2006年05月28日

Son of Schmilsson - Harry Nilsson (RCA/Legacy)
A Little Touch of Schmilsson in the Night - Harry Nilsson (RCA/Legacy)
Plastic Symphony EP - Micky Dolenz (Brook)

Son of Schmilsson ('72) A Little Touch of Schmilsson in the Night ('73) Plastic Symphony EP - Micky Dolenz

 近年顕著な音楽映画流行りの傾向は、音楽ファンにとっては有難い限り。先日もアトランティック・レコードの伝説的なエンジニア、トム・ダウドのドキュメンタリーなんてマニアックな作品が日本でも公開されて、また幾つか音楽の史実を知ることが出来たり。で、現在そろそろアメリカの何処かで観ることが出来るようになっているのかな?という新しい音楽映画がニルソンのドキュメンタリー「WHO IS HARRY NILSSON... (AND WHY IS EVERYBODY TALKIN' ABOUT HIM?)」。94年に亡くなった彼のキャリアを辿る作品のようだが、作品の中核を為すフィルムは72年のアルバム「Son of Schmilsson」制作時の模様を記録したものなのだそうで、クレジットにはジョン・レノンやリンゴ・スターら有名ミュージシャンの名がずらり。ってことは、これは「(レノン言うところの)失われた週末」のドキュメンタリーでもあるんだよね!?

Everybody's Talkin': The Very Best of Harry Nilsson 【失われたことになっている時間のドキュメンタリー】という言葉遊びのような興味もあるが、レノンに関する様々な著述では「ヨーコに会えない孤独感に苛まれ、酒と薬漬けになって無為に過ごした日々」と簡単に片づけられがちなこの時期の彼の動く姿を見ることが出来るのも非常に興味深い。意外にも活き活きと創作活動や飲んだくれ生活を謳歌していたりして・・・などと脱線はこれくらいで、話はニルソンへ。作品の本格公開に向けてレコード会社は準備万端、新装のベスト盤「Everybody's Talkin': The Very Best of Harry Nilsson(ジャケットは新しくなったが、選曲はいつものやつ)」のリリースと同時に件の「Son of Schmillson」と、続く73年の「A Little Touch of Schmilsson in the Night(夜のシュミルソン)」のリマスター盤が発売された。

Nilsson Schmilsson ('71) この時期の彼は71年にリリースした「Nilsson Schmilsson」が大ヒット、シングル「Without You」は全米ナンバー1を記録、グラミー賞も獲得・・というキャリア絶頂の“シュミルソン期”。「Son of 〜」はその明確な続編として制作されたアルバムで「Spaceman('72米23位)」と「Remember (Christmas)('73米53位)」がヒット。第2の「Without You」が期待された時期だったと思うが、それに見合う曲を見つけられなかったのは痛かったか。勿論「Remember」はいい曲、でも季節ものだし、個人的には「Turn On Your Radio」も大好きなのだが、地味過ぎるし・・。CDのボーナス・トラックとしては「Take 54」のアウトテイク(何テイク目?)と、未発表2曲(73年録音のジミー・ウェブ作品「Campo De Encino」は一聴の価値あり)、そしてこのアルバムのジャケットに触発されたのかニルソンとリンゴ・スターが74年に制作した映画「Son of Dracula」の主題歌「Daybreak('74米39位)」を収録。ノン・クレジットで「俺なんか死んじゃえばいいんだぁ〜」と歌い続ける「I'd Rather Be Dead」のアウトテイクが最後に付け加えられているが、これも「失われた週末」の産物か・・。

 もう1枚「A Little Touch of Schmilsson in the Night」はボーカリストとしても非常に評価の高い彼がゴードン・ジェンキンス楽団をバックに、いにしえのスタンダード・ナンバーばかりを歌った企画盤。近年無数に出されている「ロック・ボーカリストが歌うスタンダード集(別称“アメリカン・ソングブックシンドローム”)」のはしりのような作品だが、ロッド・スチュアートの例のやつと選曲がカブっているものも多くあり、聴き比べてみると面白いかも。今回のCDは当時未発表だった録音が大量に追加された全18曲入りだが、10年くらい前に「As Time Goes By」のタイトルでヨーロッパでリリースされたものと内容は同じなので、そちらを持っている方は購入の必要はなし。もしかしたら来るかも知れない“ニルソン・ブーム”に備えて、皆さん怠りなきよう。。

 で、話は突然変わって元モンキーズのミッキー・ドレンツ。「WHO IS HARRY NILSSON」のキャスト・クレジットを見たら元ビートルズの面々を抑えて彼の名前がトップに載っていて、一体どれだけ重要な役割を演じているんだ??と思ったら、実は単なるアルファベット順だった・・などというどうでもいい話はさておき、先日ネットで検索していたら「こんなの出てたんだ〜」というCDを見つけたのでついでに。モンキーズのオーディション前にピーター・トークを除く各メンバーがレコード・デビューを果たしていたのはよく知られた話だが、今回入手したのはミッキーが65年にチャレンジ・レコードからリリースした2枚のシングル音源4曲を収録したミニアルバム。ボーカル・ナンバー「Don't Do It(モンキーズが人気を博していた67年に再リリースされ最高75位を記録)」「Huff-Puff」の2曲はともにグループの“バラエティ担当”らしくノヴェルティ色の強いR&R、残る2曲「Big Ben」と「Plastic Symphony III」はインストで、どうやらミッキーは参加していないようだ。僕は「Plastic 〜」のタイトルに何かしらサイケなものを期待して購入したのだが、聴いてみたらなんてことない普通のロッキン・インストだった。まぁ、値段が安いので何枚かまとめて購入し、知り合いのモンキーズ・マニアにネタとして配ってみようかな・・という“ノヴェルティ”的価値のある1枚ではあるが・・。

posted by yakame at 18:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月27日

The Ziegfeld Follies - VA (Living Era)
The Last of The Red Hot Mamas - Sophie Tucker (Living Era)
Look For The Silver Lining - Marion Harris (Living Era)

