2006年12月23日

Ys - Joanna Newsom (Drag City)

Ys - Joanna Newsom

 僕にとって2006年は80年代に洋楽を真剣に聴き始めて以来初めて(厳密にいえば1990年代初頭のある年以来10数年ぶりに)1年間リアルタイムなアメリカのヒットチャートをいっさい気にせず過ごした年だった。先日発表されたビルボードの年間チャートも、さすがに上位の何曲かは知っているがそれらがそんなにアメリカで流行っていたという実感は全然ないし、たった今ビルボードのホームページにアクセスして、今週のHOT100の1位が果たして知っているアーティストの曲か?という点に関しては全く自信がなくなってしまった。

 たまに音楽仲間に会って飲んだりすると、彼らは未だにしっかりリアルタイムのチャートをチェックしているので、話題に全然ついていけないことが多い。「そんなこと知らなくても構わないさ。」といってしまえばそれまでなのだが、音楽を趣味にしている上で当然知っておくべき情報にもすっかり疎くなっている自分を知り、時に愕然としたりもする。その最たるものがこのアルバムで、飲み会で「スティーヴ・アルヴィニが録音して、ジム・オルークがミックス、ヴァン・ダイク・パークスがアレンジしたハープの弾き語りをする女性アーティストのアルバムは聴きましたか?」といわれた時は吃驚した。何なんだそのいちいち興味をそそられるキーワードだらけのアルバムは???

Joanna Newsom 無知を恥じるばかりなのだが、このアルバムの主役ジョアンナ・ニューサムは2004年デビューし、昨年には既に来日公演も行っているアーティストなのだという。1982年生まれの彼女が2005年の暮れにまず弾き語りの形で録音し、そのテープを聴いたヴァン・ダイクが半年以上かけてストリング・アレンジを施したというこのアルバムは、期待通りというか予想通りというか、見事なまでの「電波系(怒られるか・・)」。演奏時間は55分あるのに収録曲は5曲しかない(最長の曲は17分弱!)「Ys(“イース”と読むらしい)」で彼女は時にビョークを、またある時はケイト・ブッシュあたりを彷彿させるエキセントリックなボーカルを聴かせている。正直初めて聴いた時は「これはキツいな・・」と思ったがこれが不思議な魅力があり、何度か繰り返し聴いているうちに何の抵抗もなく「すげー作品だなー」と感心するようになる。

 個人的なツボは、やはりヴァン・ダイクによるストリングス。彼にしか生み出すことの出来ない独特の世界観で、アルバムを何倍も興味深いものに仕上げている。21世に入ってなおこのようなアルバムの制作に携わり続けるヴァン・ダイク、恐ろしい・・。後に生まれた世代のマニアが未だに「スマイル」だの「バーバンク・サウンド」だの、得意げに彼の過去の音源をほじくりかえしている姿がバカバカしく思えてくる。ニューサムは今後オーケストラを従えて英米をツアーして回るそうなので、2007年に再来日公演が実現したら是非とも会場に足を運びたいと思う。こういうアルバムが出るんだから、最近の音楽情報のチェックも怠ってはいけないな、と痛感するばかり。来年はもうちょっとリアルタイムな音楽シーンにも気を?&り、月に1枚くらいはこのブログでも新譜が紹介出来れば、と思っている。
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2006年12月22日

The Best of Philly Soul Vol.1: The Fabulous Len Barry (That Philly Sound)
Muthafunkinsonofabitch: The Truth Behind The Philly Legend (Funkadelphia)
The Philly Sound Get Down: Funky Philly Instrumentals (Funkadelphia)

The Best of Philly Soul Vol.1: The Fabulous Len Barry Muthafunkinsonofabitch: The Truth Behind The Philly Legend The Philly Sound Get Down: Funky Philly Instrumentals

Keem-O-Sabe - The Electric Indian ('69) エレクトリック・インディアンの「Keem-O-Sabe('69米16位)」というちょっと変わったインスト曲をご存知だろうか。1960年代後半のヒットチャートは何故かインディアン流行りで、カウシルズの「Indian Lake('68米10位)」、後にレイダースがリバイバルさせるドン・ファードンの「(The Lament of The Cherokee) Indian Reservation('68米20位)」、1910フルーツガム・カンパニーの「Indian Giver('69米5位)」などがチャートを賑わせたが、ヒッピー・ムーブメントの盛り上がりが「自然回帰」の気運を高めたのか、この曲も異例のヒットに。エレクトリック・インディアンは殆ど一発で終わったプロジェクトだったので、当時グループの詳細について公にされることはなかった(というか公にしたところであまり意味がなかった)ようだが、後にこのグループは非常に興味深い人々の集団であったことがわかってくる。

