2006年06月25日

Tartaglian Theorem - Tartaglia (Toshiba EMI)
On The Eighth Day (Universal International)

Tartaglian Theorem - Tartaglia On The Eighth Day

 「ジャケガイノススメ」シリーズ6月発売分で入手したのは上掲の2枚。謎多きアレンジャー、タータグリアのインスト・アルバムと、こちらも正体不明のソフト・ロックグループ、エイス・デイ67年発表のアルバム。

Beach Blanket Bingo - Donna Loren ('65) 本題に入る前に今回の「ジャケガイノススメ」シリーズにおける「ベスト・ジャケ写」の発表を。個人的には60年代のアイドル女優ドナ・ローレンの「Beach Blanket Bingo」、これが非常に可愛くって一番に推したいところなのだが、CDの内容が数年前に海外で出たコンピレーションとまったく一緒なので・・。以前も書いた通り「紙ジャケ」だけでは買う気になれない僕なので、今回は無念の購入見送りとなった次第。でもジャケットの可愛さにかけてはこれがダントツでしょう。

Mondo for Flower Age ('96) ということで続いて実際に購入したCDの話題へ。ソフト・ロック系の幾つかのアルバムにアレンジャーとして参加したことで知られるジョン・アンドリュース・タータグリアのリーダー作を初めて聴いたのは、恐らく多くのソフト・ロックファンがそうであったように、今から10年前に発売された素晴らしいコンピレーション「Mondo for Flower Age」で。「モンド・ミュージック」というテーマで編まれ、様々な珍曲・異曲満載だったこのCDだが「ソフト・ロック」のコンピレーションとしても非常に内容の濃いもので、色々発見の多い1枚であった(タータグリア作品では他に今回のアルバム未収録の「Good Morning Starshine」も収録されている)。

 「Tartaglian Theorem」は冒頭に配置されているロジャー・ニコルス作曲の「Poto Flavus」を除いて、すべて当時のヒット曲(現在はいずれもロックの古典的名曲とみなされている)のカバーで占められている。ビートルズの「I Am The Walrus(以前アメリカで出されたラウンジもののコンピにはこれと「A Day In The Life」がメドレーになった7分超のバージョンが収録されていたが、両録音の因果関係を今回調べることは出来なかった)」、ドアーズの「Light My Fire」、スパンキー&アワ・ギャングの「Like To Get To Know You」と「Give A Damn」のメドレーなど単なる“イージーリスニング”を逸脱した選曲で“スペース・エイジ”なサウンドを聴かせている点は面白い。コーラスが登場する曲は少ないが、にもかかわらず“ソフト・ロック的なもの”を多分に感じさせるアルバムである。

Pleasure Fair ('68) もう1枚は謎のソフト・ロックグループ、エイス・デイ。メンバーの名前もよく判らず、ヒット曲を生むこともなかったこのグループが注目されている理由は、アルバムの制作をアーチーズやカフ・リンクスのボーカリストとしてブレイクする以前のロン・ダンテが全面的に手がけているから。このアルバムは97年に一度CD化されており、僕はそのとき同時に発売された「ブレッドの前身グループ」プレジャー・フェアのアルバムの方を買ってしまったため購入を見送ったのだが、今回その時よりも安価に入手できるということで「10年目の購入」となった。聴いてみたところ内容に特筆すべき点は特になく、「Brandy」は非常にいい曲だが何かのコンピレーションで聴けるはずだし、ジャケットだって別にそんなに良くはないし・・。ロン・ダンテの名前を見つけたらすぐさまCDを買ってしまうような、超マニアのみ手許に置いておけばいい商品だと思う。

Goldie - Goldie Hawn ('72) Angel of The Morning - Merrilee Rush ('68) The Paris Sisters Sing Everything Under The Sun!!! ('67) Take A Picture - Margo Guryan ('68)

 オマケとして今回の紙ジャケシリーズからは漏れたものの、ビジュアルブック「ジャケガイノススメ」に掲載されている作品の中で、既にCD化されCDサイズでデザインを楽しめるアルバムを“女の子ジャケ”にテーマを絞ってご紹介。最近はあまりスクリーンで見かけなくなってちょっと寂しいゴールディ・ホーンはバーバンク・サウンドの隠れた名盤。残りのメリリー・ラッシュ、パリス・シスターズ、マーゴ・ガーヤンも既にソフト・ロック的な評価が確立されたアルバムなので安心してお勧めできる。他には殆どが2イン1形式でCD化されているためジャケットをフルに楽しむことが出来ず、ここでの紹介を見送ったベルト・ケンプフェルトの60年代の諸作も結構気になるところ。またいずれ続編を企画して、珍しいCDを我々の許に届けて欲しいものだ。