The Ziegfeld Follies The Last of The Red Hot Mamas - Sophie Tucker Look For The Silver Lining - Marion Harris

 今度は「That's Entertainment」より更に昔の話。今年の正月にNHKで5夜か6夜連続で放映された「ブロードウェイの歴史」を題材にしたドキュメンタリーをご覧になった方はいらっしゃるだろうか?正月休みということで僕もあまり期待せず、ビデオのセットもせずぼんやりと観ていたのだが、これがメチャクチャ濃い内容で20世紀初頭アメリカのエンターテインメント産業の成り立ちから「ブロードウェイ・シーン」の誕生など、僕がこれまで文字やオムニバスCDの一部でしか知らなかったアーティストの名前がバンバン登場し、場合によっては当時の映像付きで紹介されるという頭がクラクラするような大変な番組であった。とりあえず僕は、特に興味のある20世紀前半部分の回は毎晩TVの前に鎮座し、難度の高い話題の連続に眩暈を覚えながら、画面に必死に食らいついて観た。。
 
The Ziegfeld Follies で、この番組でも結構な時間を割いて紹介されていたのが「ジークフェルド・フォリーズ」。これは興行師フロレンツ・ジークフェルドが1907年から1931年の間に22シーズン上演したバラエティ・ショーで、フランスの大衆劇場「フォリー・ベルジュール」を模した50人のショー・ガールたちによる豪華なレビューと、ミンストレル・ショー(アメリカの旅回り一座)から持ち込まれたコメディ&音楽が合わさった“欧米折衷”な演目が人気を呼んだ。その作風は後のショーや映画の世界に大きな影響を与えており、「〜フォリーズ」の世界をスクリーンで再現した「巨星ジーグフェルド(36年)」やそのものズバリ「ジークフェルド・フォリーズ(46年)」といった大規模なレビュー映画も制作されたほど。
 
 様々な年の「〜フォリーズ」で披露された楽曲を集めたCD「The Ziegfeld Follies」には、主に1910年から1931年にかけて録音された23曲が収録されている。当時ヒットチャートを賑わせた曲も多く、特に1919年の舞台からはジョン・スティールの「A Pretty Girl Is Like A Melody(1位)」、ヴァン&シェンクの「Mandy(2位)」、エディ・キャンターの「You'd Be Surprised(3位)」、バート・ウィリアムスの「When The Moon Shines On The Moonshine(2位)」と4曲もの大ヒットが生まれており、当時「〜フォリーズ」が全国的な流行の発信源であった様子を窺い知ることができる。
 
Bert Williams 「〜フォリーズ」はアメリカの芸能史に大きな足跡を残したアーティストを多数輩出しており、例えば前出のドキュメンタリーでも大きく取り上げられていた「黒人初の大スター」バート・ウィリアムスがブロードウェイで成功を収めるきっかけとなったのもここだし(彼は1906年に黎明期のレコード産業有数の大ヒット「Nobody」を放っているが、このCDではブロードウェイでブレイクした後1913年に再録音したバージョンが聴ける)、曲中の台詞「ミスター・ギャラガー!」が当時流行語になったというエド・ギャラガーとアル・シーン(マルクス・ブラザーズの叔父にあたる人なのだそうだ)のコンビが歌った「Mr. Gallagher and Mr. Shean」は、1920年代を代表するコメディ・ソングになっている。
 
Eddie Cantor 1910年代後半に出演を果たした「〜フォリーズ」を足掛かりに次々と成功を収め、1925年に再び出演した時には週給5,000ドルの大スターになっていたというエディ・キャンターはここで彼のキャリアを代表する大ヒットナンバー「If You Knew Susie Like I Know Susie」と巡り会っているし、後年バーブラ・ストライサンド主演映画「ファニー・ガール」のモデルとなったファニー・ブライスが歌う「My Man」や「Second-Hand Rose」は、その後多くのアーティストに歌い継がれるスタンダードとなっている。他にもモーリス・シュヴァリエ、ヘレン・モーガン、1920〜30年代有数のヒットメーカー、ルース・エティングら後にハリウッド進出を果たす若き才能たちの録音を聴くことが出来、やがて到来する「That's Entertainment」時代の前史として興味深い内容。
 
 「ジークフェルド・フォリーズ」は直接的な要因としては1929年の大恐慌が、そして間接的にはトーキー映画の隆盛も影響したのだろう、徐々に興行として立ち行かなくなって1930年代半ばには幕を閉じ、ジークフェルドもその心労が遠因で間もなく病死してしまうが、彼が創り上げた「ショー/レビュー」の概念は現在に至るまで様々な分野で生き続けている。で、ついでと言っては何だが「ジークフェルド〜」時代のブロードウェイで大活躍した女性シンガー2人のCDも最近発売されたので併せて紹介。まずソフィ・タッカーは「レッド・ホット・ママ」の異名をとったダイナミックなボーカリストで、聴き方によっては“史上初の白人女性R&Bシンガー”という評価も出来るかも知れない。彼女のキャリアはもの凄く古く、エジソンが興したレコード会社からシリンダー(円筒型のレコード)でヒットを放っているくらいの人なのだが、このCDでは彼女が1920年代に放ったヒットをほぼ網羅。「Some Of These Days」「After You've Gone」「I Ain't Got Nobody」など現在も聴き続けられているスタンダードの初期録音が聴ける。
 
