2008年02月28日

The Prettiest Girl in School - Tony Perkins (el)

The Prettiest Girl in School - Tony Perkins

Tony Perkins ('57 Epic) 1950年代を代表する青春スター“トニパキ”ことアンソニー・パーキンスは、上手くはないが雰囲気のある歌を歌う俳優兼シンガーで、50年代後半には何枚もの作品が残されている。

 彼は1956年から58年にかけてRCAとエピックからアルバムシングルをリリースしており、中でも58年の「Moonlight Swim(月影の渚)」はTOP40ヒットを記録、わが国のヒットパレード・ファンにとっても思い出深い1曲となっている。「The Prettiest Girl in School」はRCA及びエピック時代のシングル音源に、57年発表のセルフ・タイトルアルバムを追加したコンピレーションで、数年前にコレクターズ・チョイスからリリースされたCD(エピック時代の録音を網羅)にRCAのシングル音源が追加された、と書いた方がわかりやすいかも知れない。

From My Heart - Tony Perkins ('58 RCA) 「月影の渚」をご存知の方であればおわかりのとおり彼の歌声はクセのない好青年風で、これで歌われるスタンダード・ナンバーは非常に素朴で味わい深い。シングル曲の方は言ってみれば“タブ・ハンター風”の作品が多く時代を感じさせるものもあるが、前述の「月影〜」や彼の映画デビュー作(彼はこの作品でいきなりアカデミー賞にノミネートされた)の主題歌でパット・ブーンがヒットさせた「Friendly Persuasion(友情ある説得)」など、100点満点の青春歌謡が数多く収録されている。

 アンソニー・パーキンスは1960年に「サイコ」という代表作をものにしてしまったがために、その後決して幸福とはいえないキャリアを歩むことになってしまったが、そんなこととは関係なく“トニパキ”が輝いていた時代の名唱を、気軽に楽しみたい1枚である。

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Misty: The Best of Johnny Mathis (Music Club Deluxe)

Misty: The Best of Johnny Mathis

 ヒットチャート・コレクターにとって常に悩みのタネなのがイージーリスニング系アーティストシングル・ヒット。そもそも彼らはアルバムを1枚でも多く売ったり、ホテルやカジノ、ナイトクラブで安定した興行を続けるのが一番の目標なので、AMラジオ向けに時流にのったサウンドで録音したシングル・ヒットなど時がたってしまえば忘れたい過去、むしろキャリアの邪魔になる・・とでも思っているようで、彼らのベスト盤といえば巡業先のステージで必ず歌われるようなスタンダード・ナンバーが大半を占め、せいぜいキャリアを象徴するシングル・ヒットの何曲かをハイライト的に収録するという程度の内容であることが多い。

 中でもシングル・ヒットファンに冷たいのが歴史的にイージーリスニング市場で強大なシェアを誇るコロンビア・レコードで、トニー・ベネットやアンディ・ウィリアムス、今回の主役ジョニー・マティスやニール・ダイアモンドなど、マニアが集う度「あの曲って、なかなかCDにならないよね・・。」と重箱の隅をほじくるような話をしつつ、ため息をつく・・というアーティストが多数在籍していた。

 ジョニー・マティスの新コンピレーション「Misty」は、そういったチャート・マニア長年の悩みを一気に解決してくれる優れもの。2枚組全36曲のうち、実に30曲が英米いずれか、または両方のチャートにランクインを果たしており、すべての全米TOP40ヒット、そして1958年にリリースされたクリスマスソング「Winter Wonderland」を除くすべてのUKヒットが網羅されている。

 収録曲の年代は1957年の初ヒット「Wonderful! Wonderful!」から83年の「Simple」まで。名唱だらけの50年代、時代のポップ・サウンドを取り入れた60年代、R&Bサウンドに挑戦した70年代と作風も幅広い。中でも興味を惹かれるのが70年代の録音で、イギリスにおけるスタイリスティックス人気に便乗する形で大ヒットした「I'm Stone in Love with You」やナンバー1ヒット「When A Child Is Born」「Too Much, Too Little, Too Late」、プログレッシブR&Bの「Life Is A Song Worth Singing」など、時流にのった彼の頑張りぶりはかなりの聴きもの、中でも79年の「Gone Gone Gone」のディスコ・サウンドは、ほとんど「マツケンサンバ」的悪ノリの域(本人は忘れたい過去かもしれないが・・)。

