2006年11月27日

Since There Were Circles - Bob Lind (RPM)
The James Bond Songbook - The James Bond Sextet (BGP)

Since There Were Circles - Bob Lind The James Bond Songbook - The James Bond Sextet

You Might Have Heard My Footsteps: The Best of Bob Lind ボブ・リンドが1966年に放った「Elusive Butterfly(『夢の蝶々』米5位/英5位)」というヒットがある。一般に知名度は高くないが、オールディーズファン、とりわけフォーク・ロックサウンドをこよなく愛する音楽ファンにとってはこの時代有数の名曲であるといっても過言ではないこの曲他、彼がワールド・パシフィックから66〜67年にかけて発表した作品群は、残念ながら「Elusive 〜」のような奇跡的な名曲こそ二度と生まれることはなかったものの、非常に繊細で、味わい深いものが多い。

 「Elusive 〜」は彼にとって唯一のTOP40ヒットとなり、基本的にこの曲以外で振り返られることのないリンドが、その後71年にキャピトルから発表していた非常にレアなアルバムがCD化された。ワールド・パシフィック時代もプロデュースはジャック・ニッチェ、参加ミュージシャンは西海岸名うてのセッション・メンたちという鉄壁の布陣でレコーディングが行われていたが、今回の「Since There Were Circles」にもキャロル・ケイやポール・ハンフリーといった「スタジオの鉄人」に加え、ダグ・ディラード、ジーン・クラーク、バーニー・リードンらカントリー・ロック界の要人たちが顔を揃えて作品を盛り上げている。アルバム前半はカントリー・ロック色が強く、リンドも力強いボーカルを聴かせておりこれはこれで聴き応えがあるが、かつての彼の繊細な作風を期待するのであれば、アルバム後半の方がより満足いただけるだろう。ストリングスが大胆に導入された組曲風の構成は、初期の彼の世界がより深く掘り下げられた印象。

Bob Lind Live at the Luna Star Cafe (2006) ボブ・リンドが最初の作品だけで才能を枯渇させることなく、その後も立派な内容のアルバムを発表していたことがわかり、何となく嬉しい気分にさせられる1枚。その後彼は音楽シーンから引退し、作家として成功を収めたそうだが、近年は演奏活動を再開、時折ライブを行っているようだ。かつてのレパートリーを再録音したCDも制作、これは現在彼のウェブサイトを通じて販売されている。

David Hemmings Happens ('67) もう1枚の方は、この「〜 Circles」にボーナスとして収録されている何曲かの録音のプロデューサーを務めているジミー(ジェイムス)ボンドの珍しいリーダー作。彼はワールド・パシフィックの前身「パシフィック・ジャズ」でチェット・ベイカーらが生み出したウェストコースト・ジャズの名盤に参加したことで名を挙げたベーシストで、60年代に入るとセッション・ミュージシャンに転じ、フィル・スペクターからフランク・ザッパまで様々な作品にその名がクレジットされている。ワールド・パシフィックにも継続的に関わりを持ち続けていたようで初期のボブ・リンド作品にも参加している可能性は高く、67年にリリースされた映画「欲望」などで知られる俳優デヴィッド・ヘミングスがバーズのメンバーたちとドラッグでヘロヘロになって録音した珍盤「David Hemmings Happens」にもその名前が見られる。

The James Bond Songbook (Original Sleeve) ボンドがその名前にかこつけて65年にリリースしていたのが「The James Bond Songbook」。その名の通り007映画のテーマ曲集となっておりCDの冒頭から「James Bond Theme」で始まるが、ここで注目したいのは1965年というこのアルバムの発表時期。当時映画シリーズはまだ4作目の「Thunderball」までしか公開されておらず、ジョン・バリーなどにより作曲された有名なテーマのカバーは5曲のみ。残る7曲「Casino Royale」「The Man With The Golden Gun」「Moonraker」「For Your Eyes Only」「Live And Let Die」「Diamonds Are Forever」「You Only Live Twice」と、現在馴染み深いタイトルのナンバーはいずれも原作の小説をヒントにこの時点でボンドが勝手に作ったもの。ジョン・バリーより先にこれだけ「ボンドのテーマ」を作ってしまった人も他にいないと思うが、その演奏はウェストコースト・ジャズ風でなかなかいい感じ。「007」のイメージとは少々そぐわない気がするが「パシフィック・ジャズ」の亜流アルバムとして、その筋のファンには興味深い作品ではないかと思う。

Batman and Other Themes by Maxwell Davis ('66) なおこのCDは以前紹介した チェット・ベイカーの「The Mariachi Brass!」同様英エイス・レコードの系列レーベル「BGP」から「The BGP Sound Library」シリーズとしてリリースされており、同シリーズからは他にR&B系アーティスト、マクスウェル・デイヴィスが66年に録音した「Batman and Other Themes」も出ている。ユニークなイージーリスニング作品を廉価でリリースしてくれるシリーズとして、今後の作品にも注目したい。


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2006年11月25日

Two's Company: The Duets - Cliff Richard (EMI)
Souled Out - The Righteous Brothers (Spectrum/Universal)

Two's Company: The Duets - Cliff Richard Souled Out - The Righteous Brothers

 月末が近づくとこれまで注文していたCDが一斉にどどどっと届く傾向は、なんとかしてもらいたいもんだね。この週末も宅急便の対応に追われて、外出もままならないほど・・。

The Singles Collection - Cliff Richard クリフ・リチャードがイギリスで放った数多いヒットは、数年前リリースされた6枚組の「The Singles Collection」でほぼカバーでき、これさえ持っていれば他のCDは入手する必要はないのかな、とつい思いがち。しかしこのボックスには大きな落とし穴があって、彼が数多くリリースした「デュエット・ヒット」はコレクションの対象外となっているのだ。なんということ・・。参考までにクリフが他のアーティストと組んで放ったヒットを列記すると

