2006年07月31日

Summer Beach Party: Songs from The Classic Beach Movies of The '60s (Varese Sarabande)

Summer Beach Party: Songs from The Classic Beach Movies of The '60s

Beach Party ('63) 東京も梅雨明けということで、夏っぽいものを1枚。60年代半ばに盛んに制作された「ビーチ・ムービー」のサントラ曲を集めたコンピレーションが発売された。水着姿の美女満載の恋愛映画・・となると、古今東西もの凄い数制作されているのだと思うが、一般に「ビーチ・ムービー」と呼ばれるのは1963〜67年にかけて「アメリカン・インターナショナル・ピクチャーズ(AIP)」他数社が制作したものに限られているようだ。そのきっかけとなったのが63年の「Beach Party」で、この映画が予想外のヒットを記録したことから続編の制作が決定し、それに他社が追従する形で以降数年間スクリーンにビキニ娘たちが溢れかえることに。

 CD収録曲を映画毎に紹介。“本家”「Beach Party(このサントラから4曲が収録されている)」で主人公のサーファーのカップルを演じたのは当時のトップアイドル、フランキー・アヴァロンとアネット。フィラデルフィアとニューヨーク出身のイタリア系タレントがカリフォルニアのサーファーに扮するなんて、考えてみれば妙な配役だが、これがヒットしたのだから結果オーライということで。アヴァロンが歌う主題歌を作ったのはサーフィン/ホットロッド・サウンドには欠かせないゲイリー・アッシャーとロジャー・クリスチャンのコンビ、この曲にはアネットが歌ったバージョンもあるので、他のコンピレーションで探していただきたい。映画に幾分かのリアリティを持たせるためか、この映画にフィーチャーされているのが本物のサーファーで「King of Surf Guitar」の称号を持つディック・デイルで「Secret Surfin' Spot」と「Surfin' and A-Swingin'」で彼はギターばかりでなくボーカルも披露。切れ味鋭いギターに比べれば、ボーカルの方は全くの素人芸だが。

Bikini Beach ('64) 「Beach Party」の大ヒットを受けて制作されたのが翌年の「Bikini Beach(5曲収録)」。ここではゲイリー・アッシャーとロジャー・クリスチャンの名前は既になく、AIPお抱えのソングライター・コンビ、ガイ・ヘムリックとジェリー・スタイナーにバトンタッチ。一番の聴きものは剃髪のサーフ・バンド、ピラミッズの2曲「Bikini Drag」と「Record Run」で、こちらはゲイリー・アッシャーのプロデュースなので正調「サーフィン・サウンド」が聴ける。

Beach Blanket Bingo ('65) 以降は本家便乗組入り乱れての「ビーチ・ムービー」ブームで、様々な作品から1〜2曲がピックアップされている。この世界の「女神」であるアネットが歌う曲が1曲しか収録されていないのはいささか物足りないが、その替わりなのか過日の「ジャケガイノススメ」でも目立っていた“カワイコチャン”ドナ・ローレンの曲が3曲収録。ただ、彼女の歌声はいわゆるガールシンガーのそれではなく(声を張り上げるタイプの歌で、やや可愛気に欠ける)、また映画でも決して水着姿を披露しなかったそうなので、シーンではかなり異色な存在ではあるが。有名曲ではジャンとディーンの「Ride The Wild Surf(太陽の渚No.1)」や日本だけで人気のあるアストロノウツの「Surf Party」、ビーチ・ボーイズの「Girls on The Beach」など。ガレージ・バンド、キングスメンが65年に録音したポップな「How to Stuff A Wild Bikini」は初CD化の貴重曲。

Ghost in The Invisible Bikini ('65) 「ビーチ・ムービー」ブームは65年には終息に向かい、作風もやや迷走気味に。「Ghost in The Invisible Bikini」なんて一体何が言いたいのかよくわからない映画も作られたようだが、そのサントラとして録音されたナンシー・シナトラの「Geronimo」は、ブレイク直前期にあった彼女の、アイドルから「蓮っ葉ポップス」への過渡期っぽいボーカルが聴けて興味深い。サーフィン/ホットロッド・サウンドは多分に商業的な要素が強く、実際にカリフォルニアで活動していたギター・バンドばかりでなく、山間部を含むアメリカ全土のインスト・バンドの演奏も、このCDで聴けるようなハリウッドで創られた架空の砂浜のBGMも分け隔てなく同じジャンルで捉えられているのがなんだか面白いところ。実際のサントラ・バージョンではなく、他社でシングルやアルバム用に録り直したものを多く収録している点は、どちらがレアなのか判断できないのでいいとも悪いとも言えないが、サーフィン/ホットロッドの幅広さを楽しむ意味でも、アイドル映画の楽し気な雰囲気を味わうという意味でも、夏のBGMにぴったりな1枚だと思う。

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2006年07月29日

The Leiber & Stoller Story Volume 2: On The Horizon 1956-1962 (Ace)
Golden Age of American Popular Music: Hard-to-get Hot 100 Hits from 1956-1965 (Ace)

The Leiber & Stoller Story Volume 2: On The Horizon 1956-1962 Golden Age of American Popular Music: Hard-to-get Hot 100 Hits from 1956-1965

The Leiber & Stoller Story Volume 1: Hard Times The Los Angeles Years 1951-56 エイス・レコードから重量級のオールディーズ・コンピ2種。まず最初はソングライター/プロデューサーコンビ、ジェリー・リーバーとマイク・ストーラーの活動を追ったシリーズ(全3枚)の第2集。2人がソングライターとして売れっ子となり、西海岸で様々なアーティストに作品を提供した第1集はマイナー曲がてんこ盛りで、一曲毎にライナーノーツとにらめっこの大変体力を要する一枚だったが、今回はそこからニューヨークに進出、プロデューサー契約を結んだアトランティック・レコード(以下A社)で制作した作品が中心となった内容で、お馴染みのナンバーが次々と登場し非常に楽しい。