 勿論シングル・ヒットが彼の魅力のすべてを物語る訳ではないが、彼の数多いヒット曲をまとめて聴く上でこれ以上のコレクションはないだろう。これが出るまで、本当に長かった・・。
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2008年02月25日

The Golden Age of American Rock 'n' Roll: The Follow-Up Hits (Ace)

The Golden Age of American Rock 'n' Roll: The Follow-Up Hits

 “世界で最も優れたオールディーズ・コンピ”「The Golden Age of American Rock 'N' Roll」シリーズはこのところジャンルなどのテーマを絞ったリリースが続いているが、今回のテーマは特にユニーク。なんと「2発目ヒット特集」なんだって。

 世の中に【一発屋】と呼ばれるアーティストは数多く、というか1曲でもヒットチャートに痕跡を残せたアーティストはむしろラッキーだとは思うのだが、その【一発】後に再びチャートに登場し、この曲のお陰で【一発屋】の汚名を返上出来た、という曲ばかりが集められたもの。言い方を変えれば「二番煎じヒット」とでもなるか、代表的なものだとダニー&ジュニアズの「At The Hop」に続く「Rock and Roll Is Here to Stay」みたいな、そんなHOT100ヒットが全30曲収められている。

 収録されたアーティストの中にはその後もヒットを連発し売れっ子になっていった者もいるが、興味を惹かれるのは最初のヒットの勢いに乗って続くシングルをヒットチャートに登場させることには成功したものの、その後は鳴かず飛ばず・・という【二発屋】系のアーティスト。例えば

Magic Wind - Don & Juan ('60 #91)
Oh What A Fool - The Impalas ('59 #86)
The Age for Love - Jimmy Charles (60 #47)
The Girl with The Story in Her Eyes - The Safaris ('60 #85)
Fire of Love - Jody Reynolds ('58 #66)
I'll Take You Home - The Corsairs ('62 #62)

 など、最初のヒットのインパクトがあまりにも強く、現在では殆ど振り返られることのないマイナー・ヒットが数多く収録されている。この手の曲はコンピレーションに収録されることも滅多にないので初CD化曲も多く、ヒットチャート・マニアにとっては有り難い限り。この「The Golden Age 〜」シリーズ、今年は更に数種類のリリースが早くもアナウンスされているので、どのような内容になるのか今から非常に楽しみである。
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Twist and Shout: The Bert Berns Story volume 1 (1960-1964) (Ace)

Twist and Shout: The Bert Berns Story volume 1 (1960-1964)

 エイス・レコードのソングライター/プロデューサー別のコンピレーション・シリーズ、今回対象となったのは1960年代のニューヨークで活躍したバート・バーンズ。バート・ラッセル、またはラッセル・バードとしても知られる彼の短い生涯に残された作品が集められた第1集。

 1929年生まれの彼が音楽シーンで頭角を現したのは1960年のこと。オースティン・テイラーが歌ったディオン・タイプの「Push Push('60 #90)」を皮切りに、当時流行りのR&Bとラテン・リズムを融合させた作風で「Twist and Shout」「Everybody Needs Somebody to Love」「Hang on Sloopy」といったヒット作を連発した、いってみればフィル・スペクターのライバル的存在のプロデューサー/ソングライターであった。

 「The Bert Burns Story」はオールディーズ上級者向けを意識したのかお馴染みのヒット曲の収録は少なめで、知られざる作品が数多く紹介されているが、キーとなる代表曲についてはバージョン違いなどで一通りをカバーしている。アトランティック・レコードの音源を中心に“アーリー・ソウル”な雰囲気の作品が大半で、オールディーズ・ファンには堪らない内容だろう。

 コレクションは1964年にイギリスに出向き、ルルと「Here Comes The Night」を制作したところで終わっているが、これに続く第2集ではこの渡英の際に出逢ったゼム、そしてそのボーカリストであったヴァン・モリソンとの共同作業や、彼が設立したレーベル「Bang」におけるニール・ダイアモンドやマッコイズといったアーティストのヒット曲など、1967年の大晦日に彼が急死するまでの作品が収録される模様。こちらの到着も楽しみに待ちたいところ。
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2008年02月22日

You've Got A Friend - Mark Lindsay (Sony Music Direct)
Pieces - The Millennium (Sony Music Direct)