 もう一枚マリオン・ハリスは前述のルース・エティングと並び1920年代に大変な成功を収めた女性シンガー。ボードヴィル出身らしく、やや大袈裟に台詞風に声を張り上げて歌う芸風は「アメリカの音楽産業最初のスーパー・スター」と言われるアル・ジョルスンの女性版といった感じか。とにかくヒットの多い人で、このCDは全25曲のうち実に23曲までがヒットチャートのTOP10入りを果たしている(レコード・リサーチ社調べ)という物凄いベスト盤。舞台映えする楽しいナンバーが多く、恋愛にからめて「Wild」や「Mad」といった言葉が頻繁に登場する歌詞は当時かなり耳新しかっただろうし、「Doggone(いまいましい、ウザい?)」そして「Jazz(彼女は初めてジャズ・ナンバーをレコードに吹込んだ女性歌手といわれている)」など相当“ナウい”キーワードが方々にちりばめられている。1920年代のマライア・キャリーとか浜崎あゆみとか(どちらも現在は峠を超えているのであまりシックリこない表現だが)、そんな感じで楽しめるのかなと、僕は勝手に考えているのだけど。
 
posted by yakame at 04:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月25日

That's Entertainment!: The Ultimate Anthology of M-G-M Musicals (Rhino)

That's Entertainment!: The Ultimate Anthology of M-G-M Musicals

 ミュージカル映画が好きで。とはいっても最近の「プロデューサーズ」だとか「レント」だとかそういうのではなく、1950年代にジャンルとしてのピークを迎えたいにしえの「MGMミュージカル」が大好き。アメリカ芸能史の偉大なる英雄、フレッド・アステアやジーン・ケリー、女性だったらジュディ・ガーランドやレスリー・キャロン・・。一時期随分名画座に通い、往年の名作を観て廻ったものだった。
 
That's Entertainment!: The Ultimate Anthology Of M-G-M Musicals MGMミュージカルのオイシイところばかりをダイジェスト形式で紹介するオムニバス映画「That's Entertainment」は過去に3本制作されており、いずれもアメリカのエンターテインメントの粋を集めたような内容になっていたが、先日この3本の映画で紹介された名場面のサウンドトラック集、早い話が音楽版「That's Entertainment」という6枚組の巨大なボックスが発売された。
 
 映画の中ではつまみ食い程度に紹介されていたナンバーが、このCDではフルコーラス聴くことができるのが有り難いところ。ボックスの構成は最初の2枚が「Tha't 〜」のパート1、3〜4枚目がパート2、5枚目がパート3で使用された音源で、最後の6枚目は丸ごと未発表曲集。全135曲、凄いボリューム!分厚いブックレットにはサウンドトラックに採用されたすべての映画の簡単な解説が載っており、年代の幅でいうと1929年の「ブロードウェイ・メロディー」から57年のエルヴィス映画「監獄ロック」や、58年に公開され、1930年代のフランス人スター、モーリス・シュヴァリエが劇的なカムバックを果たした「恋の手ほどき」あたりまでの約30年、やはり第2次大戦が終了した40年代半ばから50年代前半にかけての作品が多く選ばれている印象。
 
 とにかく有名なミュージカル・ナンバーはすべて入っているといっても過言ではないこのボックスなので、いちいち曲名を挙げているだけで物凄い文章量になってしまう(収録曲の詳細はレーベルのサイトをご参照)。MGMミュージカルの最高峰の一つとされる映画「パリのアメリカ人」のダンス・シーンの音楽などは16分半のフルバージョンが収録されていて、これまた凄い聴き応え。各曲が始まる度に、随分前に観た映画でもパッとダンスシーンが頭に浮かんできたりして、自分のマニア度を図るには最適なひと箱になっている。
 
That's Entertainment Part 1 (DVD) That's Entertainment Part 2 (DVD) That's Entertainment Part 3 (DVD)

 「R&R以前のアメリカン・ポップス史そのもの」といっていいこのボックス、聴いてて非常に楽しいし勉強にもなるのでこの好企画を実現させたライノには感謝したいところだが、やはり映像あってのサントラ。現在日本盤のDVDが安く発売されているので、まずは「That's Entertainment」のパート1〜3をしっかり観て頭に焼きつけ、その後このボックスをじっくり楽しんでいただくと。それがいいのかも知れない。
 
posted by yakame at 06:07| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月20日

reintarnation - k.d. lang (Sire/Rhino)

Reintarnation - k.d. lang
 
k.d. lang 1年に買うCDの90数%は再発もの、という僕だが、ごく僅かながら新作が出たら必ず買うアーティストが存在する。その数少ない一人がk.d.ラングで、僕は彼女を「1980年代半ば〜90年代前半の約10年間に限っていえば、世界でもっとも才能に恵まれていた女性シンガーの一人」と考えている。本格的に聴き始めたのは90年代初頭(92年の大ヒット作「Ingenue」のちょっと前)とやや後追いではあるが、一時は彼女の情報欲しさにカナダのファンクラブに入ったこともあるし、来日公演や握手会(!)にも欠かさず出かけるなど、結熱心に追いかけたものだった(流石にメジャー・デビュー前の85年に来日し「つくば博」のカナダ館で披露したというステージは観ていないが)。
 