 CD冒頭に登場するのは映画「アメリカン・グラフィティ」サントラでもお馴染みクローヴァーズの「Love Potion No.9('59米23位)」。これはA社ではないが、その後は彼らの長年のコラボレーター、ロビンスがメンバーチェンジの後コースターズと改名し初めて放ったポップ・ヒット「One Kiss Led To Another('56米73位)」、同社の屋台骨を支えていたルース・ブラウンの「Lucky Lips('57米25位)」、ベンEキングを迎えた新生ドリフターズの「There Goes My Baby('59米2位)」、元レイヴンズのジミー・リックスとラヴァーン・ベイカーが組んだ渋ーいビーチ・ミュージック・クラシック「You're The Boss('61米81位)」など、A社から送り出されR&Rの黄金時代を飾った名曲が続々。またレアな作品の収録も怠りなく、バディ・ホリーが死の直前に録音していたロビンス「Smokey Joe's Cafe」のカバーや、ベンEキングの大ヒット「Spanish Harlem」を、ドリフターズの先代ボーカリストであるクライド・マクファターが吹き込んだバージョン(これが凄くいい!)、ペギー・リーが63年にヒットさせた「I'm A Woman」の、クリスティン・キトレルによるオリジナル・バージョンなど、興味深いナンバーを幾つも収録。ジョニー・マティスがギター2本のみをバックに59年に吹き込んだ「Open Fire, Two Guitars」という素晴らしいボーカル・アルバムがあるのだが、このタイトル曲もリーバー&ストーラーの作品だったとは、僕のチェックが甘かった・・。

Leiber & Stoller present The Daisy/Tiger Records Story 60年代に入ると彼らは次第に独立指向を窺わせるようになり、ユナイテッド・アーティスツから“白人版ドリフターズ”としてジェイ&アメリカンズをデビューさせるなど外部仕事を増やした後自身のレーベル「Tiger」を立ち上げ。ここでの最重要曲はティッピー&クローヴァーズの「Bossa Nova Baby(エルヴィスでお馴染み)」で、その後ポップ色を強めこの路線は新レーベル「Red Bird/Blue Cat」一連の作品としてガールポップの大輪を咲かせることになるのだが、そこら辺は第3集のお楽しみということで。A社との長い蜜月の終焉期に残された作品としては、デビュー前のビートルズが取り上げたことでリバプール周辺のビート・バンド必修曲となったリッチー(リチャード)バレットの「Some Other Guy」も聴くことが出来る。

 オールディーズの世界に深く踏み込んだコンピレーションとして大変優れた内容のアルバムだが、2年前にこれの第1集が出た時にも書いた通り現状リーバー&ストーラー作品の基本的な作品集が市場に出回っていない状態なので、そこら辺はライノでも日本のワーナーでもいいから、なんとかしておいて欲しいなぁ、というのが正直なところ。マニアックなものばかり聴いてもね。このペースでいくと再来年あたりに出そうな第3集、60年代半ばのポップ作品満載となるであろうそのCDを揃えればR&R時代最重要な存在である2人のキャリアをしっかり捉えることができるようになる。“学究派”オールディーズ・ファンであれば必携の1枚であろう。

 もう1枚は超人気シリーズ「Golden Age of American Rock & Roll」の番外編で、今回のテーマは「MOR (Middle of the Road)」。R&Rの時代にヒットを記録したポップ系の作品を28曲集めたもので、比較的珍しいものを挙げてみると

Hey-Da-Da-Dow - The Dolphins ('64#69)
My Lucky Love - Doug Franklin with The Bluenotes ('58#73)
Teasin' - The Quaker City Boys ('58#39)
Just Like In The Movies - The Upbeats ('58#75)
City of Angels - The Highlights featuring Frank Pizani ('56#19)

 あたりか。ちょっと弱い?白人ポップ系のボーカル・グループ作品が多く収録されていて雰囲気は非常にいいのだが、タイトルにある「Hard-to-get」はあまり期待できないかな、というのが率直な感想。このシリーズ、勿論続編もあるよね、ということで今後の展開に期待。

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2006年07月22日

Yes Sir! That's My Baby: Hits of '25 (ASV/Living Era)
Hits of The 1930s Vol.2: 1931-1933 (Naxos Nostalgia)

Hits of '25: Yes Sir, That's My Baby! Hits of 1930s Vol.2: 1931-1933

 イギリスの「Living Era」から今月届いたCDは、1920年代の年別ヒット曲集第6弾。シリーズも中盤に差しかかった1925年編である。

Hits of '20 Hits of '21 Hits of '22 Hits of '23 Hits of '24

 「Living Era」の看板シリーズ「Hits of 〜」はこれまでに20年代から50年代まで32枚(!)が出されており、年を追って選曲内容が充実していく様子が嬉しいのだが、まずは1925年(大正14年)のヒット状況をご説明。20世紀前半のポップス・ファンにとってのバイブルであるレコードリサーチ社の「Pop Memories 1890-1954」によれば、この年のナンバー1ヒットは以下の14曲

All Alone - Al Jolson (5wks)
All Alone - Paul Whiteman (3wks)
Tea For Two - Marion Harris (3wks)
All Alone - John McCormack (2wks)
I'll See You In My Dreams - Isham Jones with Ray Miller's Orchestra (7wks)
O! Katharina - Ted Lewis (1wk)
The Prisoner's Song - Vernon Dalhart (5wks)
Sweet Georgia Brown - Ben Bernie (5wks)
If You Knew Susie - Eddie Cantor (5wks)
Yes Sir! That's My Baby - Gene Austin (7wks)
Oh, How I Miss You Tonight - Ben Selvin (Cavaliers) (3wks)
Manhattan - Ben Selvin (Knickerbockers) (4wks)
Remember - Isham Jones (1wk)
The Prisoner's Song - Vernon Dalhart (7wks)

 このCDには太字の10曲(「The Prisoner's Song」は2度1位になっているので)が収録されており、競作になった「All Alone」の幾つかのバージョンととベン・セルヴィンが別名で出した「Oh, How I Miss You Tonight」を除けば、この年のナンバー1ヒットすべてが聴けることになっている。この年最大のヒットは合計12週間チャートのトップを独占したヴァーノン・ダルハートの「The Prisoner's Song」で、これはアメリカのポップス史上最も初期に大ヒットしたフォーク/カントリー・ナンバーとされている重要曲。その他はミンストレルやヴォードヴィルといわれる旅回り一座を経て、黎明期にあったブロードウェイの興行界で名を馳せた“芸人系”アーティストと、徐々に頭角を現しつつあったオーケストラ形式の「スウィート・バンド」と呼ばれるグループが半々といった感じで、前者を代表するのがアル・ジョルソン、マリオン・ハリス、エディ・キャンター、後者はまずポール・ホワイトマン、そしてアイシャム・ジョーンズ、テッド・ルイス、ベン・セルヴィンといったところ。

