2007年02月25日

Sweet Talkin' Girls: The Best of The Chiffons (Stateside/EMI)
Hello Stranger/Workin' on The Groovy Thing - Barbara Lewis (Collectables)
The Uplook Records Story: Vintage Soul from Philadelphia (Grapevine)

Sweet Talkin' Girls: The Best of The Chiffons Hello Stranger/Workin' on The Groovy Thing - Barbara Lewis Gene Lawson presents The Uplook Records Story: Vintage Soul from Philadelphia

 「一番好きなガール・グループは何?」と訊かれたら、僕は迷わず「シフォンズ。」と答える。実際にそんな質問されたことはないけど。マージー・ビートだったらサーチャーズ、ガール・グループならシフォンズ。これは譲れない。彼女たちのCDは何年かおきにポツポツとリリースされているのだが、今回はその決定版といえる内容のCDが発売された。

He's So Fine - The Chiffons ('63) シングル数枚で姿を消したグループが多い中、シフォンズは60年代を通じてコンスタントにシングルをリリースし続けており、その数は20枚を超える。「Sweet Talkin' Girls」は彼女たちがローリー、B.T.パピー、ブッダからリリースしたすべてのシングル音源と、アルバムからのピックアップを全50曲収めたボリューム盤で、彼女たちの活躍のほぼすべてを聴くことが出来る。シフォンズのレコードを制作したのは、人気アーティストであると同時にトップ・プロデューサーでもあったトーケンズで、彼らの指導のもと放ったナンバー1ヒット「He's So Fine(イカシタ彼)」、キャロル・キングが作ったもののどのようなアレンジでレコーディングすればいいかわからず、仲間のトーケンズに「あげて」しまったという「One Fine Day」、この2曲だけでもロック史に名を残すに相応しい業績といえるのだが、彼女たちの魅力はガール・グループ全盛期を過ぎた60年代半ば〜後半の作品でも存分に味わうことが出来る。

 ビートルズらの活躍によりあらかたのガール・グループがヒットチャートから駆逐されてしまった1965年、シフォンズは他のどのメジャーアーティストよりも早く“サイケデリック・サウンド”を取り入れた「Nobody Knows What's Going on (in My Mind But Me)」を発表、ここからが僕が本当に好きなシフォンズの始まり。翌66年に全米TOP10に返り咲いた「Sweet Talkin' Guy」はもはや“ソフト・ロック”といってよく、同系統の「Out of This World」、モータウン・ビートに挑戦した「Stop, Look and Listen」、いつか何処かの女性バンドがカバーしてくれないかと密かに願い続けている「Keep The Boy Happy」・・・どれも素晴らしすぎる。勿論「フォー・ペニーズ」名義で発表したガール・グループ・クラシック「When The Boy's Happy (The Girl's Happy Too)」も入っているし、1970年にリリースされた超レアなアルバム「My Secret Love」からの曲も収録。「He's So Fine」を元に作られたといわれる「My Sweet Lord」を彼女たちが75年に録音したバージョンも、勿論入ってます。

 全曲通して聴いてみて、僕はリード・シンガーのジュディ・クレイグのボーカルが好きなんだなー、と改めて思った。これ以上の内容のポップス集はそうそうないので、代表的な何曲かでしか彼女たちを知らない方は、是非ともこのCDの入手を。

 続いてはバーバラ・ルイス。「Hello Stranger('63米3位)」「Baby I'm Yours('65米11位)」といったヒットで知られる彼女も、60年代から70年代まで息長く活躍を続けたシンガー。彼女のベスト盤はこれまでに何種類も出ているが、今回は63年のデビュー・アルバムと68年の5作目がカップリングでCD化された。「Hello Stranger」は彼女の初期のシングル作品を集めた趣のアルバムで、全曲彼女の自作という点が凄い。才能のある人だったんだね。サウンドは“アーリーソウル”風で「Hello Stranger」のスイートさを味わえる曲は少な目。

 注目は「Workin' on A Groovy Thing」の方で、タイトル曲は数年後にフィフスディメンションが大ヒットさせるあの曲(この当時はパティ・ドリューがマイナー・ヒットさせている)。ヒット曲ではスペクター・サウンド風の「Make Me Your Baby('65米11位)」、「Make Me Belong to You('66米28位)」、「Baby, What Do You Want Me to Do(同66位)」、「I'll Make Him Love Me('67米72位)」どれも非常にスイートでいい雰囲気。ヒットは逃したが「I Remember The Feeling」や「Thankful」もノーザン・ビートが非常に心地いいし、「Love Makes The World Go 'Round」のカバーもいい。

