2007年12月31日

Full Circle - Roger Nichols & The Small Circle of Friends (JVC)
A&M Records History 100 (Universal Japan)

Full Circle - Roger Nichols & The Small Circle of Friends A&M 60's & 70's Single Box

Roger Nichols & The Small Circle of Friends ('67) 1968年リリースの「Roger Nichols & The Small Circle of Friends(以下SCOF)」が日本でCD化されたのは1987年のこと。それから数年を経てこのアルバムは「渋谷系クラシック」として大変な高評価を得ることとなるがそれは日本での話。海外でこのCDがリリースされるにはそれから更に10数年が経過する2005年まで時間を要した。

Roger Nichols & The Small Circle of Friends イギリス盤CDのライナー執筆にあたって監修者が行ったリサーチの結果消息がつかめたマレイ&リンダ・マクレオド兄妹とロジャー・ニコルスが数十年ぶりにコンタクトをとり、レコーディングが実現したのが今回のアルバム。音源の商品化にあたっては日本側スタッフの並々ならぬ努力があったようで、2007年の暮れに届けられたこのCDには、様々な偶然や多くの人間たちの強い思い入れが結晶となった、魔法のようなサウンドが詰まっている。

 CDを聴いてまず驚くのは、SCOF独特のハーモニーが40年もの時間を経て完全に再現されている点。これには作詞家のトニー・アッシャーが指摘しているとおり「テクノロジーの進歩」が大きく寄与しているのだろう。2007年の彼らの実際のハーモニーは「I'm Gonna Find Her」で聴けるような幾分枯れてしゃがれたようなものなのだと思うが、幾分のエフェクトがあるにしても、1967年のSCOFが持っていた魅力を的確に把握し、それを再現してみせたセンスは脱帽ものである。

 収録されている曲は自身のリメイクと盟友ポール・ウィリアムスとの書き下ろし1曲を除いて、当時彼らによっては録音されなかったロジャー・ニコルス作品で統一されており、これも当アルバムの成功の一要素となっている。個人的には是非とも聴いてみたかった「Out in The Country」や「I Kept on Loving You」の収録が何より嬉しいし、ソフト・ロックファンには特に人気の高い「Always You」は、当時残されたどのアーティストの録音より内容がいいといっていいだろう。ジャケット写真のデザインも含め、日本の音楽ファンが「ソフト・ロック」に求めるものを見事に具現化した1枚である。

 なおアルバムの中では異色なインスト曲「The Winner's Theme」は1980年にモスクワ・オリンピックのTV中継のため録音されたもの(結局アメリカがボイコットしたため今日まで陽の目を見なかった)だそうで、レコーディングにTOTOのメンバーが起用されたAORファンには気になる1曲。彼らは早くも次作の構想を練っているそうで、このアルバムに収録されなかったロジャニコ作品(「愛のプレリュード」とか・・)もいずれ彼らのハーモニーで聴くことが出来そうだ。

A&M Records で、これとほぼ同時にリリースされたのが、アメリカン・ポップスの名門レーベル「A&M」から1960年代〜70年代にリリースされたヒット曲や歴史に埋もれた重要曲を100曲集めたボックスセット。同社のアンソロジーというとCD時代の黎明期1980年代後半に「A&Mプライムカッツ」というこちらも5枚のシリーズがリリースされていたが、それらを入手し損ねた者にとっては約20年越しの待望の企画。

Herb Alpert & The Tijuana Brass 企画当初このボックスはかなり凝った選曲・装丁が予定されていたようだが、ライセンスその他の調整が難航し収録曲の半数以上が変更を余儀なくされ、パッケージも簡略化されて近年流行りの「ベスト100」ものの一種のような形で発売が実現した模様。A&Mも設立から半世紀近くが経過し、創立者であるハーブ・アルパートさえも音源とともに同社を去ってしまっている状況を考えれば、選曲に苦労するのも無理からぬことだろう。

 そういった点をふまえて評価すれば、このボックスは「A&Mポップス」の王道路線に主眼をおき、通常はなかなか聴くことの出来ないマイナーヒットまでに細かく気が配られた優れた一箱であるということが出来るだろう。カーペンターズその他、単独のベスト盤が容易に入手出来るアーティストや、R&B、ハードロック、ニューウェーブなどレーベル・カラー的に異質なアーティストの作品収録を極力控えている点は、企画監修者の「意地」として評価したい。

 90年代の「ソフト・ロックブーム」で愛好者を増やした「A&Mサウンド」と、70年代以降のイギリス勢も含めた「プレAORサウンド」を存分に楽しめる大箱として、非常に高品質な内容に仕上がっている。
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Pillows & Prayers: Cherry Red Records 1981-1984 (Cherry Red)

Pillows & Prayers: Cherry Red Records '81-'84

Cherry Red Records 現在では再発専門レーベルのイメージが強い「チェリーレッド」だが、1980年代は最先端でちょっとおしゃれなイメージのインディ・レーベルであった。「Pillows & Prayer」は同社のサンプラーとして1983年にリリースされたコンピレーション(イギリスでは99ペンスの廉価で販売された)で、当時のインディ・チャートで1年以上ランクインを続けたというベストセラー・アルバム

 このアルバムはその後日本でも国内盤がリリースされたが、それが好評を博したため我が国のみで「第2集」が企画され発売もされている。今回はこの2枚(第2集は当時新星堂を通じてリリースされた日本盤のデザインを使用した紙ジャケ仕様)にレアリティーズ1枚と当時制作されたイメージ・ビデオやPVを収めたDVD1枚を追加したボックス仕様での復刻となった。

Everything But The Girl チェリーレッドに所属したアーティストで最も成功を収めたのはエヴリシング・バット・ザ・ガール(EBTG)で、ここにはユニット名義の他ベン・ワットとトレイシー・ソーンのソロ、そしてソーンが在籍したマリン・ガールズの音源がいくつも収録されている。他のアーティストの作品も概してそうだが、どれも地味で、かつ緩い。80年代特有のきらびやかさとは無縁(ただし80年代特有の突飛な冒険心は旺盛)のシンプルなサウンドが延々と続くが、これが不思議と古くささを感じさせない。後に「ネオアコ」や「ギターポップ」と呼ばれることになる音楽の原型として、当時日本で親しまれた理由も理解出来る。