The Very Best of Len Barry (Taragon) 「Keem-O-Sabe」を作曲し、レコーディングを取り仕切ったのはレオナード・ボリソフという男。彼は「レン・バリー」としてより高い知名度を得ており、60年代前半はフィラデルフィアのカメオ/パークウェイからダンス・グループ「ダヴェルズ」のリード・シンガーとして「Bristol Stomp('61米2位)」「You Can't Sit Down('63米3位)」といったヒットを放ち、グループ独立後の65年には「1-2-3(米2位)」を大ヒットさせた白人ソウル・シンガー。彼の長年の制作パートナーであるソングライター/プロデューサーのジョン・マダラが運営しているサイト「That Philly Sound」でバリーの貴重な録音を集めたCDが販売されていたので、早速取り寄せて聴いてみることに。

Len Barry Singles Discography 1964-1973


 レン・バリーがダヴェルズ脱退後にリリースしたソロ・シングルは上のディスコグラフィをご参照いただきたい。今回届いたCDに収録されているのは彼のキャリアのピーク期であるデッカ時代以前にマーキュリーからリリースしていた「Let's Do It Again(曲調は「You Can't Sit Down」に瓜二つ)」に始まり、制作されながら結局リリースされることのなかったデッカのセカンド・アルバムからの何曲か、そしてその後エイミー、セプターと渡り歩いてリリースしたシングル音源までが集められた全19曲で、これまでリリースされているダヴェルズ及びバリーのベストCDと併せて聴けば、67〜68年にRCAからリリースしたシングルを除く彼の60年代音源のかなりの部分をチェック出来るという大変有り難い内容になっている。彼のボーカルは一貫してシャウター・スタイルで、どの時代の録音も余り違和感なく聴ける感じ。セプター時代には「Keem-O-Sabe」のボーカル・バージョンも録音しており、アーティストとしては下り坂にあった彼の執念のようなものが感じられて面白い。

The Philadelphia Years (Collectors Edition) - Daryl Hall & John Oates 以前ホール&オーツのインタビューを雑誌で読んだ時「レニー(レン)バリーが落ちぶれてフィラデルフィアの街をうろついている姿を見て『俺たちはこうはなりたくないものだ』と思った。」なんて発言をしていて、当時彼らとバリーの間に接点はあったのかな?などと思ったものだが、このCDのセッション・リストを見ると1969〜70年の録音にはなんとダリル・ホールの名前が!ホールがキーボードやアレンジメントを担当する他にも彼と「ガリバー」を組んでいたティム・ムーアの名前も随所で見られ、ここら辺の絡みにより興味のある方はジョン・マダラのサイトでホール&オーツの「The Philly Years」というCDも販売されているので是非ご確認を。カメオ/パークウェイの時代からフィラデルフィア・ソウルが確立されるまでの“サウンドの進化の過程”を確認出来る非常に興味深いCD、しかもその彼が70年にメンフィスのアメリカン・スタジオに出向いて録音した2曲なんて更に珍しいものもあって(出来もなかなか)、色々勉強になる内容である。

 で、次の「Muthafunkin 〜」は後に「MFSB」と呼ばれることになるフィラデルフィアのミュージシャンたちが、60年代後半から70年代前半にかけて様々な名義で録音したインスト曲を集めたコンピレーション。ユニット名を羅列するとインタープリテーションズ、ブラザーズ・オブ・ホープ、ヒドゥン・コスト、デイリー・ディガーズ、サム・リード・バンド、アライアンス、キューピット、レース・ストリート・チャイナタウン・バンド、フレンチ・コネクション、パット&ザ・ブレンダーズ、アンドゥ・オーケストラ、そしてエレクトリック・インディアン。制作陣にはギャンブル&ハフをはじめノーマン・ハリス、ボビー・マーティン、ヴィンス・モンタナ・ジュニアなどフィリー・ソウル黄金期を支える傑物たちのクレジットがずらり、レン・バリー絡みの録音も「Keem-O-Sabe」他4曲が収録されており、新旧入り乱れた人材がひしめき合ってしのぎを削っていた様子が窺える。「アーリー・フィラデルフィア」のキーワードに敏感に反応するタイプの音楽ファンであれば、探してみる価値のあるCDだと思う。

