
1950〜60年代の珍しいヒット曲を、オリジナル・シングルバージョンやステレオ・バージョンにこだわってCD化を続けるコレクターの頼もしい味方「エリック・レコード」が、このところ提携先(?)としてホームページで大々的に紹介しているのがカナダの新しいレーベル、その名も「ヒット・パレード」。同レーベルの第一回発売分3枚を取り寄せてみた。
まず「Fabulous 〜」の2枚は、男性編と女性編に分けて50年代の比較的珍しいヒットを23曲ずつ収めたコンピレーション。実際のところはそれほど珍しくはない曲も結構入っていて、男性編の前半部分などは単なる50年代「ユア・ヒット・パレード」なヒット曲集と言った趣。ルイ・アームストロング、ナット“キング”コール、ペリー・コモ・・・雰囲気は非常によくて普通に楽しめてしまうのだが、それだけではタイトルに偽りあり。
後半にようやく登場する初CD化曲を挙げてみると、スヌーキー・ランソンの「It's Almost Tomorrow('55米20位)」、ジャック・オウェンスの「Dream A Little Dream Of Me('50米14位)」あとこれはどこかでCD化されているはずなのだがニック・ノーブルの「The Bible Tells Me So('55米8位)」といったところ。初CD化ではないものの珍しい曲もいくつかあり、パット・ブーンの「No Arms Can Ever Hold You('55米26位)」がベスト盤CDに収録されているのをこれまで見たことはないし、ローズマリー・クルーニーで有名な「This Ole House」のスチュアート・ハンブレンによるオリジナル版('54米10位;彼の自作)も僕は初めて聴いた。
珍しい曲は少ないが、50年代前半の雰囲気を味わうにはまずまずの内容、といった感じの男性編に対し、女性編の方はもうちょっとマニアックな選曲。初CD化はドロシー・コリンズ「Seven Days('56米17位)」、ジョージア・ギブス「Tra La La('56米24位)」、ジェーン・タージー「Sweet Violets('51米11位)」、ベティ・マディガン「Joey('54米12位)」、デニス・ロア「If I Give My Heart To You('54米9位)」、ジューン・ヴァリ「I Understand('54米8位)」の6曲。珍しいヒット曲が聴けるのは嬉しいが、チャートヒットを熱心に集めている人って対象を「ロック時代(1955年以降)」に限定している場合が多いので、ここら辺の曲では食指が動き辛いか?
他に印象的なのはサラ・ヴォーンの「Mr. Wonderful('56米13位)」、後年弟ニノ・テンポとのデュエットで大ブレイクするエイプリル・スティーヴンスがお色気たっぷりに歌う「I'm In Love Again('51米6位、彼女の単独CDを出して欲しい!)」、インスト・ナンバーの印象が強い「Blue Star」のフェリシア・サンダースによるボーカル・バージョン('55米29位)など。「Hard to Find」を謳うには少々不満の残る内容だが、取り敢えず今後の展開を期待してのご祝儀替わりということで。
3枚目はヴィクター・ヤングのベスト盤。日本では戦後最大の洋楽ヒットである「エデンの東」や「シェーン(遥かなる山の呼び声)」などでよく知られる人気アーティストで、ベスト盤CDも早い時期から発売されていたが(現在は廃盤らしい)、本国アメリカ(カナダだった・・)ではこれが初の単独CD。デッカ・レコードが設立された1930年代前半から、亡くなる56年まで同社で録音を続けた彼の数多い作品から、50年代のレコーディングに選曲を絞ったこのコンピレーションを今回購入した理由は、当時アメリカではヒットしていない「エデンの東」や「シェーン」がしっかり収録されており、それが最新リマスターで聴けるから。実際聴いてみたところそれほど音が良くなった印象はなかったが「紅の翼」「80日間世界一周(これだけは凄いステレオ・サウンド)」などお馴染みの曲で、彼独特のサウンドがたっぷり楽しめる内容になっている。ただし映画「ライムライト」の「テリーのテーマ」が選曲から漏れているのは、重大な手落ちだと思うが(当時アメリカでもヒットしたのに!)。オーケストラ・リーダーばかりでなく作曲家としても才能を発揮した彼の代表曲「ラヴ・レター」「星影のステラ」と、彼の作曲ではないが「恋に落ちた時」の3曲は、50年代録音のマスターが見つからなかったのかリチャード・ハイマンが58年に発表した「Richard Hayman Conducts The Great Motion Picture Themes of Victor Young」から収録。この割り切り方がアメリカっぽい(だからカナダだって!)が、サウンドに違和感はない。現在国内盤が入手困難ということなので、懐かしの「エデンの東」を聴きながら「ユア・ヒット・パレード(この場合は日本の)」な気分に浸るなら、このCDが最適。
収録曲等詳細:
Fabulous 50s Crooners Sing Their Hard to Find Hits
Fabulous 50s Divas Sing Their Hard to Find Hits