Patsy Cline 昨年久々(9年振り)に実現した来日公演では「実は私、前世ではカントリー・シンガーだったの。」とまるで美輪明宏のようなことを言ってリン・アンダーソンの「Rose Garden」を披露していたラングの“前世の”ベスト盤がアメリカで発売されたので、その経歴を追いながら収録曲を紹介したい。1961年カナダのアルバータに生まれた彼女がカントリー・ミュージックに目覚めたのは意外に遅く、大学の演劇科で50年代の女性カントリー・シンガー、パッツィ・クラインの生涯を題材とした劇を制作したのがきっかけだという。若くして死んだクラインが遺した音楽の再甦への祈りが込められた「リクラインズ(Re-Clines)」という名のバンドを結成したラングは83年に地元のインディ・レーベルでシングル「Friday Dance Promenade」をリリース。かなり渋めのミドル・ナンバーだがレコードは非常にレアで、今回初めてCD化が実現した。
 
A Truly Western Experience ('84) 続く彼女のリリースはやはりインディからで、84年のアルバム「A Truly Western Experience」。感傷的なバラード「Pine and Stew」とこの時期の音楽性をよく表したビート・ナンバー「Hanky Panky」の2曲が今回のCDには収録されているが、当時の彼女といえば髪は逆立てた短髪、キツネ眼のメガネ(今でいえばクワバタオハラのくわばた嬢っぽい感じ)にポリエステル製のカントリー・ドレス、くるぶしでカットしたカウボーイ・ブーツという世にも恐ろしい(?)出で立ち。でもカナダではかなり人気があったようで、メジャー・デビュー前にしてカナダのグラミーにあたる「ジュノ賞」で「最も将来を嘱望される女性アーティスト」に選ばれたりもしている。
 
Angel with a Lariat ('87) で、前述の「つくば博」出演があったのがこの頃85年で、そんなアーティストを当時僕が知っているはずがない(笑)。カナダ館での出演中、その後長年のコラボレーターとなる(このCDも共同で選曲している)ベン・ミンクと出逢ったラングは次々と共作曲を書き上げ、ミンクを加えた新生リクラインズは次のステップへと向かうことに(この時期のデモ録音「Changed My Mind」が本CD唯一の未発表曲として収録されている)。ようやく実現したメジャー・デビューが87年のアルバム「Angel With a Lariat」、これはサイア・レコードからのリリース。デイヴ・エドモンズがプロデュースした本作からは「Pay Dirt」「Diet of Strange Places」「Got the Bull By the Horns」「Angel With a Lariat」「Turn Me Round」の5曲、当初レーベルが狙っていたであろう“カウ・パンク”調のナンバーが中心に選曲されていて、エドモンズお得意の“ネオロカ”的見地からも聴き応えのある同アルバムの特徴をよく伝えている。
 
Shadowland ('88) めでたくメジャー・デビューを果たしたもののセールス的には大した成果を収められず、当然のことながらカントリーの世界ではまったく無視されたラングだったが、業界内の評判は相当高かったようで、翌88年にはなんとパッツィ・クラインを手がけた伝説的なプロデューサー、オウェン・ブラッドリーとのアルバム制作が実現。単身ナッシュビルに乗り込み、当地のセッションメンたちを向こうに回してカントリーやポップのスタンダードを歌いまくったアルバム「Shadowland」からは、今回彼女のオリジナル曲が中心という選曲ポリシーでもあるのかペリー・コモの「Don't Let the Stars Get In Your Eyes(星を見つめないで)」しか選ばれていないが、その後何枚も作られることになるラングのスタンダード集第一弾、もしくは「80年代を代表するボーカル・アルバム」の一つとして、これから彼女の音楽に触れてみようという方には是非ともチェックしてみていただきたい一作である。
 
Absolute Torch and Twang ('89) 大御所ブラッドリーのお墨付をいただき保守層にも無視出来ない存在となりつつあった彼女が、彼女なりのカントリー・ミュージックを完成させたのが89年の「Absolute Torch and Twang」。“Torch(悲恋歌)”と“Twang(カントリー・ロック)”がバランスよく配分された本作は名曲が多く、このCDにも「Big Boned Gal」「It's Me」「Luck In My Eyes」「Big Big Love」「Trail Of Broken Hearts」「Nowhere To Stand」「Pullin' Back the Reins」と最多の7曲が選ばれている。イントロを聴く度にこの曲のプロモーション・ビデオに登場するアルバータの草原と青い空が目に浮かび胸が高鳴る「Trail Of Broken Hearts」や、彼女にしか表現出来ない世界に到達したバラード「Pullin' Back the Reins」など、聴きどころ多し。このアルバムはグラミー賞を獲得し、中位ながらカントリー・チャートにも何曲かを送り込んだが、いい加減保守的なカントリー界に揃気がさしたのか、彼女はこれをもってカントリーと決別、新しい世界へと歩を進めていくこととなる。
 
Even Cowgirls Get the Blues ('93) その後アルバム「Ingenue」でアダルト・コンテンポラリーに活路を見い出し、「Constant Craving」でポップのTOP40にもランクインを果たした(HOT100に初めて彼女の名前を見つけた時の嬉しさといったら!)ラング、しかしCDはこれだけでは終わらない。彼女は94年にユマ・サーマン主演の映画「Even Cowgirls Get The Blues(カウガール・ブルース)」のサントラを手がけており、ここからも「Don't Be a Lemming Polka」「Curious Soul Astray」「Cowgirl Pride」の3曲が選ばれている。ラングが新分野「ダンス・ミュージック」に挑戦した(「Just Keep Me Moving」がクラブ・プレイチャートでTOP10入りを果たした)アルバムでもある同サントラで披露した“カントリー”はもはや一種のジョークといってもよく、以前の作品とは別物であると考えた方がいいだろう。
 