 いうなれば「オトメ系ソウル」か?彼女の残りのアルバムのCD化も希望したいし、この手の女性シンガーものをしばらく熱心に探してみたくなった。最後はまた買ってしまったフィリーもの。ノーザン・ソウル系の音源をもの凄い勢いで復刻しているグレイプヴァインから最近発売されたのが「アップルック」なるフィラデルフィアのレーベルの作品集。このCDの目玉はごく初期のテディ・ペンダーグラスの作品(68年録音で当時は未発表)が3曲聴けるところで、70年代の重厚さはまだないが「Should I Go or Should I Stay」で必至に声を張り上げる若々しさには好感が持てる。他には12歳の天才少年リトル・トニー・タレントや、70年代に入ってサウンドにファンキーさが増した何曲かの録音が気に入った。あちらではノーザン・ソウルのクラシックと見なされているらしい「I'll Come Running Back」はデリゲイツ・オブ・ソウルとチャールズ・ミンツのバージョンにインスト版など合わせて5バージョンを収録。そんなに人気のある曲なんだ。
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2007年02月18日

Rockin' at The Hop - Nick Todd (Hydra)
Sisters - Rosemary & Betty Clooney (Sepia)

Rockin' at The Hop - Nick Todd Sisters - Rosemary & Betty Clooney

 一時期「日本の洋楽チャート」を執拗に調べていたことがあって。50〜60年代のラジオ・チャートやセールス・チャートの記録をあれこれ調べてメルマガに書いたりしていたのだが(当時書いた文章はサイトにまとめてあるので、興味のある方はご覧になってみてください)、そんな中でなかなか原題がわからず調べるのに苦労した思い出のある2曲が海外でCD化されていたのでご紹介。

踊りにいこうよ/ニック・トッド('58) 先日とある音楽系のイベントに出かけたら、そこでベテランのオールディーズ・ファンの方から「我々の世代では『At The Hop(踊りにいこうよ)』っていうとダニーとジュニアズじゃなくてニック・トッドなんだよねー。」という話を伺った。確かに当時の「ユアー・ヒット・パレード」などの記録を見るとニック・トッド盤のヒットが確認出来、アメリカでナンバー1を記録したダニー&ザ・ジュニアズの名前を見つけることは出来ない。カタログを調べるとトッド盤の本邦リリースは1958年3月、対してジュニアズ盤はABCパラマウントの第1回発売分としてポール・アンカの「ダイアナ」や「君はわが運命」とともに同年5月に発売されているので、この2ヶ月の差が我が国に於ける人気の差になったということなのか。

 で、ニック・トッド、パット・ブーンの実弟。超有名な兄の成功を横目に、出身地ナッシュビルのレコード会社の誘いに応じて1955年にデビューを決心した彼は“兄の七光り”の恩恵に浴することを嫌って名前を「ニック・ディーン」と改めシングル「High School Baby」をリリース。パットの初ヒット「Two Hearts」によく似た曲調だったがこれは大した話題にならず、続いて選択した道は兄と同じドット・レコードからの再デビューだった。彼はここでも本名の「ニック・ブーン」を名乗ることを避け、レーベル名を逆さにした「ニック・トッド」をアーティスト名に。第1弾としてリリースした「Plaything」はTOP40一歩手前('57米41位)のヒットとなり、続いてのシングルが「At The Hop」であった。

Do The Bop - Johnny Madara with Danny & The Juniors 「At The Hop」はフィラデルフィアのボーカルグループ、ジュヴェネアーズ(その後ダニーとジュニアズに改名)のメンバーだったデヴィッド・ホワイトと、地元のソングライター、ジョン・マダラの出逢いから生まれたナンバー。元々は「Do The Bop」というタイトルだったそうだが、これを人気DJのディック・クラークに聴かせたところ「“Bop”は古臭いから“Hop”に変えて作り直せ。」と指示を受けてこの形に。なお余談だが当時陽の目を見ることがなかったこのオリジナル版「Do The Bop」は最近になってCD化され、現在ジョン・マダラが運営するサイトで購入することが出来る。

 トッドが「At The Hop」を録音することになった理由は、ドット・レコードがジュニアズの音源を売り込まれた際にこの配給を断っていたからなのだそうで、その後他社からリリースが決まったことに焦り対抗盤を急遽制作した、というのが真相なのだとか。トッド盤は最高21位まで上昇するまずまずのヒットになったが、全米チャートのトップを1ヶ月以上独走したオリジナルには到底敵わず。日本という例外を除けばドットの奇策は大した成果を生まずに終わった。その後彼はチャートに再登場することなく「パット・ブーンの弟で一発屋」という有り難くない肩書きとともにその後の人生を歩むことになるが、日本ではあと1曲洋楽チャートに登場した曲があり、それがこのCDを購入するきっかけとなった「ティーンエイジ美人」だった。

 原題を「Teenage Cutie」というこの曲はエディ・コクランも録音したというR&Rナンバーだが、トッドは声質こそ兄に似てはいるがそれほど魅力的なシンガーではないため、余り特長のない出来になってしまっている。この“才能に欠ける弟”の扱いにはドットも苦心したようで、その後彼には「ブルー・レディに赤いバラ」のようなMORバラードが与えられたり、時には当時人気絶頂だったアイドル、フェビアンと張り合わせて「タイガー・ロック」の競作盤をぶつけてみたり・・とかなりの迷走状態。ドット・レコードにおける彼のレコーディングすべて(多分)を収めたこのCDは、全体通して決して一級のオールディーズではないが、50年代ポップスの典型として、そして“パット・ブーンの弟”という点でも興味がそそられる1枚にはなっている。彼の「ティーンエイジ美人」が聴けるのは現状これだけなので、こんな曲を探している人が他にいるかどうかわからないが、一応ご報告を。