Ben Krass on TV-Spot 最後「The Philly Sound Get Down」は更にマイナーなフィリーもののインスト集。このCDは2004年に亡くなったベン・クラス(ジャケットに登場している老人)に捧げられており、フィラデルフィアにある「Krass Brothers Clothing Store」のオーナーである彼は長年地元で本人が登場するTVスポットを流し続けていて、かの地では知らぬものはいないほどの名物オヤジだったそうなのだが、音楽への造詣も深く、60年代には多くのインディ・レーベルの出資者として新興の音楽シーンをサポートしたという(多くのアーティストに衣装も提供したとか)。詳しい録音データが付いていないのだが60年代後半の録音と思われる諸々の作品はまだフィラデルフィアならではの特徴を持つところまでは到達しておらず、ある曲はジェイムス・ブラウン風、またあるものはアイズリー・ブラザーズ風、モータウン風・・といった感じ。どれもファンキーで「レア・グループ」としてはなかなか楽しめるが「フィラデルフィア」のキーワードではちょっと引っかかりにくいかな・・という内容。「Funkadelphia」には更なる貴重な録音の発掘を期待したいところ。
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2006年12月20日

A Collection of Various Interpretations of KILLING ME SOFTLY (Roof Music)
A Collection of Various Interpretations of AIN'T NO SUNSHINE (Roof Music)

A Collection of Various Interpretations of KILLING ME SOFTLY A Collection of Various Interpretations of AIN'T NO SUNSHINE

 ドイツのルーフ・ミュージックというレーベルがここ何年か細々と続けている「One Song Compilation」というシリーズがある。ポップスの歴史的な名曲1曲にテーマを絞り、様々なアーティストによるその曲の録音を出来るだけ集めてみるという、音楽マニアであれば一度は考えたことのあるアイディアだが、それをCDベースで実現してしまったのがこのレーベルの偉いところ。先日同シリーズの第7弾と第8弾が届いた。

Lori Lieberman ('72) まずは「Killing Me Softly(やさしく歌って)」。ロバータ・フラックが1973年に全米ナンバー1を記録した超有名なこの曲には超有名な逸話があって、その主人公はロリ・リーバーマンという女性シンガーソングライター。1972年11月のある夜、ロサンゼルスのフォーククラブ「トルバドール」にドン・マクリーンのライブを観に行った彼女はマクリーンの歌、特に「Empty Chairs」という曲に深い感銘を受け、ライブ終了後にその印象をテーブルナプキンに書きつけたのがこの名曲が生まれるきっかけになったのだという。このメモ書きを元に詞を作り上げたのがノーマン・ギンベルで、曲をつけ完成させたのがチャールズ・フォックス。リーバーマンのバージョンはその年にキャピトルからリリースされた彼女のファースト・アルバムに収録された。

Killing Me Softly - Roberta Flack ('73) リーバーマンのバージョンが一部で評判になり始めた1973年のある日、この曲の記事を飛行機の中で見かけたのがロバータ・フラック。印象的なタイトルに興味を惹かれた彼女は早速この曲を聴いてレコーディングを決断、アコースティックなフォークソングだったこの曲にジャズのフィーリングや多重録音によるコーラスを付け加え、結果生まれた彼女のバージョンの成功については、改めて書く必要はないだろう。フラックのバージョンの完成度があまりにも高いのでその後生まれたカバー・バージョンの殆どはフラックの録音をなぞったような内容だが、そんな中からアルB.シュア!('89R&B14位)、フージーズ('96エアプレイ1位)によるリバイバルヒットも生まれている。

Captain Smartypants 今回のCDにはそれら有名なヒット・バージョンの収録は残念ながらなし、リーバーマンのバージョンもオリジナルではなくこのアルバムのために今年新たに録り直されたもの。それではあまり意味がないような気がするが、文句を言わずまずは聴いてみることに。収録されているのはイージーリスニング系のアーティストが多く、名の知られているところではシャーリー・バッシー、ドイツのマックス・グレーガー、バーニー・ケッセル、ジーン・ピットニー程度で、他は比較的90年代以降の録音が多い模様。英語圏の音楽は主人公の性別を明確に別けて歌う伝統があるらしく(日本のように男性グループが「女の操」を歌うようなケースは特殊な事情を除いてあり得ない)、男性アーティストがこの曲を歌う場合は“His Song”の部分は“Her Song”または性別をはっきりさせない形(“This Song”とか“Love Song”とか)にするようだ。一組「キャプテン・スマーティパンツ」なる男性グループがはっきり“His Song”と歌っているのだが、ネットで調べたら彼らは「シアトルのホモセクシュアル・コーラス・グループ」なのだとか。CDジャケ写が“キンキー・ブーツ”な理由が何となくわかってきた・・。