 曲の方では当時のインパクトを考えれば「Sweet Georgia Brown」「If You Knew Susie」「Yes Sir! That's My Baby」といったショウ・チューン系のナンバーがこの年を代表するヒットといえるだろうが、現在まで歌い継がれているという観点では「Tea For Two」「I'll See You In My Dreams」「Manhattan」など後に“スタンダード・ナンバー”と認識されるようになる曲が生まれた年であったと考えた方がより身近に感じるかも知れない。このCDには全25曲(すべてTOP5ヒット)が収録されているが、ナンバー1を逃した曲にまで目を向けるとこの年はどうやらアメリカで“ウクレレ・ブーム”が起こっていたようで、ジーン・オースティンの「Yes Sir! That's My Baby」をはじめ“ウクレレ・アイク”ことクリフ・エドワーズの「Fascinatin' Rhythm」、ヴォーン・デリーズの「Ukulele Lady」とウクレレがフィーチャーされたヒットが何曲も収録されており、この件については後日もうちょっと詳しく紹介してみたいと思っている。

Hits of 1930s Vol.1 1920年代の音楽がどのような雰囲気のものであったかを知るには安価で最適なこのシリーズ、出来ればもうちょっとリリースの間隔を狭めてもらいたいのだが(現状年1枚ペース)あまり贅沢もいってられないか。もう1枚紹介するのは「Living Era」を凌ぐ超廉価レーベル「Naxos Nostalgia」が出している1930年代のヒット曲第2集。ここは1920年代編も出しておりそちらは3月に紹介したが、とにかく安い(店によっては1,000円しない!)ので曲のダブりを気にせずどんどん購入できる。今回のCDでカバーしているのは1931〜33年の3年間で、収録されているナンバー1ヒットを列記すると

The Peanut Vendor - Don Azpiazu & His Havana Casino Orchestra ('31)
Minnie The Moocher - Cab Calloway & His Orchestra ('31)
Out of Nowhere - Bing Crosby ('31)
River, Stay 'Way From My Door - Kate Smith with Guy Lombardo ('32)
Brother, Can You Spare A Dime? - Bing Crosby ('32)
Night and Day - Fred Astaire with Leo Reisman ('32)
The Last Round-Up - George Olsen & His Music ('33)
Forty-Second Street - Don Bestor & His Orchestra ('33)

 この3年間にナンバー1ヒットは40曲ほど生まれているのでとてもカバーしきれているとはいえないが、20年代に派生した「スウィート・バンド」勢がすっかりポップ界のメインストリームとなり、更にそこから登場したビング・クロスビーやルディ・ヴァリーなど甘く囁くように歌う“クルーナー”と呼ばれるタイプの歌手が台頭しすっかりメロウなムードになったこの時期のポップスの雰囲気をよく伝える内容になっている。収録曲の中で僕が一番嬉しかったのは「The Peanut Vendor(南京豆売り)」で、これはキューバ産の音楽「ルンバ」が全米チャートを制覇した記念すべき一曲。超有名曲だがオリジナルをなかなかCDで聴くことが出来ず、殆どこの1曲をリストで確認しただけでCDの購入を決意したと言っていいくらい。他には誰でも知ってる「Minnie The Moocher」、我々には後年アップテンポで歌われた♪ハイデハイデホ〜が印象深いが、当初はこんなにのんびりしたテンポで歌われていたのだ、と知ることが出来るし、ビング・クロスビーのイージー・ゴーイングな作品に慣れ親しんだ耳には、当時売り出し期にあった彼が「Out of Nowhere」で聴かせる艶かしい雰囲気が非常に新鮮に感じられるのではないかと思う。

 その他の曲に目を向けると、実は当時ヒットチャートに登場した訳ではないバージョンも結構収録されていて、その点は不満もあるのだが、とにかく安いので文句は言わないことにしよう。「Night and Day」「It's Only A Paper Moon」「Stormy Weather」など現在でも“常識”といえるスタンダードの初期バージョンが聴けるのは有り難いし、有名な童話「三匹の子豚」が歌の中で語られる「Who's Afraid of The Big Bad Wolf(狼なんか怖くない)」がこの時期のヒット曲だった、なんてことも初めて知ったり。こちらも引き続きフォローしていきたいシリーズである。


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2006年07月20日

Studio Outtakes - The Everly Brothers (Bear Family)

Studio Outtakes - The Everly Brothers

 meantimeのホームページ時代から何度も書いている通り、エヴァリー・ブラザーズは本当に好きなグループで、新しいCDが発売されればほぼすべて買い揃えるようにしている。昨年などは60年代のワーナー・ブラザーズ時代に発表されたアルバムが一気にCD化されたり、80年代のマーキュリー録音がボックス化されたり、はたまた再結成コンサートのDVDが発売されたり・・と、ファンは一体何枚彼らの作品を買えばいいんだ??と喜んでいいのか悲しんでいいのかわからない状況に陥ったりしたものだが、この傾向は今年もまだ続くらしい。

 今回届いたのは彼らが最も革新的な作品を世の中に送り出していた50年代ケイデンス・レコード時代のアウト・テイク集。過去にもアメリカのライノが「All They Have To Do Is Dream」のタイトルで未発表録音をCD化したり、今回のCDを出したベア・ファミリーも彼らのケイデンス録音を網羅した3枚組ボックスをリリースした際に、CD1枚分のアウト・テイク(ライノ盤とダブり多し)をつけたりしていたのだが、今回はそれらとのダブりはなし、レコード会社の倉庫に眠っていたテープから新たに34曲分を掘り起こし、1枚のCDに収めてしまった。

 スコッチ社のオープンリール・テープの紙箱を忠実に再現した(箱の内側には取扱説明書まで印刷されている!)パッケージに包まれたCDの冒頭に収録されているのは、彼らの記念すべき初ヒット「Bye Bye Love」のこれまた記念すべきファースト・テイク。聴いてみて驚くのは、歌詞の一番と二番が当初は逆の順番だったこと。♪There Goes My Baby...の部分が後から出てきたら、そりゃインパクトは弱いよね。これは歴史的な好判断といえるだろう。その他この時期の主要ヒットのほぼすべてを別バージョンで聴くことが出来、僕が彼らのレコードを初めて聴いた時(多分高校生の時)の新鮮な印象を再び味わえたような、そんな感覚を覚えた。しかしこれほどメジャーなアーティストの録音が、没テイクとはいえこれだけの量手つかずで残っていたとは・・。オールディーズ道は奥も、業も深い。。

Classic Everly Brothers Too Good To Be True - The Everly Brothers Give Me A Future - The Everly Brothers

