2006年08月31日

The New Gary Puckett & The Union Gap Album/The Gary Puckett Album (Gottdiscs)
The Best of 1910 Fruitgum Company (Repertoire)

The New Gary Puckett & The Union Gap Album/The Gary Puckett Album The Best of 1910 Fruitgum Company

Woman, Woman - The Union Gap feat. Gary Puckett ('68) 1960年代末、2年弱と期間は短いながらもアメリカのヒットチャートを席巻したポップグループが、サンディエゴ出身のイケメン、ゲイリー・パケット率いるユニオン・ギャップ。プロデューサーのジェリー・フラーが用意する滑らかなロック・サウンドと、パケットのスムースなバリトン・ボイスで次々とヒットを生み出し、あの時代屈指の「AOR」を遺した。西海岸のロックバンド「アウトキャスト」として活動をスタートさせた彼らは出演していたクラブを偶然訪れたフラーに見出され、彼が当時専属契約を結んでいたコロンビア・レコードに紹介される。67年にデビュー・シングルとして彼らに与えられたのは「Girl, Girl」というタイトルのカントリー・ソングで、これを「Woman, Woman」と改め力強く歌い上げたバージョンが全米チャートの4位まで上昇し、幸先の良いスタートを切った。この大ヒットに合わせリリースされたファーストアルバムはシングル曲に山ほどのカバーとオリジナル曲が少々という急造ぶりにも関わらず、アルバムチャートのTOP20に迫る勢いでセールスを伸ばした。

Young Girl ('68)/Incredible ('68) - Gary Puckett and The Union Gap 彼らが成功の頂点に達したのは1968年で「Young Girl('68米2位)」「Lady Willpower(同2位)」「Over You(同7位)」とTOP10ヒットを連発。「Young Girl」をフィーチャーしたセカンド・アルバム(アルバムチャート21位)はファーストと同様カバー作品が中心だが、グレン・キャンベルの「Dreams of The Everyday Housewife」やボビー・ゴールズボロの「Honey」など先輩格にあたる同時代のMORシンガーたちへの挑戦状とも受け取れる選曲に、ボーカリストとして自信を深めたパケットの充実ぶりが窺える。続く後者2曲を収録したサード「Incredible(同20位)」は全曲をフラーまたはグループ・メンバーによるオリジナル曲で固めた内容で、相変わらずのバラード路線でワンパターンといえばワンパターンだが、フラーとパケットのコラボレーションを味わうに最も適したアルバムに仕上がった。

 と、ここまでが彼らがメジャーデビューを果たしてからたった1年間の出来事、ここからようやく今回入手したCDの話題へ。69年にある作品の録音で方向性の違いが表面化したフラーとグループは袂を分かち、後任プロデューサーにはディック・グラッサーが就任。メンバーたちのオリジナルに若干知名度の劣るソングライターたちの作品を加えた4枚目のアルバムが「The New 〜」で、プロデューサー交代によるサウンドの変化が直接の原因になったのかはわからないが、この頃になるとグループの人気は明らかに翳りを見せており「Don't Give In To Him('69米15位)」「This Girl Is A Woman Now(同9位)」の2曲を最後に彼らは2度とTOP40に返り咲くことはなかった。アルバム自体はサウンドが幾分きらびやかさを増し、各曲もこれまでのものと見劣りするものではなかったが旬を過ぎた感は否めず、これまでどのアルバムもチャートのTOP20付近にコンスタントに送り込んでいた彼らには不本意な最高50位に終わってしまった。

 ひとたび活動が下り坂に差し掛かると人間関係は脆いもので、70年になると脱退メンバーが相次いでグループは実質的にパケットのツアーバンドに変質。パケット自身もソロ名義での作品発表を決意し、リリースされたのが「The Gary Puckett Album」だった。選曲ポリシーをかつてのカバー路線に戻した本作からはバカラック・ナンバー「I Just Don't Know What To Do With Myself('70米61位)」、サイモンとガーファンクルの「Keep The Customer Satisfied('71米71位)」の2曲がヒットしたが、チャート成績から考えれば殆ど相手にされなかった、と見るのが正解だろう。アルバムの内容は決して悪くはなく、レオン・ラッセルの「Delta Lady」、バリー・マン&シンシア・ウェイルの「Angelica」、ポール・ウィリアムスとロジャー・ニコルスの「Do You Really Have A Heart」など聴きごたえのある作品は多い。ブラス・サウンドを多用している点は、ジェリー・フラーが彼とコンビを解消した後に手がけ、成功を収めたスパイラル・ステアケースに通じる雰囲気もあり、そこら辺も興味深く聴ける。

 今回のCDには当時アルバムから漏れたシングル音源もボーナスとして網羅されており、中でも一聴してそれとわかるブライアン・ポッターとデニス・ランバート作の「I Can't Hold On」が面白い。ゲイリー・パケットの作風はいってみれば「大人向けのバブルガム」で、全作を通じてこの路線には揺るぎがないのでどのアルバムもハズレはなく、安心して聴ける。で、もう1枚の「本家バブルガム」1910フルーツガム・カンパニーへ。彼らのベスト盤はそれこそ各国で数えきれないほど出されており、日本でもなかなかいい選曲のCDが出ているが、今回紹介するのはドイツのRepertoireがクレイジー・エレファントに続いてリリースしたバブルガム・シリーズ第2弾(アーチーズも出しているから第3弾か)。このプロジェクト名義でリリースされたシングルAB面を、ブッダ、スーパーK、ドイツのハンザ、更にイタリアでリリースされたイタリア語版(誰が歌ってるんだ?)までレーベル/発売国を横断して網羅しており、中には適当にジャムって一丁上がり、といった感じのいい加減な録音もあるが、貴重音源には違いない。Repertoireには今後知られざる“バブルガムの秘宝”を徹底的に発掘して欲しいな、という希望も込めて、とりあえず購入を報告しておこう。

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2006年08月29日

Summer U.S.A.!: The Best of The Rip Chords (Sundazed)
Do It Again!: The Best of Jon & Robin (Sundazed)

Summer U.S.A.!: The Best of The Rip Chords Do It Again!: The Best of Jon & Robin

 夏らしく暑い日がいつまで続くのかわからないので、今のうちに夏っぽいグループ2組のCDを紹介。サーフィン/ホットロッドの人気グループ、リップ・コーズはこれまでオリジナル・アルバムがCD化されたりしていたが、今回(多分)初めてまともなベスト盤が発売された。「ブルース&テリー」としても知られるプロデューサーコンビ、ブルース・ジョンストンとテリー・メルチャーの覆面グループという印象が強い彼らだが、このCDではできるだけオリジナル・メンバーであるフィル・スチュアートとアーニー・ブリンガスの活躍にも焦点が当てられるよう配慮されており、ライナーでも2人のコメントにかなりのスペースが割かれている。