Throw Down The Line - Cliff and Hank ('69 UK#7)
The Joy of Living - Cliff and Hank ('70 UK#25)
Suddenly - Olivia Newton-John and Cliff Richard ('80 UK#15/US#20)
She Means Nothing to Me - Phil Everly and Cliff Richard ('83 UK#9)
Drifting - Sheila Walsh and Cliff Richard ('83 UK#64)
Living Doll - Cliff Richard and The Young Ones feat. Hank B Marvin ('86 UK#1)
All I Ask of You - Cliff Richard and Sarah Brightman ('86 UK#3)
Slow Rivers - Elton John and Cliff Richard ('86 UK#44)
Whenever God Shines His Light - Van Morrison with Cliff Richard ('89 UK#20)
All I Have to Do Is Dream - Cliff Richard with Phil Everly ('94 UK#14)
Had to Be - Cliff Richard and Olivia Newton-John ('95 UK#22)
The Wedding - Cliff Richard feat. Helen Hobson ('96 UK#40)

 多すぎっ!今回この悩みをある程度解消してくれるアルバムがリリースされたのでご紹介。来年早々2003年に実現した「熱狂の」コンサート以来の来日公演を行う彼が今シーズン発表したのは、ベテラン・アーティストお約束のデュエット・アルバム。フランク・シナトラにしろ、レイ・チャールズにしろデュエット・アルバムを出すとその後・・とよくないことも考えてしまいがちなこの企画だが、彼はまだ若いしそんな心配は無用だろう。全14曲中新録は6曲のみ、残りの8曲が過去の録音で太字表記した上記5曲がチャートヒット。新録ではバリー・ギブとスティングの「Fields of Gold」を歌っている録音が面白く、「Yesterday Once More」をデュエットしているダニエル・オドネルはアイルランド出身の有名なカントリー・シンガーなのだそうだが、僕は彼の名前を初めて知った。1985年に亡くなったマット・モンローの録音を持ち出して、今年デュエットしてしまう制作意図は不明。クリフの歌声は相変わらず若々しく、僕は聴く度「西城秀樹だなぁ」と思ってしまう。ヒデキがクリフの強い影響下にあることは明白で、彼の活躍によりその後氷室京介やTMレボリューションなど“ヒデキ・タイプ”のロックシンガーが我が国に多く登場したことを考えると、クリフは「日本のロック」のゴッドファーザー的存在なんだな、なんてことも考えてしまったり(大袈裟か)。

 旧録の方はご覧の通り。ノン・ヒットでは若手のボーカル・グループ、G4(誰!?)と2005年に録音した「Miss You Nights」、テナー歌手ヘルムート・ロッティとの「Danny Boy(2003年)」、大姉御ルルと歌った「Reunited(2002年)」を収録、ここら辺の人選は最近のUK事情を全く知らないから、判断のしようがない・・。そういえば来年2月18日の来日公演、前回は50代の熱心な女性ファンが30年以上ぶりに再結集し、みんなでプラカートを掲げたり花束攻撃を仕掛けたりで客席は大変な盛り上がりだったが、今回は公演があること自体あまり知られていないようで、チケットの出足は鈍いのだとか・・。1回のみの公演ということでチケット代は非常に高いのだが、今回見逃すと次の来日はまた20数年後・・なんてことになると後悔すること必至なので(クリフは20年後も元気に歌い続けているかも知れないけど、我々はわかりませんからね・・)気になる方はすぐに販売元サイトチェックを。

Gold - The Righteous Brothers さて。もう1枚は「ブルー・アイド・ソウル」の代表格ライチャス・ブラザーズ。彼らのベスト盤としては今年の前半に「Gold」という2枚組がリリースされ、その内容の素晴らしさをmeantimeのホームページで絶賛した覚えがあるが、ベスト盤の次はオリジナル・アルバムも聴きたいよね、ということで。90年代にはフィル・スペクターのレーベルで発表した3枚のアルバムを2枚のCDに収めた日本盤なんてのが発売されて、今考えると大変な英断だったと思うが、それ以降のヴァーヴ時代はCDの時代に入ってリリースされることがなかった(細かい話をすると68年リリースのカバー集「Standards」がベスト盤の一部としてそっくりCD化されたことはある)。で、今回届いたのが67年の「Souled Out」、67年というとこのアルバムに収録されている「Stranded in The Middle of No Place(米72位)」が彼らにとって最後のHOT100ヒットになった年(註:再結成前)で、その活動が下り坂に差しかかっていた時期。なぜ彼らの全盛期をすっ飛ばしてこんなアルバムが真っ先にCD化されたのか?というと、僕も以前「CDが出ないならアナログをまとめて買い付けてしまおう!」と検討したことがあるのでよく解るが、ライチャス・ブラザーズは素晴らしいシングル・ヒットを幾つも飛ばしながらアルバム制作には比較的無頓着で、内容を吟味すると収録曲の殆どが安易なカバー曲で占められている、その割に市場相場が高い・・というケースが多いから。

 「Souled Out」のプロデュースを担当したのは、モータウンのスタッフ.ライターだったミッキー・スティーヴンソン。成功のピークにあったモータウンに造反し、妻のキム・ウェストンを伴って独立した彼の初仕事の一つがこのアルバムだったそうで、収録曲の大半(11曲中8曲)が彼の作品。ノーザン・ソウル風味の中に67年という時代を反映して若干サイケなテイストも感じられ、なかなか興味深い内容になっているが、当時もの凄い勢いで変貌を遂げていた「ソウル・ミュージック」に対しライチャス・ブラザーズ的なアプローチは限界があったようで、若干時流に乗り遅れた雰囲気であることも否定出来ない。このアルバムリリース後間もなく2人はグループ活動を休止し、各々ソロで活動していくこととなった。

 「Gold」を紹介した時も書いたが僕はビル・メドレーとボビー・ハットフィールドの2人がリリースしたソロ作品の方に最近はより興味が向いており、いずれ彼らのアルバムのCD化も望みたいところ。ライチャス〜の方もあとは少なくとも「Soul & Inspirations」くらいはCDで聴けるようになってもらいたい。



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2006年11月24日

Philadelphia International Records 12" Singles Vol.1 (Edsel)
Soul Togetherness presents The Spirit of Philadelphia 2 (Expansion)
The Northern Souljers Meet Hi-Rhythm (Soul-Tay-Shus)

Philadelphia International Records 12 Soul Togetherness presents The Spirit of Philadelphia 2 The Northern Souljers Meet Hi-Rhythm