 パッケージ同梱の分厚いブックレットには、収録曲の全曲解説に加えてケイデンス時代の詳細なセッション・グラフィも掲載。1テイクずつご丁寧に収録されているCDの番号も書かれていて「ほら、他のCDとはダブってないでしょ!」とこのCD収録分についてはわざわざ朱書きがされていたり。彼らの言うことを信じれば、過去にベア・ファミリーからリリースされた3枚組「The Classic Everly Brothers」とこのCDを持っていれば、これまでに世に出ている50年代の彼らの録音が完璧に網羅できることに。更に昨年アメリカでリリースされた音楽出版会社用のデモ・レコーディング集「Too Good to Be True」と「Give Me A Future」の2枚を加えれば、この時代の彼らのレコーディングすべてを所有することが出来るという・・。マニアには堪らない話だが、こんなリリース・ラッシュが今後も続くようであれば、経済的にもこれはたまらない・・。
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2006年07月19日

Saturn Rings - Michele (Fallout)
Crazy Elephant (Repertoire)

Saturn Rings - Michele Crazy Elephant ('69)

 過去10年くらいの間に無数に出されているカート・ベッチャーの「アワ・プロダクション」関連音源。正直言って明らかに便乗リリースと思われる関連性の薄い音源まで詳しい説明もなく“つかまされる”状況に辟易もしたが、今回はその中で“最後の大物”といえるアルバムのCD化が実現した。「アワ・プロダクション」の紅一点ミッシェル・オマリーが1969年にABCから発表した唯一のソロアルバムの登場。

Present Tense - Sagittarius ('67) カート・ベッチャー以下西海岸のスタジオ人脈の精鋭が1967年に制作したソフト・ロックの名作、サジタリアスの「Present Tense」に収録されていた3曲「Would You Like To Go」「Song To A Magic Frog」「Musty Dusty」の再演バージョンが収められている(更にボールルーム名義で録音した「Spinning, Spinning, Spinning」も収録)このアルバムは、彼ら特有のマジカルなコーラスワークを楽しむというよりは、アルバムの主役であるミッシェルの“魔女的”な魅力を満喫できる、アシッド感溢れる好盤(プロデュースはベッチャーではなく「イクイノックス・プロダクションズ」のマイク・ディージーが担当)。中でも「〜 Magic Frog」と「Musty 〜」の2曲は舌っ足らずな感じのボーカルが結構よくて、オリジナルとはまた別の楽しみ方が出来る。何曲かはこの時代にありがちな東洋趣味が鼻につくものもあり、聴いててかったるい部分もあるのだが、ソフト・ロックマニア、あと「カマトト系」ボーカル好きには無視できない1枚だと思う。追加情報としては、アルバムのジャケット・デザインをジャン&ディーンのディーン・トレンスが手がけ、リトルフィートで注目される以前のローウェル・ジョージもフルートとハーモニカで参加。これで欲しくなる人もいる??

Crazy Elephant サジタリアス〜ミレニアム関連の音源はこれまで色々種類が出過ぎて、それぞれの関連性がよくわからなくなってきているので、世界の何処かの親切な誰かが、包括的なセッション・グラフィを一冊の本にまとめてくれないだろうか?とここ数年思い続けているのだが、そんな酔狂なことをやっている人っていないんですかね?で、もう1枚のご紹介は60年代後半〜70年代前半にかけて無数に生まれた「バブルガム・ロック」グループの一つ、クレイジーエレファントのCD。1969年のヒット「Gimme Gimme Good Lovin'(米12位/英12位)」で知られる彼らは他のバブルガム・アーティストと同様当初は実体のないスタジオ・プロジェクトで、ボーカルもこの曲を書きプロデュースも担当したジョーイ・レヴィン(オハイオ・エクスプレスのボーカルも彼である)とドゥ・ワップグループ、キャディラックスにいたボビー・スペンサーが吹き込んでいたが、曲のヒットに伴いアルバム制作時にはラリー・ロウファー以下5名のメンバーが集められジャケットを飾っている。セルフ・タイトルのアルバムに収録されている曲のうち幾つかは「スーパーK」ジェリー・カセネッツとジェフ・カッツが手がけ、残りはバンドのリーダー、ラリー・ロウファーの作品で占められており、既に下火となりつつあったこの時期のバブルガムらしく、キャッチーなポップスと小難しいニューロックが混在したような不思議な内容。「Gimme 〜」を気に入ってアルバムを購入した当時の子供たちは、さぞかしがっかりしたことだろう・・。

Strawberry Bubblegum: A Collection of pre-10cc Strawberry Studios Recordings 1969-1972 今回のCD(全25曲入り)にはアルバムに加えてその後リリースされたシングル音源他もコンプリートに集められており、当然のことながら主たる関心はこちらの方に向けられる。彼らは「Gimme 〜」に続くHOT100ヒットを放つことが出来なかった「一発屋」だが、続く「Sunshine, Red Wine(米104位)」「Gimme Some More(116位)」「There's A Better Days A Comin' (Na, Na, Na, Na)」といったシングル曲はそれなりのポップさを持っていて十分聴けるし、グループ最後のシングルとなった70年の「There Ain't No Umbopo」を演奏しているミュージシャンたちの正体は後の10ccだったりと、地味ながらいろいろと興味をそそられる内容。なおこの時期10ccの面々が数多く手がけたバブルガム作品は、数年前「Strawberry Bubblegum」のタイトルでひとまとめにされているので、興味のある方はこちらも探してみることをお勧め。
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2006年07月18日

Abracadabra: The Asylum Years - Judee Sill (Asylum/Rhino UK)
Chariot of Astral Light - Tommy Peltier featuring Judee Sill (Blackbeauty)

Abracadabra: The Asylum Years - Judee Sill Chariot of Astral Light - Tommy Peltier featuring Judee Sill

ASYLUM RECORDS - アサイラム・レコードとその時代(音楽出版社) 先月出版されたムック(音楽本)「All About Asylum Recordsアサイラム・レコードとその時代」はお読みになっただろうか。70年代ウェスト・コースト・ロックのコアな部分を担った「アサイラム」という一つのレーベルを題材に、レーベルの歴史からアーティスト紹介、全アルバム解説までが大勢のライターたちによって詳細に言及された、全篇音楽への愛情溢れる素晴らしい一冊だった。