Just As I Am - Bill Withers ('70) 収録曲の3分の1近くはインストなので、気分に合わせて「やさしく歌って」を聴きたい時にあれこれチョイスすると楽しいのかも。2バージョンが収録されているジャマイカのジョン・ホルトの男臭さを除けば全般的に落ち着いた雰囲気で、何かのBGMにも使えそう。続く第8弾は「Ain't No Sunshine(消えゆく太陽)」特集。ビル・ウィザースのオリジナルがあまりにも強力なので、果たしてカバーの方は楽しめるのか?と不安だったが、冒頭のラサーン・ローランド・カークによる壮絶な吹き語り(!!)でその懸念は一掃された。続く“お洒落なジャズ・グループ(?)”フォー・トゥ・ザ・バーの解釈を間違ったようなバージョンはさっさと飛ばして、3曲目にはトム・ジョーンズが切々と歌い上げる録音が。うん、この人が言うんだったら絶対太陽は昇らないよね。と、つい相づちを打ってしまいそうな暑苦しさ(笑)。これは相当男気溢れるコンピレーションになっていそうだ。

 「Ain't No Sunshine」が“オーガニック・ソウル”として再評価されるようになったのは近年のことなのか、このCD収録曲の半分近くは2000年代の録音と選曲にやや偏りがある気もするが、だからといってそう雰囲気を壊すものは入っていない。「やさしく歌って」と比較しジャズ系の録音が多いのは、勿論選曲者の好みもあるがこの曲の特性に負うところも大きいのだろう。悲嘆にくれる男の歌に果敢にも挑戦した女性アーティストの録音も4バージョン入っているが、女性が歌うとここまで救いがない感じになってしまうのか・・と、ちょっと怖くなった。個人的なベスト・トラックはローランド・カークを除けばデヴィット・サンボーンとスティングの共演版、パースエイジョンズのアカペラ・バージョンあたりか。

A Collection of Various Interpretations of SUNNY A Collection of Various Interpretations of SUNNY (Part 2) A Collection of Various Interpretations of FEVERA Collection of Various Interpretations of LIGHT MY FIRE A Collection of Various Interpretations of SUMMERTIME A Collection of Various Interpretations of TAKE FIVE

 「One Song Compilation」はこれ以前に6種類が出されており、「Sunny」が2種、「Fever」「Light My Fire」「Summertime」「Take Five」がそれぞれ1種というラインナップ、個人的にはシリーズ先陣を切った「Sunny」2枚のアイディア豊富さには感心させられた。大好きな曲を目一杯聴きたい、そんな貴方にお勧めなこのシリーズ、次は一体どんな曲の特集が企画されるのだろうか?

Roof MusicのOne Song Compilation
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2006年12月16日

Silver Morning - Kenny Rankin (Private Press)
The Voice of Scott McKenzie (Repertoire)
Home & Away - Del Shannon (EMI)

Silver Morning - Kenny Rankin The Voice of Scott McKenzie Home & Away - Del Shannon

 先日とある会合で会った音楽仲間が、ケニー・ランキンの「Silver Morning」のCDを持ってきていた。「そんなの何処で売ってるんですか?」と訊いたところ、11月に丸の内の「コットンクラブ」であった彼の来日公演会場で入手したのだという。悔しいのでムキになってネット検索したら、ランキンのウェブサイトで販売していることがわかり早速申し込み。