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2006年06月24日

Would You Believe (Deluxe Expanded Edition) - Billy Nicholls (Castle Music)
Oh! You Pretty Thing: The Songs of David Bowie (Castle Music)

Would You Believe (Deluxe Expanded Edition) - Billy Nicholls Oh! You Pretty Things: The Songs of David Bowie

 1967年に制作されたときは全く見向きもされず、サンプル盤が100枚だかプレスされただけで市場にも出回らなかったというビリー・ニコルスの「Would You Believe」。シングルとして当時発売されたタイトル曲と「Daytime Girl」の2曲、特にサジタリアス風のソフト・ロックナンバー「Daytime Girl」は80年代にオムニバス盤でCD化され一部のマニアの注目を集めてはいたが、アルバムの存在を突き止め、これを隠れた名盤として取り上げたのは日本が最初だったのではないだろうか。実際このアルバムがCD化されたのは日本が最初で(当時入手したCDのクレジットを見ると2000年発売となっている)、以降ソフト・ロックの基本アイテムの一つとなっている。

Forever's No Time at All: The Anthology 1967-2004 - Billy Nicholls しかしこの発掘盤がひとたび商売のタネになるとわかるとオリジナルの音源を持つところは強く、イギリスのサンクチュアリー・レコードはここ数年このアルバムを様々な形(ボーナスをつけたり、70年代にニコルスが残した録音を足して2枚組のアンソロジーにしたり)で繰り返し再発している。先日届いたのはその決定版といっていい内容の2枚組で、一枚はオリジナルのアルバムに数曲のボーナス、もう一枚は丸ごとデモテープとアウトテイク集というもの。ここまでマイナーなアルバムの未発表音源が、40年近くたってこれほどの量出てくるとは・・。「Would You Believe」は当時ビーチ・ボーイズの「Pet Sounds」に対するイギリスからの回答という位置づけで制作されたそうだが、この2枚組はさしずめ数年前に出た「Pet Sounds Sessions」へのオマージュと考えればいいか?但し予算をたっぷりかけてスタジオとミュージシャンを独占し制作された「Pet Sounds」のような生々しいスタジオ内のやり取りが聴ける訳ではなく、ここではニコルスの孤独な作業の様子を延々と聴くことになるのだが。

 アルバム自体は既に聴いたことのある方が多いと思うので省略し、未発表音源の方を。アルバム未収録に終わった曲は意外にも多く、ディスク2の大半を占めているのでこれは恐らくアルバム制作とは関係なく、彼が所属していたイミディエイト・レコードの他のアーティストに作品を提供するために吹き込んだデモも多数含まれているのだろう(録音時期は67〜68年)。67年にイミディエイト勢が大挙して参加し制作された(結局お蔵入りになり70年代までリリースされなかったが・・)デル・シャノンのアルバム「Home & Away(後に「...And The Music Plays On」と改題)」に収録されていた「I Want To Be Friendly With You」のニコルス本人によるバージョンが聴けるのは個人的に嬉しい。多くがギター一本と簡単なコーラス(彼の多重録音?)で録音されているので「Would You Believe」で聴けるオーケストラ・サウンドを期待すると肩すかしを食うが、オーバープロデュース気味のアルバムではわからなかった彼の「素」の部分を知ることが出来るという意味では貴重。意外に初期のデヴィッド・ボウイに通じる要素もあるのかな、なんて思ったり・・。

Oh You Pretty Thing - Peter Noone ('71) と、こじつけのようにもう一枚のCDへ。サンクチュアリーのグループ・レーベルの一つ「キャッスル」がこれまでに何種類も出している「The Songs of」シリーズはソングライターにスポットを当てて様々なアーティストの録音を集める企画。今回対象となったのはなんとデヴィッド・ボウイで、非常に珍しい作品がずらりと並ぶ。録音はボウイがアーティストとしてブレイクする前の1967年から74年までと、彼が最も創造的だった時期のものに絞られており、ボウイ自身が発表した諸作の「副読本(副聴盤?)」的な意味合いでも興味深いのではないだろうか。ヒット曲でいえばハーマンズ・ハーミッツの“ハーマン”ことピーター・ヌーン唯一のソロヒット「Oh You Pretty Thing('71英12位)」やモット・ザ・フープルの名曲「All The Young Dudes('72英3位)」、このCDではレコーディング・スタジオで指示を出すボウイの声も付け加えられているルルの「The Man Who Sold The World('74英3位)」などを収録、彼のプロデュースで大ヒットを記録したルー・リードのアルバム「Transformer」からも「Wagon Wheel」が選曲されている。