 PV映像の方もレーベルの持つ「存在の耐えられない緩さ」な空気をふんだんに含んだ仕上がり。かつて90年代、友人の女の子から「ネオアコとソフトロックってどこが違うの?」と訊かれたことがあり、その時は「一体この女は何を言っているんだ!?」と思ったものだったが、このボックスを聴いてその考えは完全に改めさせられた。確かにここで聴ける「ファンタスティック・サムシング」と60年代イギリスのポップ・デュオ「トゥワイス・アズ・マッチ」の音楽性の違いなど、僕には到底説明出来ない・・。

 チェリーレッドをはじめとする当時のネオアコ系インディ・ポップで育った耳が60年代の音楽と出逢って「ソフト・ロックブーム」は生まれたのだろう。勿論渋谷系も、日本でギターポップが根強い人気を誇るのも。様々な音楽の流れのルーツとして非常に興味深い内容。
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2007年12月28日

Black Heroes: from Stagger Lee to Joe Louis (Saga Blues)

Black Heroes: from Stagger Lee to Joe Louis

 先日偶然見つけた、フランスの「Saga」というレーベルから出されたユニークなコンピレーション。戦前戦後のブルース録音から、黒人の人々の話題に上った(ニュースのネタになった)様々な人物を題材にした曲ばかりを集めたもので、その対象は犯罪者から事件の犠牲になった人物、経済的な成功者、スポーツ選手まで様々。

Mississippi John Hurt 取り上げられている題材の中で、特に有名なのは1950年代にロイド・プライスがリバイバルさせ全米ナンバー1ヒットとなった「Stagger Lee」で、彼は1895年に起こった殺人事件の「主役」の方。このCDにはミシシッピー・ジョン・ハートの1928年の録音と1950年にニューオリンズのアーチボルドが録音したバージョンが収められており、どちらもロイド・プライス版のヒントになっていることがわかる。

Tommy Burns vs Jack Johnson (1908) いつの世も殺人事件は人々の好奇の目にさらされるが、一方で時の権力に不当に命を奪われた黒人たちも歌の題材となっており、こちらでは「プロテスト・ソング」の原型的雰囲気を感じる。聴いていて楽しいのはやはり時代のヒーローを讃えた曲で、黒人初のボクシング世界ヘビー級チャンピオン、ジャック・ジョンソンや「褐色の爆撃機」ジョー・ルイスらを誇らしげに歌い上げる曲は非常に面白い。黒人初のメジャーリーガー、ジャッキー・ロビンソンにはバディ・ジョンソン楽団の「Did You See Jackie Robinson Hit The Ball(1949年R&B13位)」という楽しいヒット曲もあるのだが、アコースティックなブルースでサウンドを統一する意図があったのかブラウニー・マギーによる応援歌「Robbie-Doby Boogie」が選ばれている。

 音源が古すぎて聴き辛い印象もあるが、新鮮な切り口で黒人音楽を楽しむことが出来る1枚である。
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Scat Singing: The Art of Vocal Jazz (Saga Jazz)
Tap Dancing: Harlem-Broadway-Hollywood (Saga Jazz)
Jazz & Humour: Une petite laitue… avec de la mayonnaise (Saga Jazz)

Scat Singing: The Art of Vocal Jazz Tap Dancing: Harlem-Broadway-Hollywood Jazz & Humour: Une petite laitue… avec de la mayonnaise

 ジャズ/ブルースの古い音源を様々なテーマでコンパイルするフランスの「Saga」レーベルのカタログから更に何点か。

 「Scat Singing」はその名の通りスキャットの名演を集めた全22曲。このスタイルの発明者といわれるルイ・アームストロングの1920年代録音から、この世界の「女王」エラ・フィッツジェラルドの戦後録音まで。有名どころではキャブ・キャロウェイやミルス・ブラザーズ、ドーシー兄弟を従えたエセル・ウォータースなどの他ビング・クロスビーやディジー・ガレスビーまで様々なタイプのアーティストが「歌声の器楽化」に挑んでいる。

 しかし、やはり別格なのはエラ・フィッツジェラルドで、「Flying Home」「Oh, Lady Be Good」「How High The Moon」など歴史的名唱が並ぶあたりは圧巻。「ボーカル・ジャズの芸術」をひとまとめに楽しめる1枚。



Bill  「Tap Dancing」の方はレコードや映画のサウンドトラックに残されたタップ・ダンスの名演を24曲集めた非常にユニークなコレクション。ハーレムのクラブシーン、ブロードウェイ、ハリウッドのレヴュー映画のいずれか、もしくはそのすべてで活躍したアーティストたちのトップバッターを務めるのは「ミスター・ボジャングルズ」ことビル・ロビンソン。当然。彼の代表曲4曲に続いてニコラス・ブラザーズ、スリム・ゲイラードといった芸達者が次々登場し、非常に贅沢な気分。

 CD後半になるとブロードウェイの華エレノア・パウェルが1曲、そしていよいよ御大フレッド・アステアの登場でコレクションは佳境へ。彼は1936年の映画「Swing Time(有頂天時代)」でビル・ロビンソンに捧げたナンバー「Bojangles of Harlem」を披露していて、このシーンをTVで初めて見た時僕は非常に感激したものだったが、このCDにはこの曲もしっかりと収録。選曲したフランス人は、よくわかってらっしゃる人らしい。



 コレクションの最後は映画「雨に唄えば」でジーン・ケリーとドナルド・オコナーが演じた「Moses Supposes」。僕は2人がテーブルの上で飛び跳ねているこのシーンをたまたまTVで見かけたのがきっかけでミュージカル映画にはまったので、この選曲は大納得。選曲したフランス人、是非お友達になりたい・・。