You've Got A Friend - Mark Lindsay Pieces - The Millennium

Indian Reservation (The Lament of The Cherokee Reservation Indian) - Raiders ('71) ポール・リヴィアとレイダースのボーカリスト、マーク・リンゼイといえば、我が国の洋楽ファンには何より「マーク・リンゼイとレイダース」名義でリリースされた1971年の全米ナンバー1ヒットで、当時日本でもかなりのヒットになった「嘆きのインディアン」で知られるが、以前この曲に関して興味深い記述を見かけたことがある。それは“「嘆きのインディアン」でリンゼイはボーカルをとっていない”という内容で、だったら「マーク・リンゼイとレイダース(因みにこれは日本のみの表記で、本国では単に“レイダース”としてリリースされている)」とは一体何なんだ!?という話。

 その文章によれば曲のボーカルを務めたのはギタリストのフレディ・ウェラーだそうで、彼は後にカントリー・シンガーとして大変な成功を収めるので妙に信憑性があるし、またこの時期リンゼイはソロ活動を熱心に行っていたのでレコーディングに参加していない可能性も十分あるなと思い、以前出していたメルマガでそんな内容を書いたこともあった。が、実際のところこの話は【ガセ】だったようで、この曲でリンゼイがボーカルをとっている映像も見つかった。「風説の流布」に加担してしまったようで、なんとも後味が悪い・・。



 60年代後半〜70年代前半に「ニューロック・キャンペーン」を打ち出し大成功を収めた米コロンビア・レコードは、一方で伝統的にイージーリスニング市場に大きなシェアを持つ会社でもあり、“ロック世代”にも受け入れられるイージーリスニング・アーティスト、いってみれば【若者向けのアンディ・ウィリアムスやジョニー・マティス】を必要としていた。そんな中、恐らくこの時期会社から勧められソロ活動を始めたのがこのリンゼイやユニオン・ギャップのゲイリー・パケットだったと思われ、リンゼイの方はソロとしてもそこそこの成功を収めている。

Arizona - Mark Lindsay ('70)Sulverbird - Mark Lindsay ('70) 今回マーク・リンゼイのソロ・アルバム3種が紙ジャケ化されたが、最初の2枚は以前2イン1の形でCD化済なので、ここでは3枚目にしてラストの「君の友達」をご紹介。リンゼイのソロ活動の基本路線は「カバー」で、当時ヒットしていたナンバー、シンガーソングライター系でいえばアルバムタイトル曲の「You've Got A Friend」や「It's Too Late」、カントリー系の「Help Me Make It Through The Night」「If You Could Read My Mind」、そしてジャクソン5の「Never Can Say Goodbye」までが、ある意味節操なく取り上げられている。

 枚数を重ねるにつれ彼のアルバムは新鮮味を失い、このアルバムははっきり言って一番つまらない内容。しかも当時ヒットチャート入りした「Problem Child」「Are You Man Enough」といったヒット曲も漏れているので(ボーナスとして入れて欲しかった・・)評価のしようがない。コロンビア・レコードの「ヤング・アダルト路線」は73年に他社からニール・ダイアモンドを迎え入れ、彼が空前の成功を収めたことで決着したため、リンゼイやパケットの試みは歴史上「なかったこと」にされてしまうが、この内容では仕方がないか。リンゼイに関しては下の動画(70年の「Miss America」)など前の2作に聴くべき曲が多いので、まずはそちらを入手した上でこちらを聴くことをお勧めしたい。



Begin - The Millennium ('68) もう1枚同時期に紙ジャケで出されたのは「ミレニアム」関係者の手許に残っていたデモ・テープやアセテート盤からの音源をかき集めた未発表録音集「Pieces」。正直言って毎回この手のCDが出る度に「いい加減にしていただきたい」と思うのだが、それでもつい買ってしまうのは彼らのアルバム「Begin」がそれだけ魅力的だったということなのだろう。彼らの音源はまだまだあるそうで今後も出る度についつい買うことになりそうだが、今一番必要なのは彼らのセッションを詳細に追った「セッショングラフィ」なのではないかと思う。たいした説明もなく「こんなのもありましたー」と未発表音源を垂れ流されるだけではこちらも混乱するばかりなので、どこかの熱心なマニアに体系的にまとめてもらえると非常に有り難いなー、と思っているのだが・・。
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2008年02月19日