 ということで。思い入れの強いアーティストなので長くなってしまったが、ポップ界でブレークする以前のk.d.ラングのベスト盤、エルヴィスのファースト・アルバムを模したジャケット・デザイン(これはかつてレーベル・メイトのマドンナが彼女のステージを観て「エルヴィスは生きてるじゃないのっ!」と叫んだことに起因しているのか?)からも制作者の熱い想いが伝わってくる。今どんな人がこのCDを聴くのかわからないが、その感想を聞いてみたい気がする。
 
posted by yakame at 07:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月12日

Fabulous 50s Crooners Sing Their Hard to Find Hits (Hit Parade)
Fabulous 50s Divas Sing Their Hard to Find Hits (Hit Parade)
Cinema Rhapsodies: The Musical Genius of Victor Young (Hit Parade)

Fabulous 50s Crooners Sing Their Hard to Find Hits Fabulous 50s Divas Sing Their Hard to Find Hits Cinema Rhapsodies: The Musical Genius of Victor Young

 1950〜60年代の珍しいヒット曲を、オリジナル・シングルバージョンやステレオ・バージョンにこだわってCD化を続けるコレクターの頼もしい味方「エリック・レコード」が、このところ提携先(?)としてホームページで大々的に紹介しているのがカナダの新しいレーベル、その名も「ヒット・パレード」。同レーベルの第一回発売分3枚を取り寄せてみた。
 
 まず「Fabulous 〜」の2枚は、男性編と女性編に分けて50年代の比較的珍しいヒットを23曲ずつ収めたコンピレーション。実際のところはそれほど珍しくはない曲も結構入っていて、男性編の前半部分などは単なる50年代「ユア・ヒット・パレード」なヒット曲集と言った趣。ルイ・アームストロング、ナット“キング”コール、ペリー・コモ・・・雰囲気は非常によくて普通に楽しめてしまうのだが、それだけではタイトルに偽りあり。

 後半にようやく登場する初CD化曲を挙げてみると、スヌーキー・ランソンの「It's Almost Tomorrow('55米20位)」、ジャック・オウェンスの「Dream A Little Dream Of Me('50米14位)」あとこれはどこかでCD化されているはずなのだがニック・ノーブルの「The Bible Tells Me So('55米8位)」といったところ。初CD化ではないものの珍しい曲もいくつかあり、パット・ブーンの「No Arms Can Ever Hold You('55米26位)」がベスト盤CDに収録されているのをこれまで見たことはないし、ローズマリー・クルーニーで有名な「This Ole House」のスチュアート・ハンブレンによるオリジナル版('54米10位;彼の自作)も僕は初めて聴いた。
 
 珍しい曲は少ないが、50年代前半の雰囲気を味わうにはまずまずの内容、といった感じの男性編に対し、女性編の方はもうちょっとマニアックな選曲。初CD化はドロシー・コリンズ「Seven Days('56米17位)」、ジョージア・ギブス「Tra La La('56米24位)」、ジェーン・タージー「Sweet Violets('51米11位)」、ベティ・マディガン「Joey('54米12位)」、デニス・ロア「If I Give My Heart To You('54米9位)」、ジューン・ヴァリ「I Understand('54米8位)」の6曲。珍しいヒット曲が聴けるのは嬉しいが、チャートヒットを熱心に集めている人って対象を「ロック時代(1955年以降)」に限定している場合が多いので、ここら辺の曲では食指が動き辛いか?
 
 他に印象的なのはサラ・ヴォーンの「Mr. Wonderful('56米13位)」、後年弟ニノ・テンポとのデュエットで大ブレイクするエイプリル・スティーヴンスがお色気たっぷりに歌う「I'm In Love Again('51米6位、彼女の単独CDを出して欲しい!)」、インスト・ナンバーの印象が強い「Blue Star」のフェリシア・サンダースによるボーカル・バージョン('55米29位)など。「Hard to Find」を謳うには少々不満の残る内容だが、取り敢えず今後の展開を期待してのご祝儀替わりということで。
 
Victor Young Best Selection 3枚目はヴィクター・ヤングのベスト盤。日本では戦後最大の洋楽ヒットである「エデンの東」や「シェーン(遥かなる山の呼び声)」などでよく知られる人気アーティストで、ベスト盤CDも早い時期から発売されていたが(現在は廃盤らしい)、本国アメリカ(カナダだった・・)ではこれが初の単独CD。デッカ・レコードが設立された1930年代前半から、亡くなる56年まで同社で録音を続けた彼の数多い作品から、50年代のレコーディングに選曲を絞ったこのコンピレーションを今回購入した理由は、当時アメリカではヒットしていない「エデンの東」や「シェーン」がしっかり収録されており、それが最新リマスターで聴けるから。実際聴いてみたところそれほど音が良くなった印象はなかったが「紅の翼」「80日間世界一周(これだけは凄いステレオ・サウンド)」などお馴染みの曲で、彼独特のサウンドがたっぷり楽しめる内容になっている。ただし映画「ライムライト」の「テリーのテーマ」が選曲から漏れているのは、重大な手落ちだと思うが(当時アメリカでもヒットしたのに!)。
 
