
1957年、往年の大女優マレーネ・ディートリッヒと駆け出しの“イケメン”ソングライター、バート・バカラックが出逢ったのはディートリッヒ57歳、バカラック30歳のとき。ディートリッヒのワールド・ツアーのバンマスとして雇われたバカラックは、当時既に「伝説」といっていい存在だった彼女を徹底的にしごき、決して技巧派とはいえない彼女にステージ栄えする歌を教え込んだ。
収録されている曲はスタンダード・ナンバーから映画テーマ曲、シャンソンやドイツ語のナンバー、当時最新のヒット曲までと幅広い。最大の聴きものは1965年、コンビ解消後人気ソングライターとして地位を確立したバカラックを誇らしげにステージに呼び込み、彼のピアノを伴奏に歌われる「Fall in Love Again(彼女の出世作「嘆きの天使」主題歌)」か。ディートリッヒにとってもバカラックにとっても決してベストの部類の作品集ではないが、ポップス史の貴重なドキュメントであることは間違いない。