The Best of Bruce & Terry 63年にウェイド・フレモンズのマイナーヒットのカバー「Here I Stand」をチャートインさせた(最高51位)際はあまり特色のないMORグループだった彼らを、流行りのサーフ・グループに仕立て上げたのはブルース&テリーの2人で、曲によってはブルース・ジョンストンの歌声が前面に出てしまっているものも。このCDでは「Hey Little Cobra('64米4位)」「Three Window Coupe(同28位)」などお馴染みのヒットを始めシングルA面曲と主要アルバム・トラック等全20曲(うち未発表3曲)が聴けるが、先日紙ジャケ盤も出たオリジナル・アルバムのCD2枚(ボーナス付き)を揃えればリップ・コーズ名義の録音はほぼすべてを聴くことが出来るので、そちらを購入すればよかったのかも知れない。作品そのものは制作スタッフの充実もあってなかなかの内容、テリー・メルチャーが一時期ボビー・ダーリンとホットロッドに取り組んでいた頃の作品や、駆け出し期のP.F.スローン&スティーヴ・バリ作品など、興味深いものは多い。ホットロッド系のアーティストは大概その活動後期(65年頃)にフォークロック風の作品を発表していて、勿論ヒットはしていないのだが僕はそれらの味わい深さが好きで毎度楽しみにしているが、リップ・コーズは64年には早々に録音を打ち切ってしまったためその手の作品がなく、その辺はちょっと食い足りない。幾つかのヒット曲を別にすれば、ブルース&テリーの活躍の補足的作品集と捉えた方がいいか。

 もう1枚は、夏は夏でも「サマー・オブ・ラヴ」の方。ジョン&ロビンは67年の「Do It Again A Little Bit Slower(米18位)」のヒットで知られる男女2人組で、“ジョン”ことジョン・アブナー・ジュニアはテキサスの富豪の息子。彼の父であるジョン・ハワード・アブナー・シニアは保険業で財をなす傍ら歌手として成功を夢見る息子のためレコード・レーベル「アブナック」を設立、同社からはファイヴ・アメリカンズによる諸々のヒットが生まれたりもしている。1963年以降同レーベルからシングルを次々とリリースしながら一向にヒットを飛ばすことの出来ないジュニアは、1965年に方向を転換し“ヒッピー世代版ポールとポーラ”の結成を決意。この思いつき自体如何なものかとは思うが、当時活躍していた幾つかの男女デュオ(中でも成功したのがソニーとシェール)の亜流の一つとして西部で活動。初代ロビンには早々に愛想を尽かされてしまったようだが、その後釜として雇われた16歳の少女、ジャヴォンヌ“ロビン”ブレガが参加してからは事態は好転、前述のポップなダンスナンバー「Do It Again 〜」が見事ヒットを記録した。

Elastic Event - The Jon & Robin ('67) ジョン&ロビン初めての(そして恐らく最後の)オフィシャルCDは2人がバックバンドの“ジ・イン・クラウド”と65年から69年にかけて録音したシングル音源等を集めたベスト盤。「Do It Again 〜」の後2人は「Drums('67米100位)」「I Want Some More(同108位)」「Dr. John (The Medicine Man)('68米87位)」「You Got Style(同110位)」と“モスキート級”のヒットを連発したが、何しろ所属レーベルのオーナーは自分の父親、売り上げなど気にせずレコードの制作を続けられたのだろう。またレーベル・メイトであるファイヴ・アメリカンズの成功も2人を助けていて、ジョンとロビンは彼らのツアーに同行。68年のセカンド・アルバム「Elastic Event」ではアメリカンズの面々が全面的にバックを務めており、彼ら自身のアルバム同様ソフト・ロック的になかなか聴きごたえのあるサウンドになっている。

 上記ヒットの殆どはボックス・トップスのナンバー1ヒット「The Letter」を作曲したことで知られるウェイン・カーソン・トンプソンが提供、これらも含めトンプソン作品はCDに全部で6曲が収録されており、そこら辺から感じる雰囲気は60年代後半に隆盛を極めた南部産のポップスに通じる。その他ジェフ・バリーとアンディ・キムが作ったバブルガム調の「You Got Style」、「Do It Again 〜」の続編風な「My Heart Beats Faster」、あと前述のセカンド・アルバム収録曲など個々に聴けば楽しめるものもあるが、やはり才能の限界感は否めない。彼らのディスコグラフィを見ると、アポロ11号の月面着陸に感銘を受けて作られたと思われる「There's An American Flag on The Moon (Part 1&2)」なんてシングルもあるようで是非とも聴いてみたかったが、収録されなかったところを見ると恐らくとんでもなく冗長な作品だったりするのだろう。ルックスも含め、2人の“イケてなさ”を好感を持って受け入れられるかどうかが、このCDの評価の別れ道。

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2006年08月26日

A Taste of Tequila/Hats Off - The Mariachi Brass! feat. Chet Baker (BGP)
Soundtrack to The Doo Wop Era: A Kenny Vance Collection - Kenny Vance & The Planotones (Ace)

A Taste of Tequila/Hats Off - The Mariachi Brass! feat. Chet Baker Soundtrack to The Doo Wop Era: A Kenny Vance Collection - Kenny Vance & The Planotones

 昨年アメリカに行って中古レコード屋を廻った時、やたらあちこちで見かけるので気になって結局買ってしまったアルバムに「マリアッチ・ブラス」があった。チェット・ベイカーが60年代当時大ブレイクしていたハーブ・アルパートのまねごとをさせられた作品ということで、ジャズ・ファンには存在そのものが許し難いらしく、発売から40年、CDの時代になって20年の今年まで無視され続けたという曰く付きのアルバム・・。

 「ウェストコースト・ジャズのアイドル」ベイカーの才能が輝きを放ったのは1950年代のこと。60年代に入ると彼はヨーロッパに渡り、その後薬物濫用と逮捕投獄を繰り返しながら各国を転々。60年代半ばにようやく本国に戻り、かつて名作「Chet Baker Sings」を生んだレーベル「パシフィック・ジャズ(この頃は“ワールド・パシフィック”と社名を変更)」からリリースしたのが「マリアッチ・ブラス」名義の諸作だった。レコーディングのアレンジメントをジャック・ニッチェが務め、バックを通称「レッキング・クルー」と呼ばれるスタジオ職人たちが固めるという、ポップス・ファンにとっては非常に贅沢な内容のこれらを、ジャズ・ファンの偏見の犠牲にしておくのはもったいない。

A Taste of Tequila - The Mariachi Brass! feat. Chet Baker ('66) ハーブ・アルパートの「ティファナ・ブラス」も発足当初は西海岸のスタジオ・ミュージシャンたちによる架空のバンドであり、この「ティファナ〜」と「マリアッチ〜」のレコーディングにはかなりの人数共通した顔ぶれが関わっていた模様。中には「ティファナ〜」の中核をなし、その後スピン・オフ・プロジェクト「バハ・マリンバ・バンド」のリーダーとなったジュリアス・ウェクターなんて「お前まで参加しちゃまずいだろっ!」的存在のミュージシャンまでセッション・リストに名を連ねており、ここら辺は当時の音楽シーンのおおらかさが窺えて面白い。66年にリリースされたプロジェクト第一弾「A Taste of Tequila」は50〜60年代にかけてヒットしたメキシコ風味のポップスを集めたアルバムで「Tequila」「Mexico」「El Paso」「La Bamba」など如何にもなナンバーが並ぶ。中でも耳を惹くのはオープニングの「Flowers On The Wall」、バカラック・ナンバー「Twenty Four Hours from Tulsa」あたりで、そのハマりっぷりがいい感じ。馴染みのスタジオ仲間とバッキング・トラックを完璧に仕上げ、伝説のトランぺッターをスタジオに迎えたニッチェは、当初の企画打ち合わせで「歯が全部抜けちゃって、楽器なんてろくに吹けないらしいよ。」といわれていたベイカーとレコーディングを敢行。歯はともかく(ドラッグの代金の替わりとして、売人に一本ずつ抜かれたという伝説がある)当時頻繁に使用していたフリューゲル・ホーンで見事アルバムの装飾部分を務めた彼のソロが随所で聴けるこのアルバムは市場でもまずまずの好評をもって迎えられ、アルバムチャートで最高120位を記録と、アルパートの成功には遥かに及ばないもののこのジャンルとしてはなかなかの成績を残した。