My Love is Free: The Best of Double Exposure 2006年は「12インチ・シングル生誕30周年」の年なのだそうで、それを祝うような形でコンピレーションがリリースされた。アメリカのレコード産業初の市販12インチ・シングルリリースとなったのは、1976年サルソウルのダブル・エクスポージャー「10 Percent」で「だったらフィラデルフィア・インターナショナル(以下PIR)じゃないじゃん。」なのだが、まぁそう固いことは抜きにして。初期のディスコ・シーンをリードしたPIRがリリースした作品の12インチ・ミックスを集めたコンピレーション第1弾(2枚組)を入手、のっけからマクファーデン&ホワイトヘッドの「Ain't No Steppin' Us Now」の10分45秒バージョン(何なんだ途中でキュンキュン鳴ってる効果音は!)が聴けて、気分はいやが応でも盛り上がる。

 作品発表が76年以降ということで、収録曲はクラシックな「フィリー・ソウル」というよりは「ディスコ・オリエンテッド」なものが多い。ジョーンズ・ガールズの「You Gonna Make Me Love Somebody Else」や「Nights Over Egypt」、フランティークの「Shut Your Funky Stuff」など、当時ダンスフロアにいた人にはたまらないだろう。メジャー・アーティストに混じって当時R&Bチャートには無縁だったエドウィン・バードソング、ボビー・ラッシュ、ジョコといったアーティストの作品も数曲ずつフィーチャーされていて「アナザー・サイド・オブ・フィリー・ソウル」をたっぷり楽しむことができる。

Henry Stone presents The T.K. Disco 45 Collection Volume 1: 1976-8 「Vol.1」と銘打っているので、このPIR12インチシリーズ勿論続編もあるよね?と早々のリリースを期待したいところ。そういえば何年か前にやはりイギリスのレーベルからマイアミのTKレコード12インチ集がリリースされていて、そちらも素晴らしく怪しい内容だったのだが、あれも第1集のみでシリーズがストップしたまま。復活をずぅーっと待っているのだが、どうなっているんだろう・・。

The Spilit of Philadelphia 次の「The Spirits of Philadelphia 2」は何ヶ月か前に入手して紹介しそびれていたもの。「2」があるということは当然「1」もある訳で、このシリーズはジャケットの記述に"Lovingly created from seventeen of the finest individual seventies soul songs and blended together to form a fine, distinctive compilation"とあるように(ってわかりにくいよっ!)フィリー・ソウルの本家PIR以外のレーベルから発表されたフィリー・テイストの作品を集めたもので、アーティスト・リストを見るとエディ・ケンドリックス、フォー・トップス、ジミー・ラフィンなどのモータウン系、ベンE.キング、パースエージョンズ(彼らはフィラデルフィア出身か)のアトランティック系など、様々なレーベルから“フィリー詣で”が為されレコーディングが行われたことがわかる。イギリスのソウル・マニアが選曲しただけあってどれも見事な「フィリー印」で、どれがベスト・トラックと書くことができないくらいの粒ぞろい。アルバムの最後に収録されているヴィンセント・モンタナ・ジュニアの「That's What Love Does」があまりにもかっこ良くて、クレジットを確認したら録音はなんと2005年なんだって!おっさんたち狙い過ぎ!!

Cre`me De La Cre`me: Philly Soul Classics and Rarities Cre`me De La Cre`me Two: Philly Soul Classics and Rarities PIR以外のフィリーものコンピとしては、ヨーロッパのワーナーが出している「Cre`me De La Cre`me」というシリーズもあって、こちらも素晴らしい内容。フィリー・ソウル好きはこれだからやめられない。フィリーもののコレクトは今後もしつこく続けていくつもりなので、このブログでも色々登場する予定。最後の3枚目はタイトルに惹かれて買った「Northern Souljers Meet Hi-Rhythm」。これは60年代半ば〜後半にデトロイトのインディ・レーベルがメンフィスのハイ・レコード「ロイヤル・スタジオ」に所属アーティストを送り込んで録音した作品集だそうで、マイナー作品揃いながらなかなかの聴き応え。ライナーノーツによるとアメリカ北部のレーベルは当時南部で盛り上がっていた「ファンク」のテイストを取り入れるため試行錯誤を繰り返していたようで「そういうことをしたのは、モータウンのノーマン・ホイットフィールドだけじゃないんだよ。」というのがこのCDの趣旨らしい。

 プロデューサーはウィリー・ミッチェル、ミュージシャンはお馴染みハイ・リズムということで南部魂に溢れた演奏の連続、しかし以前アル・グルーンのアルバムがまとめてCD化された時に聴いて思ったが、ハイ・リズムの演奏が真に鋭さを増していくのは70年代に入ってからのことなので、この時期の録音はまだロイヤル・スタジオならではの個性が感じられるところまではいっていない。同スタジオでは北部から曲を買い付けにくるアーティストのために常に作品をストックしていたそうで、そのデモ用に初期ハイ・レコードの大黒柱ドン・ブライアントが吹き込んだ録音群(これまで未発表)は、サザン・ソウルファンにとって思いがけない収穫だろう。60年代R&Bの発展の過程に残された「南北交流」の貴重な記録である。


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2006年11月20日

Sleepwalk Mania (Magic)

Sleepwalk Mania

 結構前に出てたCDのようだが、最近存在を知ったので。フランスに「マジック」というマニアックレーベルがあり、ここから出されるイギリスやヨーロッパ系アーティストのCDは、そのデザインのよさもありオールディーズ・マニアの熱い支持を受けているのだが、今回入手したのはその中でも特にマニアックなもの。1959年にナンバー1ヒットを記録したインスト・ナンバー「Sleepwalk」のカバー・バージョンばかり19曲を収録したコンピである。

Santo & Johnny 「Sleepwalk」はインスト・デュオ、サント&ジョニー・ファリーナ兄弟の自作自演曲。スティール・ギターとエレキのデュオという比較的珍しいサウンドが個性的で、この曲が生まれて40年以上経過した現在まで繰り返し録音されるスタンダード・ナンバーになっているが、今回のCDは(詳しいクレジットがないので詳細は不明だが)60年代のインスト・バンドの録音に絞って選曲がされているようだ。メジャーどころでいえば2バージョンが収録されているシャドウズやベンチャーズ、シャンテイズ、スプートニクス、チェット・アトキンスなど各国の名手がずらり、加えて個人的には初めて名前を聞くようなグループ(フランスのバンドなど)まで幅広い選曲になっている。

 各アーティストがどこで個性を発揮しているのか?を一曲々々確認していくのが面白い。あるグループはイントロからいきなり、またあるグループはこの曲の「命」であるはずのスライド演奏をまったくやってなかったり・・。ある録音などはミスタッチ続きのヨレヨレな演奏で、一体誰が演ってるんだ??と思ったら、なんとシアトルの「元祖ガレージ・パンク」ソニックスのバージョンだった・・。彼らがあの技量でインスト曲なんかに挑戦していた意気込みを、ひとまずは評価したい。

Apache Mania Walk Don't Run Mania Telstar Mania Riders in The Sky Mania

 同じ曲が延々と続くので、CDの終盤にはさすがに聴き飽きてくるのだが、人気ナンバー「Sleepwalk」をこれだけのバージョンまとめて聴けるのは、インストマニアには嬉しい趣向だろう。なおこの「Mania」シリーズはあと4種リリースされており「Apache」「Walk Don't Run」「Telstar」「(Ghost) Riders in The Sky」といずれも人気の高いナンバーを徹底的にコレクトしている。入手の難しい盤もあるようだが、マニアだったら熱心に探してみる価値のあるコンピだと思う。

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2006年11月11日

The Voice I Love - Sylvia Telles (el)
The Ultimate Collection - Vikki Carr (EMI Gold)

The Voice I Love - Sylvia Telles The Ultimate Collection - Vikki Carr

Joao Gilberto 先日ジョアン・ジルベルトの来日公演を有楽町に観に行った。3年前の初来日時には開演時間になってもアーティストがまだホテルにいたとか、1時間遅れでようやく演奏が始まったと思ったら、途中舞台の上で30分くらいまったく身動きせずフリーズ状態を続けるなど「さすがブラジル人は時間感覚が違う。」と大変なカルチャー・ショックを受けたものだったが、その公演の評判が音楽ファンの間に広まり「伝説」として定着すると日本人は寛容なもので、今回の公演では開演時間になっても客席に座っているのは半分くらい、暫くして会場に「アーティストが只今ホテルを出発いたしました。」とアナウンスが流れると拍手が起こるという、もはや「遅刻すらプログラムの一部」状態。ひとたび演奏が始まるとアーティストの希望によりすべての空調が切られた会場で、汗をかきながら数千人がじっと彼の演奏に耳を傾けているし、ジルベルト翁が日本をすっかり気に入っちゃって、近年は他の国で演奏をまったくやらなくなってしまったらしい、という話も頷ける光景がそこにはあった。

 と、時事ネタのマクラはこれくらいにして。黎明期にあったボサノバのメジャー化に貢献した女性シンガーの一人にシルヴィア・テレスという人がいた。アントニオ・カルロス・ジョビンの恋人だった人だそうで、大変な美人で50年代よりTVタレントとしても活躍していたという彼女が60年代に発表したアルバム2枚をカップリングしたCDが先日イギリスでリリースされた。

It Might As Well Be Spring - Sylvia Telles ('66)The Face I Love - Sylvia Telles ('66) 以前ジュディ・シルのCDを紹介したとき、彼女が歌う「Lady-O」にシルヴィア・テレスに似た雰囲気を感じる、と書いたことがあったが、あの時イメージしたのはテレスの50年代の録音(特に「Dindi」で聴ける彼女の歌)で、今回のCDはその「Dindi」の再録バージョンも含めかなり装飾が施された感じ。まずCD前半は(彼女のレコーディング・データは見るサイト見るサイトどれも時期がまちまちなので、CDのライナーを信用して書くと)1966年発表の「The Face I Love」または「It Might As Well Be Spring」と呼ばれるアルバムで、スタンダードと最新のブラジル・ナンバーがほどよく配置され、いずれも心地よいボサ・ビートで料理されている。ブラジル録音ながら“ボサの本場”感は希薄で、これと同時期にアメリカのポピュラー・シンガーが盛んに録音したボサノバ・アルバムと非常に似通った雰囲気。スタンダード系ではロジャース&ハーマスタインの「It Might As Well Be Spring」やガーシュイン兄弟の「But Not For Me」、ブラジル産のナンバーではジョビン作のユーモラスな「Pardon My English」、マルコス・ヴァーリ作の「If You Went Away」「Surfin' In Rio」「The Face I Love」といったあたりが印象に残る。

The Music of Mr. Jobin by Sylvia Telles ('65)Sylvia Telles Sings The Wonderful Songs of Antonio Carlos Jobin ('65) 続いてCD後半(13曲目以降)はその前年に録音された「The Music of Mr. Jobin by Sylvia Telles」または「Sylvia Telles Sings The Wonderful Songs of Antonio Carlos Jobin」。その名の通りジョビン作品集(何故か「And Roses And Roses」のみドリヴァル・カイミ作)で、ボサ・クラシックが続々。アストラッド・ジルベルトなどと比較して彼女の歌は深みがあり、やや拙い印象の英語の発声を補って余りある。オーケストラ・サウンドはこちらのセッションの方がきらびやかな印象で、終始リラックスしたムードで聴くことが出来る。所縁の深いジョビン作品集ということでこの続編の制作も予定されていたそうだが、彼女は66年に自動車事故で突然この世を去り、このアルバム2枚が遺作となってしまった。

Softly, The Brazilian Sound - Joanie Sommers ('64) Blame It On The Bossa Nova - Eydie Gorme ('63)

 このCDと通じる雰囲気のアルバムを挙げるとすれば、やはりアメリカのポピュラー系女性歌手が吹き込んだボサ・アルバム、例えば「サバービア系」にも人気の高いジョニー・ソマーズの「Softly, The Brazilian Sound」、それではちょっと軽すぎるということであればイーディ・ゴーメの素晴らしい「Blame It On The Bassa Nova」あたりになるだろうか。ボサっぽい音楽は好きでも、ブラジルまでは踏み込めない・・というタイプの音楽ファンに是非とも愛聴して欲しいCDだ。で、もう1枚(1箱)のご紹介は、60〜70年代に活躍したイージーリスニング系の女性シンガー、ヴィキ・カー。彼女の録音をたっぷり収録した3枚組のCDも発売されている。