Cab Calloway 最後「Jazz & Humour」はジャズ・アーティスト(その殆どがビッグネーム)たちが残したユーモラスな演奏をコレクトしたもの。コミカルなジャズといえばすぐさま思い浮かぶのがスパイク・ジョーンズ、キャブ・キャロウェイ、ファッツ・ウォーラー、スリム・ゲイラード、ルイ・ジョーダンといったエンターテインメント性の強いアーティストたちになるが、それらも勿論収録されているもののCDの半数以上を占めるのはジャズの歴史に名を残す「シリアスな」アーティストたち。

Ted Lewis & His Band ポール・ホワイトマン、テッド・ルイスら1920年代の「スウィート・バンド」からジミー/トミー・ドーシー、ウディ・ハーマン、スタン・ケントンといった名門ビッグ・バンドまでが披露する「冗談音楽」は非常にサービス精神に富んだもので、管楽器が演奏の中で笑い続けるテッド・ルイスの「When My Baby Smiles at Me(1920年のナンバー1ヒット)」、トランペットが終始調子っぱずれなメロディを奏でるスタン・ケントンの「I'm in The Mood for Love」、こちらも調子っぱずれなフレーズをとことどころ織り込んで「これが最先端だぜ」と言ってみせるバド・フリーマンの「The Latest Thing in Hot Jazz」など、お腹いっぱいな22曲。

 フラック・ザッパは1980年代に「Does Humor Belong in Music?」というアルバムを発表したが・・なんてことを書くのは野暮か。音楽とユーモアの感覚は常に隣り合わせ、ごく一部のアーティストを除いては。CDのブックレットにはジャズ・ミュージシャンに関するジョークがいくつか掲載されていて、その一つを最後に書いておくと、人間的に非常に頑固なことで知られたベニー・グッドマン(当然このコレクションには登場しない)が1960年代に行ったロシア・ツアーに同行したズート・シムズは、ロシアの演奏旅行はどうだったか?の質問にこう答えたという。「ベニーと一緒のツアーなんて、いつでもロシアで演っているようなもんだよ。」
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2007年12月25日

100 Hits: 80s (100 Hits/Demon)
100 Hits: Disco (100 Hits/Demon)

100 Hits 80s 100 Hits Disco

 様々なジャンルの音楽を100曲、4〜5枚のCDに詰め込んで廉価でリリースする「ベスト100」シリーズ。我が国でも数多くのボックスがリリースされ好セールスを記録しているようだが、この流行は海を渡り、イギリスではなんとそれ専門のレーベルまで出来てしまった。

 「100 Hits」レーベルからリリースされた80年代ヒット曲集は、その名のとおり80年代のヒット100曲を5枚のCDに収録したボックス、これで2,000円前後だからかなりお得。イギリス編集なので当然のことながらUKヒット(アメリカではヒットせず)が多く「これってもしかして20年ぶりくらいに聴くかも・・」という曲が次々と登場し、非常に懐かしい思いにさせられる。

 選曲方針はポップな曲調を優先(なにしろ1曲目がA-HAの「Take on Me」なのだ)、R&Bは控えめ、ハウス系のダンス・ナンバーも控えめ。ネオアコ〜ギターポップ系のヒットも多数収録されており、当時アメリカもの一辺倒だった僕などは「あ、当時こんな雰囲気もあったんだったなー」と改めて勉強になったり。

 80年代当時、毎日のようにMTV番組にかじりついていた世代には身悶えしたくなるようなヒットを多数収録。既に80年代ものコンピを何種類かお持ちの方にも、新鮮な内容のボックスになっております。

 もう一つは「ディスコ・ヒット100選」。1970年代半ばから80年代半ばにかけての10年間に流行したお馴染みの全米ディスコ・ヒットに加え、イギリス選曲なのでちょっとベタなユーロディスコものも選ばれているのが、ちょっと嬉しい。

 5枚のCDに100曲のダンス・ヒットを詰め込んでいるので、収録されているのはどれも3〜4分台のシングル・バージョン。これがかえって新鮮で、ダンスフロアで盛り上がるイントロ部分をばっさりカットしたり、曲の構成が強引だったり、当時ラジオのエアプレイ向けに、編集に苦心した様子がありありと窺えて面白い。

 イギリス人選曲のせいかディスコ・サウンドのルーツの一つであるフィラデルフィア・インターナショナル(PIR)音源の作品が多数選ばれており、また80年代当時マイナーヒットに終わったジャズ・ファンク調のナンバーを、若干ボックスの雰囲気を損ねながらも数多く収録している点には、その後のクラブ・ミュージックへとつながる「ディスコ・サウンド」の流れを明らかにしようという意図が窺える。

 非常に手頃な価格で当時のヒットを100曲たっぷり聴ける「100 Hits」シリーズは大変いい企画。今後のリリースにも期待したい。
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RCA Country & Western 100 (BMG Japan)

RCA Country & Western 100

Hank Thompson 【カントリー3大ハンク】って知ってます!?ハンク・ウィリアムス、ハンク・スノウ、そしてハンク・トンプソン。恐らく日本だけの呼称だと思われるのだけれど、先日(2007年11月)ハンク・トンプソンが82歳で亡くなったというニュースを見かけたので、久しぶりに思い出した次第。

 カントリーの最重要レーベル「RCA」の音源から、スタンダードナンバーや有名なヒット曲、マニアックなカントリーヒットまでを100曲集めたこのボックスは【3大ハンク】のキーワードが通用する世代には堪らない、1940年代〜70年代の「カントリー&ウエスタン」代表曲がぎっしり。レーベルの関係で【3大ハンク】ではハンク・スノウしか登場しないが、エディ・アーノルド、ジミー・ロジャース、ピー・ウィー・キング、ジム・リーヴスといったいにしえの名シンガーから、ブラウンズ、ハンク・ロックリン、スキーター・デイヴィス、ドン・ギブソンら「ナッシュビルサウンド」でポップの世界でも成功を収めた面々、そしてボビー・ベア、チャーリー・プライド、ドリー・パートン、ウェイロン・ジェニングスなど新世代のカントリー・サウンドを担っていったアーティストまで、日本で「カントリー&ウエスタン」が熱かった時代に親しまれた曲ばかりをセレクト。