Peaceful: The Best of Kenny Rankin 「Silver Morning」は1974年にリリースされた彼のサードアルバムで、ビルボードのアルバムチャートでは最高63位と、彼のキャリアで最高の成績を収めた作品。全編アコースティックサウンドで統一されており、ランキンのポップな音楽センスとギタリストとしてのスキルが高度に融合した傑作。表題曲をはじめとする彼のオリジナル作は勿論のこと、ビートルズナンバー2曲やバーデン・パウェルのカバーまで、違和感なく一気に聴けてしまう。74年というとシンガーソングライターたちは時代の要請でそろそろサウンドや音楽性に変化を強いられていた時期だと思うが、そんな時にこんなにシンプルかつ真摯な作品を残せていたことに感心するばかり。価格は24ドルと海外盤としては結構高いが(ライブ会場では2,000円で売っていたそうだ)、直接アーティストに売上が立つ訳だし、中古屋をいたずらに儲けさせるくらいならこちらの入手を選択した方がいいだろう。

 続いては超お馴染みスコット・マッケンジーのファースト・アルバム。このアルバムは最近日本で紙ジャケ化が実現しているが、ボーナストラック8曲を追加したCDがドイツで出されたのでそちらの方を紹介。ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッッジで活動していたフォークグループ「ジャーニーメン」のメンバーとして後にママス&パパスを結成するジョン・フィリップスと行動をともにしていたマッケンジーは、66年にママス〜のマネージャーだったルー・アドラーが設立したオード・レコードと契約。ファースト・シングルとしてリリースしたミッシェル・ポルナレフのカバー「No, No, No, No, No(ノンノン人形)」は不発に終わったが、翌年サンフランシスコで開催された「モンタレー・ポップ・フェスティヴァル」のイメージ・ソングとしてフィリップスが作曲した「San Francisco (Be Sure to Wear Flowers in Your Hair)」が全米チャートの4位まで上昇する大ヒットを記録、日本でも67年の洋楽年間チャートでナンバー1に選ばれるほどの人気を博した。

Stained Glass Morning - Scott McKenzie ('70) と、彼に関する基本情報はほぼこれでおしまい。殆どの音楽ファンにとってこれ以降の情報は殆ど無用になってしまうのだが、それではこのCDを紹介する意味がない。「San Francisco」と「Like An Old Time Movie('67米24位)」の2曲のヒットをフィーチャーしたこのアルバムは、シングルヒットに合わせて急遽制作された印象の「フォークロック・サンプラー」的内容。フィリップスの作品以外ではドノヴァン、ラヴィン・スプーンフル、ティム・ハーディンらのカバーが並び、マッケンジー自身の作品はシングルB面曲(「What's The Difference」のバージョン違い)が2曲入っているのみ。彼はこの時期出すシングル毎に「What's The Difference」のタイトルでシリーズ物の作品をB面用に録音しており、このCDではそのチャプター1、2、3を聴くことが出来る。おまえは虎舞竜かっ!ボーナストラックにはシングル用のモノラル・バージョンを8曲収録、これと日本でCD化が実現した70年のアルバム「Stained Glass Morning」を入手すれば、オード時代の彼の録音はすべて揃えることが出来る。

The Best of Twice as Much 最後はデル・シャノン1967年の未発表アルバム「Home & Away」。これまでボックス・セットや2イン1の形でのCD化はあったが、単独アルバムとしては初めてのリリース。このアルバムのポイントは彼がイギリスに赴きアンドリュー・ルーグ・オールダムの制作で録音したところで、レコーディングにはオールダムが経営していたイミディエイトに関わりの深かったジミー・ペイジ、ジョン・ポール・ジョーンズ、ニッキー・ホプキンスといったミュージシャンが大挙して参加している。中でも注目は同レーベルの二大ソフト・ロックアーティスト、ビリー・ニコルスとトゥワイス・アズ・マッチの参加で、ニコルスは「Cut and Come Again」「Led Along」「Friendly with You」の3曲を、トゥワイス〜のデヴィッド・スキナーとアンドリュー・ローズの2人は「Life is But Nothing」と「Easy to Say」の2曲を提供、いずれも非常にソフトかつピースフルな仕上がりになっている。アルバムは結局リリースが見送られ、セッションの中からは「悲しき街角」の1967年版がシングル・カットされ小ヒットを記録(米112位)したのみにとどまったが、残された音源は“ブリット・ソフト・ロック”好きにはたまらない内容。この機会に是非一聴をお勧めしたい。
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2006年12月08日

The Phil Spector Collection (Wall Of Sound Retrospective/A Christmas Gift For You) (Abkco/Phil Spector)
The Pop Hits Collection Vol.2 - Skeeter Davis (Taragon)