He's A Rebel - The Crystals ('62) テキサス州エルパソにメキシコ系アメリカ人として生まれた彼女がポップ・シーンに登場するのは1962年のこと。デビュー・シングルとしてロサンゼルスのリバティ・レコードで吹き込んだのがジーン・ピットニー作の「He's A Rebel」で、このレコーディングに折り悪く(?)立ち会っていたのがフィル・スペクター。友人であるピットニーの作品が録音される様子を見物にでも来ていたのだろうが、そのバージョン(このCDで聴ける)のマーチ調のアレンジを「だせぇっ!」と感じたのか曲のアイディアを持ち帰ってスタジオで早速録音。当時彼が手がけていたクリスタルズを使いヴィキ・カーより早くシングルを出してしまおうと画策したが、当のクリスタルズはニューヨーク巡業中。仕方がないのでロサンゼルスでコーラスとして使っていたダーレン・ラヴ率いる「ブロッサムズ」を彼女たちの影武者とし、クリスタルズ名義でレコードをリリース。その結果「クリスタルズ(偽物)」は見事全米ナンバー1を獲得、一方カーはそのあおりを食って最高115位の惨敗に終わるという、オールディーズ・ファンだったら誰でも知っている有名なエピソードの主人公として、彼女のキャリアは始まった。

 フィル・スペクターにいきなり芽を摘まれるような目に遭わされた彼女だったが、彼女及び所属レコード会社はそれで腐ることなく、アルバム・アーティストとして地道に活動を継続。それが花開いたのは1967年になってからで、ジルベール・ベコー作の「It Must Be Him」のTOP10ヒットでブレイク、60〜70年代に12枚のアルバムをチャートに送り込む活躍を見せた。

 今回のCDは彼女が60年代にリバティに残した作品を中心に選曲された全78曲。彼女はその生い立ちからスペイン語に強いこともありラテン・ナンバーを積極的に取り上げており、80年代以降はそちらに活動の本拠を移して幾つものグラミーを獲得しているが、このCDにもボサノバ・ナンバーなどラテン系の作品がかなりの数収録されている。が、どうもクドくて野暮ったい印象は拭えない。この野暮ったさにアメリカ人は親近感を覚えるのかも知れないが、残念ながら日本人の耳にはトゥ・マッチで余りウケないタイプ。値段は安いので、60年代にはこういう歌手がいて、こういうヒット曲があったんだな。という“確認用”には使えるが、何度も繰り返し聴ける類いの音楽ではないか・・。
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2006年11月07日

日本のジャズ・ソング 〜戦前篇:ジャズシンガー・トップレディース・トップガイズ〜(Columbia/BRIDGE)
日本のジャズ・ソング 〜戦前篇:栄光のコロムビア ジャズミュージシャン/ステージショーのスター達〜(Columbia/BRIDGE)

日本のジャズ・ソング 〜戦前篇:ジャズシンガー・トップレディース・トップガイズ〜 日本のジャズ・ソング 〜戦前篇:栄光のコロムビア ジャズミュージシャン/ステージショーのスター達〜

The Complete Midge Williams Vol.1 (Swing Time) 大好評「昭和のジャズ・ソング」シリーズ第3弾と第4弾の到着。まず第3弾「トップレディース・トップガイズ」は前月CDがリリースされたハワイ生まれの川畑文子に続いてシーンに登場し、日本のステージで活躍した二世シンガーたちの録音を中心に選曲されたもの。とはいってもこのアルバムはまず“純粋な”外国人の録音でスタートするのだが。後にアメリカに帰国しファッツ・ウォーラーやテディ・ウィルソンのバンドで歌うことになる女性シンガー、ミッヂ・ウィリアムスの初録音は、巡業でやってきた日本でだそうで、このCDでそのうちの3曲を聴くことができる。驚くのは彼女が日本語で歌っている点で、これはバートン・クレーンという特殊例を除けば戦後「ヒットパレード」時代以降頻繁に制作された外国人歌手による洋楽の日本語バージョン第1号であろう。日本語の発音も二世歌手と比較して意外なほど違和感がないが、これはレコード会社の外国人スタッフが、ウィリアムスに(ローマ字ではなく)英語表記で指導したものなのだという。

 続いて二世シンガーたちが登場。宮川はるみ、ベティ稲田、リキー宮川、タフト別府といった歌手たちの日本語英語半々の歌(川畑文子のCDを紹介した時にも書いたが、これらを聴いていると戦後の江利チエミのスタイルはむしろ我が国ポピュラー界の“伝統”といった方がいいのかも知れない)は、シンガーとしてのスキルのレベルはまちまちながら奇妙で非常に魅力的な反面、当時この手の怪し気な日本語で外国曲を歌う連中を、軽薄で許し難いものと考えた人が軍部以外にも多数存在したであろうことも容易に想像出来る。だからこそいいんだけれども。

 なお1920年代にエディ・キャンターが大ヒットさせた「Margie」をリキー宮川が「マーチャン」として歌ったのは、岸井明が「Sweet Sue, Just You」を「スーちゃん」と歌い流行語になったのに先駆けるもの(「マーチャン」昭和10年、「スーちゃん」昭和11年)。昭和14年の「南海の月」でボーカルがフィーチャーされているトランぺッター森山久は、おぎやはぎ小木博明の奥さんのおじいちゃん(もうちょっとわかりやすく書くと森山良子の父)である。これは補足、というか蛇足?

角田孝 第4弾「栄光のコロンビアジャズミュージシャン」は、当時のジャズ・シーンで活躍した名手たちの演奏に焦点を当てたもの。この後のシリーズで特集される服部良一のアレンジが冴える「The Music Goes Round and Round」に続いて登場し、このCD最大の存在感を誇っているのはトランぺッター南里文雄。上海のジャズ・シーンで活躍していた彼をわざわざ日本に呼び寄せ録音したトランペット・ソロ2曲及び淡谷のり子と共演した「私のトランペット」は貴重。南里のソロ曲の相手を務め、自らのリーダー録音もここに収録されているギタリスト角田孝の録音も、これまで日本の戦前のジャズをミュージシャン単位で考えたことがなかった僕には非常に新鮮であった。

 後半に登場する中野忠晴とコロムビア・ナカノ・リズム・ボーイズは、この後出るCDで更に大々的にフィーチャーされるのでここでは省略。日本のポピュラー音楽の一つの流れ、宝塚少女歌劇の録音から珍しい「Sing Sing Sing」、戦後は「素敵な貴方」のタイトルで知られている「Bei Mir Bist Du Schone(ここでは『君は素的だ』)」が選ばれているのも面白いし、大阪松竹少女歌劇から登場した笠置シヅ子(待ってました!)の「センチメンタル・ダイナ」の収録は、CDのしめくくりに最適だろう。ボーナスとして追加された「ボーイズもの」のごく初期の録音、ザツオン・ブラザーズ「いろいろソング(7分もある!)」の雑多さも面白い。
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2006年11月06日

The Phonographic Yearbook 1915: They'd Sooner Sleep on Thistles (Archeophone)
In The Good Old Summertime: Those Fabulous Vocal Quartets (Living Era)

The Phonographic Yearbook 1915: They'd Sooner Sleep on Thistles In The Good Old Summertime: Those Fabulous Vocal Quartets

 お待ちかねArcheophoneの20世紀初頭ヒットシリーズ最新盤、1915年(大正4年!)編が届いた。あまりにも昔過ぎて当時の音楽をどう説明すればいいのかよくわからないのだが、とりあえず話題のきっかけとしてこの年生まれたナンバー1ヒットを列記してみると

It's A Long, Long Way to Tipperary - John McCormack (8wks)
Chinatown, My Chinatown - American Quartet (2wks)
Carry Me Back to Old Virginny - Alma Gluck (5wks)
I Didn't Raise My Boy to Be A Soldier - Morton Harvey (3wks)
I Didn't Raise My Boy to Be A Soldier - Peerless Quartet (4wks)
A Little Bit of Heaven ("Shure, They Call It Ireland") - George MacFarlene (5wks)
Home, Sweet Home - Alice Nielsen (2wks)
My Birds of Paradise - Peerless Quartet (4wks)
My Little Dream Girl - James F. Harrison & James Reed (2wks)
Hello, Frisco! - Olive Kline & Reinald Werrenrath (6wks)
Close to My Heart - Henry Burr & Albert Campbell (2wks)
They Didn't Believe Me - Harry MacDonough & Olive Kline (7wks)

The Phonographic Yearbook 1916: The Country Found Them Ready 多くの人にとって一体誰が誰やら??だろう。この年の出来事を年表から拾ってみると、我が国では明治天皇の没後3年間喪に服していた大正天皇の即位礼が執り行われ、甲子園で第1回目の高校野球(当時は「全国中等学校優勝野球大会」)が開催され・・という年のようだが、世界情勢を見ると第1次世界大戦の潮流に各国が巻き込まれていった時期で、日本では戦争に向けての好景気で財をなす輩が続出し、彼らの行状を揶揄する「成金」という言葉が一般に広まった時期でもあるのだという。その頃アメリカは世界大戦に対して中立の立場を取っており、その状況を象徴するのがモートン・ハーヴェイとピアレス・クァルテットの2組が全米ナンバー1に輝いている「I Didn't Raise My Boy to Be A Soldier(兵隊に送るため息子を育てたのではない)」。人類の歴史上戦争が起こる度その状況を憂う歌が生まれ続けているのだとは思うが、バリー・マクガイアの「Eve of Destruction(明日なき世界)」の50年前にこんな「プロテスト・ソング」がヒットチャートで1位を記録していることに感慨を覚えずにいられない。しかしこんな“リベラルな”雰囲気は先にリリースされている1916年編を聴いてわかる通り、この年にドイツがヨーロッパ大陸で“禁じ手”であったはずの毒ガスを使用したり、飛行船「ツェッペリン」でロンドンを空爆したり(随分のどかな時代だね・・)、Uボートや潜水艦で民間船を無差別に沈めるなど無茶苦茶をやり始めたことから一変し、2年後の大戦参戦に向け時局はどんどん戦意高揚の方向へ向かっていくこととなる。

 ポピュラー音楽史的に「ジャズ」が一般に知られるようになるのはオリジナル・ディクシーランド・ジャズ・バンドによる「Dixie Jass Band One Step」がリリースされた1917年以降なので、この年はいわゆる「有史以前」。そんな時期どんな音楽が主流だったかといえば、ブラスバンドをバックにしたオペラ調のシンガーやボーカル・クァルテット、コメディ・デュオなどの録音で、上記の殆どがこの3種に分類される。何故かアイルランドを題材にした曲が多く見られ(恐らく多くの芸人や彼らのステージを支持した聴衆がアイリッシュだったのだろう)「It's A Long, Long Way to Tipperary」「A Little Bit of Heaven」ともにアイルランドを歌ったものだし、アメリカで作られた「Carry Me Back to Old Virginny」「Home, Sweet Home」の感傷的なメロディ(アメリカ人の琴線をくすぐる音楽とは、ここら辺のことをいうのだろう)も、この影響下にあるといっていいだろう。

 世相を反映した曲では当時のテクノロジーの進歩を題材にしたものが面白く「Hello, Frisco!」はアメリカの東西両海岸を結ぶ電話回線が開通したことを歌った“CMソング”。余談だがこの翌年には同趣の「Hello, Hawaii, How Are you?」という曲がナンバー1を記録しており、もの凄い勢いで世界中がつながっていく様子が窺える。ナンバー1ヒットではないがフォード社の車を謳ったビリー・マレイの「The Little Ford Rambled Right Along(米3位)」なんて曲もあり、改めて「歌は世につれ」なんだなぁ、と思う。アメリカン・ポピュラー・ミュージックの黎明期ということで、現在でも名が知られている作曲家ではアーヴィン・バーリンがようやく第一線で活躍中、くらいの状況ではあるが、ジェローム・カーンにとっての初ヒット、アリス・グリーンとハリー・マクドノウが歌う「They Didn't Believe Me」も収録されており、そのドラマチックなメロディはポップスの次の時代を予見させる。他に現在もよく聴かれているナンバーとしては「Chinatown, My Chinatown」のアメリカン・クァルテットによる非常にエキゾチックなバージョン、何故か「遊園地のBGM」というイメージが個人的には強い「Alabama Jubilee(コリンズ&ハーランのバージョンが最高2位を記録)」が作曲されたのもこの頃なのだという。

The Haydn Quartet もう1枚併せての紹介は、この年にも「Chinatown, My Chinatown」「I Didn't Raise My Boy to Be A Soldier」「My Birds of Paradise」が1位を記録している「クァルテット(四重唱)もの」コンピ。「バーバーショップ・クァルテット」なんて言い方もされるこの形態はこの時代大変な人気を博していたようで、レコード・レーベル各社は所属アーティストに「スタジオ・グループ」としてボーカル・クァルテットを組ませ、当時数多くのヒットを放っている。「In The Good Old Summertime」はその中でも代表的な3組、アメリカン・クァルテット(チャートヒット66曲!)」、ハイドン・クァルテット(同62曲!)、ピアレス・クァルテット(108曲!!)」の代表作27曲を集めたもので、20世紀初頭のポップ・ミュージックのメイン・ストリームがどのような音楽で占められていたかを窺い知ることが出来る内容。まずはこの“トラディション”の元祖的存在、ハイドン・クァルテットは「1915」にも登場のハリー・マクドノウが在籍していたユニットで、最初のヒットは1898年(!)というベテラン。あまりに録音が古すぎて何曲かは後年の再録バージョンに差し替えられているのが残念だがCDのタイトル曲や「By The Light of The Silvery Moon」など後年繰り返しカバーされる曲のオリジナルが聴ける。彼らの録音で多分一番有名な1908年の「Take Me Out to The Ball Game(私を野球に連れてって)」が収録されていないのは納得いかないが、これは他のCDで聴けるでしょ。ということなのか。

The American Quartet 続いて登場アメリカン・クァルテットは、恐らくアメリカ音楽産業最初の「スーパー・グループ」といえるユニット。後期ハイドン・クァルテットのメンバーでもあるビリー・マレイ(ソロ名義だけでも169曲のヒットを残している)を中心に編成されており、1910年から17年にかけて12曲のナンバー1ヒットを放った。このCDではそのうち8曲を聴くことができ、ソロとしても各々実績を持つ実力者が集まり刺激的なコーラスを聴かせてくれている。

The Peerless Quartet 最後3組目はユニットとしては最大の成功を収めたピアレス・クァルテット。彼らはデュオとしても数多くのヒットを残しているヘンリー・バーとアルバート・キャンベルの2人が中心となった4人組で、20年以上に亘りレコーディングを行った。彼らの代表曲は「1915」でも聴ける(マスタリングはArcheophone盤の方がいいようだ)が、こうしてひとまとめにされたのは有り難い。前述の通り各グループとももの凄いヒット曲数なので、いずれは各々単独のCDリリースも期待したいが、音楽のガイド本やサイトを見るとたまに「ビーチ・ボーイズのハーモニーのルーツはバーバーショップ・コーラスに求めることができる。」なんて記述を見かけることがあり「そんなこと書くくらいだったら当然このCDは聴いてるよね。」と言える恰好の「一般教養CD」の登場を、まずは歓迎することにしたい。
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2006年11月05日

The Best of Daniele Vidal (Universal/Barclay)
Gold - Michel Delpech (Universal/Barclay)

The Best of Daniele Vidal Gold - Michel Delpech

 70年代洋楽チャートに幾つものヒットを送り込んだフランス娘、ダニエル・ヴィダル。当時を知らない音楽ファンでも「オー・シャンゼリゼ」くらいは誰でも聴き覚えのある彼女の作品は、長いこと再録バージョンでしかCDで聴くことができなかったが、この度ユニヴァーサルから待望のオリジナル音源のCD化が実現。

パリ1969 - 加橋かつみ 聞くところによると、彼女が日本でレコードを発表するきっかけとなったのは、タイガースの加橋かつみがグループ脱退後パリで行ったソロ・レコーディングだという。レコーディング・スタジオに出入りしていた歌手の卵ダニエルをいたく気に入ったプロデューサーの川添象太郎が彼女との契約を決めたとのことだが、このとき制作された加橋のアルバムは大したヒットとはならなかったようなので、彼らのパリ行き最大の収穫がダニエル・ヴィダルの発見だったということになる。CDを聴くとキュートなフレンチ・ポップのオンパレードで、大変な制作スタッフがブレーンについていたのかな、と思わせるが実はその作品の多くがフランスでリリースされていた作品のカバーで、彼女は日本に「フレンチ・ポップの粋」を紹介する役割を果たした、と解釈すべきなのだろう。

Les Champs-Elise´es - Daniele Vidal ('71) 僕は年代的に彼女はリアルタイムではなく、数年前発行していたメルマガで70年代の洋楽チャートを紹介する際に彼女のアナログ盤を中古で買い求め聴き込んだのが“ファースト・コンタクト”なのだが「天使のらくがき」「ピノキオ」「私はシャンソン」などのキュートさは、一聴してすぐさま気に入ったものだった。彼女の活動後期は日本人作曲家の作品を中心に録音していたそうだが、そこら辺をあえて外した選曲は、現在でも受け入れやすい「ダニエル・ヴィダル」の演出として正解だろう。ドリス・デイの「ケ・セラ・セラ」のカバーが、この当時発表されたメリー・ホプキン版によく似ているのは、日本の制作陣がイメージする「ヨーロピアン・ポップス」のヒントがここら辺にあるのかな、と思われて面白い。

 彼女が残した超キュートなフレンチ・ポップの数々、これってフランス人は全くその存在を知らないんだなぁと考えると、我々は如何に選ばれた民族なのか!と喜びを禁じ得ない・・・というのはいささか大袈裟だが、当時をよく知る人、その後生を受けた世代だけど純粋にポップスが好きな人など、音楽を愛する人であれば誰でも必聴のCDだと思う。ただ全18曲聴き進めていくとどれも作風が似通っているので次第に気分がダレてくるのは否定できないが・・。あともう1枚はこのCDの半年くらい前にTVCMで「青春に乾杯」が使用されたことがきっかけで国内盤がリリースされていたミッシェル・デルペッシュ。彼のCDを買い損ねてたな・・と思いネットで検索したらつい先日フランスのユニヴァーサルから2枚組ベスト盤(全36曲)が発売されていて、選曲を見ると日本盤収録曲はすべてカバーされているし、値段もあまり変わらないし・・ということでこちらの入手を決めた。

青春に乾杯〜グレイテスト・ヒッツ - ミッシェル・デルペッシュ 日本では69年の「Wight Is Wight(ワイド・イズ・ワイト)」、71年の「Pour Un Flirt(青春に乾杯)」がヒットを記録したデルペッシュのデビューは1966年。「Inventaire 66(66年の決算)」で聴ける“イエイエR&B”なテイストをはじめ英米の音楽の影響下で新しいタイプのフレンチ・ポップを生み出した才人として、一発屋のステイタスにとどめておくには惜しい作品が並んでいる。中でも僕が気に入ったのは「Et Paul chantait "Yesterday"」で、「そしてポールは『イエスタデイ』を歌った」とのタイトルが付けられたこの曲で彼はポール・マッカートニー風のメロディとフレンチ・テイストを高度に融合。他にもスタジオで実験を重ねに重ねた感じの“デルペッシュ版サイモンとガーファンクルの「The Boxer」”的趣きが感じられる「Que Marianne e´tait jolie(美しかったマリアンヌ)」など、時代の空気を反映した作品の数々がどれも非常に面白い。

 超ポップな「La vie, la vie(美しき世界)」、70年代後半から80年代にかけて彼がとったAOR的アプローチなど、まだまだ紹介したいことは一杯ある。彼のこともっと高く評価しないといけないね。僕の中で彼のステイタスがグッと上がった、素晴らしい内容のベスト盤であった。


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2006年11月04日

ナウなヤングだ! エレキ歌謡でゴーゴーゴー!(Victor)
エレキ歌謡ア・ゴー・ゴー(Teichiku/chronicle)

ナウなヤングだ! エレキ歌謡でゴーゴーゴー! エレキ歌謡ア・ゴー・ゴー

浜田山バックビート(03-3329-6727)ブログ 最近贔屓にさせてもらっているお店で、井の頭線浜田山にある「BACKBEAT」という音楽バーがある。お店のマスターが60年代を中心に、あれこれかけてくれる音楽に耳を傾けながらお酒が飲めるなかなかいい雰囲気のスポットで、僕は月に何度かお邪魔させていただいている。この店の常連客はマスターの昔からの音楽仲間が多く、その何人かはレコード会社のスタッフや音楽評論家など日常的に洋楽に接しておられる方だったりするので、話を聞いてて非常に勉強になることが多い。

 で、この常連客の中に「中村さん」という方がいらして、何ヶ月か前にお会いした時に「今エレキ歌謡のコンピを選曲中なんだよねぇ。」という話を聞いていた。先月めでたくその「エレキ歌謡コンピ」が発売されたので、早速購入し聴かせていただくことに。

スイム!スイム!スイム! - 橋幸夫 60年代半ば、ビートルズとベンチャーズの2大巨頭(?)によって日本にもたらされた“エレキブーム”の影響は歌謡界に及び、多くの若手歌手のサウンドに“エレキ”が導入された。「ナウなヤング〜(この言葉って60年代には既にあったっけ!?)」はこの時代のエレキ歌謡を40曲集大成した2枚組で冒頭からアイドル御三家(橋幸夫、舟木一夫、西郷輝彦)がずらりと並ぶ構成が頼もしい。他にも男性シンガーでは三田明、美樹克彦、田辺靖雄、千昌夫(!)、女性では木の実ナナ、青山ミチ、ジュディ・オング、仲宗根美樹まで、御三家と同世代からヒッパレ系の残党、一般には演歌のイメージが強いシンガーまで、この時代は多くのアーティストが“エレキ”に手を染めていたことがわかる。エレキ歌謡の金字塔といっていい「太陽の彼方に(ノッテケ、ノッテケ)」の田川譲二版は、なんとオリジナルのアストロノウツ盤にそのままボーカルをかぶせてしまったという、現在だったら告訴ものの珍盤。

涙の太陽 - エミー・ジャクソン もう1枚の「エレキ歌謡ア・ゴーゴー」はエレキ歌謡の特に濃い部分を26曲集めた印象の“上級編”。「ナウな〜」と比較してマイナーなアーティストが多く、加えて80年代に録音された高田みづえの「そんなヒロシに騙されて」、ジューシーフルーツの沖山優司が歌う「東京キケン野郎」、ザ・ナンバーワン・バンドの「六本木のベンちゃん」など“エレキ歌謡リバイバル”も追加された幅広い内容になっている。珍品系も少なからずあって、エレキにのって北島三郎ばりに謡い上げる間宮ひろし「新宿野郎」の“郷里籍(こくせき)不明感”や、野際陽子が歌う「非常のライセンス」のテーマ(ボーカル・バージョン)で聴ける“刹那な性愛観”にはシビレた・・。ライナーノーツでもチラッと触れられていたが、この流れだったら90年代に再発見されマニアの間で話題になった海道はじめの怪作「スナッキーで踊ろう('68)」が入っても違和感なく聴けただろう。こちらのCDでは「太陽の彼方に」の藤本好一バージョン(演奏はブルー・ジーンズ)を収録、この曲と並ぶエレキ歌謡の最重要作で「J-POP」の出発点でもある「涙の太陽」は、このCDには青山ミチのバージョン、「ナウ〜」にはエミー・ジャクソン版が収録されバランスがとられている。

ベンチャーズ歌謡大全 これらの作品をまとめて聴けば、60年代後半に盛り上がったグループサウンズが突然変異的に発生したものではないことがよくわかるし、初期のブルーコメッツやスパイダースなどのサウンドとそれ以前の歌謡曲との連続性も理解できると思う(実際に彼らがバックを務めた作品もある)。「日本のロック」の流れの中でこれまで見落とされがちだった「ヒッパレ」と「GS」を結ぶミッシング・リンクの大量発掘には、ただただ感謝したい。これと合わせ、数年前発売されたいわゆる「ベンチャーズ歌謡」のコンピレーションも揃えれば1960年代「青春歌謡」の一部であった「エレキ歌謡」に関しては、ほぼ完璧といっていいのではないだろうか。

 つい先日、件の「BACKBEAT」に立ち寄り、再びお会いした中村さんにCDの購入を報告したら「結局『日本のロック』って今も昔も『エレキ歌謡』なんだよね。」と言われた。確かに・・。現在氏はタイガースの「オフィシャル・ブートレッグ」の音源を吟味中なのだとか。こちらの到着も楽しみにしたい。

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