 ボウイと親交の深いミュージシャンでは盟友ミック・ロンソンが3曲、当時のツアーにダンサー兼コーラスで参加していたアヴァ・チェリー、そしてアストロネッツの録音が収録されているのもマニアには嬉しいだろう。70年代に録音された作品からはどれも彼特有の「魔法」のようなものが感じられ、この選曲センスも評価したいところ。個人的なベスト・トラックは往年のロックスター、ビリー・フューリーの「Silly Boy Blue」、70年代の泡沫アイドル、サイモン・ターナーがモンキーズのデイヴィ・ジョーンズ風に歌う「The Prettiest Star」、意外とハマっているドノヴァン74年の録音「Rock'N'Roll with Me」あたりか。より深い「ボウイ探究」の教材として大変重宝しそうな一枚。
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2006年06月21日

The Blonde Bombshell - Betty Hutton (Living Era)

The Blonde Bombshell - Betty Hutton

 20世紀前半のポピュラー音楽の音源を毎月々々もの凄い勢いでCD化していくイギリスのレーベル「Living Era」。先月は「ジークフェルド・フォリーズ」やマリオン・ハリスなど1920年代のヘヴィなやつが届いて、聴いているこちらも相当体力を使ったが、今月届いたのは日本でも知名度の高い1940年代のハリウッドスター、ベティ・ハットンのベスト盤。これまでオムニバス盤程度でしか聴いたことがなかった彼女のヒット曲をまとめて聴けるということで購入したが、これがまた・・。

Betty Hutton 1921年生まれのハットンは13歳からステージに立ち、ビッグバンド時代はヴィンセント・ロペス楽団のボーカリストとして活躍したそうだが、今回のCDはそこから独立後キャピトルやRCAビクターから放ったヒットや、彼女が主演した「Annie, Get Your Gun(アニーよ銃をとれ)」などのサントラから代表作26曲を選曲。その迫力あるステージ・パフォーマンスは、ロペス楽団在籍時に“The Blonde Bombshell(ブロンドの砲弾)”の異名をとったという彼女のキャリア全般を見渡せるコレクションになっている。

 ハットンの歌は“技巧派”というほどではないにしても器用で非常に上手い。レパートリーの中にホーギー・カーマイケル作の陽気なポップナンバー「Doctor, Lawyer, Indian Chief('45米1位)」も、非常に感傷的なトーチ・ソング「I Wish I Didn't Love You So('47米5位)」も違和感なく共存させるし、場合によっては一曲の中に両方の要素を持った曲(ムーディに始まりその後一転コミカルな曲調になる、我が国のポップスでいえば「ハイそれまでョ」系の曲)も難なく歌いこなす、というかこの分野に関して彼女の右に出る者はいないのではないか?と思えるくらいに器用に歌う。囁くように歌い始めたかと思えば、曲調が変わると突然奇声を発し、もの凄い迫力でがなる・・・サービス精神が旺盛すぎて彼女の歌を軽薄に感じる音楽ファンもいるかもしれないが、彼女があの時代、ハリウッド有数の人気者となった理由が、ここにあるのだろう。



 彼女の人気絶頂期は第2次大戦期から1950年代前半にかけての10年足らずと意外に短く、その後あるトラブルが元で映画界を去り、70年代には自殺未遂騒動を起こすまでのアンラッキーなキャリアが続くそうだが、そういった話はこのCDには関係のないこと。彼女が銀幕や音盤を通じて世界中に巻き散らかした「Bombshell」遺伝子は現在に至るまで隔世遺伝のようにエンターテインメントの世界に表出し、その度センセーションを巻き起こしている。近年僕が海外のメディアで【Bombshell】と形容されているのを見たのは、映画や音楽の世界でグングン伸していた時期のジェニファー・ロペスだったが、そこまで時代を遡らずとも、例えば(いきなり異色アーティストを持ち出して恐縮だが)R&Rの時代に登場したR&Bの怪人スクリーミン・ジェイ・ホーキンスが歌った「Orange Coloured Sky」、かつて聴いたときはそのハチャメチャぶりに驚いたものだが、ベティ・ハットンのオリジナル版を聴けば、ホーキンスなど彼女の足下にも及ばないことがわかるし(落差が全然違うのだ)、70年代にバリー・マニロウのプロデュースでシーンに登場したベット・ミドラーのノスタルジックな雰囲気の中に、ハットンの影響をみとめた人も多いかもしれない(ミドラーが91年の映画「For The Boys」で披露した「Staff Like That There(ハットン1945年のヒット)」は見事だった)。ビョークが95年に発表したアルバム「Post」で歌った超ラヴリーな(プロモーション・ビデオも最高だった!)「It's Oh So Quiet!」のオリジナル・バージョンをこのCDの中にみつけたときの驚きといったら・・。この数日間彼女の歌ばかり繰り返し聴いているような気がする。まさに「That's Entertainment」な世界、クレイジーキャッツ・マニアにもご一聴、いや聴き込みを是非ともお勧めしたい。