The Phil Spector Collection (Wall Of Sound Retrospective/A Christmas Gift For You) The Pop Hits Collection Vol.2 - Skeeter Davis

Phil Spector's Greatest Hits ('83) “ハジレコ”の話。洋楽ファンが集まると、挨拶代わりに「初めて買った洋楽のレコードは何?」とか「洋楽の聴き始めは何年?」なんて話をよくする。僕はヘンな子供だったので、洋楽は聴きはじめから「オールディーズ」。年齢的には「MTV世代」ど真ん中なのだが、当時からバイト代が入ると輸入レコード屋に行って60年代もののコンピレーションなどをいろいろと買い込んでいたという・・。中でも一番最初に買った1枚はよく覚えていて、80年代にイギリスでリリースされたフィル・スペクターのベスト盤。当時まだ青山の骨董通りにあった「パイドパイパー・ハウス」で購入したもので、これに収録されていた全20曲が僕にとってのスペクター・サウンド入門になった。

Back to Mono (1958-1969) - Phil Spector つい先日、イギリスでこのアルバムによく似た内容のCD(+63年のクリスマス・アルバム「A Christmas Gift for You」の2枚組)がリリースされた。全22曲入りで、アルバムの最後に収録されている未発表曲、スペクター本人が歌う「Spanish Harlem」を除くすべてがチャートヒットというまさに「ベスト・オブ・ベスト」。収録されているのはクリスタルズ、ロネッツ、ダーレン・ラヴからライチャス・ブラザーズ、アイク&ティナ・ターナーまでお馴染みの顔ぶれによるお馴染みのヒット曲ばかりなので、今更説明の必要はないだろう。オールディーズ・ファンを自称する人で「万が一」これらの音源を持っていないなんてことがあったら今すぐ購入を検討すべき基本中の基本アイテム。新たにリマスターもされているようで、スペクターが固執したモノラル・サウンドが持つ「縦の奥行き」を味わうためにも、既に過去に出た4枚組ボックスを持っている方にも入手をお勧めしたいところ。

 あと一点今回のCDで興味深いのは、どの曲にどのセッション・ミュージシャンが参加しているかのリストがついているところ。スペクターはレコーディング・スタジオに大勢のミュージシャンを集め「音の壁」と呼ばれる独特のサウンドを作り上げたが、個別の曲毎にクレジットが入ったことは余りないはずで、スペクターものを聴くとつい「ハル・ブレインのドラムはやっぱり違うねー。」なんてことを言ってしまいがちだが、今回のCDのブックレットを見ると、彼以外のミュージシャンがドラムを叩いているケースも多い(特に後期)ことがわかる。ドラム以外で印象的な演奏を挙げてみると「Be My Baby」のピアノはレオン・ラッセル、「Zip-A-Dee-Doo-Dah」のファズっぽいギターソロはビリー・ストレンジ、「Do I Love You」のイントロのベースはキャロル・ケイ・・など、クレジットとにらめっこしながら各曲を聴いてみると、新たな楽しみがあるかも知れない。なお「A Christmas 〜」の方は2002年に出たものと同一の内容のようなので、特に新発見はなかった。

Pop Hits Collection - Skeeter Davis もう1枚スキーター・デイヴィスの方は、2003年に出た「The Pop Hits Collection」の第2弾。第1集はタイトル通りゴフィン&キング作品を熱心に集めたり、1966年の思いがけない名盤「Singin' in The Summer Sun」を紹介してくれたりと、彼女の「ポップ・サイド」に焦点を当てた素晴らしいコンピだったが、今回のはあまり「Pop Hits」にこだわった様子はなく、ベスト盤から漏れがちな比較的珍しい曲を集めた印象(チャート・マニア的には64年の「He Says The Same Things to Me(47位)」と「How Much Can A Lonely Heart Stand(92位)」の収録が有り難い)。

 60年代後半以降の録音ではポップな「There's A Fool Born Every Minute('68C&W16位)」や「The End of The World(この世の果てまで)」の69年のセルフ・リメイク(かなりいい雰囲気)、オリジナル・キャスト版がよく知られる「One Tin Soldier」のカバー('71C&W54位)などに興味を惹かれる。お勧めという点では断然第1集だが、カントリー・シンガー、スキーター・デイヴィスのアナザー・サイド(多くの音楽ファンにとってはこちらの方がむしろ馴染み深い)を楽しめるコンピとしては、まずまずの内容だと思う。
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