Rosemary & Betty Clooney もう1枚はローズマリー&ベティのクルーニー姉妹。2人は第2次大戦中に人気を博したトニー・パスター楽団の看板シンガーとして活躍したが、50年代に入るとローズマリーは独立して大スターに。妹の方もソロとして何枚かのレコードを録音したが、ヒットチャートに登場したのは姉妹デュオが実現したその名も「Sisters('54米30位)」のみで、その後は姉のTVショーにゲスト出演したりと、これまた“七光り系”な活動を展開した。我が国では1955年に彼女が録音した「Kiki(お転婆キキ)」という曲が翌年洋楽チャートにランクインしていて、以前から随分気になっていたのだが、偶然見かけたこのCDに収録されていることを知り早速購入。

 CDが届いて早速件の「お転婆キキ」を聴いてみて驚いたが、この曲のメロディは56年にアメリカでヒットしたインスト・ナンバー「Portuguese Washerwomen(ポルトガルの洗濯女)」とまったく同じ。正確にいえばこの曲はアンドレ・ポップ作のシャンソンなので、むしろその英語カバーと書くべきなのだろうけれども、どうしても自分にとっては「〜洗濯女」の歌あり版、という印象が強い。ネットで調べたらこの年江利チエミがこの曲のカバー盤を出していて、紅白歌合戦でも披露したそうなので、そのヒットにつられての洋楽チャート登場だったのだろう。

 このCDはベティの貴重なソロ録音13曲にローズマリーのレア録音数曲、そして彼女が55年に行ったイギリス公演の模様と有り難いことにヒット曲「Sisters」までを収録した重宝盤。姉同様ベティも「〜キキ」のような3枚目路線からしっとりとしたバラードまで上手く歌いこなすシンガーであったことを知ることが出来、なんだか嬉しい。「日本のみヒット」調査は、今後も執念深く続けていくことにしよう。
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2007年02月16日

Tony Hazzard Sings Tony Hazzard (Rev-Ola)
Measure of Pleasure - P.F. Sloan (Collectors' Choice Music)

Tony Hazzard Sings Tony Hazzard Measure of Pleasure - P.F. Sloan

 ソングライターものを2種。60年代後半のイギリスでヒット曲を連発したソングライター、トニー・ハザードが69年にリリースしたファースト・アルバムがイギリスでCD化。彼がどのような曲を作ったかについては、このCDの収録曲を説明するのが一番だろう。

The Graham Gouldman Thing ('68) このアルバムに収録されている12曲(CDは4曲ボーナス追加)のうち、ハザードが他のアーティストに提供しヒットを記録したのはホリーズの「Listen to Me('68英11位)」、ルルの「Me, The Peaceful Heart(同9位)」、マンフレッド・マンの「Ha! Ha! Said The Crown('67英4位)」と「Fox on The Run('68英5位)」、トレメローズの「Hello World('69英14位)」、そしてハーマンズ・ハーミッツの「You Won't Be Leaving('66英20位)」の6曲。どれもあの時代の雰囲気を今に伝える佳曲ばかりだが、ハザードはこれらを比較的オリジナルに忠実に再現している。このアルバムの雰囲気が何に近いかというと、やはり当時人気ソングライターだったグレアム・グールドマンが自作曲ばかりを歌った68年の「The Graham Gouldman Thing」になるだろう。ただしハザードの方はあのアルバムほど陰がある訳ではなく、かなり明朗な印象だが。

Go North: The Bronze Anthology - Tony Hazzard ('05) こう感じるのは僕だけなのかも知れないが、ハザードの歌声はどことなくムーディ・ブルースのジャスティン・ヘイワードに似通ったところがあり、そこは好き嫌いが分かれるかも知れない(僕は好き)。彼はこのアルバム発表後71年に「Loudwater House」を、73年に「Was That Alright Then?」をリリースしており、それらを含めたブロンズ・レーベル音源は数年前に2枚組CDにまとめられている。スティール・ギターの多用など幾分カントリー色が強くはなっているが、曲のポップさは健在なので機会があったらこちらも是非チェックを。「Sings Tony Hazzard」に関しては、この時代のポップ職人ものの一つとして今後必聴アルバムとされることになると思う。トニー・マコウレイやジョン・カーターらの名前が気になってついCDを購入してしまうようなタイプの音楽ファンであれば、間違いなく気に入るポップス集。