 オーケストラ・リーダーばかりでなく作曲家としても才能を発揮した彼の代表曲「ラヴ・レター」「星影のステラ」と、彼の作曲ではないが「恋に落ちた時」の3曲は、50年代録音のマスターが見つからなかったのかリチャード・ハイマンが58年に発表した「Richard Hayman Conducts The Great Motion Picture Themes of Victor Young」から収録。この割り切り方がアメリカっぽい(だからカナダだって!)が、サウンドに違和感はない。現在国内盤が入手困難ということなので、懐かしの「エデンの東」を聴きながら「ユア・ヒット・パレード(この場合は日本の)」な気分に浸るなら、このCDが最適。

収録曲等詳細:
Fabulous 50s Crooners Sing Their Hard to Find Hits
Fabulous 50s Divas Sing Their Hard to Find Hits
posted by yakame at 01:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月10日

Under The Covers Vol.1 - Matthew Sweet and Susanna Hoffs (Shout! Factory)

Under The Covers, Vol.1 - Matthew Sweet /Susanna Hoffs

 再発盤ではないけど、こういうのだったらたまにはいいよね、ということで。2年くらい前、マシュー・スウィートの来日公演を観たことがある。その時はヴェルヴェット・クラッシュとの共演で、スウィートが時に彼らのフロントに立ち、時にはバンドのいちギタリストに専念しと、なかなかフレンドリーな雰囲気のライブだったが、90年代から随分と時間が経過し、アーティストも観客も随分と年をとったなぁ、という点が一番印象に残ったライブでもあった。


Matthew Sweet & Susanna Hoffs “筋金入りのおたくミュージシャン”スウィートが先日発表した新作は、80年代のロック・アイドル、元バングルスのスザンナ・ホフスと即席デュオ「シド&スージー」を結成しての60〜70年代ロック・クラシックのカバー集。彼らのアイドルである14アーティストの15曲(ニール・ヤングだけはどうしても1曲に絞れず「Cinnamon Girl! 」と「Everybody Knows This Is Nowhere」の両方をやることにしたらしい)のリストを見ると、年代は大まかにいって60年代後半〜70年代前半、メジャーどころではビートルズの「And Your Bird Can Sing」やディランの「It's All Over Now, Baby Blue」、フーの「Kids Are Alright」など気恥ずかしくなるほど“ベタな”選曲が目について少々腰が引け、実際に聴いてみるとホフスはバングルス時代と殆ど変わらぬキンキン声だし、サウンドに特に深いものも感じられず。「なんだ、安易なパーティ・アルバムじゃん。」の一言で片付けられそうな雰囲気濃厚だが、見方を変えると結構別の楽しみ方も出来たりする。

 「シド&スージー」の2人がこのアルバムを制作するにあたってカバー希望リストを作成した際、偶然にも2人のリストのトップに挙がったのはレフト・バンクの「She May Call You Up Tonight」だったという。60年代の“バロック・ロック”グループが発表し、まったくの不発に終わったこのシングル曲を取り上げたセンスは評価できるし、またセッションで最初に録音した曲がママス&パパスの「Monday Monday」というのもなんだか嬉しい。“ギター・ポップ”ファンにアピールするのであればもっとガレージ寄りの選曲をしてもよかったのではないかと思うが、それを敢えてせずマニアックなポップ・ナンバー(マーマレードの「I See The Rain」、ビーチ・ボーイズは初期の「The Warmth Of The Sun」をチョイス)を混ぜたアルバムにしてくれたのは僕個人的には好感度が高い。よく見ればホフスの美貌も80年代と殆ど変わらないし(現金な!)、これはこれで結構いいアルバムなのではないか?と思えてきた。。

 アルバムの最後を飾るのは“中期”ビー・ジーズのヒット曲「Run To Me」。これなんて“ギター・ポップ”的にはダサダサでしょ?この手の“素晴らしい”音楽への愛情を臆することなく盤上に刻み込めた2人はなんて勇気ある人たちなんだ(??)。スウィートによって「何故この曲を取り上げたか?」とオタクな理屈がツラツラと並べられたライナーノーツも楽しいし。

I See The Rain: The CBS Years - The Marmalade Revolver - The Beatles ('66) Bringing It All Back Home - Bob Dylan ('65) Unhalfbricking - Fairport Convention ('69) Everybody Knows This Is Nowhere - Neil Young & Crazy Horse ('69)

Forever Changes - Love ('67) Shut Down, Volume 2 - The Beach Boys ('64) Evergreen, Vol.2 - The Stone Poneys feat. Linda Ronstadt ('67) The Who Sings My Generation - The Who ('65) The Velvet Underground & Nico ('67)

Everybody Knows This Is Nowhere - Neil Young & Crazy Horse ('69) Odessey And Oracle - The Zombies ('69) If You Can Believe Your Eyes And Ears - The Mamas & The Papas ('66) Walk Away Renee/Pretty Ballerina - The Left Banke ('67) To Whom It May Concern - The Bee Gees ('72)

 お遊びでCD収録曲のオリジナル・バージョンが収められているアルバムを曲順に並べてみたら「あんたら、どーよっ!?」と2人の荒い鼻息が聞こえてきそうな「ロック名盤選」になった。この「シド&スージー」シリーズは今後も続くそうなので、第2弾はよりマニアックに、ひねくれてポップな内容を期待したいところ。2人の来日公演が近々実現したら、80年代ファンも90年代ファンも、皆挙って会場に押しかけることにしましょう。

収録曲等詳細(発売元のサイト)

posted by yakame at 01:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月05日

The History of Jackie Wilson Vol.1: Coast to Coast (Edsel)
The History of Jackie Wilson Vol.3: The Chicago Soul of Jackie Wilson (Edsel)
The Legendary Hi Albums Vol.3 - Al Green (Edsel)