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2006年06月18日

Black Gold: The Very Best of Rotary Connection (Chess/Universal/Island)

Black Gold: The Best of Rotary Connection

 1960年代後半にカナダで結成された不思議なロック?R&B?グループ、ロータリー・コネクション。そのコンセプチュアルな“ロック・オペラ風”の作品群は音楽ファンを困惑させがち。でもこの難解なグループに果敢にも挑戦する音楽ファンが後を絶たないのは、それなりの理由がある。何故ならこのグループのリードシンガーは、ミニー・リパートンなのだから。

 1960年代の「ラヴ&ピース」なムードを、幻想も含めて高度なエンターテインメント性で体現してみせたのがフィフスディメンションだとすれば、ロータリー・コネクションはその幻想をより理想主義的に突き詰め、ロック・ミュージカル「ヘアー」風に展開してみせたグループである、というのが僕なりの彼らに対する解釈。伝統あるR&Bレーベル、チェス・レコードのオーナーであるレナード・チェスの息子マーシャル(後にチェス・レコードを売り払い、ローリングストーンズ・レコードの初代社長になる)が人種を超えてかき集めた3人のシンガーと何人かのミュージシャンたちによるこの“ユニット”は、ロック、R&B、クラシック、東洋思想その他諸々・・がミックスされた摩訶不思議な音楽を展開。はっきりいって何が言いたいのかよくわからない曲もあるが、彼らのファーストアルバムは68年にビルボード誌で最高37位を記録しているので、この“プログレッシブな”試みは当時のリスナーにとってそれなりにもの珍しく興味惹かれるものだったのだろう。

 マーシャル・チェスが殆ど彼らのためだけに設立した新レーベル「アーゴ・コンセプト」で彼らは68〜71年にかけて6枚のアルバムを発表しており、その多くは単体でCD化済だが、今回初めて彼らのキャリア全般から33曲が選曲された「ベスト盤」が発売された。発表年が違ってもサウンドはどれも“ロック・オペラ風”であることに変わりないので、曲と曲のつながりに不自然さや違和感を感じることはない(作品自体に不自然さや違和感を感じることはあるが)。全体通して聴くとやはりファーストアルバム収録曲が印象強く、後のアルバムはそれを延々と再生産しただけなのか、という気もしてくる。今回特筆すべきはリマスターによるサウンドの向上で、僕はこれまでファーストアルバムしか聴いたことがなかったが、そこに収録されていた「Memory Band」はまるで地獄の底から天使の歌声が聴こえてくるようなサウンドになっているし、それに続いてジョン・セバスチャンを宇宙空間に放り出したようなラヴィン・スプーンフルのカバー「Didn't Want To Have To Do It」へという流れ(オリジナルとは逆の曲順)には感心し、つい何度もリピートしてしまった。

 ・・などいろいろと思うところはあるが、やはり一番のポイントはミニー・リパートンの歌声。その才能は突出しており、リードボーカルをとった時は勿論、バック・コーラス時に聴かれるテレミンのような“超音波声”は強烈な個性を放っている。彼女の声で成り立っている曲もあり、勿論「Loving You」的な作品世界は望むべくもないが、曲を選んで聴いてみればソロ時代の彼女のファンにもそれなりに楽しめるCDではないかと思う。アルバムの解説文にも書いてあったが、これはR&Bではなく“プログレッシブ・ロック”として聴けばそれほど違和感を覚えないのかもしれない。サウンドは格段に良くなっているのでそれを確認する意味でも、好奇心おう盛な方、好みに合わないCDを買うことを厭わぬ勇気のある方、非常に偏ったプログレオタク・・様々な“変わった人”にこのベスト盤をお勧めしたい。

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2006年06月17日

So Good - Don & The Goodtimes (Rev-Ola)
Temptation Eyes: The Price & Walsh Songbook (Rev-Ola)

So Good - Don & The Goodtimes Temptation Eyes: The Price & Walsh Songbook

Original Nortwest Sound Of Don And The Goodtimes ソフト・ロックものを2枚。まずドン&ザ・グッドタイムスは1967年に「I Could Be So Good To You(米56位)」のスマッシュヒットを放ったポップ・ロックグループ。このバンドを結成した“ドン”ことドン・ガルッチは永遠のガレージ・ロッククラシック「Louie Louie('63米2位)」で知られるキングスメンでキーボードを担当していた人で、グッドタイムスも65年の結成当初は明確に“ニュー・キングスメン”的位置づけでキングスメンのレパートリーを中心にライブ演奏を行っており、ソニックスやウェイラーズらとともにシアトルのガレージ・シーンの一翼を担う存在だったという。