 もう1枚は昨年久々のオリジナル・アルバムをリリースしたP.F.スローンが、1968年にアトコから発表していたアルバム「Measure of Pleasure」。彼といえばなんといってもダンヒル時代で、このアルバムの存在など僕は全く知らなかったが、同社を離れロサンゼルスからニューヨークに渡った彼がプロデューサー/エンジニアのトム・ダウドとコンタクトをとり、制作したものがこれなのだという。サウンドはかつてのきらびやかなフォークロック調から幾分ブルージーになり、かつてのキャッチーさは薄れた感じ。このアルバム・リリースに際してダンヒルはまだスローンとの契約が残っていると主張し、アトコに対し告訴も辞さないとクレームをつけてきたためレーベルは及び腰となり、結果アルバムは大した枚数出回らないまま市場から消えてしまったそうだが、その事情を抜きにしても当時売れたかどうかはやや疑問な地味さ(制作中のテープをダウドに聴かされたスティーブ・クロッパーは、その出来を“四文字言葉”で評したという)ばかりが印象に残る。

Anthology - P.F. Sloan ('93) 曲によってはかなりタイトな演奏を聴かせているので、ティム・ハーディンなどブルースを基調にしたフォーク系のアーティストを好むのであれば、聴いてみて損した気分にはならないアルバムではないだろうか。いわゆる「ダンヒル・サウンド」を期待するのであれば、これよりも廃盤になって久しいダンヒル時代のアルバム復刻をひたすら願った方がいいだろう。日本のレコード会社とか、そろそろ「ダンヒル紙ジャケット・コレクション」なんて企画してもらえないものでしょうかね?
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2007年02月12日

Crown Years 1974-1977 - Harry Hosono (Nippon Crown)

Crown Years 1974-1977 - Harry Hosono

 昨年観たライブの中でも特に印象深かった1つ「フリッツ・リッチモンド・トリビュート・コンサート」で、元ラヴィン・スプーンフルのジョン・セバスチャンがサプライズ・ゲストとして細野晴臣を呼び込んだ時に披露したエピソード。セバスチャンが前回来日したのは1977年の「ローリング・ココナッツ・レビュー」で、その時関係者から手渡された細野の作品テープをたいそう気に入り仲間内に聴かせたりもしていたそうなのだが、そのうちテープが聴けない状態に。20数年ぶりに来日した今回、東京で最初にしたのは最寄りのタワー・レコードに駆け込んで「ハリー細野のCDは置いてるか?」と店員に訊いたことだったという。

ハリー細野 クラウン・イヤーズ 1974-1977/細野晴臣 細野がYMOを結成する以前の1974〜1977年に、ティン・パン・アレイとしての活動の傍らクラウン・レコードから発表したソロ作品を集めたボックスセットがリリースされた。内容は75年の「トロピカル・ダンディー」と76年の「泰安洋行」にシングル音源を追加、そしてこれまで未発表だった76年の横浜中華街に於けるライブとその模様などを収録したDVDの全4枚。この時期の彼は「トロピカル3部作(あと1作は78年にアルファから発表した「はらいそ」)」と呼ばれるエキゾチックな作風のアルバムを次々と制作しており、後の「テクノ・ポップ」路線を考えると随分と異色な印象を受けるが、当時の海外の動き、ニューオリンズの音楽シーンの盛り上がり(とりわけアラン・トゥーサンの活躍)や親交のあったヴァン・ダイク・パークスの活動、ジミー・バフェットの成功などを考え合わせると、こういう変わったことを考える日本人が出たとしても不思議ではなかったのかも知れない。

トロピカル・ダンディー('75) 「トロピカル3部作」の第1弾「トロピカル・ダンディ」はアナログ盤のA面がトロピカル路線、B面は過去に作った曲や映画「宵待草」サントラ用に作った音源を集めたものと、やや変則的な構成。細野が提唱するところの「チャンキー・ミュージック」の試作盤といった趣か。「絹街道」「北京Duck」とオリエンタルな雰囲気の曲が2曲入っているので、当時はまだ彼の意図したところが聴き手には正確に伝わらなかったのでは?とも思う。「ハリケーン・ドロシー」の出来が突出していて、この曲の醸し出す雰囲気が次作では全面的に展開される。B面の方は、まぁ、まぁ、といった感じ。作風は彼のファースト「HOSONO HOUSE」に通じるものがあり、むしろこちらの方が当時のファンには好評だったという話もあるそうだが。細野のボーカル・バージョンとインスト・バージョン、そしてボーナスとしても追加され合計4バージョンが聴ける「漂流記」は、ヴァン・ダイク調のメロディとアレンジに、突然ブルース・ハーク風のフレーズが登場するボーナス・トラックにビックリした。

泰安洋行('76) 続く「泰安洋行」は“キング・オブ・エキゾチック・サウンド”マーティン・デニーの影響が色濃く現れた内容。マーティン・デニーの音楽が日本で一般に知られるようになるのはCDの時代になってからだと思うので、当時どれだけのリスナーが細野の真意を汲むことが出来たのかは疑問だが、彼は単純な「エキゾチカ」だけでなくそれにニューオリンズのリズムやカリプソ、沖縄風の音階まで取り入れて独特な「チャンキー・ミュージック」を完成させている。ボーナスには前作からカットされた「北京Duck」のシングル・バージョンと、当時人気のあったラジオ番組「馬場こずえの深夜営業」出演時の音源を追加。