Hats Off - The Mariachi Brass! feat. Chet Baker ('66) この好成績に気をよくしたレーベルは同年早速第2弾アルバムを企画、矢継ぎ早にリリースされたのがCDカップリングの「Hats Off」。こちらは当時ヒットチャートを賑わせていた曲のカバーに選曲が集中していて、ソフト・ロック的には断然聴きどころ多し。ゲイリー・ルイスの「Sure Gonna Miss Her」やタートルズの「You Baby」なんてちょっと渋めのナンバーに加え、シェールの「Bang Bang」やナンシー・シナトラの「These Boots Are Made for Walking(「うたばん」のテーマって、この録音のピッチを上げて使ってるの?)」で聴かれるサウンドのゴージャズさや、ボビー・ゴールズボロの「It's Too Late」のノリのよさは完全に「ティファナ」のそれを凌駕している。考えてみたらここら辺の曲って、オリジナルの録音も彼らがやってるかも知れないんだよね。他にもデヴィッド・セヴィルの「Armen's Theme (Yesterday and You)」、ベン・E・キングの「Spanish Harlem」など気になるナンバーが多数、セールスは振わなかったようだが、聴き応えという点ではこちらの方が数段上である。

Looking for An Echo Original Motion Picture Soundtrack ('99) ポップス・ファンには非常にオイシイ曲満載のこのCD、「マリアッチ〜」名義のアルバムはその後あと2枚出されているので続編も期待したいが、まずはこれまで見向きもされなかったイージーリスニングの好盤としてチェット・ベイカー本筋の評価とは別に、マニアの間で愛でていくべき作品だと思う。もう1枚のケニー・ヴァンスとプラノトーンズは、現存するドゥ・ワップグループとしては恐らく世界最高の存在。昨年暮れにリリースされたアルバム「Lovers Island」はmeantimeのホームページで取り上げたことがあるので彼らについてのあれこれはそちらをご覧いただくとして、今回はニューヨークのローカル・ヒーローである彼らを海外の音楽ファンに紹介すべくイギリスで発売されたベスト盤をご紹介。これは前述の「Lovers Island」とオールディーズ・ファンは必見のハート・ウォーミングな映画「Looking for An Echo(奇跡の歌;今や超人気俳優のジョシュ・ハートネットが主人公の息子役を好演)」のサントラから選ばれたドゥ・ワップ・クラシック17曲に、未発表やライブ録音を加えた全24曲。

Lovers Island - Kenny Vance & The Planotones ('05) とにかく和みの極地、「ビートルズ以降の音楽は聴かないよ。」なんて“純血主義”なオールディーズ・マニアにも充分ご満足いただける、というかそんなこと僕が言うまでもなく「勿論プラノトーンズは聴いてますよね??」という感じ。「Lovers Island」を紹介したときも書いたが、プラノトーンズ、日本で観たいなー。いいハコもあるし、熱心な音楽ファンも多数詰めかけるだろうし・・。長門さん、なんとかしてーっ!(??)

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2006年08月21日

Cuchi-Cuchi - Charo and The Salsoul Orchestra (Koch/Salsoul)
Bill Cosby Sings Hooray for The Salvation Army Band! (Collectables)

Cuchi-Cuchi - Charo and The Salsoul Orchestra Bill Cosby Sings Hooray for The Salvation Army Band!

 ジャンルを問わずノヴェルティっぽい作品に惹かれる傾向があるようで、それっぽい作品を見かけると内容もよく確認せずつい買ってしまったり。上掲2枚もどんな音かよく知らないまま入手したもの。

 まずチャロことマリア・ロザリオ・マルティネスは1941年スペイン生まれの女優/歌手/ギタリスト。一時は日本でも有名なザビア・クガート(1900年生まれ!)の奥さんだったこともあるそうで、その彼女がサルソウル・オーケストラをバックに録音したのが1978年のこのアルバム。艶かしいジャケット写真をご覧いただけばある程度察しがつくと思うが「お色気ディスコ」といった感じの内容で、シルヴィアの「Pillow Talk」や初期のドナ・サマー、ディスコ路線時のダイアナ・ロスあたりを想像してもらえばどんなものかおわかりいただけるはず。

Charo: Today シングル・カットされたダイアナ・ロスタイプの(というか何故か僕の中では木の実ナナのイメージに近い)ダンス・ナンバー「Dance A Little Bit Closer」がディスコチャートの18位まで上昇した、このアルバムのプロデュースを担当したのはフィラデルフィア・ソウル界の重鎮ヴィンセント・モンタナ・ジュニア。彼がソングライティングに関わっている作品は概して出来がよく、サウンドは鉄壁のフィリー・サウンドなので「ノヴェルティ好きにしてフィリー好き」な僕にはたまらない内容。彼女のテーマ曲である「Cuchi-Cuchi(彼女のニックネームは“クチ・クチ・ガール”なのだそうだ)」や「Cookie Jar」「You're Just The Right Size」など思わせぶりなタイトルの曲が満載な一方、何故かローリング・ストーンズの「Let's Spend The Night Together」のカバー(多分クロディーヌ・ロンジェ版と並ぶ珍品)やパット・ブーンの「Speedy Gonzales」なんてどうしようもないものも入っているが、そこら辺は曲を選んで聴けば問題はない。フィリー・サウンドって本当にいいなー、とその甘美な世界に浸れる1枚。なお彼女は現在も活躍中、94年にはアルバム「Guitar Passion」をラテン・チャートにランクインさせており、近年はラスヴェガスのショーにギターを抱えて出演しているのだとか。

 もう1枚はビル・コスビー。世代的に僕は彼の「理想の父親像」的キャラしか知らないのだが、60〜70年代はかなり尖ったスタンダップ・コメディアンだったようで、当時残された彼のコメディ・アルバムは随分早い時期からCD化が進み、現在もカタログに残り続けているところからその根強い人気を窺い知ることが出来る。一方で彼が発表した「音楽アルバム」は殆ど評価されていないようで、67年のヒット「Little Ole Man(米4位)」が収録されたアルバムさえつい最近までCD化の検討もされていなかった模様。で、最近入手したのが68年発表の音楽ものとしてはセカンドに当たるもの。

The Watts 103rd Street Rhythm Band ('67) 何故か「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」で始まるこの作品は、当時のヒット曲に面白おかしい歌詞をのせた「替歌アルバム」。英語にあまり強くないのでその面白さが今ひとつよくわからないのだが、このアルバムからはジミヘンの「Purple Haze」をパロディにしたタイトル曲('67米71位;作曲はコスビー本人になっているがそれはまずいだろ)と「Funky North Philadelphia('68米91位;またフィリーものだ!)」が小ヒット。はっきりいって大したアルバムではないのだが、実はこのアルバム、バックの演奏をデビュー後間もない「The Watts 103rd Street Rhythm Band(103丁目バンド)」が務めており、その点で存在価値がある。僕は彼らのファースト・アルバム(殆ど全編インスト)のゆるーい世界が結構好きで、それに通じるものがこのアルバムからも感じられて、なかなか楽しい。まぁ、こんなものまで買って聴く人はさすがにいないと思うが、一応ご報告ということで。
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2006年08月20日

