1997年初頭、ビルボードのポップチャートにラテン・ミュージックがランクインすることがまだ非常に珍しかった頃、ブラックアウト・オールスターズなるユニットの「I Like It」という曲が突然TOP40入りを果たしたことがあった。当時僕は「meantime」というヒットチャートマニア向けの音楽サイトの運営スタッフをやっていて、TOP40入りしたヒット曲をスタッフ数名で手分けして片っ端からサイトで紹介する作業に夢中になっていたのだが、この曲をどのように紹介すればよいのか非常に困った記憶がある(確かレイ・バレットやティト・プエンテなど参加ミュージシャンの顔ぶれ紹介に終始したような覚えが・・・)。今になってみるとこの前年に「Macarena」が特大ヒットとなり、それに続くラテンナンバーが求められていたのかな、なんてことも考えられるが、それはともかくそれからしばらくして、この曲のオリジナルが1960年代の作品であることを、とあるブーガルーのコンピレーションで知ることとなった。
ピート・ロドリゲスは1960年代半ば〜70年代前半にかけて頭角を現したラテン楽団のバンドリーダー。彼の代表曲である「I Like It Like That」は60年代後半に盛り上がったR&B風味のラテン・ミュージック“ブーガルー”を代表する一曲とされるが、アルバム全体は(何曲かで「ブガルー!」の掛け声が聞かれ、シーンの盛り上がりにかなり色目を使った様子は窺えるが)ブーガルー色は意外と薄く、むしろその後ラテン・ミュージックのメインストリームとなるサルサを先取りした雰囲気の曲が多い。いずれにしても60年代後半のラテン・シーンを現在に伝える好サンプルといえる一枚。