ハリー細野 & TIN PAN ALLEY IN CHINATOWN ('76) で、今回のボックスの本当の目玉はここから。3枚目のCDは「泰安洋行」リリースに先立って業界向けに「ハリー細野&ティン・パン・アレイ」名義で披露されたコンヴェンション・ライブ(ディナー・ショー形式)の模様を完全収録したライブ盤で、いわば細野流「チャンキー・ミュージック」完成のお披露目式。いきなりあがた森魚と録音したエルヴィスの「Don't Be Cruel」のカバー「つめたく冷やして」で始まるなんて人を喰った展開に驚くが、その後はお馴染みのチャンキー・ナンバーが続く。こんな難易度の高い音楽をライブで再現してしまうバンドの力量は凄いし、MCでメチャクチャ緊張している細野の「シャイネス・ボーイ」ぶりも今となっては微笑ましい。後にYMOで再演するマーティン・デニーの「ファイアークラッカー」を演奏しているのは、この日のライブに坂本龍一が参加していることを考え合わせるとかなり興味深い。更にオマケのDVDにはこのライブの一部を収録したドキュメンタリー(以前TVでほんのちょっとだけ観たことがあって、いずれ全編観たいとずーっと思っていた映像)に、ギターの鈴木茂がリーダーを務め行ったセッション・リハーサルの模様などが。数年前鈴木茂の「バンドワゴン」がリマスターされた時、新宿の「ロフト・プラスワン」で彼のイベントがあり、そこではこの映像が流されたのだが、本人も含め皆で大笑いした“超感じの悪いシゲル君”(ピアノのボリュームを下げるよう指示された矢野顕子がムッとしている様子が映っていたりする)の奮闘ぶりが、これでご家庭でも楽しめることに(笑)。

 冒頭のエピソードを蒸し返すが、このボックスセット、ジョン・セバスチャンには送るようなことはせず(当然もう送っちゃってるだろうけど)またすぐさま来日してもらって「ハリーのボックスが出たって本当か?」とタワー・レコードに駆け込んでもらいたいところ。YMOの再結成などは個人的に全く興味がないが、もしこの時期のサウンドを再現するライブが実現するのであれば、是非とも会場に駆けつけたい(フルコース付きでなくていいので)、そんな気にさせられる一箱であった。
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2007年02月11日

Memories Are Made of This: Hits of '56 (Living Era)
Hard to Find Jukebox Classics 1956 (Hit Parade)
The Complete Original Hits of Georgia Gibbs (Hit Parade)

Memories Are Made of This: Hits of '56 Hard to Find Jukebox Classics 1956 The Complete Original Hits of Georgia Gibbs

 今回はまず普段とはちょっと趣向を変えて“買わなかったCD”のご紹介。英Living Eraが毎年年始挨拶替わりにリリースする年別ヒット曲集「Hits of 〜」シリーズの1956年版が今年も登場。全30曲のうち英米でナンバー1ヒットを記録した曲を日付順に列記すると

Dean Martin - Memories are Made Of This (US/UK)
The Platters - The Great Pretender (US)
Kay Starr with the Hugo Winterhalter Orchestra - Rock And Roll Waltz (US/UK)
Nelson Riddle - Lisbon Antigua (US)
Winifred Atwell - The Poor People Of Paris (UK)
Elvis Presley - Heartbreak Hotel (US)
Ronnie Hilton - No Other Love (UK)
Perry Como - Hot Diggity (US)
Morris Stoloff conducting The Columbia Pictures Orchestra - Moonglow and Theme from "Picnic" (US)
Pat Boone - I'll Be Home (UK)
Gogi Grant - The Wayward Wind (US)
Frankie Lymon & The Teenagers - Why Do Fools Fall in Love (UK)
Pat Boone - I Almost Lost My Mind (US)
The Platters - My Prayer (US)
Doris Day - Que Sera, Sera (Whatever Will Be, Will Be) (UK)
Elvis Presley - Don't Be Cruel (US)
Frankie Laine - A Woman In Love (UK)
Jim Lowe - The Green Door (US)
Johnnie Ray - Just Walkin' In The Rain (UK)
Guy Mitchell - Singing The Blues (US)

 と実に20曲。残る10曲も殆どがTOP5入りを果たしたものばかりで、この年のヒット状況を知るには非常に便利なCD。しかし、ここら辺の曲ってどれも既に持ってるよね。R&Rの時代に入ってからのヒット曲は、メジャーどころは殆どCD化が済んでおり、今更この手のCDには手が伸び辛い。勿論これからこの時代の音楽を聴いてみよう、という音楽ファンには有用な1枚だとは思うが。で、そんな擦れっ枯らしなオールディーズ・ファンだったら何を買うかというと、以前も紹介したことがあるレーベル「ヒット・パレード」が先日リリースした「なかなか見つからない1956年のヒット曲集」の方。

