The Ball(1949年R&B13位)」という楽しいヒット曲もあるのだが、アコースティックなブルースでサウンドを統一する意図があったのかブラウニー・マギーによる応援歌「Robbie-Doby Boogie」が選ばれている。音源が古すぎて聴き辛い印象もあるが、新鮮な切り口で黒人音楽を楽しむことが出来る1枚である。