The History of Jackie Wilson Vol.1 The History of Jackie Wilson Vol.3

 ものの本によれば1950〜60年代、黒人音楽がリズム&ブルースから“ソウル・ミュージック”へと移行する時期に最も重要な役割を果たしたアーティストはサム・クック、ジェイムス・ブラウン、そしてジャッキー・ウィルソンの3人なのだそうだ。サム・クックは現在も何年かに一度は「彼の再来」と呼ばれるアーティストが音楽シーンに登場するし、JBに至ってはこのところ毎年のように来日を果たし、あの“おばさんパーマ”を我々に見せつけてくれている。しかしジャッキー・ウィルソンに関しては、特に我が国では話題に上ることが極端に少ない。

 前述の3人を音楽の流れでカテゴライズすると、サム・クックは「サザン・ソウル」、JBは「ファンク」、ジャッキー・ウィルソンは「ノーザン・ソウル」の始祖にあたる。ウィルソンが50年代後半から70年代前半にかけて発表した作品を3パートに分けてまとめたCD(全6枚)が最近発売されたので、これをご紹介。

 ウィルソンのキャリアは1950年代前半、R&Bグループ「ドミノズ」のリード・シンガーから始まる。ドリフターズを結成するために独立したクライド・マクファターの後釜としてグループに加入した彼は、独特なハイトーン・ボイスで「Rags to Riches('53R&B2位)」「St. Teresa of the Roses('56米13位)」といったヒットに貢献。またその派手なステージ・アクションも評判で、若き日のエルヴィスもそれを参考にしたとかしないとか。56年にグループから独立すると当時ドミノズが在籍していたデッカ・レコードの子会社「ブランズウィック」と契約し、ソロ・デビューすることになるが、そこであるソングライターと重要な出逢いを果たす。ベリー・ゴーディ・ジュニア、後の「モータウン」の創始者である。

 プロ・ボクサーのキャリアを諦め、地元デトロイトにあるフォードの自動車工場で働きながらソングライターとして成功するチャンスをうかがっていたゴーディは、57年に提供した「Reet Petite(米62位)」がヒットすると次々と作品を書き上げ、ウィルソンとゴーディのコンビは連続6枚のシングルをヒットチャートに送り込むことに成功。その中には感動的なバラード「To Be Loved('58米22位)」や初期の彼の代表作「Lonely Teardrops(同7位)」なども含まれており、今回のCD「Vol.1」のハイライトとなっている(都合8曲のゴーディ作品をここで聴くことが出来る)。

 ソングライターとしての明るい未来が開けたかに見えたゴーディだったが、やがて契約の問題でウィルソンのためにどれだけヒット曲を書いても彼にはそれに見合う収入が入らないことに気づき、彼と袂を別って自らレーベルを興すことを決意。それがあの「モータウン」となり、その後の「ノーザン・ソウル」史の本流はそちらへ流れていくことになるのだが、その話はいずれ別の機会に。ゴーディが離れて以降もウィルソンは成績は安定しないながらもヒットを生み続けており、65年あたりまでの作品をまとめたのがCD「Vol.1」。ゴーディに代わる有力なソングライターを得ることが出来なかったため、ウィルソンとアロンゾ・タッカーのコンビによる何曲か(大ヒット「Baby Workout('63米5位)」等を含む)以外は本当に雑多なソングライターから作品を提供されており、質的に疑問を感じる曲も少なからずある。

The History of Jackie Wilson Vol.2 「モータウン」をはじめとするアメリカ北部の新興R&Bが隆盛した60年代半ば、方向が定まらず苦戦を強いられていた彼に転機をもたらしたのが1966年の「Whispers(米11位)」。この作品でシカゴのプロデューサー、カール・デイヴィスと出逢った彼は以降シカゴを本拠にレコーディングを行い、それらの作品をまとめたのがCD「Vol.3」で、1966〜74年にかけて彼が放ったR&Bヒットの大半を収録している。と、ここで賢明な方であれば(って、こんなことくらいで賢明か愚鈍か判断されてはたまらないと思うが、慣用句なので・・)お気づきの通り、このシリーズには「Vol.2」も存在するのだが、そちらはウィルソンがスタンダード・ナンバーや当時の他アーティストのヒット曲をカバーした録音ばかりが集められていて、内容的にあまり面白いものではなさそうなので今回はパス。シカゴ録音で最もヒットした一つが翌67年の「(Your Love Keeps Lifting Me) Higher And Higher(米6位)」で、近年映画「永遠のモータウン」で明らかになった通りこの録音にはモータウンのスタジオ・ミュージシャン集団「ファンク・ブラザーズ」が匿名で参加しており、当時ゴーディが了承していたかどうかは不明だが、ノーザン・ソウルの先達への「恩返しヒット」の形になっている。

 「Vol.3」でウィルソンに多数の作品を提供しているのはレーベル・メイトであるシャイ・ライツのリーダー、ユージン・レコードで、その品質は保証つき。移り変わりの激しいR&Bシーンで、70年代まで生き残りに成功した数少ないベテラン・アーティストとなったウィルソンだったが、そんな彼に悲劇が訪れる。1975年、オールディーズ・ショーに出演していた彼はステージ上で心臓発作に襲われ、昏睡状態に。病状は改善することなく9年に及ぶ闘病生活の後84年に息をひきとった。長い不在期間のうちにすっかり忘れ去られてしまった彼の「元祖ノーザン・ソウル」、特に「Vol.3」の内容充実ぶりは素晴らしく、歴史の再検証用にこれ以上ないものになっている。