A Touch of Gold/Wild Night - Johnny Rivers (BGO)
Heya! - J.J. Light (Sunbeam)

A Touch of Gold/Wild Night - Johnny Rivers Heya! - J.J. Light

 ジョニー・リヴァースがインペリアル/ユナイテッド・アーティスツ在籍時に発表したアルバムを片っ端からCD化していくBGOの再発シリーズもこれが最後。「A Touch of Gold」は1969年にリリースされた彼にとって2枚目のベスト盤で、初期の疑似ライブ・スタイルからスタジオ制作に切り替えた時期のヒット曲を収録。アルバム的には66年の「Changes」から67年の「Rewind」、68年の「Realization」と、彼が最も冴えていた時期の作品群から曲が選ばれており「中期」ジョニー・リヴァースの名曲の数々をたっぷり楽しめる内容になっている。

 ナンバー1ヒット「Poor Side of Town」をはじめ「Baby I Need Your Lovin'」「The Tracks of My Tears」「Summer Rain」といった大ヒットや、彼が才能を見出したと言っても過言でないジミー・ウェブが提供した「By The Time I Get to Phoenix」のオリジナル・バージョンなど、名曲がずらり。一方「Wild Night」はリヴァースがユナイテッド・アーティスツに残した未発表録音を集めたコンピレーション(75年リリース)。録音時期は73〜75年にかけてで「契約消化」の印象が強いが、カバー曲を中心に相変わらずゴキゲンな演奏を聴かせてくれている。

 彼のレコーディングにはハル・ブレイン、ジョー・オズボーン、ジェームス・バートン、ラリー・ネクテル、ディーン・パークス、ラリー・カールトン、ジム・ゴードン・・といったアメリカが誇る優秀なミュージシャンたちが常に参加しており、彼らの演奏が生み出すグルーヴが悪いはずがない。アルバムとしては地味だが、アメリカン・ロックファンには一聴の価値がある。

 もう1枚「Heya!」はサー・ダグラス・クインテットのベーシストだったというジム・スターリングスが「J.J.ライト」名義で1969年に発表した唯一のアルバムで、ネイティブ・アメリカンの血を引く彼による「ネイティブ・アメリカン・ロック」が聴ける。

 このアルバムのタイトル曲「Heya」はインディアンの呪文のようなフレーズが延々と繰り返されるノヴェルティ色の強いナンバーで、ヨーロッパでは大ヒットを記録したらしく当時日本でも「エヤ・エヤ」のタイトルでシングル盤が発売されている(らしい)。他にも「ナルカ〜サーニガ〜」と母音の強い歌詞が“空耳ごころ”をくすぐる「Na Ru Ka」など奇妙な作品がいくつかあるのでキワモノの印象が強いが、作品の本質は実はそこではない。

 このアルバムでもラリー・ネクテル、ジョー・オズボーン、ジム・ゴードン、アール・パーマーといった【スタジオの鉄人】たちが脇を固めており、リードギターにはゲイリー・ロウルズ(後にラヴに加入)とロン・モーガン(エレクトリック・プルーンズに加入)が参加と実力派が勢揃い。ライトの歌声の近似性もあってジョニー・リヴァーズに通じる雰囲気もあるが、彼が持つ人懐っこい音楽性は、むしろラヴィン・スプーンフルのザル・ヤノフスキーあたりを引き合いに出した方がいいのかもしれない。

 CDにはアルバム全曲に加え、次作用にレコーディングされながらこれまで未発表だった11曲とイギリスでリリースされた「Heya」のシングル・バージョンも収録。サウンドよし、曲そのものにも素朴な魅力が溢れる、思いがけず出逢ってしまった好盤。多くの人の耳に届くといいと思う。
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Brass Rock 1 - Heaven (Esoteric Recordings)

Brass Rock 1 - Heaven

 イギリスの10人組ブラス・ロックバンド「ヘブン」が1971年に発表したファーストアルバム「Brass Rock 1」。ギャグでもパロディでもない。シカゴやブラッド・スウェット&ティアーズらの成功ぶりを目の当たりにしたレコード会社は当時彼らを大プッシュ、アナログ盤のジャケットは裏表合わせて14面(!)に広がるというサンタナもビックリな仕様でリリースされたのだった。

 アルバムの内容は一言でいえば「硬派なブラス・ロック」。「Chicago Transit Authority」の持つ無骨さのみを、不器用なまでに前面に押し出した感じの男臭い世界。残念ながらデヴィッド・クレイトン・トーマスのようなカリスマ性のあるボーカリストも、テリー・キャスのようなギタリストもいなかった彼らは、他のブラス・ロックバンドの成功にあやかることなく、ファーストアルバムの失敗とともに大所帯バンドの維持が立ち行かなくなり、あえなく解散してしまったという。

 まさに「泡沫」といっていいバンドだが、残された音楽は決して悪くはない。むしろ僕は好き。「ポップ化した後のシカゴなど聴いていられない」という辛口をお好みの貴兄に、是非ともお奨めしたい逸品。
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2008年02月16日

ベスト・ヒット100:大人のディスコ(Universal Japan)

ベスト・ヒット100:大人のディスコ

 「ベスト100」ものの一環としてユニークなディスコ・コンピレーションが発売された。「大人のディスコ」と題されたこの5枚組の1枚目と2枚目は代表的なディスコ・ヒットを集めた「スーパー・ヒット・ディスコ編」で、1枚目は70年代、懐かしの「ディスコティーク」の時代から「サタデイ・ナイト・フィーバー」が日本を席巻したあたりまで、2枚目は80年代、MTV時代からバブル絶頂期の手前までのヒットをコンパイル。80年代編にはティアーズ・フォー・フィアーズの「シャウト」など、これがディスコ・ヒット?と首を傾げたくなる曲も入っているが、当時のディスコは踊れる踊れない関係なく最新のヒット曲が聴ける場所でもあったので、こういう選曲もありなのかもしれない。

 3枚目と4枚目の内容は特に素晴らしく、「サーファー編」「クリスタル編」とタイトルがつけられポップ・ファンク系のナンバーがずらりと並ぶ「サーファー・ディスコ」名曲選になっており、当時同様に人気があったはずのユーロ・ディスコ(新宿系?)を一切排した選曲には、監修者の強いこだわりを感じる。すっかり歴史に埋もれてしまったマイナーなR&Bヒットも多く、非常に勉強になるセレクション。当時頻繁に夜の六本木に繰り出していた音楽ファンには、感涙ものの内容だろう。

 そして5枚目はなんと「チーク・タイム編(!)」で、数々のバラード・ヒットを収録。「クラブ」と呼ばれるようになる前のディスコには「チーク・タイム」という素晴らしいシステムがあったのだ。レーベルの制約もあって「あれも一緒に聴きたいなー。」という曲が随分抜けてはいるのだが、そこら辺は他社のコンピレーションに期待することにしよう。1980年前後に青春時代を送った「クリスタル世代」に、特に強くお奨めしたい好企画盤。
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2008年02月13日

The Wichita Train Whistle Sings/Timerider (Soundtrack to The Motion Picture) - Michael Nesmith (Edsel)
From A Radio Engine to The Photon Wing/Infinite Rider on The Big Dogma - Michael Nesmith (Edsel)

The Wichita Train Whistle Sings/Timerider (Soundtrack to The Motion Picture) - Michael Nesmith From A Radio Engine to The Photon Wing/Infinite Rider on The Big Dogma - Michael Nesmith

 最近ワーナー・ジャパンのサイト「Warner Music Life」の「輸入盤横丁」というコーナーでRhinoレーベルから発売されている輸入盤の紹介文を書かせてもらっていて。クレジットがないのでわかり辛いのだが、1960年代のポップスものは大体僕が書いているといっていいと思う。アーティストでいえばモンキーズとか、ビー・ジーズとか。それら辺を主に担当している。

Warner Music Life


The Wichita Train Whistle Sings ('68) で、モンキーズの紹介文を書いている時に「このアルバムを日本独自の形で出してもらえないかな・・」と思っていたのが、メンバーのマイク・ネスミスがまだグループに在籍していた1968年に発表したインスト・アルバム「The Wichita Train Whistle Sings」。非常にマニアックな内容なので長いことCD化が実現しておらず、数年前にネスミス自身のレーベルからリリースされた時も、板起こしでのCD化だったようだ。

 このアルバムのマスター・テープが最近になってようやく見つかり、イギリスで彼の他のバック・カタログとともにリマスターで再発された。ネスミスの作品ばかり10曲をオーケストラで演奏したもので、アレンジと指揮はウェスト・コースト・ジャズの重鎮ショーティ・ロジャース。ロサンゼルスのエース級のスタジオ・ミュージシャンたちが集められ、非常に贅沢に制作されたアルバム(録音時期はモンキーズの「Pisces, Aquarius, Capricorn & Jones Ltd.」が制作された直後)。モンキーズの音楽性とは全然肌合いが違うので、このサウンドを楽しめるかどうかで評価は分かれると思うが(そもそもこれはネスミスの節税対策のために企画されたセッションなのだそうだ)、長年入手困難だったアルバムが手軽に入手出来るようになったことをまずは感謝しよう。

 「Wichita 〜」とカップリングで収録されているのは、ネスミスが脚本と音楽を手がけた2000年の映画「Timerider」のサウンドトラック。こちらは完全に今どきのサウンドになっており(ハードなギター・サウンドは、当時彼がよく聴いていたスコーピオンズの影響なのだとか)、彼のカントリー・ロック路線を期待するとかなり意外な印象を受けるかも知れない。こちらも“マイク・ネスミス・レアリティーズ”として熱心なマニアのみ入手して聴けばいいのだと思う。

 もう1枚はネスミスが1970年代後半にリリースした2枚のアルバムのカップリング。まず77年リリースの「From 〜」はイギリスでTOP30ヒットを記録した「Rio」をフィーチャー。それまでロサンゼルスでレコード制作を行っていた彼が初めてナッシュヴィルで録音した作品で、非常にリッラクスしたカントリー・ロックサウンドを楽しむことが出来る。なお「Rio」のシングルがイギリスでリリースされる際に彼は初めてプロモーション・ビデオを制作したそうで、それが映像の世界に興味を持つきっかけになったのだとか。

Magnetic South ('70)/Loose Salute ('70) - Michael Nesmith Nevada Fighter ('71)/Tantamount to Treason ('72) - Michael Nesmith And the Hits Just Keep on Comin' ('72)/Pretty Much Your Standard Ranch Stash ('73) - Michael Nesmith


 「Infinite 〜」の方は再びロサンゼルスに戻って制作された79年の作品で、カントリー・ロック色は後退し、当時の“ウェストコースト・サウンド”に仕上がっている。彼は1981年に長編ミュージック・ビデオ「Mike Nesmith's "Elephant Parts"」を制作しその年に創設されたグラミー賞のミュージック・ビデオ部門を受賞、映像分野へ邁進していくこととなるのでそれ以前の「音楽の世界の人」としては最後の作品。数年前イギリスでリリースされた70年代初頭の作品群と併せ、これでグループ脱退後の彼の音楽変遷が容易にたどれるようになった。モンキーズ・マニアには有り難い限りだ。

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2008年02月07日

服部良一1934-1954:未復刻傑作選集(Bridge/Columbia Music Entertainment)

服部良一1934-1954:未復刻傑作選集

 2007年は服部良一生誕100周年で、これを機会に氏の膨大な作品群がCD化されて再評価の気運が高まるのでは・・なんてことを期待していたのだが、CDに関しては過去に発売されていたコンピレーションの再プレスがせいぜい、後は変なトリビュート・アルバムが出たくらいで、随分と期待はずれなまま年が明けてしまった。

 このところ戦前〜戦後の貴重なSP音源を立て続けに復刻してくれている「ブリッジ」から2008年に入ってリリースされたのは、服部良一作品の中でもオリジナル・リリース以来復刻がされていなかったレアな作品ばかりを集めたコンピレーション。こういうものを待っていたのです。内容はコロムビア・レコードと専属契約を結ぶ以前の録音(すごい!)からコロムビアの戦前作品、CD監修の瀬川昌久先生がいたくお気に入りの服部シスターズやコロムビア・リズム・ボーイズ、リズム・シスターズらによるポップス色の強い録音、服部がアレンジに精を出した洋楽のカバー録音までの全36曲。

 まずはこれだけの貴重な録音を収集し、CD化してくれたことを感謝したい。印象的な作品としては服部シスターズのバタ臭く色っぽいポップスに、この数年後浜口庫之助が世に送り出すスリー・キャッツのルーツのようなものが見て取れたり、出身地である大阪の情緒とジャズを融合させた「道頓堀行進曲」「大阪娘」といった作品はそのまま笠置シヅ子の世界に通じるものを感じるし、あとは外国曲のアレンジメントに窺える当時の最新情報の取り入れに対する意欲とか。昭和16年録音の「青空行けば(ジングル・ベル)」は、アメリカでもこの曲がスタンダードとなる以前の録音なのだとか。