 現在は「ドリームワークス」3トップの一人として業界を牛耳るデヴィッド・ゲフィンが71年に設立した「アサイラム」から、記念すべき第一弾アルバムとしてリリースされたのが女性シンガーソングライター、ジュディ・シルのファースト。彼女がどんな人だったかをこの本から引用させてもらうと【1944年10月7日にカリフォルニアのスタジオ・シティで生まれた彼女は、両親がアルコール中毒者で、15歳で家出、17歳でギャングと結婚、すぐに離婚して武装強盗となり、捕まって少年院送り。出所してからは大学で少し音楽を学んだものの、ヘロイン中毒となり、ヘロインを手に入れるために様々な犯罪に手を出して、今度は刑務所へと、とんでもない世界を生き抜いてきた。】という、一言でいって「どうしようもない女」だったようだ。これまで僕は彼女について70年にタートルズが録音した美しいバラード「Lady-O」と、とあるオムニバス盤に収録されていたこの曲の彼女による自演版でしか知らなかったのだが、その彼女の再評価熱が近年高まっているのだという。

Judee Sill ('71) 結局1979年にヘロインのオーバードースで命を落とすことになる彼女が、生前発表したアルバムは71年のファーストと、73年発表の「Heart Food」の2枚のみ。この2枚は数年前日本でCD化され、続いてインターネット・オンリーの通販レーベル「ライノ・ハンドメイド」からボーナストラックが大量に追加され限定版として発売されたものの、送料も考えるとかなり高価でなかなか手が出せなかったのだが、今回「ライノ〜」で発売された内容そのままを2枚組にし、更に未発表と別ミックスを1曲ずつ追加、しかも値段はほぼ1枚分という「ライノ〜」盤を購入した人にとっては「そりゃないよ〜」と言いたくなるようなCDがイギリスで発売された。彼女の経歴を読んでそこから生まれる音楽を想像してみると、もの凄くエキセントリックなものか、もしくはローラ・ニーロ風の「怨念系」ナンバーが延々と続くような作品を思い浮かべがちだが、実は彼女が生み出す音楽は驚くほど美しく清々しい。その歌声も澄んだ感じで(低音域になるとカレン・カーペンターを思い起こさせる瞬間もある)とても“ギャングスタ”な生活を窺い知ることは出来ない。

 彼女版「Lady-O」を初めて聴いた時、僕はブラジルのシルヴィア・テレスが歌うボサ・ノヴァに通じるものを感じた。清楚で、どことなくもの哀しげで。アルバムの他の曲も同様にシンプルなサウンドの曲で埋め尽くされているのかな、と思っていたのだが、聴いてみたら予想とは随分違った感じでびっくり。当時の彼女に言わせると、彼女の音楽性は「カントリー/カルト/バロック」に集約されるのだという。カントリー・マナーのメロディやリズムに、ドラッグ体験から生まれたアシッド感覚、そして大仰ともいえるオーケストラ・アレンジ。加えて彼女が少年院に収監された時期に覚えたというゴスペル風のピアノ・サウンドが彼女の音楽を特徴づけている。本稿に何度も登場している「Lady-O」に加え、ホリーズがカバーした「Jesus Was A Cross Maker(偶然だと思うが彼女のバージョンはかつてホリーズに在籍したグラハム・ナッシュがプロデュースしている)」あたりがロックファンには耳馴染みのある作品になると思うが、他にもコーラス・アレンジが印象的な「My Man On Love」や、現在何かのはずみでFMラジオから流れても、リスナーにそれなりのインパクトを与えることが出来るのではないか?と思われる「Enchanted Sky Machines」など、つい繰り返し聴きたくなるようなナンバーが幾つも収録されている。ボーナストラックにはセッションからのアウトテイクに加え、71年の貴重なライブ録音も7曲。ストリングスや複雑なコーラスを取り除いた彼女の“素”の演奏を聴くことが出来る。

Heart Food - Judee Sill ('73) 続くセカンド「Heart Food」は前作の世界を更に推し進めた内容。カントリー臭はやや後退、その分ゴスペル色が増し、オーケストラとコーラスのアレンジはより壮大なものに。中でも特筆すべきは「The Kiss」というナンバーで、これは間違いなく彼女の最高傑作だろう。クラシカルな雰囲気の中徐々に高みへと到達していくメロディとボーカル。不幸にもこれまで注目されることはあまりなかったようだが、今後70年代屈指の名曲と見なされるようになるのかもしれない。他の聴きどころとしてはオールディーズ風のコーラスが楽しい「Down Where The Valleys Are Low」、ゴスペル風のピアノとわかりやすいメロディが印象的な「Soldier Of The Heart」、複雑に絡み合うコーラスが荘厳なムードを創り出す大作「The Donor」など。ボーナストラックにはアルバム・セッションからのアウトテイクが8曲収められており、彼女がピアノの弾き語りで歌う「The Kiss」は装飾を取り除いてもこの曲がなお類い稀な美しさを持っていることを証明しているし、それは「The Donor」も同様。CDの最後にこの曲のミックス違いを再度登場させているのは、今回のCDを企画した監修者の思い入れの強さを物語っているのか。

Dreams Come True: Hi, I Love You Right Heartily Here - Judy Sill ('05) 大変充実したアルバムを2枚立て続けに発表した彼女だったが、その後は不幸な運命が待ち受けていた。車の暴走癖があった彼女は度々交通事故を引き起こし、それが原因で傷めた背骨の痛みから逃れるため鎮痛剤やドラッグを大量に摂取。施設への入退院の合間にアルバム1枚分の録音を残したものの、結局それはお蔵入り(昨年「Dreams Come True」のタイトルでようやく陽の目を見た)、数年間廃人同様の生活を送った後79年に命を落としたが、音楽シーンを離れて久しい彼女の死を報じるメディアは既になかったという。21世紀に入って再発見されようとしている彼女の音楽、このCDで手軽に入手できるようになったことにより「70年代の秘宝」に出逢う音楽ファンが増えることを願いたい。

 ・・と、文章はここで終わってもいいのだが、ここのところ個人的に高まるばかりのジュディ・シル熱にほだされてつい入手してしまったCDがもう1枚あるので併せて紹介。60年代にローランド・カークとの共演盤を残しているというジャズ・トランぺッター、トミー・ペルティアが60年代末、何を思ったかシンガーソングライターに転向し録音した作品集が昨年CD化されており、そのジャケットに書かれている「フィーチャリング・ジュディ・シル」の言葉に誘われて購入。全12曲のうちシルが参加しているのは後半の6曲で、前半6曲は殆ど聴くべきところはなし。シンガーソングライターとしてのペルティアはとても評価できるものではなく、関心はシルの活躍ぶりばかりということになるが、一曲「Pocket-Socket」で彼女のソロ作にも通じるコーラスが聴けて一瞬ハッとさせられるものの、他は非常にラフな形で伴奏(当時のサイケなサウンドに欠かせないファーフィサ・オルガンを何曲かで弾いている)とコーラスを務めている。作品自体はどうということはないが、録音時期が69年から74年にかけてと、シルのキャリアの最初期と最後期をカバーしているため、どうしても手許に置いておきたい気にさせられる。ボーナスとしてクイックタイム映像で彼ら73年の貴重なスタジオ・ライブを観ることが出来るが、ライブ映像でいえば前述の「Dreams Come True」に収録されているソロのステージの方が圧倒的にいいし・・。やはり重度のマニアのみ持っていればいいCDなのかな、という結論に落ち着くか。