 今回のCDはそんな彼らが67年以降に残したレコーディングを集めたもの。バンドメンバーの一人が同郷の人気グループ「ポール・リヴィア&ザ・レイダース」に引き抜かれたことから彼らとのコネクションを得たグッドタイムスは、レイダースがレギュラーを務めていたTVショー「Where The Action Is」にゲスト出演するチャンスをつかみ、それをきっかけにエピック・レコードと契約。西海岸に渡りジャック・ニッチェがプロデュースした「I Could Be So Good To You」が前述の通りのヒットとなった。これを受けて制作されたアルバムが67年の「So Good」、シングルと何曲かのカバー(ビートルズの「Good Day Sunshine」はトレメローズを凌ぐ出来、サークルも録音した「If You Love Her, Cherish Her and Such」なんて珍しい曲もやっている)を除くオリジナル曲の大半を手がけているのはベーシストのロナルド・オーヴァーマンで、彼の内省的でソフトな作風がこの時期の彼らの雰囲気を決定づけている。プロデュース同様ニッチェが担当したアレンジは“バロック・ポップ”調で、ややチープではあるが1967年の空気を反映した“ソフト・ロック”アルバムとなっている。

 ボーナス・トラックにはその後彼らがリリースしたシングル音源など。オーヴァーマン作のバブルガム風な「Happy and Me」は最高98位のマイナーヒットを記録、レーベルが続くヒットを期待してフォー・シーズンズのスタッフ、サンディ・リンツァーとデニー・ランデルを起用した「Banbi」はサイケなバブルガム・ソングだが、テーマが「アンチ・ヒッピー」だったため彼らは相当録音を嫌がったらしい。このCDに収録されているリンツァー&ランデル提供の3曲はどれもかつての彼らの姿とはほど遠いポップ・ソングで、それに嫌気がさしたのかグッドタイムスは翌68年に何人かのメンバーチェンジの末「ザ・タッチ」としてサイケデリック・ロック路線で再出発することとなる。

 もう1枚はソングライターコンビ、マイケル・プライスとドン・ウォルシュの作品集。彼らはグラスルーツに「Heaven Knows('69米24位)」「Baby Hold On('70米35位)」「Temptation Eyes('71米15位)」「Glory Bound('72米34位)」など数々のヒットを提供したことで知られているが、彼ら自身がアーティストとして成功を収めるべく様々な形で残した録音(全26曲中21曲がこれまで未発表!)をひとまとめにしたのが今回のCD。濃すぎる!録音時期は1966年から70年代初頭までの幅があり、初期のフォークロック作品からゲイリー・ゼクリーがプロデュースを担当しながら未発表に終わった幻のデビューアルバムの6曲、その後ダンヒル・レコードのスタッフライターになってからのデモ録音などが並ぶ。それぞれの時期の聴きどころを書いていくと、まず66年のセッションはハル・ブレインやキャロル・ケイなど一流どころを起用してのデモ録音で、早くも彼らのメロディ・メーカーとしての成功を予見させる内容になっている。翌67年に「ヴィジョンズ」としてリリースしたシングル「Small Town Commotion」はサイケ系のコンピレーションで人気を呼びそうなソフト・サイケナンバー。

 ヴィジョンズの録音で知り合い、彼らの才能に注目したゲイリー・ゼクリーのお膳立てで68年に執り行われたアルバム・セッションは、このCDのハイライトの一つ。オーケストラ・アレンジが施されたピースフルな雰囲気漂う作品ばかりで、当時リリースされたところでヒットしたかどうかは疑わしいが、Rev-Olaがこれまでにリリースしてきた数々の「幻の名盤」と比較しても決して引けを取らない内容。これがお蔵入りとなりゼクリーと袂を分った彼らは出版会社を移り、そこで制作したデモテープがダンヒル・レコードのプロデューサー、スティーヴ・バリに認められることに。CDの後半には以降彼らが同社で録音したデモ作品が11曲収録されているが、プロの作家としてヒット曲の書き方にどんどん熟練していく2人の様子がわかって面白い。最大のヒットである「Temptation Eyes(燃ゆる瞳)」のデモ・バージョンが聴けるのはこのCD最大の呼び物だが、この段階で既にグラスルーツのヒット・バージョンがほとんど完成してしまっている(後はボーカルを差し替えるだけ)のは凄い。出来れば他のヒットのデモも聴いてみたかったが、特に出来の劣る曲がある訳ではないので、これはこれで納得の内容。