 以前「ヒット・パレード」のCDを紹介した時にも書いたが、ヒットチャート・マニアにとって1955〜56年あたりのポピュラー系ヒットの収集は長年の頭痛のタネで、僕の知る限りでもここら辺のCD化を待ち望んでいるコレクターは結構な人数存在する。今回届いたCDの中で、アメリカでは初のCD化が謳われているのは(括弧内は最高位)

Somethin' Smith & The Redheads - In A Shanty in Old Shanty Town (#27)
The Highlights - The City of Angels (#19)
Tony Bennett - From The Candy Store in The Corner to The Chapel on The Hill (#11)
The Owen Bradley Quintet - White Silver Sands (#18)
Russell Arms - Cinco Robels (Five Oaks) (#22)
Fess Parker - Wringle Wrangle (#12)
Dorothy Collins - My Boy - Flat Top (#16)

 の7曲。素晴らしい。大プロデューサー、オウェン・ブラッドリーが本業の傍らリリースしたインスト曲とか、「デイヴィ・クロケット」のフェス・パーカーがドラマとは関係なく放ったヒットとか、殆どの音楽ファンにとっては何の価値も見出せないようなポップ・ヒットばかり。大変素晴らしい。他に個人的に初めて聴いた曲としては

Don Rondo - Two Different World (#11)
Tony Bennett - Can You Find It in Your Heart? (#16)
Jerry Lewis - Rock-A-Bye Your Baby with A Dixie Melody (#10)

 あたりが入手出来たのも嬉しい。ドン・ロンドが朗々と唱い上げる「Two Different World」は大好きなタイプのメロディだし、トニー・ベネットはシングルヒットのCD化が進まないアーティストの代表的存在で、この2曲がCDで聴けただけでも有り難いが、いっそのこと彼のシングルス・コレクションなどもいずれ企画してもらえると本当に嬉しいのだが。ゲイリー・ルイスの父(という書き方をした方が近年は通じ易い)ジェリーの「Rock-A-By 〜」は一時期入手が困難で、探すのをあきらめていたのでこんな形で手に入ったのもこれまた嬉しい。ゲイリー・ルイスが何故あんなバカっぽい歌い方をするかは、この曲の父の芸風を聴いてみるとよく解る。

The Best of Georgia Gibbs: The Mercury Years ('96) もう1枚「ヒット・パレード」からリリースされたのは、R&R以前のポピュラー音楽愛好家にはお馴染み、ジージア・ギブスのベスト盤。彼女のベスト盤としては以前マーキュリー時代のヒットの大半を収めたCDが出ていたが、あれもクレジットを見ると今から10年も前のリリース。今回はあれを踏襲しつつ、更にそこから漏れたヒットを補完する内容となっている。実は昨年Living Eraからも1955年までの彼女の録音を集めたCDが出ており、そのお陰で初CD化が謳える曲は大分減ってしまったが、あちらはちょっと中途半端な内容だったので(買わなくてよかった!)マーキュリー盤をお持ちの方も、音質が向上したこちらの入手をお勧めしたい。

 今回のCDのポイントはまず彼女がマーキュリー以前に放ったヒット3曲「If I Knew You Were Comin' I'd've Baked A Cake('50米5位)」「Play A Simple Melody(同25位)」「I Still Feel The Same About You('51米18位)」の収録。ビング・クロビーが息子のゲイリーとデュエットで歌った「Play A Simple Melody」を、ビングの弟ボブがジョージア・ギブスと歌っていたのは初めて知ったが、こちらもなかなか楽しい仕上がり。他にはマーキュリー盤から漏れた「Good Morning Mr. Echo('51米21位)」の収録も有り難い。参考までに書いておくと、彼女はキャリアを通じて26曲ものTOP40ヒットを放っており、今回のCDに収録されている23曲(うち21曲がチャートヒット)では到底カバーしきれず、実際には「Complete」のタイトルは正しくない。マーキュリー盤と合わせてようやく主要ヒットは揃うので、くれぐれも古いCDを売ってしまわないようご注意。

 R&R時代に入ってからのヒットでは「Rock Right('56米36位)」「Tra La La(同24位)」そして当時日本でもよく聴かれたという「The Hula Hoop Song('58米32位)」の収録が目新しい。勿論超有名な「Kiss of Fire」「Dance with Me Henry」「Tweedle Dee」なども収録、古き佳きポピュラー音楽の雰囲気に浸れる結構な1枚である。
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2007年02月10日

Dionne Warwick in Paris (Colloctors' Choice Music)
On Stage and in The Movies - Dionne Warwick (Collectors' Choice Music)
The Magic of Believing - Dionne Warwick (Collectors' Choice Music)

Dionne Warwick in Paris On Stage and in The Movies - Dionne Warwick The Magic of Believing - Dionne Warwick

 2年ほど前のライノ・ハンドメイドによる怒濤の復刻ラッシュで一応の形がついたかに思われたディオンヌ・ワーウィックのオリジナル・アルバムCD化。しかし人気アーティストだけあってまだまだ漏れがあるようで、このところニッチ狙いの復刻が目立ち過ぎ、志が高いのか高くないのかよくわからなくなっているコレクターズ・チョイスがカタログの隙間をぬい、残るアルバムのCD化を実現させてしまった。

 全盛期の彼女は年に3枚ペースでアルバムをリリースしており、そのリリース・スケジュールには師匠のバート・バカラックもさすがに曲の提供が追いつかなかったようで、時折バカラック・ナンバーから離れた企画ものアルバムがその穴を埋めている。今回リリースされたのはその中の3種で、まず「Dionne Warwick in Paris('66米76位)」はその名の通りパリのオリンピア劇場に於ける実況録音盤。

 1950年代後半〜60年代前半にかけてバカラックがマレーネ・ディートリッヒツアー・コンダクターを務めていたのは有名な話で、彼は随分早い時期から子飼いのディオンヌを欧州に連れて行き、ディートリッヒのステージの一幕で歌わせていたのだという。そういった経緯もあり彼女にとって初のライブアルバムの録音地がパリになったのはそう不自然なことではなく、まだ当時ヨーロッパのエンターテインメントへのコンプレックスが残っていた(と思われる)アメリカ市場に「パリの聴衆が彼女を認めた!」というアピールが出来る点でも、このアルバムの制作は意味があったのではないかと思う。ここで彼女が披露しているのは「I Love Paris」「C'est Si Bon」「La Vie En Rose」といった如何にもフランス向けに選曲されたナンバーと、お馴染みのバカラック・ナンバー4曲(うち「A House Is Not A Home」と「You'll Never Get to Heaven」はフランス語で歌われている)。客の拍手が妙に不自然なので一部疑似の部分があるのかも知れないが、彼女の歌はライブと思えないほど安定しており、その実力のほどが窺える内容になっている。1曲フランスのスターで当時バカラック・ナンバーを積極的に取り上げていたサッチャ・ディステル(ペトゥラ・クラークのフランス語仕事の相方としても知られる)も登場しデュエットを披露するサービスあり。

 バカラック制作による一連のオリジナル・アルバムと比較してどうという内容のアルバムではないが、まずまず楽しめる1枚。続いてはカバー集「On Stage 〜('67米169位)」、こちらはステージ・ナンバーや映画のサントラ曲を11曲集めたもの。ロジャース&ハーマスタイン、ガーシュウィン、バーリンといった30〜40年代製のスタンダードと、60年代になって生まれたステージ・ナンバーが半々といった構成になっており、時代性を考えると、アレンジの違いもあるが後者の録音「One Hand, One Heart(ウエストサイド物語)」「I Believe in You(努力しないで出世する方法)」「Bubbles, Bangles & Beads(キスメット)」などの方が活き活きと歌っている印象を受ける。映画「アニーよ銃をとれ」からの「Anything You Can Do」で聴けるレーベルメイト、チャック・ジャクソンとのデュエットはちょっとしたサプライズで、なかなかの相性の良さを見せている。

 彼女は翌68年にアルバム収録曲のバカラック作品比率を下げた「Valley of The Dolls」を発表し、それまでのキャリアで最大のヒット(米6位)を記録するが、当アルバムはその前哨戦、という見方が出来るかも知れない。最後「The Magic of 〜」は彼女のキャリアのルーツであるゴスペルに焦点を当てたもの。ドリンカード・シンガーズというグループ(後にスタックスからヒットを飛ばすジュディ・クレイが在籍していたそうだ)がバックを務めたこのアルバムにはよく知られたナンバーが並んでおり、曲によっては彼女の従姉妹であるスウィート・インスピレーションのシシー・ヒューストン(ホイットニーの母)のクレジットも。普段よりは何割増しかのディオンヌの熱いボーカルを聴くことが出来るが、彼女のアルバムとしてはキャッチーさに欠けるし、ゴスペル・アルバムとしては煮え切らないし・・というのが正直な感想。

Presenting Dionne Warwick ('63) Anyone Who Had A Heart - Dionne Warwick ('64) Make Way for Dionne Warwick ('64) The Sensitive Sound of Dionne Warwick ('65) Here I Am - Dionne Warwick ('65) Here Where There Is Love - Dionne Warwick ('66) Love at First Sight - Dionne Warwick ('76)

 今回の3枚は「バカラック信奉者」には全く無用のアルバム、でもディオンヌの魅力をより幅広く楽しみたいということであれば、そこそこの内容ではないかと思う。勿論先に一連のバカラック制作アルバムを聴いた上での話ではあるけれども。コレクターズ・チョイスからは他に廃盤になって久しかった初期6枚のアルバムと、日本だけでCDが出ていた76年の「Love at First Sight」も併せて復刻。これで60〜70年代の彼女のアルバムはすべて市場に出揃ったことになるので、今後より深い探究が進むことを願いたい。
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2007年02月04日