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2006年07月17日

Dance to The Hits of The Beatles - Jack Nitzsche and His Orchestra (Collectors' Choice)
Chopin '66: The Modern Sounds of Jack Nitzsche and His Orchestra (Collectors' Choice)

Dance to The Hits of The Beatles - Jack Nitzsche and His Orchestra Chopin '66: The Modern Sounds of Jack Nitzsche and His Orchestra

Hearing is Believing: The Jack Nitzsche Strory 1962-1979 (Ace) ジャック・ニッチェといえば1960年代のポップス界を代表するアレンジャー。ポップス黄金期にはフィル・スペクターとタッグを組んで数々の名作を生み出し、その後の「ロック革命期」にはニール・ヤングやローリングストーンズらに印象的なオーケストラサウンドを提供し、70年代以降は映画音楽に注力、82年の「愛と青春の旅立ち」でアカデミー賞を獲得・・と長きに亘って活躍したが、今回は彼のアーティストとしての側面。60年代に発表されながらこれまであまり注目されることのなかった彼のインスト・アルバム2種がCD化された。

The Lonely Surfer - Jack Nitzsche ('63) 彼名義の作品として有名なのは、なんといっても1963年の「The Lonely Surfer」。サーフィン・ブーム効果もあってタイトル曲がTOP40ヒットを記録した同アルバムはこれまでに何度かCD化が為されており、オールディーズ基本アイテムの一つとなっているが、これに続いて企画されたアルバムが翌64年の「Dance to 〜」。タイトルの通り当時全米で盛り上がっていたビートルズ・ブームに当て込んで録音されたカバー集で、全12曲を収録。“ビートルズのカバー集”といっても64年当時はまだ「レノン&マッカートニー作品集」などという概念はなく、オリジナルだろうがカバーだろうが、ビートルズがレコードで演奏していれば“彼らのヒット曲”。クッキーズの「Chains」やアイズレーブラザーズの「Twist & Shout」などが収録されているのはまだしも、こともあろうに「My Bonnie(ビートルズがトニー・シェリダンのバックを務めたヒット)」まで取り上げているあたりは、この年の混沌とした雰囲気をよく表しておりかえって面白い、と評価すべきなのか。アナログ盤のAB面ラストに当たる2曲にはニッチェ作のビートルズ讃歌「Ringo」と「Beatle-Mania」が入っており、こちらはどこかで聴いたようなビートルズ風のメロディが散りばめられたノヴェルティ。ブームが生み出した珍品ということで、ビートルズマニアは持っておきたい録音かも。

 アルバム・クレジットが詳しくないので参加ミュージシャンがよくわからないのだが、恐らく「レッキング・クルー」と呼ばれる西海岸のポップスを支えたスタジオ・ミュージシャンたちが大挙して参加していると思われる(アルバム全編でフィーチャーされているダブル・トラックのサックスはスティーヴ・ダグラスか?)このアルバム、初期のビートルズサウンドを象徴するハーモニカが色を添えているが、基本的には当時流行していた「ホットロッド・サウンド」が基調で、一連のスペクター作品で聴けるような「音の壁」を期待すると少々物足りないかも知れない。で、サウンド的にはこっちの方が面白いかも、と思われるのが66年に発表された「Chopin '66」。64年にティーン向けのインスト・アルバム制作をレコード会社から指示されたニッチェが、今度はクラシックへの挑戦を命ぜられたこのアルバム、「雨だれ」「革命」「葬送行進曲」などお馴染みのメロディが次々と登場してなかなか親しみやすい「イージーリスニング」に仕上がっている。

 ドラムやパーカッションなどリズム楽器の効果的な使用や、複雑なストリングスのアレンジメントなど、ポップス新時代の幕開けにあたる66年ならではのジャック・ニッチェのアイディアがそこかしこに感じられるアレンジで聴いてみると、ショパンのメロディが、現代の様々なポップスに影響を与えていることがわかり面白い。1930年代にヒットしたポップスで「I'm Always Chasing Rainbows」という個人的に非常に好きな曲があるのだが、これもショパンの「幻想即興曲」が下敷きになっていることを初めて知ったし。ニッチェがその後様々なロックアーティストの作品に大胆に導入していったサウンドの原点として聴いてみても、色々発見のあるアルバムではないかと思う。


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2006年07月11日

The Essential Al Kasha: The Early Years Vol.1&2 (Crystal Ball)

The Essential Al Kasha: The Early Years Vol.1 The Essential Al Kasha: The Early Years Vol.2

Stay and Love Me All The Summer - Brian Hyland ('69) 先月購入したブライアン・ハイランドの「Stay and Love Me All Summer」でタイトルナンバーを作曲していたアル・カシャのことをネットで調べたら、この曲を含む彼の60年代の仕事を集めたCDが2種発売されていることを知り、早速取り寄せ。

 先日リメイク版が公開されたパニック映画「ポセイドン・アドベンチャー('72)」の主題歌「Morning After('73 #1)」、そして「タワリング・インフェルノ('74)」の「We May Never Love Like This Again('75 #83)」と2度のアカデミー受賞歴を誇り、映画音楽の世界に大きな足跡を残しているカシャは1937年生まれ(未だ健在)。当初はコメディアンを目指したりしていたそうだが音楽の才能を認められ、50年代後半にアイドル・シンガーとしてデビュー。しかしその方面では芽が出ずやがて裏方へ。ジャッキー・ウィルソンやハンク・バラードなどR&B系のアーティストと交流を深め、ハンク・バラードとミッドナイターズの「The Switch-A-Roo('61 #26)」やボビー・ダーリンの「Irresistible You('62 #15)」などのヒット以降、コロンビア・レコードで専属ディレクターを務めた数年間を除いてコンスタントに作品を様々なアーティストに提供・・というのがこのCDの背景。