 こういうCDが日本でも出せるのだな。というのが一番の感想。昨今映画テレビの世界では「昭和」がブームなのだそうで、これに乗じてメジャー・レーベルもキワモノ狙いばかりでない昭和歌謡のコンピレーションを多数出してくれたらいいのに、と切に願うばかり。
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栄冠は君に輝く:古関裕而大全集(Columbia Music Entertainment)

栄冠は君に輝く:古関裕而大全集

 普段買い慣れないジャンルのCDを購入するとき、CDショップでそれが一体何処に置いてあるのかわからなくて難儀することがある。例えば家族に「韓流のCDを買って来い」と言われて店内で右往左往したり・・。最近苦労したのはこの「古関裕而大全集」で、演歌コーナーにもJ-POPコーナーにも見当たらない。隅から隅まで探して、ようやく見つかったこのCDは、なんと「スポーツ・コーナー」に置いてあった。。

 昭和の歌謡界を代表する作曲家の一人、古関裕而のイメージは一言【プロフェッショナル】。有名な話だがタイガースの「六甲おろし」もジャイアンツの「闘魂こめて」も、早稲田の「紫紺の空」も慶応の「我ぞ覇者」も、みんなこの人が作曲しているのだ(このコレクションには収録されていないが「ドラゴンズの歌」の作曲も彼である)。国威発揚でも商品の購買意欲でも、ご要望あれば何でも対応します、といった感じ。

 彼の数多い作品から厳選されたこの2枚組の1枚目は、様々な応援歌やテーマ曲を収録。現在でもNHKのスポーツ番組で必ずかかるあのテーマや、高校野球の「栄冠は君に輝く」、うちの近所のスーパーでは未だにこの曲で閉店を知らせているユージン・コスマン楽団名義の「別れのワルツ(蛍の光)」など【日本の日常生活のBGM】と化している作品が次々登場。一つ注文をつければ、再録が多すぎるのが難点だが、応援歌やテーマ曲にオリジナル録音も何もないか。

 2枚目のCDには音丸の戦前録音「船頭可愛や」にはじまり、「愛国の花」「暁に祈る」といった戦時歌謡、「フランチェスカの鐘」「君の名は」など戦後歌謡までの代表作品20曲を収録。個人的には戦時歌謡の持つ悲壮感は苦手で、やはり「夢淡き東京」「高原列車は行く」といった朗らかな曲調の作品が聴いていて楽しい。ただ、板起こしらしき音質には不満があるが・・。

 服部良一と比較して、この人の持つ「バタ臭さ」はちょっと異質なものがある。クラシック教育の賜物なのか、それとも他の要因か。非常に独特な“和製エキゾチック・サウンド”路線の「イヨマンテの夜」「黒百合の歌」などは、服部には表現し得ない世界ではないかと思う。

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2008年02月01日

Twice Nightly - The Tremblers (Cherry Red)

Twice Nightly - The Tremblers

Peter Noone (1980) 元ハーマンズ・ハーミッツのピーター・ヌーンが70年代末に結成したバンド「トレンブラーズ」が1980年に発表したアルバム。当時流行のパワーポップ/ニューウェーブ系のサウンドになっており、エルヴィス・コステロのカバー「Green Shirts」を除く全曲のソングライティングにヌーンが関わっている。

 全編通して彼の張り切りぶりが目立っており、音楽的な印象としてはパートリッジ・ファミリー独立後のデヴィッド・キャシディが、ゴーゴーズをバックにアルバムを作ってみました、という感じか。【ハーマン】の残像を期待して聴くとがっかりするかも知れないが、パワーポップファンにはちょっとした掘り出し物のアルバムだと思う。

 残念ながら当時のリスナーは依然として彼に【ハーマン】のキャラクターを求めており、ライブ会場では新曲ではなく60年代のヒット曲を演奏することを盛んに要求され、それがバンドが短命に終わる要因となったという。ヌーンは82年にあと1枚「One of The Glory Boys」を発表した後にハーマンズ・ハーミッツを再編、ノスタルジーの世界に活路を見出す一方でTVや舞台で活躍していくこととなるので、このアルバムはオンタイムな音楽家としての彼の最後のトライアルが記録されている、と考えてもいいだろう。