Fool's Way of Lovin' - Arkade ('71) 彼らはプライス&ウォルシュとしてだけでなく、後に「Rocky('75米9位)」の大ヒットを放つオースティン・ロバーツとポップ・ロックグループ「アーケイド」を結成し、ダンヒルから「The Morning of Our Lives('71米60位)」などのヒットも放っているのだが、今回はアーケイド名義の作品はなし。いずれ彼らの「コンプリート・レコーディングス」の到着も期待したいし、ダンヒルのアーティストたちが取り上げたプライス&ウォルシュ作品を集めた「ソングブック第2集」なんてのもお願いしたいところ。いずれにせよ、ソフト・ロックファン及びダンヒル・サウンド研究家には見逃せない内容になっているのは確か。興味のある方はご一聴を。



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2006年06月04日

For You, Put A Little Love In Your Heart & Songs - Jackie DeShannon (RPM)

For You - Jackie DeShannon ('67) Put A Little Love In Your Heart - Jackie DeShannon ('69) Songs - Jackie DeShannon ('71)

 昨年に続きジャッキー・デシャノンのオリジナル・アルバム3枚がCD化。前回CD化された3枚(プラス別レーベルからの1枚)及び彼女についてのあれこれは以前meantimeのホームページに書いたのでそちらをご覧いただくことにし、ここではいきなりアルバム「For You('67)」の内容から。
 
New Image - Jackie DeShannon ('66) 65年の大ヒット「What The World Needs Now Is Love(米7位)」でシンガーとしての地位を確立した彼女が次に踏み出した路線は“アダルトなボーカリスト”で、このCDでは66年リリースのアルバム「New Image」からの8曲(残り3曲は昨年発売の「Are You Ready for This」にボーナス収録されている)と、翌67年の「For You」が“準”カップリング。どちらもスタンダード・ナンバーを中心に選曲されており、アダルト層へのアピールを図ったが、ボーカリストとしての彼女はこの時点ではそれほど魅力的という訳ではなく、歌はイマイチ、お色気はソコソコ、でもルックスはバツグン(音楽と関係ないじゃん!)といった感じの内容。こう書くとまるで彼女が“可愛いだけで中味はからっぽな女の子”のようだが、このアルバムだけを聴いたとしたら、そんな印象を持ったとしても不思議ではないかも知れない。
 
 聴きどころ的には「New Image」の部分では殆どお色気系ノヴェルティの域に達しかけている「Night And Day」、「For You」では彼女が“スペースエイジ・バチェラー・ポップ・ミュージック”の世界に迷い込んでしまったような「Dream」あたりがまずまず楽しめるか。むしろ当時の「新曲」の方が内容はよくて、ゴフィン&キング作の「No Easy Way Down」やスパンキー&アワ・ギャングの「Sunday Morning」の作者として知られるマーゴ・ガーヤンの「Think of Rain」、ロネッツやウォーカー・ブラザーズ版が有名な「Everything Under The Sun」などを聴くと、この路線でアルバムを作ればよかったのに・・と思えてならない。
 
 お次は「Put A Little Love In Your Heart('69)」。この前年「Laurel Canyon(前回CD化)」でアーシーな“ゴスペル・ロック”的世界を展開した彼女だったが、しかし彼女及びレコード会社の制作方針は、生まれたヒット曲でコロコロ変わる(笑)。「Put A Little Love 〜」はポップなサウンドにのって“ラヴ&ピース”が謳い上げられるナンバーで、全米チャート最高4位と彼女にとって最大のヒットを記録。それを受けて制作されたこのアルバムでは、それまで数々のアーティストにヒットを提供してきた彼女のキャリアを考えると不思議だが、初めてほぼ全編が彼女のオリジナル曲で固められることになった。「Put A Little Love 〜」を書き上げた彼女と黒人ソングライターのジミー・ホリデイ、そしてランディ・マイヤーズ(彼女の弟)の3人のディスカッションから生まれた作品は、ほのかにR&Bフレイバーを感じさせるポップ・ソング集となっている。
 
To Be Free - Jackie DeShannon ('70) 弾むようなベースラインにのせられた各曲は、よくいえば統一感のある、悪くいえばどれも似たり寄ったりの作品ばかりで、アルバム単体で評価すると少々弱いか。もう一つのTOP40ヒット「Love Will Find Away('69米40位)」を生んだ同アルバムに続きボーナスとしてCDに収録されているのは、以降翌年にかけてリリースされたシングル4枚分の音源。アルバムに引き続きデシャノン=ホリデイ=マイヤーズの体制で多くが作られているこれらの曲(70年発表のアルバム「To Be Free」の主要部分を占めることになる)からは「Brighton Hill('70米82位)」、メドレーの「You Keep Me Hangin' On/Hurt So Bad(同96位)」、「It's So Nice(同84位)」の3曲がチャートインを果たした。
 