 スタンダードナンバーのカバーを別とすれば、選ばれた曲の大半は全米カントリー・チャートにランクインしており、中にはアメリカでもCD化がなされていない貴重なものも。監修者のマニアックさと熱意が伝わってくる「ベスト100」、こんな内容だったら既に持っているCDとの曲のダブりなど全然気にせず購入したくなってしまう。
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2007年12月19日

The Complete Motown Singles Volume 8: 1968 (Motown/Hip-O Select)

The Complete Motown Singles Volume 8: 1968

 1965〜66年にかけてピークを迎えた「モータウン・ビート」、その後同社は試行錯誤の末68年には「サイケデリック・ソウル」路線で再びヒットチャートを席巻・・というのが、この時期のマクロな視点。しかしこれをミクロに解析してみると、実は1968年はモータウンにとって苦悩の1年であったことがわかる。

Marvin Gaye & Tammi Terrell 前述の「サイケデリック・ソウル」が軌道に乗るのは、この年も暮れに近づいてから。それまでのモータウンといえば、黄金期を支えたソングライター・チーム、ホランド=ドジャー=ホランドと係争を開始し、フローレンス・バラードを解雇したシュープリームスはダイアナ・ロスの一枚看板グループとなり、ミラクルズのツアー生活に疲弊したスモーキー・ロビンソンも、そろそろグループからの独立を考え始める頃。この様子を見たデヴィッド・ラフィンは、テンプテーションズも「デヴィッド・ラフィンと〜」に改名しろと会社に迫った挙句グループを飛び出し、フォー・トップスは腑抜けたカバー・レコードを連発するのみ。ヴァンデラスやマーヴェレッツにはかつての輝きはなく、マーヴィン・ゲイもマンネリに苦しみ(その打開策として企画されたタミー・テリルとのデュエットは意外な成果を上げた)、グラディス・ナイトは順調にヒットを連発していたものの、いかんせん外様。スティービー・ワンダー少年は次々と意欲作を発表していたが、この時点ではまだ習作レベル・・・と、こんな混沌の季節を打破したのがプロデューサーのノーマン・ホイットフィールドだった。

Norman Whitfield & Barrett Strong 実は彼、当初は「サイケデリック・ソウル」路線に乗り気ではなかったそうで、ラフィン独立後のテンプテーションズのメンバーの依頼でしぶしぶ取り組んだところ、思わぬ仕上がりとなり大ヒットを記録した「Cloud Nine」、それにマーヴィン・ゲイの「I Heard It Through A Grapevine」の全米ナンバー1が続いてこの試みは“Full Bloom”となる。

 こういったメインのレーベル・ストーリー以外の部分に目を向けると、モータウンが意識的に音楽の幅を広げようと悪戦苦闘している様子が見えてくる。チャック・ジャクソン、ビリー・エクスタイン(!)といったポップなベテラン・シンガーたちとの契約や、ナンシー・ウィルソンタイプの女性ジャズ/ポピュラー・シンガーの発掘、ロック・アーティストを柱の一つにするため、ミッチ・ライダー独立後のデトロイト・ホイールズまでファミリーに引き入れていたなど、興味深い事実が判る録音が次々と登場する。

 音楽的に過渡期の作品が多いため退屈な思いをする瞬間も多々あるが、「ノーマン・ホイットフィールド時代」の幕開けと、それに至るまでの経過を確かめる上で大変面白い作品が多数詰まっている。
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The Singles Vol.4: 1966-1967 - James Brown (Hip-O Select)
Sock It to 'Em J.B.: 20 Fabulous Tracks Inspired by James Brown (Body & Soul)

The Singles Vol.4: 1966-1967 - James Brown Sock It to 'Em J.B.: 20 Fabulous Tracks Inspired by James Brown

Cold Sweat - James Brown & His Famous Flames ('67) ジェイムス・ブラウンのシングル集も第4弾でいよいよファンク期に突入(1966年〜67年)。65年のR&Bナンバー1ヒット「I Feel Good (I Got You)」でトップアーティストの地位を確立した彼はマイナーチェンジを繰り返しながら己のファンク・サウンドに磨きをかけ、67年の暮れにはJBファンクの完成形の一つである「Cold Sweat」をものにする・・というのがこの時期のあらすじだが、ファンクの究道者であると同時にしたたかなビジネスマンでもある彼の道程は、そう単純には片付けられない。

It's A Man's Man's Man's Wprld - James Brown ('66) せっかくなのでまずファンク路線をまとめておくと、この時期は「Bring It Up(シングル冒頭にラジオ局向けのメッセージ入り)」「Let Yourself Go」「Get It Together」といったヒットが生まれ、その中で「Money Won't Change You」や「Don't Be A Drop-Out」などの強いメッセージ性も織り込まれるように。一方で大衆が求める「ベタなJB」も健在で、その最高峰が「It's A Mans Mans Mans World」。クリスマス・シングルも3種類も吹き込んでいるし、「Kansas City」「Good Rockin' Tonight」といったオーソドックスなジャンプ・ナンバーも「Mona Lisa」等スタンダードも歌ってみせる【全方位外交】。今となっては単なる契約消化の印象が強いスマッシュ・レーベルからリリースされたインスト・ナンバーも、ものによってやる気が感じられたり、なかったり。

 この時代、ソウル・ミュージックシーンが熱気を帯びていく中、JBも次々とテンションの高いナンバーをヒットチャートに送り込んでいくことになるのであった(第5集に続く)。

Good God!: heavy funk covers of James Brown from all over the world 1968-1974 (Guerilla Reisuues) もう1枚の方はフランスの「Body & Soul」というレーベルからリリースされたJB関連のコンピレーションで、テーマは「JBもどき」。JBの成功に触発され、JBそっくりなサウンドでレコードを発表したアーティストの作品ばかり20曲が収録されており、録音時期を見ると60年代後半から70年代初頭に集中していて「I Got you」の成功をきっかけに丁度「Singles Vol.4」の時代にシーンへの影響力を急速に強めていった様子がわかる。