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Strung Out on Something New: The Reprise Recordings - Lee Hazlewood (Rhino Handmade)

Strung Out on Something New: The Reprise Recordings - Lee Hazlewood

【彼と私が恋に落ちる可能性は・・勿論あったと思うわ。でも彼は結婚していたし、2人の間には暗黙の了解みたいなものがあったの。だから、私たちが残した作品にはセクシュアルなムードがあるんだと思う。それがレコーディングに化学反応のような作用を起こしたし、2人が許されざる関係に陥ることを避けたんだと思う。。】

Rollingstone Yearbook 2007 これは昨年末に発行された「ローリングストーン(アメリカ版)」誌の「Yearbook 2007」にナンシー・シナトラが寄せた、この年亡くなったリー・ヘイゼルウッドへの追悼文の一節。ナンシーは1963年以降アメリカで何枚もの売れない(でも日本では大好評だった)シングルを発表した末、66年にヘイゼルウッドがプロデュースした「These Boots Are Made for Walkin'(にくい貴方)」でヒットチャートのトップに立ったのだった。

These Boots Are Made for Walkin': The Complete MGM Recordings - Lee Hazlewood リー・ヘイゼルウッドが60年代に手がけた作品は数多く、中には日本で非常に人気が高いアストロノウツの「太陽の彼方(ノッテケ、ノッテケ・・)」のようなものもあるが、一方で彼は60〜70年代を通じてアーティストとしても数多くのアルバムを発表しており、その独特でストレンジな作品世界は熱心なマニアを数多く生んでいる。数年前には彼が60年代後半に在籍したMGM時代の作品を集めたCDがリリースされたが、今回はその前後、彼がリプリーズに残したアルバムを中心にそこから漏れたシングル曲や、当時プロデュースしたレア作品などを2枚のCDに収めたアンソロジー。

 CDの中核を為すのは当時彼が発表した3枚のアルバム「The N.S.V.I.P.'s('64)」「Friday's Child('65)」「Love and Other Crimes('68)」。最初の2枚はシンプルなフォークロック調で面白みはあまりなく、アルバムタイトル通り“Not So Very Important”な作品。「Love and 〜」はMGMに移籍した後ナンシーと共演するため再びリプリーズと契約した時期のアルバムで、こちらは我々のよく知るヘイゼルウッドの世界観が遺憾なく発揮された怪作(?)。カバー中心だが充分楽しめる内容になっている。

 興味をそそられるのはむしろボーナス・トラックの方で、彼がリプリーズで手がけた様々なアーティストのレアなシングル曲を多数収録。一番メジャーなのはディーン・マーティンの息子ディノが結成したディノ、デシ&ビリー(ヘイゼルウッドは彼らを成功させたため会社から「だったらシナトラの娘もなんとかしろ。」と言われナンシーも手がけることになったのだとか)の2曲のヒット「Not The Lovin' Kind」「The Rebel Kind」で、それ以外は知られざる録音がずらり。ヘイゼルウッドにとって初めてのヒット、1956年の「The Fool」を歌ったサンフォード・クラークが60年代に吹き込んだフォーク・ロック調の作品(後にディーン・マーティンがヒットさせる「Houston」を含む)や、60年代前半に一時代を築いた“ギターマン”デュアン・エディの貴重なリプリーズ録音の収録も興味深い。因みにこの中の1曲「Guitar on My Mind」でボーカルを披露している彼の当時の妻ミリアムとは、70年代に「I'm Not Lisa」のヒットを放つジェシ・コルターその人である。

Nancy & Lee - Nancy Sinatra & Lee Hazlewood ('68) 個人的に一番興味を惹かれたのは、ディーンの娘ディーナ・マーティンの「Baby I See You」だろうか。ナンシーほど蓮っ葉ではないが、陰のある感じがいい。それにしてもこのCD、肝心の「ナンシー&リー」の録音が1曲も収録されていないのは不満。噂によればライノはナンシーのボックス・セットも現在企画中だそうで、そこには是非「Complete Nancy & Lee Sessions」の収録を望みたいところ。マニアックすぎる願いか?それを祈念する意味で、動画は2人の共演「Summer Wine」を貼っておこう。

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