2007年09月13日

Down Home aka The Coasters on Broadway - The Coasters (Varese Sarabande)
Sound of The City: New York Area Doo-Wop (1956-1966) (Time/Life)

Down Home aka The Coasters on Broadway - The Coasters Sound of The City: New York Area Doo-Wop (1956-1966)

 プロデューサー・コンビ、ジェリー・リーバーとマイク・ストーラーの制作のもと、1950年代〜60年代にかけてアトランティックレコードから数々のR&Rクラシックを生み出したR&Bボーカルグループ「コースターズ」。リーバー&ストーラーが自らのレーベル「レッド・バード/ブルー・キャット」設立のため独立した60年代前半以降はこれといったヒットを生むことが出来ず、結局アトランティックとの契約は66年に解除されてしまうが、折よく同じ頃リーバー&ストーラーもレッド・バード〜の契約が立ち行かなくなり(会社をマフィアに乗っ取られてしまったのだ)、外部プロデューサーとしての活動を再開するところで、両者は再び組んで翌67年にコロンビア傘下のレーベル「デイト」から何枚かのシングルをリリースすることになる。今回はこの時期の貴重な録音が初CD化。

D.W. Washburn - The Monkees ('68) 再会を果たした彼らはかつての成功の焼き直しを目指すのではなく、当時のアップ・トゥ・デイトなR&Bサウンドを意識したレコーディングを行ったようだ。結果生まれた作品はオールディーズ・ファンが抱く「コースターズ」のイメージとはかなりかけ離れたファンキーな作風になっており、正直いってあまり興味のそそられる内容ではない。唯一の例外がボードビル調のノスタルジックな小品「D.W. Washburn」で、この曲は翌年モンキーズに取り上げられ全米チャート19位まで上昇している。

 結局この時期リリースされた3枚のシングルはいずれも不発に終わり、コースターズの名が再び音楽シーンに浮上することはなかったが話はこれで終わらない。セッションから数年を経た1971年、R&Rリバイバルの風潮の盛り上がりを察知したリーバー&ストーラーは「デイト」時代の録音を未発表曲含めすべて買い戻し、何曲かの新録を追加してキング・レコードからアルバム「On Broadway」をリリース(これが今回のCDの内容)。「D.W. Washburn」を含む8曲に加えられた新録の方は、これまで一貫してR&Bサウンドとラテン・リズムの融合で新しいポップスを生み出してきた彼ららしく「サルサ・ン・R&B」風に仕上げられており、「Cool Jerk」「On Broadway」「The In Crowd」といった古典曲に新たな生命を与えている。また68年のセッションを再利用した「Love Potion Number Nine」は72年に入ってシングルチャートの76位にランクインを果たしており、一応の成果を残す形となった。

New York Area Doo-Wop ハードコアな音楽ファン限定ではあるが、リーバー&ストーラー研究家、そしてモンキーズ・マニアには大変気になるCDではないかと思う。そしてもう1組もドゥ・ワップもの。ドゥ・ワップといっても色々あるが、ここでは思い切り狭義に絞り込んでニューヨークで生まれた作品ばかりをコレクト。「ローカルな民俗芸能」としての側面にスポットを当てることで一つのムードを醸し出すことに成功している。

 3枚のCDに収録されているのは1956年から1960年代半ばにかけての59曲。ペンギンズ(彼らはロサンゼルス出身)の「Earth Angel」やファイヴ・サテンズ(コネチカット出身)の「In The Still of The Nite」などといった基本ナンバーは勿論収録されておらず、それらの曲の成功に触発されてブロンクスやブルックリンの街角で歌い始めた(中にはフォー・シーズンズのようにニュージャージーから出てくる若者も)イタリア系やユダヤ系、ギリシャ系(?)の白人青年たちによって結成されたグループ(一部人種混成もあり)の録音ばかりを集めている。いわゆる「ドゥ・ワップ・リバイバル(60年代に入るとドゥ・ワップはR&Bチャートではまったく相手にされず、ポップ・チャートでのみ人気を博すようになる)」期に発表されたドリーミーな作品が多くお馴染みのナンバーが大半を占めるが、見事なまでの「ホワイト・ドゥ・ワップ」オンパレードで、これだけの曲数が揃うとなんだか圧巻。

Dion & The Belmonts この世界の「王者」といえばなんといってもディオンとベルモンツで、彼らの代表的なヒット何曲かに加え、何故か今頃になって出てきたディオン1956年の初レコーディング「Rooftop Serenade」も収録!凄いね、ある意味エルヴィスの「My Happiness」みたいなものだから。マニアはこの1曲のために、このボックスを入手しないといけない・・。アセテート起こしで音はザラザラだが、既に彼らしい雰囲気を充分醸し出すバラードに仕上がっており、やはりこれは持っておかねば・・。

 一言でいえば「オールディーズの粋の粋」、中にはこういう音楽しか「オールディーズ」と認めないマニアすら存在するという超ハードコア、かつ超ポップな1箱。やはりこれは、持っておかねば・・。
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2007年09月10日

Somebody Stole My Thunder: Jazz-Soul Grooves 1967-1971 - Georgie Fame (Sony/BMG)
In The Mind of Jamie Cullum (Direct 6.)

Somebody Stole My Thunder: Jazz-Soul Grooves 1967-1971 - Georgie Fame In The Mind of Jamie Cullum

 ここ数年の我が国における再評価、というか初評価?の勢いがもの凄く「この人ってそこまで素晴らしいアーティストだったっけ?」と思えなくもないジョージィ・フェイム。彼は60年代〜70年代にかけていくつかのレーベルを渡り歩いていて、まずブレイクしたのが64〜66年の英コロンビア時代。「Yeh Yeh('64英1位/米21位)」をはじめとする一連の録音は「モッドジャズ」というか愛嬌のある白人R&Bで、そのB〜C級感は非常に好感が持てる。

The Best of Georgie Fame 1967-1971 今回届いたのはその後67〜71年にかけて在籍した英CBS時代のコンピレーション。この時期も日本では昨年紙ジャケ仕様でオリジナルアルバムの復刻が実現しているのだが、面倒くさがりな僕はベスト盤でザァっと聴ければいいや、とイギリスで出ていたコンピレーションで間に合わせることに。しかしこのベスト盤が、あまり面白くないのだ。当時の彼はMOR系のポップシンガーとしての成功を求めて(求められて)いたようで、シングルでリリースされた曲は中庸なポップ曲がほとんど。そんな中から風変わりな「The Ballad of Bonnie and Clyde('67英1位/米7位)」のようなヒットも生まれたりしたのだが、それ以前のR&Bサウンドを期待して聴くと随分と失望させられる出来の曲が多く、海外の評論を見ると「CBSに移籍した時点で彼の創造性は失われた。」なんてことが書いてあったりする。

Georgie Fame for Cafe Apres-midi で「いや、そんなことはない!」と編まれたのが今回の「Somebody Stole 〜」で、彼のJazz/R&B系の録音ばかりを厳選し、先のベスト盤とはケニー・ランキンの「Peaceful」他5〜6曲しかダブらないこだわりの全24曲を提示。これを聴くとCBS移籍後の彼が決して「魂を抜かれた」訳ではなかったことがわかり、彼のファンも一安心だろう。オルガン・ジャズ風の録音になっている曲が特によく、中でもラテン・ビートが効いている「El Pussy Cat」や自作の「Beware of The Dog」といったインスト・ナンバーは部屋のBGMとして何度も繰り返し聴きたくなってしまう。何年か前にコロンビア録音から選曲された日本編集盤「Cafe Apres-midi」の続編としても楽しめる内容。

Jamie Cullum もう1枚は、ある意味現代のジョージィ・フェイムと言ってもいいかもしれない(メチャクチャ異論ありそうっ!)ジェイミー・カラムが選曲したコンピレーション。昨年観た彼の来日公演(@ CLUB QUATTRO)は非常に楽しくて、そのショーマンシップとアイディアの豊富さ(披露される曲毎に演奏スタイルが変わると言ってもいいくらい)に感心させられ、ツアー先の世界各地で毎晩のように「伝説」を生み出していたであろう当時の(今も?)彼のステージを目の当たりにすることが出来て本当によかったなー、と思ったものだったし、彼が何者かよくわからないまま会場についてきた知り合いのジャズオヤジたち(50歳代)が、彼のステージングと、フロアの8割方を占める女性客のアヴェレージの高さ(本当に!)に大変感銘を受けていた様子も印象的であった。

Catching Tales - Jamie Cullum ('05) イギリスで最近設立されたらしいレーベル「Direct 6.」は様々なミュージシャンに自由に選曲させたコンピレーションをリリースしており、カラム編はその第3弾となる。テーマは「友人にミックステープを作ってあげるとしたらこんな感じ」だそうだが、初っ端からニーナ・シモンが陰鬱に歌うランディ・ニューマンの「I Think It's Going to Rain Today」である点で、このCDが「ちょっとしたパーティのBGM」として作られた訳ではないことがわかる。

 選曲はジャズを基調にヒップホップやアンビエント風、ブラジルのルイス・ボンファからドノヴァンまでと非常に幅広い。全体的にダウナー系の曲調が多く、2000年代に録音された作品も多いのだが、何故か醸し出される雰囲気は1990年代風。クラブでジャズが盛り上がっていた時代を思い起こさせる「懐か新しい」1枚である。このCDのためにカラム自身も新録2曲を提供しており、1曲は彼が敬愛するマーク・マーフィに続けてバップ風ボーカルを聴かせる「I'd Probably Do It Again」、もう1曲はスタンダードをアコースティック・スウィング調に料理した「After You've Gone」と、相変わらずの引き出しの多さを感じさせる。

 彼の音楽性は、決して「明るい」とはいえないこんなマニアックさに支えられているんだなー、ということが再確認できる意味でも興味深い1枚。熱心な彼のファンは、このCDを彼からの私信として受け止めるのかもしれない。
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2007年09月07日

Fania Signature Vol.II: Latin Soul (Fania)
Fania Signature Vol.III: Boogaloo (Fania)

Fania Signature Vol.II: Latin Soul Fania Signature Vol.III: Boogaloo

Signature Fania Vol.4: Hard Salsa Signature Fania Vol.1: Hot Salsa 昨年あたりから復活し、もの凄い勢いで過去の録音の復刻を続けているラテンの名レーベル「ファニア」から新しく届いたコンピレーション4種。僕は「サルサ」になるとそのコテコテさについていけないので「ホット・サルサ編」「ハード・サルサ編」はパス、それ以前の「ラテン・ソウル編」と「ブーガルー編」の2枚のみを入手した。

 まず「ラテン・ソウル編」は70年代当時の「ニュー・ソウル」などの影響を受けた怪しげなグルーヴが満載。他のコンピレーションで聴けるものも多いが、ずーっといい気分でかけっぱなしで聴けるという意味でも、クラブユース的にも(って僕はDJをやってる訳じゃないけど)非常に使える1枚。対する「ブーガルー編」は、収録されている14曲すべてのタイトルか歌詞に必ず「ブーガルー」が登場するというこだわりの選曲。でも結構のんびりした曲調のものが多く、60年代特有のクールさが楽しめる曲は少なめなので、選曲的に“策に溺れた”感なきにしもあらず。値段は手軽なので、気軽に入手して聴き流せるタイプのコンピレーション。
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2007年09月04日

The Complete Motown Singles Vol.7: 1967 (Motown/Hip-O Select)
The Singles Volume Three: 1964-1965 - Jame Brown (Polydor/Hip-O Select)

The Complete Motown Singles Vol.7: 1967 The Singles Volume Three: 1964-1965 - Jame Brown

 以前はサイトから直接購入する形でしか入手できなかった「Hip-O Select」のCDだが、最近はリリースからしばらくすると様々な通販サイトでも取り扱われるようになってきていて、送料やポイントなどを考えると物によっては国内のサイトで購入した方が安く済むケースも出てきた。

 モータウンのシングルを片っ端からCD化していく大型企画「The Complete Motown Singles」もようやく後半戦に突入して数えること第7集。1966〜67年はモータウン・サウンドの「完成期」で、どのシングルも破綻のない演奏で見事に仕上げられている。この時期のモータウンの勢いは驚異的で、ほとんどのシングルがヒットチャート入りを果たしているが、中には珍しいものもあり、謎の多いスタジオ・グループ「サン・レモ・ゴールデン・ストリングス」の「Festival Time」や70年代に「気になるあの娘」のヒットを放つメッセンジャーズの「Window Shopping(バブルガム調でかなりいい感じ)」、後にヒットバージョンが生まれる「For Once in My Life」「Chained」「That's The Way Love Is」などの初期録音が興味深い。

The Complete Motown Singles Vol.1: 1959-61 The Complete Motown Singles Vol.2: 1962 The Complete Motown Singles Vol.3: 1963
The Complete Motown Singles Vol.4: 1964 The Complete Motown Singles Vol.5: 1965 The Complete Motown Singles Vol.6: 1966


 どんなものも絶頂期を過ぎると変化を余儀なくされ、68年以降モータウンは「サイケデリック・ソウル」路線まっしぐらとなっていくのだが、その直前の一番おいしいところ、このシリーズのコンプリートを考えていない人でもこれと66年のボックスは持っていた方がいいと思う。

The Singles Vol.2: 1960-1963 - James Brown The Singles: The Federal Years 1956-1960 - James Brown もう一組ジェイムス・ブラウンはシングル・コレクション第3集。初期の録音はまだ純然たる「R&B」で、僕も1、2集は入手をパスしたのだが、彼の音楽はここら辺から面白みが俄然増してくる。この時期のブラウンは所属していたレーベル、キングと係争中で、様々なレーベルから「ナット・ケンドリックスとスワンズ」など変名でシングルを出したりもしていたのだが、そこら辺の収録はなくキングとスマッシュへの録音のみに限られている。

 彼が遺した録音は、一般にできるだけ長く演奏されて未編集のものが重宝される傾向があるのだが、シングル・バージョンならではの楽しみ方もここにはある。マイナーヒットの中にはこれまでCD化が実現していなかったものもあるし、ヒットに至らなかったものでもこれまで聴いていたバージョンとは随分曲の構成が違っていたり、怪しげなライブ・バージョンになっていたり。様々な実験の末ようやく完成させた「Papa's Got A Brand New Bag」と「I Got You (I Feel Good)」でいよいよ「ソウル・ブラザー・ナンバー1」へと伸し上がる彼の試行錯誤の記録がここではたっぷりと味わえる。この「The Singles」シリーズ、ここから先がめちゃくちゃ楽しくなっていくのだ・・。
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