The Definitive Groove Collection - Chic/Sister Sledge/Slave feat. Steve Arrington (Atlantic/Rhino)
The Definitive Groove Collection - Grandmaster Flash, Melle Mel & The Furious Five (Sugar Hill/Rhino)

The Definitive Groove Collection - Chic The Definitive Groove Collection - Sister Sledge The Definitive Groove Collection - Slave feat. Steve Arrington The Definitive Groove Collection - Grandmaster Flash, Melle Mel & The Furious Five

 アメリカのライノ社が管理するワーナー/アトランティック系や、直に所有するアーティストの音源を再編集するベスト盤「Definitive(決定版)」シリーズがこのところ色々なジャンルで発売されている。その多くがこれまでに出たコンピレーションとあまり代わり映えのしない内容だが(初めて買うのであれば最適だろう)、70年代後半〜80年代前半のR&Bアーティストのベスト盤シリーズ「Definitive Groove」がかなりいい選曲だったのでまとめて取り寄せてみた。

Risrue - Chic ('79) まずはシックとシスター・スレッジのベスト。これは「考えてみたらシックとかのCDってこれまで持ってなかったよな。」というだけの話なんだけど。主要なヒットはオムニバスで間に合わせて、それっきりという。この2枚組「Definitive Groove」シリーズは、曲はフル・レングス(アルバム・バージョン)、ヒット曲は可能な限り収録という有り難い内容。“チャートマニア界”ではAMラジオ向けに短くエディットされた「シングル・バージョン」を絶対視する傾向があるのだが、僕はことR&Bに関しては一曲を6分〜7分楽しめる「アルバム・バージョン」が好きなので、この編集方針には大賛成。ディスコ・サウンドを芸術的領域にまで高めたと言われるシック編はR&Bチャートに登場した14曲を、サントラや90年代の再結成盤なども含めすべて収録。シックの全盛期は78〜79年のほぼ2年間と非常に短く、80年代に入るとナイル・ロジャースがプロデューサーとして忙しくなりすぎてグループ本体の作品は何となく散漫なものになってしまうのだが、1枚目のCDでは「Dance, Dance, Dance」「Le Freak」「Good Times」といった“全盛期”のサウンドをたっぷり楽しむことが出来、内容的に最高。2枚目のCDは単なる“音集め用”か。別レーベルからリリースされた映画「Soup for One」の主題歌('82R&B14位/POP80位)とか、92年の「Chic Mistique(R&B48位)」なんかは、音楽的にはもはや全然興味ないけど、チャートマニア的には入ってると有り難い、という感じ。あとは「ナイル・ロジャース作品集」みたいなコンピレーションがあるといいんだけど。80年代は外部仕事の方が圧倒的に内容がいいので。

We Are Family - Sister Sledge ('79) 続くシスター・スレッジ(R&Bヒット19曲すべて収録)はシックとのコラボ仕事があまりにも大きな成功を収めてしまったため、彼らの子飼いグループのような印象が強いが、実はとんでもなくて芸歴的には彼女たちの方が“姐さん”、R&Bチャートの歴代ランキングでも彼女たちの方がシックより上位(2004年版ではシック260位、シスター・スレッジ249位)にいたりするという。ここでは70年代半ばのフィリー・ソウル系ヒットから順を追って彼女たちの活躍をたどることが出来るが、やはりCDの中心になるのは「シック・エラ」。アルバム「We Are Family('79)」から6曲、「Love Somebody Today('80)」から5曲が収録されており、中でもやはり「He's The Greatest Dancer」と「We Are Family」のR&Bナンバー1ヒット2曲の存在感が凄い。特に「We Are Family」はアメリカ人にとって特別な曲になっているようで、「9.11」やハリケーンによる災害など、国民に災難が降り掛かる度に人種を超えた団結を呼びかけるため再録音が繰り返されているのだという。

 彼女たちは80年代に入ってシックと心中した訳ではなく、82年にはアルバム「The Sisters」をセルフ・プロデュースで発表、かつてのきらびやかさは後退したがオーソドックスな「My Guy(R&B14位/POP23位)」で彼女たちだけの力でもヒットを生み出せることを証明、85年にはフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドが大ブームとなっていたイギリスでたまたまリリースしたために全英ナンバー1を記録してしまった「Frankie(R&B32位/POP75位)」なんてラッキーなヒットもあったり。彼女たちの多岐にわたる活躍を余すことなく伝えるこの2枚組、内容も価格もまさに「Definitive」といっていいと思う。

The Definitive Collection - Aurra 3枚目はちょっと知名度が落ちてスレイヴ。77年の「Slide(R&B2位/POP32位)」以外はあまりHOT100に縁のないグループだったので見落としがちだが、R&Bチャートには約10年に亘り20曲のヒットを送り込んでいる。オハイオ出身のトランぺッター、スティーヴ・ワシントンが中心となって結成され、メンバー数が最大で18名まで膨れ上がったという大型ファンク・バンドの彼ら、今回のCDは結成から「Slide」のヒット、メンバーのトム・ロケットとスタリーナ・ヤングが「オーラ(サルソウルで何曲かのヒットを放つ)」結成のため脱退後加入したボーカリスト、スティーヴ・アリントンを中心とした80年代前半の作品に、そのアリントンが独立し発表した「ホール・オブ・フェイム」名義の録音までを集めた全30曲(うち17曲がR&Bヒットを記録)。アリントン独立後もグループは存続しヒットを放っているにもかかわらず、そこら辺をすべて省略してしまったのはちょっと納得いかないが、これまで殆ど気にかけることのなかったこのようなグループを改めて評価できる材料として、非常に興味深い内容である。70年代後半〜80年代半ばのR&BチャートはHOT100と殆ど関係なく推移していた印象があり、R&Bでナンバー1でもHOT100にはかすりもしないなんて曲が結構あったりするので、これをきっかけにリアルタイムだったのに意外と知らない80年代のR&Bシーンを再検証してみようか、という気になってきた。

 最後はグランドマスター・フラッシュとその一党が80年代に残したオールド・スクール・クラシックを徹底的にコレクトした全23曲。それにしても「再発天国」でヒップ・ホップものを紹介することになるとは・・。彼らは大変なヒットメーカーでもあり、このCDでは彼らがR&Bチャートに送り込んだ19曲(グランドマスター・フラッシュ11曲、グランドマスター・メリー・メル6曲、フューリアス・ファイヴ2曲)すべてを12インチ尺で聴くことが出来る。70年代後半のブロンクスで盛り上がりを見せていたヒップ・ホップシーン、とりわけグランドマスター・フラッシュたちの活躍に注目したのがシルヴィア・ロビンソン(モーメンツを世に送り出し、自らもお色気R&Bの最高峰「Pillow Talk」をR&Bチャートのナンバー1に送り込んだ女傑)で、彼女は彼らに再三レコーディング・スタジオ入りするよう勧めたそうだが「ヒップ・ホップは現場が命」と彼らは頑として受け付けず、代わりに素人ラッパー3人を雇って吹き込ませたのが「ラップ・ヒット第1号」、シュガーヒル・ギャングの「Rapper's Delight('79R&B4位/POP36位)」になったのだとか。