The Legendary Hi Albums Vol.3 - Al Green あともう1枚(というか2枚)は、先月紹介したアル・グリーンの「The Legendary Hi Albums」シリーズ第3弾。「Full of Fire('76)」「Have A Good Time(同)」「The Belle Album('77)」「Truth N' Time('78)」の4枚を2枚のCDに収めているが、初期のアルバムを考えたらここら辺はもう「興味がない。」で切り捨ててしまってもいいのかもしれない。勿論「Full of Fire」や「Belle」といったヒット曲は素晴らしいのだが、そこら辺はベスト盤でも聴けるし。サウンドはもはやかつての「ハイ・サウンド」ではなく、中途半端にディスコから影響を受けたぬるい演奏が多い。これら作品の発表から間もなくして、彼がキャリアを放り出し神に仕える道を選んでしまったのも何だか頷けるような・・。なお彼のハイ時代のアルバムは近々日本で紙ジャケ化されるようだが、仕様にこだわらないのであればこの「Legendary 〜」シリーズが非常に安価かつ手っ取り早く音源を集めることが出来るので、こちらの入手を強くお勧めしておきたい。

posted by yakame at 11:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月03日

Live at Turk's Head Coffeehouse - John Parker Compton (VMC)
You Better Believe It! Vol.2: Rare & Modern Soul Gems from The Vaults of Atco, Atlantic, Cotillion, Reprise and Warner Bros. 1967-1979 (WEA/Rhino)

Live at Turk's Head Coffeehouse - John Parker Compton You Better Believe It! Vol.2: Rare & Modern Soul Gems from The Vaults of Atco, Atlantic, Cotillion, Reprise and Warner Bros. 1967-1979

Appaloosa ('69) 先月紹介した「アパルーザ」のアルバムジャケ写で“ゆる巻きカール”をキメていた美少年(当時19歳)ジョン・パーカー・コンプトンがレコード・デビュー前に残したライブ音源がCD化されていることを知り、早速海外から取り寄せてみた。
 
 このCDは1968年、アパルーザの面々がコロンビア・レコードにあったアル・クーパーのオフィスに飛び込む(そして契約を勝ち獲る)前月にマサチューセッツ州オーリンズの「タークス・ヘッド・コーヒーハウス」で披露した演奏7曲と、同年ハーバード大学内にあるFM局「WHRB」のために録音したスタジオライブ8曲が収められている。この時期既にコンプトンとともにアパルーザの中核を為したロビン・バトゥは行動を共にしており、デビュー・アルバムで聴かれる音楽のコンセプトは完成していたと考えていいだろう。同アルバム収録曲のうち6曲をこのCDでは聴くことが出来、特に先日発売された日本盤CDのライナーでアル・クーパーが絶賛していた「Pascal's Paradox」や「Feathers」が聴けるのは貴重。プロによるサウンド作りがなされる前の「原石状態」の各曲がどんな感じであったかを知ることができる。
 
 「アシッド・フォーク」として一級の作品集だと思うし「アパルーザ」のアルバムに感銘を受けた人であればなおさら探し出して聴いてみてもらいたい一枚。僕もコンプトンがソロで、またはロビン・バトゥとともに生み出した音楽への興味がますます湧いてきたので、今後もアナログ盤を含め色々探してみようと思う。アパルーザは現在も時たま再結成ライブをやっているようなので、今度アメリカに行く時はそれに日程を合わせるのもいいかも知れない。

You Better Believe It! もう一枚の紹介は、アパルーザとは何の関係もないR&Bコンピレーション。再発レーベル「ライノ」にはヨーロッパ支社というのがあるらしく、そこが年に何枚か出しているワーナー/アトランティック系のコンピレーションが毎度内容が素晴らしくて、僕は見つける度に収録曲も殆どチェックせず毎度購入しているのだが、今回入手したのは「You Better Believe It」第2集。このシリーズのテーマは「レア&モダン・ソウル」といま一つはっきりしないが、第1集を聴いた感じではサウンド的にはかなり軽め、ノーザン・ビートを基調にしたものが多く、南北カロライナの「ビーチ・ミュージック」にも通じる雰囲気。僕はこの手のR&Bが大好きなので、第1集は涼しく愛聴させてもらった。
 
 第2集も雰囲気にあまり変化はないが、ややディープ感が増した印象。全23曲中ヒットチャートに登場したのはガーランド・グリーン1971年の「Plain And Simple Girl(R&B17位/POP109位)」くらいで、他はアーティストこそメジャーどころが多いものの、曲はどれもこれまで聴いたことがないような「DJの収穫」的ナンバーが並ぶ。個人的に気に入った曲を挙げると、リンダ・ジョーンズの「If Only」、オリンピックスの「Girl, You're My Kind Of People」、ベティ・スワンの「I Want Sunday Back Again」など60年代に活躍したアーティストが70年代に非常に洗練されたサウンドで録音した作品群や、トニー&タンディの「Bitter With The Sweet」、ヒプノティクスの「Girl, You Know That I Love You」、ウィンディ・シティの「Hey It's Over」など勉強不足なことに今回初めてその名前を知ったようなアーティストの諸作など。
 
 フリー・ソウルなど“気分的にソウル”なリスナーにも十分アピールする内容でありながら、純粋なR&Bコンピとしても相当レベルの高いものになっている。今度都内の老舗ソウル・バーに遊びに行く時は、お店のマスターのご機嫌伺いにこのCDを持って行ってみることにしよう。
 
posted by yakame at 16:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする