今回CD化されたのは69年にリリースされた「10 to 23」と70年の「Fireworks」のカップリング。「10 to 23」は冒頭にフェリシアーノの天才少年時代(当時10歳)の録音「Amor Jibaro」が収録され、それに続いて「When I was small...」で始まるビー・ジーズの「若葉の頃」が演奏される構成がニクい。当時のコンテンポラリーな作品のカバーが大半を占めているが、唯一のオリジナル曲「レイン('69米76位)」は日本でもヒットを記録した。
続く「Fireworks」はヘンデルの「王宮の花火の音楽」をオーケストラと共演し奏でたバージョンをフィーチャー。彼はギターを独学で習得したが、耳に入る音楽は何でも再現出来るマルチ・プレーヤーなのだ。こちらもボーカル、インスト曲取り混ぜたカバー曲が大半を占めており、ここからはCCRのカバー「Susie-Q('70米84位)」とオリジナル「Destiny(83位)」がHOT100にランクイン。ローリング・ストーンズの「(I Can't Get No) Satisfaction」のクールなサウンド・プロダクションは、今日のクラブ・ユースにも耐え得る。
正直に書いてしまうと、僕はつい最近までヴァシュティ・バニアン(未だに正確な表記がよくわからない・・)の存在を知らなかった。先日「The Changing of The Guard」のCDを入手するまでは。そこに収録されていた「Winter Is Blue」の儚げな魅力と、その奇妙な名前に惹かれてネット検索してみたらビックリ、1970年に発表したアルバム「Just Another Diamond Day」1枚を残し、長い間【幻のシンガー】と呼ばれていた彼女は近年になって活動を再開し、2007年にはなんと来日公演まで実現していたという・・。完全に乗り遅れた形となったが、遅ればせながら件の「Just Another 〜」と来日公演後にリリースされた60年代の録音集「Some Things 〜」を入手し聴いてみた。
バニアンがイギリスの音楽シーンに登場したのは1965年のこと。デッカから1枚、翌年にコロンビアから1枚シングルをリリースし、その後イミディエイトと契約したもののシングルやアルバムのリリースには至らず(その経緯で録音した1曲が「Winter Is Blue」であった)・・という彼女の60年代の軌跡を、彼女手持ちの音楽ソースからたどったのがこの2枚組CD。デッカ・レコードとの契約に至った64年のデモ・テープから公式発表された作品(ただし板おこし)、当時大半が未発表に終わったイミディエイト時代の録音までの全25曲で、プロデューサーのアンドリュー“ルーグ”オールダムが裏ジャケにコメントを寄せているとおり、彼女のウィスパリング・ヴォイスは当時フランスで起こっていた新しい音楽の流れ(日本では「フレンチ・ポップ」と呼ばれる)に通じる雰囲気がある。
アマチュア時代の彼女が録音した1964年のデモは全部で12曲が収録されているが、この時点で既に彼女の基本スタイルは確立されていることがわかる。デビューにあたってオールダムは仲間のストーンズ2人(ミック・ジャガーとキース・リチャーズ)にこのアルバムのタイトル曲を提供させたが、それは純然たるガールポップで、彼女の魅力を表しているとは言いがたい。以降の彼女のオリジナル作品に真価は現れており「Winter Is Blue」を入口に彼女の作品世界に接した者としては耳に心地よい作品が並ぶ。面白かったのはイミディエイトのレーベル・メイト「トゥワイス・アズ・マッチ」と共演しバリー・マンとシンシア・ウェイル作品を歌った「Coldest Night of The Year」で、ここではオールダムによる疑似スペクター・サウンドが楽しめる。その他デモ録音でも「17 Pink Sugar Elephants」など想像力をかき立てられる作品が並んでおり、歴史に埋もれかけたこれら作品に出逢えた喜びを、感じずにはいられない。
勿論この録音群は内容的にフォーク/トラッドの隠れた名作との評価もある「Just Another 〜」を超えるものではない。が、彼女の魅力にはまった者であれば手にせずにはいられない1枚だろう。個人的には、近年でいえばジュディ・シル以来の大きな出逢いであった。
最近ドイツのレーベルから大量にリリースされた廉価のジャズ・コレクションから2種を紹介。まず「Hammond Bond」はドイツのハモンド奏者、インフライド・ホフマンが1966年にジェームズ・ボンドをテーマに制作したアルバム「From Twen with Love」に彼の「ソウル・ジャズ」録音何曲かを追加したCD。同趣のアルバムとしてはその前年1965年にアメリカで制作されたジェームズ・ボンド・セクステットの「James Bond Jazz」があるが、当時は「007」シリーズの映画はまだ4作目の「サンダーボール大作戦」が公開されたような時期。アーティストは当時未映画化だったイアン・フレミングのノベルを題材にイメージを膨らませ、オリジナルの「ボンドのテーマ」を作成せねばならない。
アルバム収録曲は「Thunderball」「Goldfinger」といったジョン・バリー作の有名なテーマに加え「Dr. No」や「Only Live Twice」「Let Live and Die(??)」など時代を先取りしたタイトルが並んでいる。ホフマンのオルガンは終始クールでグルーヴ感が欠如している印象もあるが、BGMとしてはなかなかいい感じ。
もう1枚「Up Up and Away」はサブタイトルにあるとおりドイツのバンドリーダー、クルト・エデルハーゲンが1970年に残したジミー・ウェブ作品集。エデルハーゲンはドイツ敗戦後いち早く自己のビッグバンドを立ち上げた「ドイツのスタン・ケントン」の異名をとるミュージシャンで、プロデューサーとしてはあのカテリーナ・ヴァレンテの才能を見出した人でもあるのだとか。
かつてエデルハーゲンと活動を共にし、1970年当時はアメリカで成功を収めていたクラウス・オーガーマンの提案で制作が実現したジミー・ウェブ作品集には、当時非常にホットな存在だったウェブの最新ヒット、フィフス・ディメンションの「Up, Up and Away」、グレン・キャンベルの「By The Time I Get to Phoenix」「Galveston」「Where's The Playground Susie」「Honey Come Back」「Witchita Lineman」、リチャード・ハリスの「Didn't We」「MacArthur Park」「If You Must Leave My Life」などが収録されている。