 2枚で全60曲というボリュームのこの作品集のうち、カシャ自身が様々な名義で録音した(結局成功を収めることが出来なかった)作品が全体の約3分の1を占める。ここら辺はどうでもいいとして(失礼!でもティーンポップとしてはなかなかの出来)他のアーティストへの提供曲のうちヒットチャートに登場したものを列記すると、ボビー・ピーターソンの「Irresistible You('60 #96)」、ジャッキー・ウィルソンの「My Empty Arms('61 #9)」、同じくウィルソンの「I'm Comin' On Back To You('61 #19)」、アレサ・フランクリンの「Operation Heartbreak('61 R&B#6)」、ロニー・ダヴの「Let's Start All Over Again('66 #20)」、ジェイとアメリカンズの「Why Can't You Bring Me Home('66 #63)」、グローリーズの「I Stand Accused('67 #74)」、そしてブライアン・ハイランドの「Stay and Love Me All Summer('69 #82)」などなど。

 超有名曲は少ないものの、カシャは印象に残るメロディを生み出す能力に長けていたようで、ノンヒット曲でもジニー・トーマスの「What's So Sweet About Sweet 16」やニール・ダイアモンドのごく初期の録音「At Night」、アダム・ウェイドの「Teenage Mona Lisa(いいタイトル!)」、アンドレア・キャロルの「Room of Memories」、ラッセル・ブラザーズの「There's Nothing You Can Do About That」などすぐさま個人的な「お気に入りティーンポップ・リスト」入りを果たしそうな曲が続々登場するし、60年代後半の作品にもブルックリン・ブリッジの「Look Again」、クリス&ピーター・アレン(アルバムをCD化して欲しい!)の「Ten Below」、フランキー・ヴァリのソロ「Dream of Kings」などいい感じのソフト・ロック系ナンバーがあったりするので聴いてて油断が出来ない。

 隠れたティーンポップの名曲を探し求めるタイプのオールディーズファンであれば、このCDは大満足の内容だと思う。なおこのコンピはレアなオールディーズものを発掘し次々とCD化している「クリスタル・ボール」というマイナー・レーベルが発売しているが、最近はソングライターやプロデューサーなどが、自分が権利を持つ音源をCDに焼いて自分のサイトで売っているパターンが増えてきているので、こまめに調査して貴重な音源の入手に努める必要がありそうだ。

Al Kasha Official Web Site

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2006年07月10日

Atlantic Unearthed: Soul Brothers (Rhino)
Atlantic Unearthed: Soul Sisters (Rhino)

Atlantic Unearthed: Soul Brothers Atlantic Unearthed: Soul Sisters

 近年充実したコンピレーションを次々とリリースしているヨーロッパ支社に負けていられない、ということなのか、ライノのアメリカ本社がちょっといい内容のR&Bコンピを出してくれた。但し選曲したのはイギリス人だが・・。

 アトランティック・レコードといえば、1960年代から70年代にかけての「ソウル・ミュージックが一番良かった時代」に、数えだしたらきりがないほどの名作レコードを生み出したレーベル。今回リリースされた「Atlantic Unearthed」シリーズはタイトルに「掘り出し物」とあるように、当時はヒットしなかったシングル曲や、未発表に終わった作品を集めたコンピレーションだが、しかしさすがはアトランティック、レア作品集でも品質は大変な高レベル。

 シリーズは男性編と女性編に分かれており、まず男性編「Soul Brothers」にはアトランティック及び60年代は子会社だったスタックスのお馴染み“南部紳士”たち、サム&デイヴ、アーサー・コンレイ、オーティス・レディング、パーシー・スレッジといった名前がまず並び、加えて同レーベルには一般的に馴染みの薄いボビー・ウォマックやジェイムス・カーといったビッグネームたちの貴重なセッション、そしてダレル・バンクスやウォルター・ジャクソンなど“ノーザン勢”が続き(出身地でいえば先日亡くなったウィルソン・ピケットもノーザン(北部)だ)、最後はダニー・ハザウェイの貴重な未発表曲「What A Woman Really Means」で締められている。60年代アトランティックの「ドリームチーム」ソウル・クラン(ソロモン・バーク、アーサー・コンレイ、ドン・コヴェイ、ベン・E・キング、ジョー・テックス)の貴重な録音「That's How It Feels」も収められているが、ライナーノーツにはこのグループ結成の裏話(当初はオーティス・レディングとウィルソン・ピケットも誘われていたが、企画が実現する前にレディングは事故死し、ピケットは性格が悪いのでプロジェクトへの参加を断った)も書いてあって面白い。CDのベストトラックは、現在は何故かハイ・レコードのアーティストに混じってツアーしているという(アル・グリーンの代役を務めているらしい)パーシー・ウィギンスの「Book of Memories」、パーシー・スレッジの極甘な「Baby, Baby, Baby」、シャイ・ライツでお馴染み「Coldest Days of My Life」のウォルター・ジャクソンによるオリジナル・バージョンあたりか。

 一方女性編「Soul Sisters」の方はアレサ・フランクリンが歌う「My Way(シナトラの!)」以下有名シンガーによる超スウィートな録音がズラリ。お馴染みのところではドリス・トロイ、ジュディ・クレイ、スウィート・インスピレーションズ、バーバラ・ルイスといった名前が見られ、加えてどのレーベルでの録音もすばらしいメリー・ウェルズ、ディー・ディー・シャープがカメオ/パークウェイから移籍して録音した「My Best Friend's Man(プロデュースは勿論旦那のケニー・ギャンブル)」、アーマ・トーマスなどすぐにアトランティックとはイメージが結びつかないアーティストの貴重な録音が続く。アルバムの統一感としてはこちらの方が数段上で、マーギー・ジョセフの「It's Growing」、ベイビー・ワシントンの「What Becomes of The Brokenhearted」、ジャッキー・ムーアの「It Ain't Who You Know」などがムードたっぷりで特に胸にしみる。

 一時に比べれば、このところのライノ・レコードは随分とやる気が感じられるコンピレーションを多く出すようになってきてるし、近々R&B系の力作ボックスのリリースも予定されているようだし。暫く同社のリリース情報を注意深くフォローしていこうと思っている。
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2006年07月09日

Discovered Volume 5&6 (Recollect)

Discovered Vol.5 Discovered Vol.6

 音楽ファンの中には“チャートマニア”と呼ばれる人がいて、更にこれを分類すると「記録分析派」と「音集め派」に分けることが出来る。「記録分析派」は一番簡単な例ではあるアーティストのヒット曲の最高位をすべて暗記したり、ある年のナンバー1ヒットを日付順に諳んじてみたり。それより先に進むと細かすぎて(例えば「歴代100位で初登場し1位まで上り詰めた曲リスト」など)僕も話に付き合っていてうんざりさせられる場面が多々あるのだが、今回取り上げるのは「音集め派」の方。世の中には一旦集め始めるとそのすべてを揃えないと気が済まない人ってのが結構いて、音楽に限らなくても、もう読むこともない「こち亀(一体いつ終わるんだ??)」を新刊が出る度買ってきては一巻目から本棚にずらーっと並べている人とか、「食玩」シリーズが出る度に段ボールごと“大人買い”を繰り返す人とか・・。

 チャートマニアの多くが心の支えとしている記録がビルボード誌のポップチャートで、これにチャートインした曲を片っ端から買い集めている人を何人か知っている。ある人などは買ったCDのパッケージも開けず、棚に並べることで「目的を果たした」と悦に入ったりと、もはや「音楽ファン」とは呼べない状態(こういう人、少なくないのだ)。何年か前に年輩のチャートファンから「ビルボードのチャート、そろそろ終わってくれないかね・・。」と本末転倒なことを真剣に言われたときには心底驚いた。。

 かくいう僕もチャートヒットを“コンプ”するつもりはさらさらないが、珍しいヒット曲が入っているCDを見つけたら既に持っている曲のダブりはあまり気にせず買うようにしている。スペインのマイナーレーベル「リコレクト」が出している「Discovered」はこれまでCDになってないヒット曲を執念深く探してCD化してきており、珍しもの好きにはたまらないシリーズ。先日届いたのはその第5集と第6集で、それぞれの(多分)初CD化曲を挙げてみると

Vol.5
Love Is A Many Splendored Thing - Don Cornell ('55 #26)
It's Almost Tomorrow - David Carroll ('55 #20)
Swingin' Gentry - Earl Grant ('62 #44)
High On A Hill - Scott English ('64 #77)

Vol.6
Young Abe Lincoln - Don Cornell ('55 #25)
No Arms Can Ever Hold You - Georgie Shaw ('55 #23)
English Muffins and Irish Stew - Sylvia Syms ('56 #21)
A Fallen Star - Nick Noble ('57 #20)
Hideaway - The Four Esquires ('58 #21)
Little Dipper - The Mickey Mozart Quintet ('59 #30)
Just Come Home - Hugo and Luigi ('60 #35)

 などなど。1955〜56年のヒット曲の収集はコレクターにとって悪夢のようなもので、オリジナルのシングルでも手に入れないと聴けない曲も多いのだが、そこら辺をかなりカバーしてくれているのは有り難い。これ以外にもHOT100の下位にランクインした曲や“バブリング・アンダー”ヒット、ノンヒットながら興味深い内容の曲など非常に濃いいCD。既発の第1〜4集もあわせ、曲目リストを見て奮えてください。

Discovered Vol.1 Discovered Vol.2 Discovered Vol.3 Discovered Vol.4
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2006年07月08日

Country & West Coast: The Birth of Country Rock (Big Beat)

Country & West Coast: The Birth of Country Rock

 「ソフト・ロック」同様「カントリー・ロック」も分類好きな日本人が勝手に名付けたジャンルなのかと思っていた。が、実はそうではないようで、イギリスで堂々と「カントリー・ロック」と銘打ったコンピレーションがリリースされた。その名も「カントリー・ロックの誕生」。

Sweetheart of Rodeo - The Byrds ('68) このCDではカントリー・ロックの出発点とされるバンド、ザ・バーズ周辺の音源を中心に、60年代後半から70年代前半にかけてアメリカ西海岸で生み出された新スタイルのロック・サウンド24曲が集められている。まず「本体」バーズの録音からは、彼らがカントリー・サウンドにアプローチを始めたアルバム「Younger Than Yesterday」から「Time Between」、そしてこのジャンルの金字塔とされるアルバム「Sweetheart of Rodeo」から「One Hundred Years from Now」の2曲が選ばれており、アルバムの核をなしている。これに「Sweetheart 〜」の主役であり、カントリー・ロックの最重要人物と見なされているグラム・パーソンズの作品がバーズ加入前のインターナショナル・サブマリン・バンド、脱退後のフライング・ブリトー・ブラザーズ、その後のソロ録音と丁寧に追われ、加えてパーソンズに劣らぬバーズのカントリー・サウンドへの貢献を果たしたクラレンス・ホワイトや、フォーク・ロック期のバーズに参加しその後カントリー・ロック的アプローチを展開したジーン・クラークやジーン・パーソンズといった元メンバーたちの作品もフォローと、このCDの約半分はバーズ人脈による録音で占められており、ここを通過点に様々なミュージシャンたちが交流し合って一つの流れが生み出された様子が描かれている。

 ヒットチャートでも成功を収めたバンドとしてはピュア・プレイリー・リーグ、マイケル・ネスミスとファースト・ナショナル・バンド、ポコなどの作品が収録されており(流れ的にイーグルスあたりが入ってもいい気がするが、権利上使用が難しいのと“イギリス録音”という点が選者には許せないのだろう)、一方コルヴェッツ、スペンサーズといった一般に殆ど知られることのなかったグループもカバー。そしてバーズ同様カントリー・サウンドに挑戦したラヴィン・スプーンフル、ヤングブラッズなどのフォーク・ロックバンドや、60年代後半にカントリー・ロックサウンドを作品に取り入れたフォーク・シンガー、イアンとシルヴィアやジェリー・ジェフ・ウォーカーまでを網羅し「カントリー・ロック入門」として非常に有用な一枚になっている。

Bradley's Barn - The Beau Brummels ('68) Nashville Skyline - Bob Dylan ('69) The Great Speckled Bird ('70) Now Is The Time - Hearts & Flowers ('67)

In Concert - Rick Nelson ('69) Hand Sown...Home Grown - Linda Ronstadt ('69) California Bloodlines - John Stewart ('69)

 このCDによって目の前に広がったファミリー・ツリーを頼りに、今後気になる作品を一枚々々取り寄せて聴いてみようと思う。上掲は収録時間や権利の関係でCD収録が果たされず、ライナーノーツで「一緒に聴いてみたら?」と勧められているアルバム。有名無名色々挙げられているが(ネットで調べがつかなかったアルバムも一枚あった・・)これもこのCDの雰囲気を窺い知る材料としてジャケ写を並べておこう。

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