2006年08月26日

A Taste of Tequila/Hats Off - The Mariachi Brass! feat. Chet Baker (BGP)
Soundtrack to The Doo Wop Era: A Kenny Vance Collection - Kenny Vance & The Planotones (Ace)

A Taste of Tequila/Hats Off - The Mariachi Brass! feat. Chet Baker Soundtrack to The Doo Wop Era: A Kenny Vance Collection - Kenny Vance & The Planotones

 昨年アメリカに行って中古レコード屋を廻った時、やたらあちこちで見かけるので気になって結局買ってしまったアルバムに「マリアッチ・ブラス」があった。チェット・ベイカーが60年代当時大ブレイクしていたハーブ・アルパートのまねごとをさせられた作品ということで、ジャズ・ファンには存在そのものが許し難いらしく、発売から40年、CDの時代になって20年の今年まで無視され続けたという曰く付きのアルバム・・。

 「ウェストコースト・ジャズのアイドル」ベイカーの才能が輝きを放ったのは1950年代のこと。60年代に入ると彼はヨーロッパに渡り、その後薬物濫用と逮捕投獄を繰り返しながら各国を転々。60年代半ばにようやく本国に戻り、かつて名作「Chet Baker Sings」を生んだレーベル「パシフィック・ジャズ(この頃は“ワールド・パシフィック”と社名を変更)」からリリースしたのが「マリアッチ・ブラス」名義の諸作だった。レコーディングのアレンジメントをジャック・ニッチェが務め、バックを通称「レッキング・クルー」と呼ばれるスタジオ職人たちが固めるという、ポップス・ファンにとっては非常に贅沢な内容のこれらを、ジャズ・ファンの偏見の犠牲にしておくのはもったいない。

A Taste of Tequila - The Mariachi Brass! feat. Chet Baker ('66) ハーブ・アルパートの「ティファナ・ブラス」も発足当初は西海岸のスタジオ・ミュージシャンたちによる架空のバンドであり、この「ティファナ〜」と「マリアッチ〜」のレコーディングにはかなりの人数共通した顔ぶれが関わっていた模様。中には「ティファナ〜」の中核をなし、その後スピン・オフ・プロジェクト「バハ・マリンバ・バンド」のリーダーとなったジュリアス・ウェクターなんて「お前まで参加しちゃまずいだろっ!」的存在のミュージシャンまでセッション・リストに名を連ねており、ここら辺は当時の音楽シーンのおおらかさが窺えて面白い。66年にリリースされたプロジェクト第一弾「A Taste of Tequila」は50〜60年代にかけてヒットしたメキシコ風味のポップスを集めたアルバムで「Tequila」「Mexico」「El Paso」「La Bamba」など如何にもなナンバーが並ぶ。中でも耳を惹くのはオープニングの「Flowers On The Wall」、バカラック・ナンバー「Twenty Four Hours from Tulsa」あたりで、そのハマりっぷりがいい感じ。馴染みのスタジオ仲間とバッキング・トラックを完璧に仕上げ、伝説のトランぺッターをスタジオに迎えたニッチェは、当初の企画打ち合わせで「歯が全部抜けちゃって、楽器なんてろくに吹けないらしいよ。」といわれていたベイカーとレコーディングを敢行。歯はともかく(ドラッグの代金の替わりとして、売人に一本ずつ抜かれたという伝説がある)当時頻繁に使用していたフリューゲル・ホーンで見事アルバムの装飾部分を務めた彼のソロが随所で聴けるこのアルバムは市場でもまずまずの好評をもって迎えられ、アルバムチャートで最高120位を記録と、アルパートの成功には遥かに及ばないもののこのジャンルとしてはなかなかの成績を残した。

Hats Off - The Mariachi Brass! feat. Chet Baker ('66) この好成績に気をよくしたレーベルは同年早速第2弾アルバムを企画、矢継ぎ早にリリースされたのがCDカップリングの「Hats Off」。こちらは当時ヒットチャートを賑わせていた曲のカバーに選曲が集中していて、ソフト・ロック的には断然聴きどころ多し。ゲイリー・ルイスの「Sure Gonna Miss Her」やタートルズの「You Baby」なんてちょっと渋めのナンバーに加え、シェールの「Bang Bang」やナンシー・シナトラの「These Boots Are Made for Walking(「うたばん」のテーマって、この録音のピッチを上げて使ってるの?)」で聴かれるサウンドのゴージャズさや、ボビー・ゴールズボロの「It's Too Late」のノリのよさは完全に「ティファナ」のそれを凌駕している。考えてみたらここら辺の曲って、オリジナルの録音も彼らがやってるかも知れないんだよね。他にもデヴィッド・セヴィルの「Armen's Theme (Yesterday and You)」、ベン・E・キングの「Spanish Harlem」など気になるナンバーが多数、セールスは振わなかったようだが、聴き応えという点ではこちらの方が数段上である。

Looking for An Echo Original Motion Picture Soundtrack ('99) ポップス・ファンには非常にオイシイ曲満載のこのCD、「マリアッチ〜」名義のアルバムはその後あと2枚出されているので続編も期待したいが、まずはこれまで見向きもされなかったイージーリスニングの好盤としてチェット・ベイカー本筋の評価とは別に、マニアの間で愛でていくべき作品だと思う。もう1枚のケニー・ヴァンスとプラノトーンズは、現存するドゥ・ワップグループとしては恐らく世界最高の存在。昨年暮れにリリースされたアルバム「Lovers Island」はmeantimeのホームページで取り上げたことがあるので彼らについてのあれこれはそちらをご覧いただくとして、今回はニューヨークのローカル・ヒーローである彼らを海外の音楽ファンに紹介すべくイギリスで発売されたベスト盤をご紹介。これは前述の「Lovers Island」とオールディーズ・ファンは必見のハート・ウォーミングな映画「Looking for An Echo(奇跡の歌;今や超人気俳優のジョシュ・ハートネットが主人公の息子役を好演)」のサントラから選ばれたドゥ・ワップ・クラシック17曲に、未発表やライブ録音を加えた全24曲。

Lovers Island - Kenny Vance & The Planotones ('05) とにかく和みの極地、「ビートルズ以降の音楽は聴かないよ。」なんて“純血主義”なオールディーズ・マニアにも充分ご満足いただける、というかそんなこと僕が言うまでもなく「勿論プラノトーンズは聴いてますよね??」という感じ。「Lovers Island」を紹介したときも書いたが、プラノトーンズ、日本で観たいなー。いいハコもあるし、熱心な音楽ファンも多数詰めかけるだろうし・・。長門さん、なんとかしてーっ!(??)

posted by yakame at 08:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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