The Message - Grandmaster Flash & The Furious Five ('82) 余談はともかく。初期の彼らの録音が持つ衝撃度は、四半世紀後の現在聴いても衰えることはない。ある世代には「ポンキッキーズのテーマ」としても知られる「Freedom('80R&B19位)」のパーティ・ファンクとしての完成度の高さや、シックの「グッド・タイムス」やクイーンの「地獄へ道連れ」などを3台のターンテーブルを駆使して延々とつないでいく「The Adventures of Grandmaster Flash on The Wheel of Steel('81R&B55位)」の、かけるレコード毎の録音レベルの揃わなさ具合が醸し出す生々しさとか、この時代の最重要曲の一つである「The Message('82R&B4位/POP62位)」など、どれも非常に刺激的。ただこの手の音楽の鮮度は急速に失われていくもので、2年もするとグランドマスター・フラッシュ名義の作品はどれも陳腐化してしまうのだが・・。

 この流れを受けて、83年以降俄然存在感を増していくのがメリー・メル。「Message II('83R&B32位)」からこの時代の最も「ロック」なサウンドを聴かせる(ミクスチャー・ロックの先駆との評価も出来るかも知れない)「White Lines(同47位)」あたりの勢いは凄い。結局彼らは80年代後半まで商業的なサウンドに取り込まれながら活躍を続けることになるが、その頃にはさすがに役目を終えた感が強く漂う。黎明期のヒップ・ホップ史お勉強用にも、ヒット曲集め用にも大変重宝なCD、リアルタイムだったのに意外と知らない(さっきも同じこと書いたな・・)オールド・スクールものの再検証も、今後の課題にしないと。さしあたって昨年トミー・ボーイから出た「オールド・スクール大全集」全12枚の入手検討から始めることにするか。

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2006年08月15日

Love Me or Leave Me: America's Sweetheart of Song - Ruth Etting (Living Era)
Ukulele Lady: The Original Radio Girl - Vaughn De Leath (Living Era)

Love Me or Leave Me: America's Sweetheart of Song - Ruth Etting Ukulele Lady: The Original Radio Girl - Vaughn De Leath

 毎月恒例の(?)1920年代もの。ジョエル・ホイットバーンの「Pop Memories 1890-1954」によれば、1920年代のアーティスト10傑は以下になるのだとか。

The TOP10 Artists by Decade: 1920-1929

Joel Whiburn's Pop Memories 1890-1954 (Record Research)01 Paul Whiteman & His Orchestra
02 Ben Selvin & His Orchestra
03 Ted Lewis & His Band
04 Al Jolson
05 Gene Austin
06 Isham Jones & His Orchestra
07 Nat Shilkret & The Victor Orchestra
08 Fred Waring's Pennsylvanians
09 Ruth Etting
10 Marion Harris

 見ても何のことやら?と思うかも知れないが、僕はこのリストをゾクゾクしながら書いているという(笑)。名うてのスウィート・バンドや名シンガーに混じって、この10傑にランクインしている女性アーティストは9位のルース・エティングと10位のマリオン・ハリスの2人のみ。マリオン・ハリスは以前紹介済なので今回は「1920年代のチャート女王」ルース・エティングのCDをご紹介。

情欲の悪魔('55) ルース・エティングは1920年代半ばから30年代前半にかけて60曲以上のヒットを飛ばした人気女性シンガー。ハイトーンなソプラノ・ボイスで歌うトーチ・ソング(適当な訳語がないので“悲恋歌”という言葉でもあてておこうか)で一世を風靡した一方、その活躍の影には彼女の夫であるシカゴ任侠界の構成員、マーティン・スナイダーの存在が常にあり、2人の私生活はマスコミの格好のネタとなって当時のメディアを賑わせたばかりでなく、その愛憎劇が1955年にドリス・デイ主演で「Love Me or Leave Me(情欲の悪魔)」のタイトルで映画化もされている。

 1897年ネブラスカ州生まれの彼女がシカゴのショー・ビジネス界にデビューしたのは1910年代後半のこと。程なくしてスナイダーの寵愛を受けるようになり22年に2人は結婚、彼の後ろ盾でラジオ出演やレコード・デビューを次々と決め、非常に順調なキャリアを歩んでいったが、その結婚生活は幸福とは程遠いものだったようで、後年彼女が語ったところによると「90%は恐怖、残りの10%は悲嘆」という状況だったそうだ。

Ruth Etting と、ゴシップはこのくらいにして。彼女がヒットチャートに登場するようになるのは1926年になってから。20年代に人気を博した他の女性シンガー(マリオン・ハリスなど)と比べて彼女はヴォードヴィル調のあくの強い歌い方ではなく、ハイ・トーンでまるで鳥がさえずるような軽い節回しで歌い、これが当時の鉱石ラジオ(まだ音質が悪く高音の方が聴き取りやすい)に非常にマッチし大変な人気を呼んだのだとか。初期のレコーディングの編成は非常にシンプルで、基本はピアノ伴奏のみ、時によってそれにヴァイオリンやアコーディオンが加わる程度のもの。同時期のヒット曲の多くが「スウィート・バンド」と呼ばれるビッグ・バンドのプロト・タイプ的な編成で吹き込まれていたことを考えると、これは彼女の特徴的な点と考えていいのかもしれない。

 1930年代に入りバックもオーケストラ編成になると、彼女の「トーチ・ソング」は一段と磨きがかかり「Ten Cents A Dance('30米5位)」「Dancing with Tears in My Eyes(同10位)」「Body and Soul(同10位)」など印象的な録音が続く。参加ミュージシャンのクレジットにはベニー・グッドマン、チャーリー・スパイヴァック、エディ・ラングといった名手たちの名も見られ、ジャズ史的な見地からも興味深い。物凄い数のヒット曲を放った(今回の2枚組CDに収録された全51曲中36曲までがヒットチャートにランクインを果たしている)彼女だが、意外にもナンバー1ヒットは全盛期を過ぎた1935年の「Life is A Song, Let's Sing It Together」のみ、しかも彼女のキャリアはその翌年に中断されてしまうことになる。夫婦関係が破綻状態にあった彼女はスナイダーを相手に離婚調停を申し立て、スナイダーはその報復として彼女の新しいパートナーであるマール・オールダマンを銃撃(スナイダーは刑務所送りとなり、オールダマンは長い入院生活の後回復し、エティングと結婚した)。これをきっかけに活動休止状態となった彼女は戦後のほんの一時期を除きショービジネスからきっぱりと足を洗ってしまった。

 作風が余りにも時代に即していたためか、現在も聴き続けられているスタンダード・ナンバーは少ないが、当時のポップ・ミュージックの一つの典型を知る上で避けては通れないアーティストだと思うし、後の「クラシック・ポップ」と呼ばれるジャンルの出発点の一つとして、耳を通しておくべきCDだとも思う。またCDを聴いて彼女の歌唱スタイルが実は我が国戦前の女性流行(歌謡)歌手に与えた影響も大きいのではないか?とも感じられたので、その筋のマニアもチェックしておいた方がいいかも知れない。

 もう一人はこちらも20年代の人気女性シンガー、ヴォーン・デリース。このCDで初めて名前を知った彼女に興味を惹かれた理由は、タイトル・トラックにある「ウクレレ」。ここ1〜2年僕は趣味でウクレレを弾いていて、とはいってもセンスも向上心もないものだからその腕前はまったく上達しないのだが、ウクレレをポロポロと弾きながら口ずさめるような古いポップスを色々と探し回っている。そんな中で見つけたのが「ウクレレ・レディ」だから、そりゃ購入しない訳にはいかない。

サイダーハウス・ルール('99) 1999年の映画「サイダーハウス・ルール」にこの曲が流れるシーンがあるそうで、もしかしたらそれで聞き覚えのある方もいるかも知れない「ウクレレ〜」以下、このCDには彼女のウクレレ・ナンバーを多数収録・・という内容を期待していたのだが、実際はウクレレを使っている曲はそれほど多くなく、当時の典型的なポップ・ナンバーを24曲聴くことが出来る。1894年イリノイ州生まれ(96年説もあり)の彼女が人気を博すきっかけとなったのが1919年にニューヨークで「ラジオの父」と呼ばれる発明家/技師のリー・デフォレストとの出逢いで、彼の紹介によりメディアとして立ち上がり間もないラジオに出演し毎晩生で歌を披露した彼女は後に「ラジオ歌手第1号」とみなされ、その「女性版クルーナー」とでも表現すべきイージー・ゴーイングなボーカル・スタイルは、電波にのって多くの家庭に届けられた。

 デリースが最初にヒットチャートに登場したのは1921年の「All by Myself(13位)」だが、チャート上の全盛期は20年代も半ばを過ぎた26〜28年の3年間で、この時期に10数曲のヒットを記録している。「Blue Skies」、エルヴィスでお馴染み「Are You Lonesome Tonight?」、「My Blue Heaven」「The Man I Love」「I Wanna Be Loved by You」など現在も頻繁に耳にするナンバーを肩肘張らないスタイルで歌っているのを聴くのは非常に楽しいし、またこの当時彼女はメディアで大変な「セレブ」だったようで、様々な有名楽団の録音に客演してヒットを放っており、このCDではそれらも丁寧に集められている点がチャート・マニアには有難い。

Singin' in The Rain - Cliff The Very Best of George Formby: 20 Great Songs 南国の夜〜ベストアルバム/灰田勝彦

 ついでといっては何だが、1920年代以降世界的に流行した「ウクレレ・ポップ」が聴けるCDを何枚かご紹介。ウクレレがハワイから公式にアメリカ本土に紹介されたのは1915年にサンフランシスコで開催された「パナマ太平洋国際博覧会」だそうで、以降その持ち運びの簡便性と見栄えのよさで黎明期のジャズ・シーンやヴォードヴィルの芸人たちの間で盛んに使用され、その約10年後にはヒットチャートで「ウクレレ・ブーム」とでもいうべき現象が起こったことは先日「Hits of '25」紹介時にチラッと触れた通り。その中心的存在だったのが「ウクレレ・アイク」ことクリフ・エドワーズで、初期の如何にもヴォードヴィルあがりといった感じのあくの強い歌唱は聴いていて少々きついが、後の時代でいえばトリニ・ロペスのような「エンターテインメント系」のサービス精神旺盛な演奏は結構楽しいし、20年代の元祖「Singin' in The Rain(雨に唄えば)」や40年代にディズニー映画「ピノキオ」で声優としてコオロギ役を演じて歌った永遠のスタンダード「When You Wish Upon A Star(星に願いを)」など是非とも聴いておきたい録音が幾つも収録されている。

 一方イギリスではジョージ・フォームビィーというアーティストが1930〜50年代にかけて人気を博しており、幼少期にあったビートルズの面々も大好きだったという彼が弾く「バンジョレレ(バンジョー+ウクレレ)」という不思議な楽器の音色もチェックしておきたい。60年代にハーマンズ・ハーミッツがヒットさせた「Leanin' on The Lamppost(恋のランプ・ポスト)」のオリジナル・バージョンもここに収録。そして最後は我が国が誇る「元祖ウクレレ・ポップ」灰田勝彦。移民先(出生地)のハワイから帰国し日本に広めたハワイアン・スタイル、そして日本一のクルーナー唱法。聴いててシビレます。上掲のCDは現在入手困難のようだが、またいずれ新しい視点で編まれた“ハイカツ”コンピレーションの登場を願いたい。 
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2006年08月12日

The Flame (Fallout)
Thorinshield (Fallout)
Le Musee de L'Impressionnisme - Robert Callender (Fallout)

The Flame ('70) Thorinshield ('68) Le Musee de L'Impressionnisme - Robert Callender

 先月入手したミッシェルの「Saturn Rings」をリリースしたヨーロッパのレーベル「フォールアウト」が気になってカタログを調べてみたら、珍しいアルバムの再発がゾロゾロ・・。とりあえず取り寄せてみたのが上掲の3枚。

 まず最初のフレームは南アフリカ出身のロックバンド。リッキー、スティーヴ、エドリーズのファター3兄弟とブロンディ・チャップリンからなるこのグループは60年代の南アフリカで最も人気のあるバンド(68年にリリースした「For Your Precious Love」は、人種差別の厳しいかの地で白人以外のメンバーを擁したグループとして初めてナンバー1を記録)だったそうだが、現在彼らが知られているのはメンバーのリッキーとブロンディが70年代の一時期ビーチ・ボーイズの正式メンバーになったことから。本国における人気ぶりがイギリスにも伝わりレコード・デビューが決まった彼らがアルバムのプロモーションのためにロンドンのクラブで演奏していたところ、偶然立ち寄ったのがイギリス・ツアー中だったカール・ウィルソン。その演奏に惚れ込んだ彼はフレームをロサンゼルスに呼び寄せて住居を提供、レコーディング・スタジオも自由に使用させるという破格の待遇で制作されたのがこのアルバムであった(ビーチ・ボーイズのレーベル「ブラザー」からのリリース)。

Carl and The Passions: So Tough - The Beach Boys ('72) シングルとしてリリースされ70年にHOT100で最高95位を記録した「See The Light」は、ポール・マッカートニー風のメロディックなパワーポップ。その他収録されている全11曲いずれでもファンキーな演奏が繰り広げられており、作曲クレジットにはすべてメンバー全員の名前が入っているが、中には明らかにカール・ウィルソンが曲作りに関与していると思われる作品もあり、「Lady」「Don't Worry, Bill」「Highs and Lows」といった曲にその傾向は特に顕著。70年代前半はカールがファンキーなロック・サウンドを志した時期で、アルバム「Surf's Up」の「Long Promised Road」、リッキーとブロンディ加入後の「Carl and The Passions - So Tough」における「Hold on Dear Brother(名演!)」、「Holland」の「Trader」「Leaving This Town」などで聴かれるサウンドが、カールとフレームの面々の深い交流の中で生まれたものであったことが何となくわかってくる。ビーチ・ボーイズスタイルのハーモニー・ポップを期待するとこのアルバムは随分と毛色が違って聴こえるかも知れないが、パワーポップ好きなら十分満足のいく内容だと思うし、ハードコアなカール・マニアであれば持ってなければいけないCDだろう。

 続いてはソーリンシールド(て読むの?)1968年のアルバムで、これは全く前知識がなくアルバム評にあった「サンシャイン・ポップ」の一文だけで買ってしまったもの。このグループはタートルズのオリジナル・メンバーだったというドラマーのテリー・ハンドと、ドノヴァンの「Sunshine Superman」のセッションに参加していたベーシスト、ボビー・レイにギタリストのジェームス・スミスが加わった3人組で、彼らのスタジオ人脈を生かしてプロデューサーにサックス奏者のスティーヴ・ダグラスを、アレンジャーとしてはペリー・ボトキン・ジュニアを起用。アルバムはアコースティック・サウンドとオーケストラがいい具合に融合したソフト・ロックで、雰囲気的にはボー・ブラメルズ、もしくはボストンのオルフェウスあたりに近いか。ロサンゼルスのスタジオ・シーンから生まれた1枚として、まずまずの内容を持ったアルバム。こういうのってレコード屋で大きい音でかけられると凄くよく聴こえるんだよねー、その“よさ”を部屋に持って帰って再現するのが結構難しかったりするんだけど・・。

Rainbow - Bobby Callender ('68) 最後3枚目は“問題人物”ロバート・カレンダー。彼は60年代にボビー・カレンダーの名前で幾つかの作品を残しており、1963年のシングル「Little Star」をHOT100の95位にランクインさせた実績を持つが、60年代後半にはサイケの世界に宗旨換え。僕は一時期アラン・ローバーというプロデューサーが中心となって60年代末に展開した「ボストン・サウンド(Bosstown Sound)」というのが気になっていろいろと音源を集めたことがあるのだが、そんな中で存在を知ったのがボビー・カレンダー68年のアルバム「Rainbow」と71年の「The Way (First Book of Experiences)」だった。元々インド系らしい彼の作品はどちらもシタールがビラビラ鳴り響き、薄気味の悪い呪文のようなカレンダーの呟きが延々ヘロヘロと入っているようなシロモノで、夜聴きながら寝てると魘されそうになるし、とにかく買ったことを後悔したアルバムだった。。

 で、そのカレンダーさん。70年代にはヨーロッパに活動の拠点を移したそうで、当時オランダのみで発売されたアルバムが90年代に入ってマニアの間で話題となり、今回初めてCD化が実現した次第。でもあのボビー・カレンダーなんでしょ?と当初は思っていたのだが、アルバム評を見ると今回はメロディがちゃんとあり、レア・グルーブとフレンチ・サウンドが融合されたような作風なんだという・・???これも腐れ縁だと思って取り寄せて聴いてみたら、確かにメロディはあった。でも彼のボーカルは相変わらず気持ち悪い(笑)。アルバムのテーマは「The Baptism of Impressionism(印象派の洗礼?)」だそうで、モネやルノアール、ゴッホなど様々な作家の画風に合わせて曲が作られ捧げられている(本当か?)。歌の歌詞は曲によって英語になったりフランス語になったりで、サウンドはジャズファンク風。確かにこれまでと比べれば出来は悪くはない。しかしこの気持ち悪さはなんと説明すればいいのだろうか??

 とりあえずのベストトラックは「Pierre Auguste Renoir」、この曲を何処かに持っていってかけて「何ですかこの気持ち悪い曲は?」と話題のきっかけにする「ネタ」に使ってみることにするか。。「フォールアウト」のCDは他にも注文中のものが何枚かあるので、近々続報が載せられると思う。

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2006年08月11日

Celebration: The Ultimate Collection - Alma Cogan (EMI Gold)
The Essential Nancy Sinatra (EMI/Boots Enterprises)

Celebration: The Ultimate Collection - Alma Cogan The Essential Nancy Sinatra

 ガール・シンガーものを2種。我が国でアルマ・コーガンといえば60年の「The Train of Love(恋の汽車ポッポ)」と翌年の「Just Couldn't Resist Her with Her Pocket Transister(ポケット・トランジスター)」の2曲のみで知られる“二発屋”だが、本国では全英チャートが創設された直後の1954年から60年代初頭にかけて21曲ものヒットを放ったトップスター。これまでにイギリスで発売されたコンピレーションは主に彼女の全盛期である50年代のヒット曲に焦点が当てられたものが多かったのだが、今回それに加え我々にとって馴染み深い60年代の活動も同等にクローズアップされた3枚組75曲入りのボックスセットが発売された。

 彼女は66年に34歳の若さで癌のため夭折するのだが、レコーディングは死の直前まで続けられており、これまでよほど熱心なファンでない限りあまり聴くことの出来なかった60年代の録音が今回のボックスの最大の聴きどころとなるが、とりあえず彼女のデビューから順を追ってCDを紹介。この3枚組はそれぞれが「The Fifties」「The Sixties」「The Standards」とテーマ分けされており、彼女の様々な魅力を味わうことが出来る。最初の「The Fifties」では52年のデビュー曲「To Be Worthy of You」以降彼女が全英チャートに送り込んだヒットの大半が聴けるので、まずはここで彼女の芸風の本質を確認。アメリカ人歌手でいえばテレサ・ブリュワーあたりに多くの共通項を感じる彼女の歌声は非常に明るく、レパートリーも当時のアメリカン・ポップスのカバーが大半なので、非常に楽しい雰囲気。55年のナンバー1ヒット「Dreamboat」他R&Rのカバー「Why Do Fools Fall in Love」、バート・バカラックの出世作「The Story of My Life」どれも愉快に器用に歌いこなすし、その傾向は特に「I Can't Tell A Waltz from A Tango(私はワルツとタンゴの区別がつかない)」「Never Do A Tango with Eskimo(エスキモーとタンゴを踊っちゃダメ)」「Noughty Lady of Shady Lane(裏町のあばずれ女)」といったノヴェルティ色の強い曲に顕著。非常にハッピーな気分で1枚聴き通すことが出来る。

ポケット・トランジスター/アルマ・コーガン('61) 続いて問題の「The Sixties」へ。ヒットメーカーとして彼女がチャートに君臨する時代は60年代早々に終焉を迎え、彼女と同世代ながら全世界的な成功を手にしていったペトゥラ・クラークのような例外を別とすればヘレン・シャピロをはじめとする、コーガンよりひと回り以上下の世代の「ガール・シンガー」たちの時代となっていくのだが、だからといって彼女の作品が時代遅れだった訳ではなく、以降も興味深い作品は次々と登場する。CD2曲目でポール・アンカ作の「恋の汽車ポッポ」が早速登場、続いて「ポケット・トランジスター」が・・とくれば、我が国のオールディーズ・ファンは「待ってました!」と喝采をあげること間違いなし。その後もチャートとは無縁ながらも時代に即したサウンド作りを続けており、エキサイターズ「Tell Him」のカバーなどのガール・ポップや「She's Got You」の疑似ナッシュビル・サウンド、「Just Once More」『I Knew Right Away」、サーチャーズのクリス・カーティスが提供した「Snakes and Snails」といったGS歌謡風(?)まで、どれも非常にいい。特に彼女がソングライティングにも挑戦した64年の「It's You」、前半はタンゴ風に始まり後半はポップス調に展開するこの曲の出来が素晴らしく、彼女の多彩な才能を知ることが出来る1枚になっている。CDの後半には「Tell Him」の日本語バージョン「Itte Kudes(言ってください?)」も収録されており、これは日本のファンには思いがけないプレゼント。

 最後3枚目は「The Standards」。「あ、ジャズ・ボーカルものね。」と早とちりするなかれ、実はこのCD冒頭4曲はビートルズ・ナンバー。まるでスキーター・デイヴィスの「The End of The World」のようなアレンジの(その後一転アップテンポに変わる)「Eight Days A Week」なんて、聴いてみてきっと驚くはず。以降は50年代以前に生まれたポップスが殆どだが、ありきたりなアレンジに終わらず「ラウンジ・ミュージック」としても十分楽しめる選曲になっているところには監修者のセンスを感じる。近年スタンダード系のアーティストの間で何故か静かなブームになっている「I Get A Kick Out of You(歌詞に“シャンペンとコカイン”というフレーズがが登場するからか?)」もボックスの〆に堂々と登場。

 これまで巨大なボックスセットでも入手しない限りなかなか聴くことが出来なかった彼女の60年代録音が大量に聴けること、そして何より安価なこと(1曲あたり30円くらいの値段!)で、これはアルマ・コーガンのコレクションとして決定版となるのではないかと思う。で、もう1枚の紹介は同じくイギリスのEMIから発売されたナンシー・シナトラのベスト盤、こちらもゴージャスなジャケットに見劣りしない充実した内容。

 60年代を代表する「雰囲気美人」ナンシー・シナトラのベスト盤はこれまでいろんな国で発売されているが、僕はこれまでアメリカのライノ社からリリースされたCDをずっと聴き続けていた。クレジットを見ると86年製だからなんと20年!!ようやく買い替えた26曲入りのこのCDの内容はといえば・・。

How Does That Grab You? - Nancy Sinatra ('66) (多分)ナンシーの会社「ブーツ・エンタープライズ」も制作に関わっているこのCDは、ナンシー本人による全曲コメント付き。新世代に彼女の魅力を伝えようという意欲の窺える内容で、CD冒頭には「にくい貴方」ではなく数年前映画「キル・ビル」のオープニングでフィーチャーされたシェールのカバー「Bang Bang」が。以降お馴染みのヒット曲が次々と登場するが、これまでのベスト盤と比較して60年代末以降のヒット曲が多く収録されているのが嬉しく「Good Knows I Love You('69米97位)」「Here We Go Again(同98位)」「Drummer Man(同98位)」といったマイナーヒットの収録には個人的に感謝したいし、イギリス編集らしく同国のみでヒットした「The Highway Song('69英21位)」「Did You Ever('71英2位)」が聴けるのも有り難い。大ヒット曲でも非常にのどかな曲調の「Sugar Town」が実はLSDの歌だったり、ナンバー1ヒット「These Boots Are Made for Walkin'(にくい貴方)」の“2匹目の泥鰌”を狙ってリリースされた「How Does That Grab You, Darlin'?」を彼女は全然気に入ってなかったり(但しアルバムのジャケット写真は絶賛)と、ライナーノーツで当時の裏側が覗けたりしてなんだか楽しい。ムーヴの「Flowers in The Rain」のカバー(ヘタクソな歌!)を選曲しているあたりは、イギリスならではの茶目っ気か?

 オマケには未発表の「Machine Gun Kelly」と一昨年リリースされたニューアルバムからの「Let Me Kiss You(モリッシー作)」、そしてオーディオ・ブリーズが「Bang Bang」をサンプルし最近ヒットさせた「Shot You Down」を収録。例によって「イチゴの片思い」や「レモンのキッス」といった“フルーツ・シリーズ”の収録はないが(これは日本のレコード会社が頑張るしかないでしょう)内容充実、値段も非常に安いので、彼女の入門用として強くお勧めできる。しかしイギリスのEMIが出すコンピレーションは安いね。最近は悪名高きCCCDもやめたようだし。同社のカタログを細かくチェックしてみる必要があるかも知れない。


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2006年08月07日

Rockin' Bones: 1950s Punk & Rockabilly (Rhino)

Rockin' Bones: 1950s Punk & Rockabilly

Vintage Collection - Wanda Jackson 3年ほど前にワンダ・ジャクソンが来日したことがあって。原宿のライブハウスに彼女を観に行ったのだがその日は前座に何組もの日本のR&R系バンドが登場するイベントで、オールスタンディングのフロアは今時こんな人たちが存在するのか??というような30cm以上あるトサカをおっ立てた「ローラー族」に占領され、気の弱い僕は店の後方で彼らが暴れる様子を眺めながら都合3時間半を超えるイベントを見守る、というめったに味わえない雰囲気を満喫させてもらった。肝心のワンダ嬢は余裕しゃくしゃくでステージをこなし、約30分と短時間ではあったがロカビリーからカントリー・バラードまで様々なレパートリーを披露。ローラー族には「フジヤマ・ママ」よりももっとノリのいい「Let's Have A Party」が評判がいいんだな、などと近年のロカビリー事情を知ることが出来たのも勉強になったし、あと、前座の一つとして「ゴロッパチ」ことThe 5.6.7.8sが登場し、映画「キル・ビル」公開以前に生で「Woo Hoo」を聴けたのも、今考えてみれば貴重な体験であった。

Loud, Fast & Out of Control: The Wild Sounds of '50s Rock アメリカのライノ・レコードは80年代以来ガレージ・ロックのコンピレーション「ナゲッツ」シリーズを様々に発展させながら何種類ものコンピレーションをリリースしているが、その中に「年代別ナゲッツ」というべきものが幾つかある。60年代のガレージ・ロックを集大成したオリジナルの「ナゲッツ」を100曲以上のボリュームに拡大してボックス化したり、60年代のサーフ・ロックを“ガレージの原点”と位置づけて「Cowabunga!」という名のボックスをリリースしたり。50年代のロックについても数年前「Loud, Fast & Out of Control」というボックスをリリース、これはR&Rの古典曲であるボビー・デイの「Rockin' Robin」を「イントロにピッコロを使うなんてロックじゃねぇだろっ!」と収録曲リストから外すなど相当こだわった選曲になっていたが、今回はそれに続く50年代もの第2弾。

Rockin' Bones: The Legendary Masters - Ronnie Dawson 「This Box Ain't No History Lesson(このボックスセットはロック史のお勉強用ではない!)」との強烈な言葉で始まるこのボックスは、1950〜60年代のロカビリーの中でも特に暴力的なサウンドを101曲集めた大変なコンピレーション。ボックスのタイトルとなっている「Rockin' Bones」はテキサスのマイナーなロカビリアン、ロニー・ドウソンが59年に録音した作品で、以降有名無名ひっくるめてとにかく破壊的なレコーディングが次々登場。数少ないメジャーどころを先に挙げておくと、まずエルヴィスはサン時代の「Baby Let's Play House」と、RCAで録音されたが歌詞が際どいためお蔵入りになった(その後歌詞が改作され大ヒット)「One Night of Sin」を収録。他のヒット曲を列記するとリッキー・ネルソンの「Believe What You Say」、リンク・レイの「Ramble」、カール・パーキンスの「Blue Suede Shoes」、ジョニー・キャッシュの「Get Rhythm」、デイル・ホーキンスの「Susie-Q」、エディ・コクランの「Summertime Blues」、ジャック・スコットの「The Way I Walk」、ジェリー・リー・ルイスの「Whole Lot of Shakin' Going On」と、これくらい。バディ・ホリー、ジーン・ヴィンセント、ロイ・オービソン、ジョニー・バーネットといったメジャー・アーティストもヒット曲ではなく、より荒削りなロカビリー・サウンドを聴かせる作品が意図的に選ばれている。

 当時ヒットチャートには登場しなかったものの、現在はロカビリーの古典と見なされている作品、ロニー・ホーキンスの「Who Do You Love」、ビリー・リー・ライリーの「Flyin' Saucers Rock 'N' Roll」、そしてワンダ・ジャクソンの「Fujiyama Mama」といったあたりも収録されているし、イギリスで生まれた名曲、ヴィンス・テイラーの「Brand New Cadillac」やジョニー・キッドの「Shakin' All Over」などもしっかり選曲されているので「ロック史のお勉強」に非常に有用な1箱であることには間違いないのだが、残りのほとんどはこれまで聴いたこともないようなマイナーなロカビリーばかり。ブートのCDでコツコツとレアなピュアロカをコレクトしていたマニアは、このボックスの登場で不要となるCDが大量に発生することは間違いないだろう。全米各地のプア・ホワイト層の青年たちがエルヴィスの成功に触発され爆発させた「パンク・ロックの出発点」、こんな音楽がかかってローラー族が踊っているようなイベントがあったら、とても怖くて出かけられないな・・などと部屋で聴いてて考えてしまった。。

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