 そして話は最後の「Songs('71)」へ。70年をもってインペリアルと契約を解消した彼女は、アーティストとしてより自由な創作環境を求めてキャピトルへ移籍。彼女のために同社がまず企画したのは当時トップ・プロデューサーとして驚異的なペースでヒット作を市場に送り出していたチップス・モーマンの制作でメンフィスの「アメリカン・レコーディング・スタジオ」にて録音を行うというもの。恐らくレーベル側としては最大の誠意を見せたものだと思うが、彼女はここでのシステマチックなレコーディング進行に「これは自分が求めている創作的自由ではない」と感じたようで、アルバム1枚分仕上がっていた音源を破棄。ロサンゼルスに戻り、当地のミュージシャンたちと作り上げたのが「Songs」となった。
 
 レーベルから「スタジオ使い放題」の確約をもらったデシャノンは様々なアーティストのレコードやデモテープをメンバーたちと聴き、選ばれた作品をジャム・セッションで再現しながらアルバムのイメージを作り上げることに。結果生まれたのは「Laurel Canyon」の続編的なゴスペル・ロックの雰囲気を持ったもので、彼女としてはまずまず達成感を得た作品になったのではないだろうか。ボブ・ディランの「Lay, Lady, Lay(女性バージョンなので“Lay, Baby, Lay”に改題されている)」、ギャラガー&ライルの「International」、ホイト・アクストンの「Ease Your Pain」などが印象的なこのアルバムでは、ジェイムス・テイラーのバックバンドのメンバーたちが中心となり、乾いたロック・サウンドを聴かせているが、中でも存在感を示しているのが現在は映画音楽の世界で高名なランディ・エデルマン。エデルマンとデシャノンはこの後70年代前半を通じて共同制作を続け、75年に結婚することとなる。
 
 で、アルバム本編に続いてCD後半に収録されているのが、彼女によってボツにされ現在まで陽の目を見ることのなかった「チップス・モーマン・セッション」。ここからは一曲「Show Me」のみ「Songs」に採用されたが(曲調がポール・マッカートニーっぽいところが彼女は気に入ったのだという)残る10曲は初出。現地のセッション・ミュージシャンたち(クレジットにボビー・ウッドの名前が見られるが、恐らく65年に日本で「Fool's Paradise(悲しきパラダイス)」がヒットしたあのボビー・ウッドだろう)によるタイトなサウンドは毎度のことながら素晴らしく、アルバムとして考えても決して「Songs」に劣る内容ではない。南部産ポップスのファンであれば必聴であろう。
 
Me About You - Jackie DeShannon ('68) そういう訳で、ジャッキー・デシャノン全盛期のアルバムCD化はこれでほぼ完了、どんな切り口からでも、彼女のキャリアを追うことができるようになった。しかしこうしてたどっていくと、以前日本でCD化された「青いシャツがよく似合う」のキャッチフレーズでお馴染みの“サバービア・クラシック”、68年の「Me About You」だけキレイに避けて復刻されていることに気がつく。これの真意は??もしかしてイギリス人に「当然これはもうCDで持ってるよね。」と問いかけられているのだろうか・・?も、勿論持ってますけど。。
 
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Stay and Love Me All The Summer - Brian Hyland (Universal Music)
Party with The Pixies Three (Universal Music)
Teddy Bears Sing! (Toshiba EMI)

Stay and Love Me All The Summer - Brian Hyland ('69) Party with The Pixies Three ('64) The Teddy Bears Sing! ('59)

 近頃の我が国再発市場は、さながら“紙ジャケ天国”の様相。「紙ジャケだったら大抵の無理は通る」という風潮がレコード業界にあるのか、毎月随分と珍しいアルバムが次々CD化されており、試しにamazon.jpで「紙ジャケット」で検索してみたら3,000を優に超える数の商品が引っかかってきた・・。
 
Beautiful Covers/ジャケガイノススメ レコード会社数社共同で5月からスタートした新しい再発シリーズは「ジャケガイノススメ」。音楽性が主題ではなく、つい手にとってみたくなるようなジャケット・デザインの優れたアルバムを紙ジャケで復刻しようというもので、その手のジャケ写が満載のヴィジュアルブック「Beautiful Covers/ジャケガイノススメ」も同時発売されている。で、第一回の発売分のうち僕が購入したのが上掲の3枚。
 