Listen To The Sky: The Collected Recordings 1964-73 - The Others/Sands/Sun Dragon (Rev-Ola)
Tomorrow Never Knows: The Pop Sike World Of The Mirage (RPM/Bam-Caruso)

Listen To The Sky: The Collected Recordings 1964-73 - The Others/Sands/Sun Dragon Tomorrow Never Knows: The Pop Sike World Of The Mirage

 60年代イギリスのマイナーバンドもののCDを追いかけていると本当にきりがないので、出来るだけ手を出さないように気をつけているのだが、どうしても気になるものは購入しない訳にいかない。それにしてもイギリス人ってのはどうしてこんなに成功しなかったバンドのマスターテープを大量に保管しているんだろう?後世の音楽ファンとしては有り難い限りではあるのだが「いっぺんオマエらに『超整理法』を伝授してやろうか??」という気持ちがもたげてくる瞬間が、この手のCDを聴いていると度々ある。

 最初の1枚はごちゃごちゃと書いてあるが、一言でいえばロブ・フリーマンとイアン・マクリントックという2人のソングライターの活動を追ったコンピレーション。2人はまず「ジ・アザーズ」というローリング・ストーンズタイプのR&Bバンドで64年にデビュー、ボ・ディドリーの「Oh Yeah」のカバーをリリースしたが全く話題にならずその名の通り「その他大勢」扱いのまま解散。続いてメンバーを入れ替えて結成したのが「サンズ」で、このバンドはライブの評判を聞きつけたブライアン・エプスタインの口利きで彼のマネージメント会社「NEMS」と契約に成功、同社が管理していたギブ兄弟(ビー・ジーズ)の作品「Mrs Gillespie's Refrigerator」で再デビューを果たした。

Green Tambourine - Sun Dragon ('68) このシングルのB面に収められていた「Listen to The Sky」は2人の自作曲で、曲の後半で突然ホルストの「火星」がギターで奏でられるというサイケな作品。出来はなかなかよかったのだがシングルがリリースされるちょうどその頃エプスタインが急逝して彼らは再び契約を失い、その後ソングライター・コンビとしてレコード会社に売り込んだのが架空のグループ「サン・ドラゴン」。話が長い。彼らが最初に指示されたのは皮肉にも他のアーティスト作品のカバーで、当時まだイギリスでリリースされていなかったレモン・パイパーズの全米ナンバー1ヒット「Green Tambourine」をリメイクしたところこれが全英チャートに登場するヒットに(最高50位)。これに乗じて制作されたのがサン・ドラゴン唯一のアルバムで、このCD収録曲のメインを占めている。

 マクリントックとフリーマンのペンによる作品が大半を占めるこのアルバムは“バブルガム・ポップ”としてよく出来ており、カバー曲の方もレモン・パイパーズの「Blueberry Blue」、バーズの「So You Wanna Be A Rock 'n' Roll Star」、アソシエイションの「Windy」いずれもなかなかの内容。価値あるポップ・サイケアルバムの再発見にまずは感謝したい。

涙のフィーリング/ハイ・ヌーン('70) サン・ドラゴンのプロジェクト終了後も2人は様々なユニット名でレコード制作を続けており、1970年に我が国で「涙のフィーリング(Old Fashioned Feeling)」がヒットしたハイ・ヌーンの正体も、実はこの2人なのだという。残念ながらこのCDに「涙のフィーリング」は収録されなかったが、そのB面に収められていた「Drivin' Drivin'」を聴くことが出来る。

 もう1枚の方は60年代半ばに活動したバンド「ミラージュ」。彼らはイギリスの大物パブリッシャー、ディック・ジェイムスに見出され、彼が手がけていたホリーズのアラン・クラークとグラハム・ナッシュのプロデュースの下65年に「Go Away」のシングルでデビューを果たしたが、今回はそこら辺の音源は収録されず(この曲のナッシュとともに制作したデモ録音は収録)、彼らがフィリップスからリリースした3枚のシングルと、これまで未発表だった17曲(!)のデモ録音を1枚のCDに収めた超マニアック盤。彼らの音楽スタイルは中期ビートルズそのもので、シングルとして「Tomorrow Never Knows」をカバーしているくらい。「サージェント・ペパーズ」以前のビートルズが好きな音楽ファンであれば、この手の音楽はたまらないものがあるだろう。なおこのグループのメンバーの1人、ディー・マレイはディック・ジェイムスつながりでエルトン・ジョンと知り合い、その後彼のバンドのベーシストとして長く活躍することになるそうだが、そんな情報でこのCDに興味を持つ人なんて、僕の知り合いでも1人しかいないか。とにかくもの凄ーく狭い範囲の音楽ファンには非常にアピールする1枚だが、誰にでも薦められる内容でないことは確か。
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