Rex Garvin & The Mighty Cravers 作品の質はJBの拙いコピーからそれなりにオリジナルな魅力を持ったものまで様々。中にはあまりのJBなりきりぶりに、いっそのことジェイムス・ブラウン名義でリリースしてしまえばよかったのでは?と思われるものまで。

 アルバム・タイトル曲である「Sock It To 'Em J.B.(レックス・ガーヴィン1966年のレア・グルーヴ・クラシック)」の「J.B.」とは、よく聴いてみると実は「ジェームズ・ボンド」のことであった・・という強烈なオチもつけられた、遊び心満載の楽しいコンピレーションである。
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2007年12月16日

Stockingtop Pop: Dream Babes Volume Eight (RPM)
Radio Gold Volume 5: 30 Original American UK Chart Hits 1956-62 (Ace)

Stockingtop Pop: Dream Babes Volume Eight Radio Gold Volume 5: 30 Original American UK Chart Hits 1956-62

 イギリスのレアなガールポップを発掘する「Dream Babes」シリーズ第8弾。このところ同シリーズは60年代後半に録音された音源に重点を置かれてコンパイルされているが「Stockingtop Pop」も1967年から1970年にかけてリリースされた作品ばかりを収録、従前の「ガールポップ」に「バブルガム」風味が加わったサウンドは、さしずめ「スウィーツ・ミュージック」とでも命名しなくなるような甘美さに満ちている。

The Paper Dolls 今回のCDでフィーチャーされているのは「スー&サニー」という2人の女性シンガー。当時バックシンガーとしてレコーディング・スタジオで八面六臂の活躍を見せた彼女たちはいくつかの覆面グループとしても録音を残しており、その中の1つがこのCDのタイトル、そして素晴らしいジャケット・デザインのインスピレーションの源となったストッキングトップスで、この名義で発表した2枚のシングルのAB面4曲すべてを収録。他には日本でも人気の高いペーパー・ドールズや元オーロンズのリードシンガーでイギリスに渡って活躍したロゼッタ・ハイタワー、更に70年代に入ってブレイクするマキシン・ナイチンゲールやティナ・チャールズの初期録音なども収録。

Dream Babes Vol.1 Dream Babes Vol.2 Dream Babes Vol.3 Dream Babes Vol.4Dream Babes Vol.5 Dream Babes Vol.6 Dream Babes Vol.7 Girls Go Zonk!: US Dream Babes


 当時のイギリスのスタジオシーンの活況ぶりが窺えるポップス集となっている。で、もう1枚はエイス・レコードのオールディーズ基本アイテム集第5弾。

 これまでの4集は「イギリスで人気を博したアメリカのオールディーズ」をテーマに選曲されていたが今回はその補完的意味合いで「イギリスでは人気は今ひとつだったが、アメリカのオールディーズを語る上では外せない曲」をアメリカ人の視点で選曲。両者の違いは日本人にはよくわからないが、大まかな傾向を見ると幾分R&Rは控えめ、ポップやカントリー系のヒットが多めに選曲されているか。

Radio Gold: A selection of tracks that the UK's Golden Oldies radio Stations are using to liven up the airwaves Radio Gold Volume 2: 30 Original American UK Chart Hits Radio Gold Volume 3: 30 Big Hits of The Airwaves Radio Gold Volume 4: Memories are made of these 30 classic songs


 シリーズのテーマ的に初CD化の珍しい音源などはなく、ベテランのオールディーズ・ファンには手が伸び辛いところもあるが、毎度のことながらリマスターされた音の良さと、ステレオ・バージョンの多さ(収録曲の半数以上)でつい買い揃えたくなってしまう。逆にオールディーズ入門者であれば、これまでの5集全150曲で【狭義】のオールディーズ(1955〜1963年)の代表曲をまとめてチェック出来る、非常に便利な内容となっている。
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Sides: Singles, Demos, Alternate Versions & Unreleased Masters 1965-1974 - The New Colony Six/The Raymond John Michael Band (Rev-Ola)

Sides: Singles, Demos, Alternate Versions & Unreleased Masters 1965-1974 - The New Colony Six & The Raymond John Michael Band

 シカゴ・エリアで活躍したガレージ・バンド、ニュー・コロニー・シックス(NC6)は、60年代後半にメジャーマーキュリーと契約しオーケストラ・サウンドのソフト・ロックヒットを何曲か放ったが、今回はマーキュリー時代の前後に残されたレア録音や未発表作品のコレクションがリリースされた。

 NC6としての録音は1965年〜70年にかけてのもので、意識的にバンド・サウンドをフィーチャーした作品が選ばれている模様。持ち前のポップさが発揮された曲が多く「Sunshine」「Rap-A-Tap」「Accept My Ring」といったナンバーは、初期の彼らのサウンドが好きであれば間違いなく気に入るだろう。

 グループ自体は70年代以降も活動を続けていくが、オリジナル・メンバーの何人かは1970年に独立し「レイモンド・ジョン・マイケル・バンド(RJM)」を結成、彼らの録音11曲(ラジオ局にプロモーション用のシングルが配られたのみで市販はされなかった模様)はこのCDのハイライトとなっている。RJMはNC6の作風を受け継ぐポップな音楽性を持ったバンドで“パワーポップ”的な楽しみ方が出来る作品もあり、NC6時代と比べても違和感なく聴くことができる。

 CDには更に後年NC6ファミリーのバンド「ジュニアー」による「I Will Always Think About You」のカバー、2005年に録音された再編NC6による「Can't You See Me Cry」までが収録され、ソフト・ロックファンであればチェックせずにいられないレア音源集となっている。

 このCDとは関係ないがNC6が1970年にマーキュリーからリリースしたブライアン・ウィルソン作曲のシングル「People and Me」、この音源のCD化はいつ実現するのだろうか・・?
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2007年12月13日

A Glass Menagerie: Pop, Psyche, Pye Collectables 1967-1969 (RPM)
Fairy Cakes For Tea: Fairytales Can Come True Vol.2 -20 previously uncomped popsike gems 1966-71- (Psychic Circle)

A Glass Menagerie: Pop, Psyche, Pye Collectables 1967-1969 Fairy Cakes For Tea: Fairytales Can Come True Vol.2 -20 previously uncomped popsike gems 1966-71-

 このところ60年代ものの復刻は、それまでのガレージ/フリークビートものから【ポップサイケ】へと力点が移行しつつあるようで、この手の音楽を好むものにとっては有り難い限り。

 「ガラスの動物園」と題されたコンピレーションは60年代後半にパイ・レコードからリリースされ不発に終わった11枚のシングルAB面を収めたもの。いずれも他のコンピレーションであまり見かけたことのない名前だが、まずアルバムタイトルにも使用されている「Glass Menagerie」はイングランド西北部ランカシャー出身のポップグループ。彼らが同社からリリースした3枚のシングル音源6曲がフィーチャーされているが、これはカバー中心のB級ポップであまり見るべきところ(ニルソンの「I Said Goodbye to Me」は幾分まし)はない。

 聴きどころは他の“ワンショット”もので、後にクラッシュやメスカレロズといったグループでジョー・ストラマーとコラボレートしたタイモン・ドッグが17歳の時にリリースした「Bitter Thoughts of Little Jane(レコーディングにはジミー・ペイジ、ジョン・ポール・ジョーンズらが参加)」、謎のシンガー、トニー・クレーンのポップな「Anonymous Mr. Brown」、レア・バードのメンバーとして1970年に「Sympathy」をヒットさせる直前にマーク・アシュトンが在籍していたターンスタイルの「Riding A Wave」、ノースハンプシャーのニュー・フォーミュラが歌うトニー・マコウレイ&ジョン・ マクロード作の「My Baby's Coming Home」「Burning in The Background of My Mind」など。どの作品にも60年代後半特有の雰囲気が濃厚に漂う、内容の濃い1枚。

Fairy Tales Can Come True: UK popsike from the late 60's 「Fairy Cakes for Tea」は以前リリースされた「Fairytales Can Come True」の第2弾で、これまで見過ごされていたポップサイケ系の作品を集めた全20曲。イギリスばかりでなくオランダ、スウェーデン、南アフリカなど様々な国のバンドの作品が収められており、サイケデリック・サウンドが世界的に同時進行で受け入れられていった様子が窺えて面白い。ほとんどが無名のバンドによる作品だが、中にはマージービーツのメンバーが「クラッカーズ」としてリリースした「Honey Do」や、ピーターとゴードンが活動後期にリリースしたシングル「I Feel Like Going Out(90年代にライノ盤ベストに収録されて以来のCD化)」など意外な作品もところどころで聴かれる。

 前作に続き選曲を務めるのはネオ・サイケ/プログレバンドとして知られる「ビーヴァス・フロント」のニック・サロマン。音源はどれもマニアックなものばかりだが、音楽的には非常に聴きやすい作品が並ぶのは彼の「ポップサイケ」に対する思い入れとこだわりの現れだろう。
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The Changing of The Guard: The Sixties London Pop Explosion (El)

The Changing of The Guard: The Sixties London Pop Explosion

Immediate Records ローリング・ストーンズのマネージャーとして名を挙げたアンドリュー・ルーグ・オールダムは、敬愛するフィル・スペクターらの成功に倣って自身のレーベル「イミディエイト」を1966年に設立。そこからはスモール・フェイセズ、クリス・ファーロウ、エーメン・コーナー、ハンブル・パイといったアーティストがヒットを放った。

Tonite Let's All Make Love in London ('67) またオールダムは67年に「Tonite Let's All Make Love in London」というドキュメンタリー映画を制作しているが「The Changing of The Guard」はこの映画サントラの再編集増補版といった趣きで、現在は契約の関係で収録が難しい(?)初期のピンク・フロイドの演奏等をオミットし、1966年〜69年にかけてイミディエイトからリリースされたシングル作品15曲に「スウィンギン・ロンドン」と呼ばれた当時のアートシーンで活躍していたセレブたちのインタビューを散りばめた構成になっている。

 前述のヒットアーティストたちに加え、トゥワイス・アズ・マッチ、トニー・リヴァース、ビリー・ニコルスといったソフト・ロックファンに人気の高いアーティストや「Tonite 〜」サントラに収録されていたマークィーズ・オブ・ケンジントンのアルバムタイトル曲、先日60年代の録音がまとめて復刻され話題となった女性フォーク・シンガー、ヴァシュティ・バニヤンなど「ソフトサイケ」な雰囲気溢れる選曲は昨今のリイシューの流行に適ったものといえるだろう。

 オールダム本人の他ミック・ジャガーや俳優のマイケル・ケイン、ジュリー・クリスティ、リー・マーヴィン、グラフィック・アーティストのアラン・アルドリッジ、デヴィッド・ホックニー、ビート詩人のアレン・ギンズバーグなどの発言も「スウィンギン・ロンドン」な気分を盛り上げている。
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2007年12月10日

The Dells Sing Dionne Warwicke's Greatest Hits (Cadet/Dusty Groove)
Jungle Fever - Chakachas (Polydor/Dusty Groove)

The Dells Sing Dionne Warwicke's Greatest Hits Jungle Fever - Chakachas

 以前も紹介したシカゴ郊外にある「渋谷宇田川町系」レコード・ショップ「Dusty Groove America」のサイトは、情報源としていつも活用させていただいているのだが、今年に入って同店はブランド・レーベルを立ち上げ、旧譜の復刻に取り組み始めている。先日届いたのはデルズが1972年にリリースした「Dionne Warwicke’s Greatest Hits」。はて?

Dusty Groove America このアルバム、早い話がデルズが歌うバカラック作品集で、実際のところはディオンヌ(当時彼女は一時的に改名していたのでWarwik”e”になっている)のヒットではない「Raindrops Keep Fallin’ on My Head」や「Close to You」なども取り上げられている点がややこしい。

 プロデュースはこの時期彼らのヒット曲の数々を手がけているチャールズ・ステップニーが担当しており、かなりドラマチックな仕上がり。当時のデルズは絶頂期といってもいい時期(この翌年に最高傑作とされる「Give Your Baby A Standing Ovation」を発表する)なのだがR&Bマーケット向きではなかったのか、それとも純粋にアルバム・タイトルが悪かったのかこの作品はR&Bチャートで最高32位、ポップ・チャートでは162位と振るわなかった。

 とはいえ内容的に決して物足りない訳ではないので、バカラック・マニアは勿論スウィート・ソウル系のファンにもご満足いただける一枚だと思う。

Twist Twist - Les Chakachas ('62) もう1枚は何ヶ月か前に出されていたチャカチャスのアルバム。1972年に「Jungle Fever(POP8位/R&B11位)」を一発ヒットさせたことで知られるグループだが、実は本拠地ベルギーにおける彼らのキャリアは結構古く結成は1950年代後半、62年にはレス・チャカチャス名義で「Twist Twist」をUKチャートに送り込んでいる(最高48位)というベテラン。

 70年代のチャカチャスはこの「レス・チャカチャス」のコア・メンバーにスタジオ・ミュージシャンが加わった編成だった模様。「Jungle Fever」は延々と続くギターのリフと女性の喘ぎ声をフィーチャーした“ポルノ・グルーヴ”な一曲で、アルバムもその手のヤバめな曲満載を期待して聴いたのだが意外にも他の曲はぬるーいサルサ風の演奏ばかり。恐らく「通常営業」の彼らはこんな感じの音楽をやっていたのだろう(因みに「Jungle Fever」がアメリカでヒットした際は、まったく別人のラテン・バンドが「チャカチャス」としてツアーに回ったそう)。

 ゆるーいラテン音楽をBGMと割り切って聴く分には、このアルバムも悪くはないかもしれないが「Jungle Fever」のノリを期待すると相当肩透かし感を味わう内容。
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Chain Reaction - The Spellbinders (Shout)

Chain Reaction - The Spellbinders

 スペルバインダーズは1960年代半ばにニュージャージーで結成されたR&Bクァルテット(ジャケットには5人写っているが、1人は短期間だけ在籍したギタリストらしい)。ニューヨーク/ワシントン・エリアでは大変な人気を博していたそうで、1966年の1年間に、いずれも下位ではあるが4枚のシングルをヒットチャートに送り込んでいる。

 この時期の彼らのプロデューサーを務めたのは、当時R&Bからソフト・ロックまで幅広いジャンルの音楽を手がけていたヴァン・マッコイ。シングル曲のいくつかはノーザン・ソウルやビーチ・ミュージックのコンピレーションで定番となっているが、今回は唯一のアルバム(1966年リリース)にそこから漏れたシングル作品を追加した、彼らにとって初の単独CDの登場。

 どの曲も非常に良質かつポップな仕上がりになっており、リード・ボーカルのボビー・シーバースがエディ・ケンドリックス風のファルセット・ボイスで歌う典型的なノーザン「Help Me (Get Myself Back Together Again)」「Chain Reaction」や若干メロウな「We’re Acting Like Lovers」などお馴染みのナンバーは勿論のこと、他の収録曲いずれもが水準以上の出来。現在もノーザン・ソウル・シーンで精力的に活動を続けているという彼らの存在が、広く知られるきっかけとなるCDになるだろう。

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2007年12月07日

Karen Wyman (Decca/Universal)
Anita Kerr presents Teresa (Dot/Universal)

Karen Wyman Anita Kerr presents Teresa

 【フィンガー・スナッピン・ミュージック】シリーズから2枚をご紹介。まずはブロンクス出身の女性シンガー、カレン・ワイマンが17歳のときにリリースしたデビュー作(1970年発表)で、当時のポップ/ロック系のヒット曲をあれこれ取り上げたカバー・アルバムになっている。

 彼女は朗々と歌い上げるタイプのシンガーで、ガールポップ好きには“萌え”どころに欠けるきらいはあるが、抜群の声量で何の迷いもなく真っ直ぐに届けられる歌の数々は一言「若いって素晴らしい」。

 聴きどころはまずシカゴの「ぼくらに微笑みを」と「一体現実を把握している者はいるだろうか?」をダイナミックに歌いこなしたバージョンと、ローラ・ニーロの「Save The Country」「California Shoe Shine Boy」あたり。ビートルズ・ナンバーはまずまず、ラスカルズの「How Can I Be Sure」はあまりにも堂々と歌いすぎてオリジナルの儚げなイメージを少々損なっている印象も。これも若さ故。

 この後何作かのアルバムを発表しながら71年に「Beautiful」をイージーリスニング・チャートで小ヒットさせただけに終わった彼女の、若き日の才能の輝きを記録した1枚。

 もう1枚はイージーリスニング界の大姉御、アニタ・カーがその才能に惚れ込み、デビューのため一肌脱いだ1969年当時19歳のシンガーソングライター、テレサ・ベネット。

 彼女のデビュー・アルバムはオリジナルとカバーが半々の内容で、カバーではクラシックス・フォーの「Spooky」と「Traces」、ファースト・エディションの「But You Know I Love You」あたりが気になる。アニタ・カー関連ということでどうしてもこの手のカバーものに注意が向きがちだが、恐らくこの作品で強調したかったのは、彼女のソングライティング能力の方だったのだろう。

 当時の女性シンガーソングラターの中では陰影の少ないタイプの彼女の作品は非常に聴きやすく「Image」「Strange」「On My Own」といった曲からその非凡なセンスを窺い知ることが出来る。一部大袈裟なアレンジが施され彼女の繊細な持ち味が損なわれているものもあるが、イージーリスニング系を聴き漁る【グルーヴ追究派】ばかりでなく、シンガーソングライター・マニアにも注目してほしい作品である。
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Marlene Dietrich with The Burt Bacharach Orchestra (bureau b)

Marlene Dietrich with The Burt Bacharach Orchestra

 1957年、往年の大女優マレーネ・ディートリッヒと駆け出しの“イケメン”ソングライター、バート・バカラックが出逢ったのはディートリッヒ57歳、バカラック30歳のとき。ディートリッヒのワールド・ツアーのバンマスとして雇われたバカラックは、当時既に「伝説」といっていい存在だった彼女を徹底的にしごき、決して技巧派とはいえない彼女にステージ栄えする歌を教え込んだ。

Marlene Dietrich & Burt Bacharach このCDは当時(50年代末〜60年代前半)残されたスタジオやライブにおける録音から2人の共演をセレクトしたもの。第2次大戦時に連合軍、枢軸国(ドイツ)軍ともに愛された「Lili Marleen」を引っさげて各国を回った彼女は熱狂的に迎えられ、その歌声は冷戦下の東西ヨーロッパの壁を越えて南米大陸にまで届き、ナチス台頭のため一度は決別した故国ドイツにも、当時ドイツ語の歌はタブーとされていたイスラエルにも受け入れられたという。

 収録されている曲はスタンダード・ナンバーから映画テーマ曲、シャンソンやドイツ語のナンバー、当時最新のヒット曲までと幅広い。最大の聴きものは1965年、コンビ解消後人気ソングライターとして地位を確立したバカラックを誇らしげにステージに呼び込み、彼のピアノを伴奏に歌われる「Fall in Love Again(彼女の出世作「嘆きの天使」主題歌)」か。ディートリッヒにとってもバカラックにとっても決してベストの部類の作品集ではないが、ポップス史の貴重なドキュメントであることは間違いない。
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2007年12月04日

The Works: A 3CD Retrospective - Bread (Rhino)
The Works: A 3CD Retrospective - Chris Rea (Rhino)

The Works: A 3 CD Retrospective - Bread The Works: A 3 CD Retrospective - Chris Rea

ボックスものを2種、まずは70年代前半を代表する人気グループ、ブレッドの作品53曲を3枚のCDに詰め込んだボックスセット

彼らのベスト盤といえば2枚組の「Retrospective」がメンバーのソロ作品までをカバーしていて非常に親切、ヒット曲だけ聴くなら「Anthology」で十分、という感じだが「The Works」はグループ名義の作品に絞り、彼らが全盛期に発表したアルバム5枚の全収録曲のうち実に8割を超える49曲を収録(再結成盤「Lost Without Your Love」からは4曲が選ばれている)。コストパフォーマンスを考え併せれば、ブレッドはこれさえ持っていれば他のCDは買う必要がないのではないかと。

ベスト盤だけ聴いていると彼らはデヴィッド・ゲイツ作の甘ったるいバラードばかりを歌うグループ、というイメージになってしまいがちだが、こうしてアルバム曲を織り交ぜて聴いてみると、当時のウェスト・コーストの雰囲気を色濃く作品に反映させた「ロックバンド」でもあったことがよくわかる。70年代前半を代表するソフト・ロックグループというだけでなく、西海岸ロックの流れの中にも位置づけて聴いてみる必要があるのだな、と、今更ながら認識した次第。

もう1つはクリス・レアがデビューから90年代末までの約20年間に発表した作品から54曲をセレクトした、彼にとって多分初めての3枚組ボックス。アメリカにおけるヒットは78年の「Fool」以降目立ったものがあまりないが、ヨーロッパで彼の人気は大変なもので、本国イギリスでは「80年代後半最も人気のあったシンガーソングライター」と呼ばれているほど。このボックスには20曲以上のUKヒットが収録されており、彼のヒットメーカーぶりがよくわかる内容に。

しかし、日本でクリス・レアといえば「On The Beach」だが、アメリカでチャートインすらしていないばかりか、イギリスでも大したヒットではなかった(86年57位、88年に再録音され最高12位)というのは意外。当時どんな情報の伝わり方をしていたのか・・。

何はともあれクリス・レアの【アダルト・ロック】を休日の午後から夕方にかけてたっぷりと楽しみたいような、そんな時のためCD棚に準備しておきたい一箱である。
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浜口庫之助メモリアルコレクション100 (King)

浜口庫之助メモリアルコレクション100

 昭和を代表するヒットメーカーの1人「ハマクラ」こと浜口庫之助が残した作品を発表順に100曲収録した4枚組ボックス。殆どのレコード会社が専属作家制をとっていた時代にいち早くフリー作家となり各社に作品を提供していたこともあって音源が方々に散っており、これまで何種類ものコンピレーションが発売されていたがようやく【決定版】といえるボックスの登場となった。

 あまりにも有名な「黄色いさくらんぼ」を発表した昭和34年の時点でハマクラ先生は既に40代だったそうで、随分と遅咲きの作家生活だった訳だが、ラテン・ミュージックの素養(彼は「アフロ・クバーノ」を率いて紅白歌合戦に出場した実績もある)を活かし60年代後半の数年間に次々と生み出したヒット曲は、それまでの歌謡曲にはなかったユニークなものばかり。またこのボックスにはCDの時代になって再注目されるようになった彼のラウンジ系録音や、数多いCM音源も収められており当時の八面六臂の活躍ぶりが一望出来る内容になっている。

 守屋浩、鈴木やすし、水原弘ら元ロカビリー歌手の再生から「恍惚のブルース」「夜霧よ今夜も有難う」といったムード歌謡、「夕陽が泣いている」「風が泣いている」のGS路線、「バラが咲いた」「花と小父さん」のフォーク、そして西郷輝彦、にしきのあきらの初期男性アイドル路線まで、彼は決してオリジネーターではなかったが、そのジャンルを確立させた大ヒットがずらり。

 個人的には「ヤクルト・ジョア」がツボ。当時をよく知る音楽ファンにも、若き昭和歌謡マニアにも、非常に耳に新鮮な作品集である。
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