 まず「Stay and Love Me 〜」のブライアン・ハイランドはオールディーズのスタンダード「Itsy Bitsy Teenie Weenie Yellow Polkadot Bikini(『ビキニスタイルのお嬢さん』'60米1位)」を放ったシンガーで、その後レーベルを渡り歩きながら細々とヒットを出し続け、このアルバムが発表された69年までヒットチャートを生き延びた“苦労人”。同アルバムからはタイトル曲が最高82位を記録、他の収録曲はこの年の前半に「Tragedy(米56位)」「A Million To One(90位)」と“オールディーズ”のカバーヒットを放っていたからかその手のリメイクが多く、それに当時のコンテンポラリーなヒットのカバーと自作曲が少々、といった感じの内容。彼にとってベストのアルバムではないし、アメリカの中古盤屋で見かけたら、4ドル98か5ドル98くらいだったら買ってもいいかな、という程度。
 
 次のピクシーズ・スリーは、ペンシルヴァニア出身のガールグループ。63年にリリースしたシングル「Birthday Party(米40位)」がヒットした彼女たちが、翌年発表した唯一のアルバム「Party with 〜」はその名のとおりパーティをテーマにした“コンセプト・アルバム”で、全12曲中6曲のタイトルに「Party」がつけられている。彼女たちを見い出しマーキュリー・レコードと契約させたのはフィラデルフィアのプロデューサー、ジョン・マダラ(彼は同時期にレスリー・ゴアの「You Don't Own Me('64米2位)」やシークレッツの「The Boy Next Door('63米18位)」も手がけている)、参加ミュージシャンのクレジットには後の大プロデューサー(ギャンブル&ハフの)レオン・ハフの名も見つけることができるそのサウンドは、当時隆盛を誇っていたカメオ/パークウェイ・レーベルのそれを彷佛させる“アーリー・フィラデルフィア”テイストの好盤。アルバム未収録のシングル音源8曲も追加され、紙ジャケどうこうを別にしても素晴らしい再発盤である。
 
 最後3枚目、これは凄い。1958年に「To Know Him Is To Love Him(逢ったとたんに一目ぼれ)」のナンバー1ヒットを放ったテディ・ベアーズ唯一のアルバム世界初CD化。フィル・スペクターのキャリアの出発点としても知られるこの超有名グループのアルバムがこれまでCD化されなかったのは“あの変わり者(=スペクター)の意向”としか考えられないのだが、それが今になってOKが出たとなると「あの裁判の費用捻出のためか??」などとつい穿った見方をしてしまいがち・・。
 
 それはともかく。「逢った途端〜」の大ヒット後メジャーのインペリアルに移籍し発表した(なので前出のシングルは入っていない)このアルバムは、スペクターのオリジナルが4曲、R&Rナンバー「Seven Lonely Days」、そして残り7曲が40〜50年代に生まれたポピュラー・ナンバーという構成。当時日本で発売された際は「テディ・ベアーズのハイティーン・ムード」とのタイトルがつけられていたそうだが、50年近く前のこのタイトルこそが、アルバムの内容を適確に表現している。ボーカルのアネット・クレインバード(後のキャロル・コナーズ)の澄んだ“少女声”で披露されるバラードの数々は和みの極致で、レコーディングの拙さやその他の減点要素などまったく気にならない。CDはアルバムのモノ/ステレオ・バージョン両方とアルバム未収録のシングルB面曲を収めたコンプリート仕様、ジャケットも可愛いし満点の再発。世界中のオールディーズ・ファン、あと“少女ボーカルもの”ファンが感涙に咽んでいるであろう、今年の「再発大賞」ものの一枚。
 
 商品が届いてから知ったのだが、この3枚には“ナイアガラ(大滝詠一)”という共通のキーワードがあるのだとか。熱心なファンの間で大滝は“日本のフィル・スペクター”と呼ばれているので、テディ・ベアーズはその関連といえるし、「Stay and Love Me 〜」のタイトル曲は86年の「バチェラー・ガール」の、ピクシーズ・スリーのCDにボーナスで収録されている「Cold Cold Winter」は81年の「君は天然色」の原曲とされているのだそうで。確かに「バチェラー〜」には殆ど同じメロディが登場するし、「〜天然色」もリズム・パターンに相似点が見られるが、それじゃ「ジャケガイ」が先か「ナイアガラ」が先かよくわからないじゃん!という気も。この企画の監修者は“ナイアガラー”としても高名な人なので、ちょっとしたイタズラだと受け流せばいいのかも知れないけど。
 
posted by yakame at 10:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする